いってらっしゃい
「けっかはっぴょーーーーうっ!!!」
「…はっ?」
「だから言ったじゃない! 生前の善行や悪行による点数で異世界での姿が変わるって!」
そう言えば言ってたような……。
話しが長すぎて忘れかけていた。
「まぁいいわ、じゃ、いくわよ!」
大きく息を吸い込み、一泊の後物凄い早さで話し始めた。
荒巻 空至 享年28歳
0歳 産声をあげた +2点
1歳 離乳食を沢山食べた +2点
2歳 パパ、ママと喋った +5点
3歳 初めての家出 +8点
4歳 自転車を極めた +5点
5歳 初めてのお使い成功 +10点
6歳 サッカーへの挑戦失敗 -5点
7歳 勉強に目覚める +9点
8歳 火遊びでぼや騒ぎ -10点
9歳 コンセントに異物挿入 -10点
10歳 溺れたのに友達に逃げられた-2点
11歳 初めての人助け +20点
12歳 白紙の通知表をもらう -5点
13歳 友達との大喧嘩に敗北 -3点
14歳 中二病を患う -30点
15歳 初めての彼女と3日で破局 -10点
16歳 アルバイトを始める +10点
17歳 両親の離婚 -5点
18歳 受験勉強を頑張った +5点
19歳 未成年での飲酒 -10点
20歳 将来を考え始める +15点
21歳 初めての合コンでぼっち -5点
22歳 大手企業に合格 +50点
23歳 バリバリ働く +10点
24歳 先輩後輩の仕事をこなす +20点
25歳 童貞に悩む +10点
26歳 新入社員に恋をする +20点
27歳 特になにもなかった -10点
28歳 初めての前戯 +50点
人生ボーナス +150点 (善)
人生減点 -300点 (童貞)
合計-4点
「ちょっとまてーいっ!! -300点(童貞)ってなんだよっ!!」
「ん? 当たり前でしょ? 種としての大きなマイナスよ童貞なんて。 後五秒長生きしてればねぇ、ぷっ」
くそっ。俺が気にしてる事を土足でずかずかと!
でも点数がマイナスだけど転生先は何になるんだろうか。
「ひどい点数ね、ぷっ。 この点数で選べるリストはっと。」
いつの間にか取り出した冊子をペラペラと捲る。
「ここね。 今から言う中から選んでもらうことになるわよ? よく聞いてね。」
こうなれば何でも良い! 絶対に成り上がって頂点を目指す!!
「いくわよ。 ひとつめ《カマキリ》、ふたつめ《コオロギ》、みっつめ《カブトムシ》、よっつめ《ミミズ》、いつつめ《揚羽蝶》、むっつめ《ヤモリ》、ななつめ《カタツムリ》…ひっどいリストね。 さぁどれにする?」
思ったより酷いな、どれを選んだところで大差無いだろう。
でも…… 紫羅……。
「決めた! カタツムリにする! 渦の頂点を目指すんだ。 験を担いで渦のある生き物にするよ。 それに…紫羅が好きだったしね。」
「いいのね? それで。」
「あぁ。 たのむ。」
正直不安しかない。
生まれ変わっていきなりカタツムリなんてムリゲーにも程があるだろう、すぐに殺される可能性だって決して低くない。
でも…
「絶対に紫羅にまた会いに行くんだっ!!」
「そう、頑張りなさい。」
そういって何度目かの女神スマイルを見せる。
「あっ、そう言えば女神さんの名前、聞いてなかった。 最後に教えてくれるか?」
「そう言えばいってなかったわね。 ヴィオニエよ。」
「ヴィオニエ… ヴィオニエ。 覚えた。 綺麗な名前だな」
素直にそう感じた。
「そう? ありがと。」
素っ気ないながらも少し嬉しそうな気がする。
「さて、あちらへそろそろ送りましょうか」
ヴィオニエが指を鳴らすとまた白い寝台ののような物が現れた。
「そこへ仰向けになってちょうだい。 クッションは置いときなさい、 見ないから。」
仕方なくクッションをソファーへ戻し寝台に寝転がる。
「世話になったな。」
「いいわよ。 面白かったし。 そうそう、一つ言い忘れていたわ、 転生先がカタツムリだから貴方暫く記憶失くすわよ? カタツムリの身体がもたないし。 頑張って階位を上げなさい、 向こうではレベルがそれに当たるわ。」
「え? 記憶失くなるの? いやいや、 きいてないって!! ムリムリムリっ! すぐ死ぬってっ!!」
「だから頑張りなさいって言ってるじゃない。 ほら、いくわよ。」
「待って待ってまってぇーーー……」
そして意識が遠くなり俺は異世界へと転生した…
■
「はい、おっかえりー!! いやぁ、やっぱり面白かったわ! お腹を抱えて笑ったわよ! 」
気が付くと純白のソファーに腰かけていた。
そう言えば記憶を取り戻すとかなんとかいってたっけ。
「ヴィオニエ。 俺、 結構死にかけたぞ? 」
「見てたわよ! めちゃくちゃ面白… いや、頑張ったみたいね、ぷっ。」
「はぁ、もういいや。 で? 俺はこの後どうなるの? 記憶は戻ってるみたいだけど。」
「どうなるのって、もどるのよ今。 ほらまた横になりなさい。」
またしても指を鳴らすと、いつの間にか寝台が後ろにあった。
「ユメによろしくね。 たぶん寂しがってると思うから。」
「ユメ? 誰それ。」
「あなたそんな事いったらあの子泣くわよ? いつもあなたの事を助けてくれた【鑑定】の事よ、最後には階位があがってあの子も自我が戻っていたはずだけど。」
そう言えば意識が飛ぶ前に何か言っていたような気がするな。
「私が作った最高傑作よあの子。 めちゃくちゃいい子だから泣かせないでね。」
なんだかんだで確かに助けられて来たかもしれない、イラつく事もあったが、あれが無かったら何も出来ずに死んでいてもおかしくなかったな。 戻ったら礼をいうか。
「という事で、はい、いってらっしゃーい」
「また、いきなりだな! ありがとうヴィオニエ! またな!」
……………
………
…
「またな。 か。 まぁ、楽しみにしておこうかしらね。 頑張りなさい… ソラ」
やっと回想おわりましたねー!
次から異世界へともどります!!




