俺と俺としゅっぱつ
さて、まずは……
【嵐纏い】
:風による見せない斬撃を伴う嵐を纏う
これは…… 炎纏いの嵐バージョンだな、仲間の近くでは使わない方がいいな、怪我させちゃいそうだし、そこさえ気を付ければかなり使える。
不意打ち対策にもなるし物理的な攻撃なら防御にも使えるかもしれないな。
【幻想鏡】
:鏡の中から自らの分身体を作り出せる。
さっき検証した通り自我があるから実質的にただの分身と言うよりも俺が増えるのも同義だ、しかも魔法解除後に記憶のフィードバックもあるし別行動してもいいな。
後で確認すべきは有効範囲、分身数のリミット、魔力消費量、分身が魔力を使った場合に本体が負担するのか分身体も各々魔力を持っているのか…… このくらいかな。
いま出してる分身に明日ヒアリングすればおおよそわかるだろう。
次!
【流星招来】
:宇宙空間を進む流星をゲートを介し呼び寄せる。
いやいやいやいや、危なっ!!
つまりメテオでしょ!? 環境破壊まっしぐらじゃん!!
いや…… ゲートの角度調整が利けば下から上に飛ばしたり出来るかも…… 下手したらこの惑星が滅びかねないから検証は慎重にやらないと……。
こわいなぁ。
新しい魔法はこれで終わりだな…… 次は通常スキルだな。
通常スキル:
ん、二つだけだけど…… おっ!! 念話だっ!! やったっ!! これで今までユメを介して話していた人と喋れる!! もちろんミュスカともっ!!
あー、どうしよ!! メチャクチャ嬉しいよー! 涙出そう…… ご苦労アギオル、君の死は無駄じゃなかった。
【念話Lv.―】
:言語に関わらず心で話すことが出来る
うん、最高。
もうひとつはっと。
【幻化Lv.1】
:任意の対象を僅かの間非実体化させる、レベルに応じて幻化の継続時間が伸びる
えーとつまり攻撃された瞬間幻化すればノーダメってこと? しかも任意の対象、これがミソだな。
色々使えそうなスキルだ、魔力消費が無いのもかなりいい!
最後は称号スキルか。
称号スキル:
【悪魔の悪夢Lv.―】
:悪魔の悪夢がここに、悪魔に対して全ステータス倍増
悪魔に強くなったってなぁ…… 他にも沢山いるなら話は別なんだけど…… まぁ、邪魔になるような物でも無いしいいか。
以上…… かなり戦力強化に繋がったな、適正を見てこれらを【付与術神】で仲間たちに付与すればとんでもない事になりそうだ。
カディフラティの地龍ダンジョン攻略の助けになるのは間違いない、ミュスカとユリも強くなってるだろうし今度は自分達の力だけで龍と戦えるかも…… いや、皆と一緒ならきっと大丈夫…… あぁ、だんだん眠くなってきたな……
「ユメ、ルケ、おやすみ……」
「はーい♪」
「おやすみなのじゃ。」
戦い詰めでゆっくり休めなかったからな…… 今日はもう一人の俺に任せてゆっくり寝よ……う…。
……………
………
…
ドガーーーーンっ!!
翌朝、突然鳴り響いた衝撃音に驚き目を覚ます。
「んおっ!?」
なんだっ!?
「あっ! マスターおはよー♪」
「おはようなのじゃ! 主、見てみよ! 見事な戦いっぷりじゃぞ!」
二人は先に起きてたのか。
ルケに促されるまま辺りを見渡すとそこには魔物の死体と今尚押し寄せる魔物達の姿が有った。
ふと上空に目をやると飛行型の魔物を翻弄しながら地上の敵を【飛龍帝の爪】で切り刻む俺の姿があった。
「あー、完全にここの生態系ぐちゃぐちゃになっちゃったな。」
まぁ、いいか。
せっかくだから色々検証を兼ねて観察させてもらおう。
【女神の瞳】!
「どーれどれ、ふむふむ…… なるほどなぁ。」
ステータスを除き見て色々とわかってきた。
それは分身と言えど完璧に俺と同じという訳ではないということ。
例えばステータス値は同じだがHP、MPの回復率がゼロだという事、更に魔法、スキルに大きく制限がかかっているようだ。
「そりゃそうだよなー、分身が【幻想鏡】なんか使えよう物なら無限に増えてっちゃうしね、えっと使えるのは……」
改めて分身体の魔法から後ろの情報を見る。
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魔法:
【飛龍帝の爪】
【超念動力】【嵐纏い】
【精霊魔法全】
通常スキル:
【全視界Lv.MAX】【美食家Lv.MAX】
【自動回避Lv.8】【飛空Lv.7】
【隠密Lv.7】 【暗視Lv.5】
【全無効Lv.3】【不屈の精神力Lv.5】
【念話Lv.―】
称号スキル:
【頂点を目指す者Lv.8】 【無慈悲なる殺戮者Lv.9】
【大物食らいLv.8】
【同胞を内包せし者Lv.-】 【幼女博愛者Lv.― 】
【女神の祝福Lv.-】 【同族狩りLv.3】
【精霊の天敵Lv.-】 【龍帝の威光Lv.4】
【悪魔の悪夢Lv.―】
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魔法は特に制限が厳しい…… とは言えスキル系がこれだけ残っていれば様々な戦い方が出来るだろう、更に分身体の経験値も解除時に入ってくるとなれば別行動隊を結成してもいいかも知れない、残りの大きな疑問は本体との距離がどこまで離れる事が可能かである。
これを確かめるのは簡単で、今出している分身体をそのままここへおいてカディフラティへ出発してしまえばいい。
「そんなところかな…… あ、もうひとつ有るな、分身体がダメージを受けたら本体へのダメージのフィードバックは発生するのか…… これが有るのと無いのでは使い方に大きな差が出るな。」
どれ、分身に向けて攻撃してみるか…… すまん! 俺! 【飛龍帝の爪】!
威力をやや下げて分身体の完全に死角を狙って飛距離を無視した爪撃を放つ。
恐らく【自動回避】が発動したのだろう、直撃するかに思えたが僅かに脇腹を掠めるだけに止まった。
〈コラ!! 本体!! 意図はわかるけど許可くらい取ってよっ!! っていうか一晩戦ったんだから少しくらいダメージ受けてるから!! それが自分に反映されてるかどうか見れば良かったじゃん!! 俺のバカっ!! ……俺って俺じゃなくて本体だからね!〉
確かに言われてみればそうだな。
「んー、今のは俺が悪かったよ、ごめん俺…… 許すだろ俺?」
〈まぁ、腹はたつけど悪気がある訳じゃないのは分かってるから…… で、俺が受けたダメージは本体に反映されないから俺を使い捨てにする事も出来る訳だ、なら俺はここに残ってHPが尽きるまで戦おうと思う、【美食家】は使えるし本体の戦力アップに繋がるだろうしね。〉
【美食家】で魔法やらスキルを食ったときはどういう経過を辿るのか…… 例えば魔法、分身体が先に手に入れた魔法を分身体はすぐに使えるのか…… それとも本体に統合されて【幻想鏡】で新たに分身体を作り出した時に反映されるのか…… まぁ、これこそそのうちわかるか……。
取り敢えず今は……
「ユメ!! ルケ!! 改めておはよう! 微妙な目覚めではあったけど丁度いい目覚まし時計だったね、それで二人とも準備はいい?」
「ばんじおっけーい♪」
「うむ! おっけーい? なのじゃ!! ミュスカ嬢達もまっておろ? そろそろ行くのじゃ!!」
「よし! じゃあ悪魔の鏡池攻略完了ってことで!! 次は地龍のダンジョンへ向けて…… しゅっぱーーつ!! あっ、もちろん競争でーす!!」
分身体の俺を残し、ユメとルケを置き去りにして一人飛び立つ。
「マスターズルいー!!」
「妾はわかってたのじゃっ!!」
「ユメも本気だすからね!!」
「進化した妾の速さに驚くとよい!!」
「ふはははは!! もはや俺はカタツムリでも亀でもない!! ……俺はなんだろう。」
「可愛いからいいと思うよー!! でも負けないよー! 【舞矢】!!」
「あっズルい!! 【碧雷渡】!!」
「二人とも大人げないのぉ…… 【認めざる者】!!」
「うおっ! なんだそりゃ!! 負けるかっ!!」
ミュスカとユリが待ってる! 俺が一番乗りだっ!!
「あっ! それは反則……」




