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極寒と灼熱と魚

 

「……どゆこと? これ。」


 俺達は昨日の洞窟を朝方に出発し、魔物を倒しながら三時間程中心へと向け歩みを進めていた。


 そして視界が更に悪くホワイトアウトする中でまた一歩を踏み出した。

 その瞬間に目の前に広がったのは、なんと荒野だった……。


「いや、だった…… じゃねーよっ!!」


 俺がこの世界の森で目覚めた時思い出したわっ!! いきなりすぎるだろっ!!


「暑いー!! おもしろーい♪」


『主よ、後ろを見てみるのじゃ。』


 そこにあったのは()だった。


 それも真っ白な壁…… なんだろうか目に見えない透明の幕が猛吹雪を塞き止め正に壁の様相を呈している。


「これがユメが言ってた寒い所と暑い所の境目ってことか。」


「うん! そうだよー♪ ここから敵がまたつよくなるのー!!」


 そうか、昨日のダイアモンドアイスゴーレムがあそこにいたって事は最低でもあれより強いのがこの四十度以上有りそうな暑いゾーンの基準になるわけだな…… 悪魔の鏡池の近くはとんでもなさそうだな。


「気を引き締めていこうか!」


『強くなるにはもってこいの環境じゃの!』


「皆殺しだー♪」


 うん、二人は平常運転だな。


「あっ! お魚さん!!」


「魚? また?」


 ユメの視線の先にはひび割れた荒野を更にひび割らせながら突き進んでくる巨大な背鰭(せびれ)だった。


「また不思議生物だよ…… ていうかでかくない? 背鰭だけで四メートルくらい高さあるじゃん。」


 ふと頭の中でお決まりのBGMが流れる。


 でーでん、でーでん。

 みたいなの。


「……って、ことは言わずもがなサメだろうな。 二人ともこいつは俺がやってもいい?」


「いいよー♪」

『うむ。』


 さってと、俺のこの世界の始まりを思い出した所で、あの時の再現でもしてみるか。


 何事も初心忘れるべからずって言うしね! という事で……【全無効】!! まだLv.2だけど素の防御力も高いし大丈夫だろう。


 微動だにせずその場で滞空していると轟音と共に地面にぱっくりと巨大な顎が現れ二十メートルは有ろうかという巨大サメの牙が俺の体に突き立てられた。


 ガリガリ、がじがじ


 案の定全然噛まれても平気だな、こうなると俺も強くなったことを実感するな。


「ふふふ… ふはははー!こだぬきごときがやってくれたな!! 我が拳! 受けてみるがいい!! ……とか恥ずかしい事口に出してたよなぁ。 カタツムリのくせに。」


 あの頃って記憶が無かったからなのか、なんか言動が幼稚だったよなぁ…… 今思い出すとやっぱり恥ずかしい。


「あー!! マスターが小さいたぬきに襲われてる時みたい!!」


 ってことは最初の方の記憶もユメは覚えてるんだなぁ…… 黒歴史だわ。


「ママも笑ってるよー♪」


 ヴィオニエも見てるのか。


『何をしておるのじゃ主……』


「ん? あぁ、昔物凄く弱かった頃に戦った普通のたぬきの子供との戦いを再現してるんだ。」


『……なんでじゃ?』


「……何でだろ、やめるか」


 じゃあ、取り敢えず【炎纏い】―紫炎―!


 ギシャァァァァァアっ!!


「え? サメって鳴くっけ?」


 まっ、いっか。


「【氷柩】!!」


 周囲にキラキラと幻想的な小さな氷の結晶が煌めき始め、口が焼け爛れのたうち回る巨大サメを取り囲むように浮遊しながらクルクルと回転する。


 回転が止まるや否や一斉に巨大サメに氷の結晶が飛来し、当たったそばから次々にその箇所を凍結させていくのが見て取れる。


「ほい、サメアイスの出来上がりっと! 暑いからね! ほんで【美食家】! いただきまーす!」


 シャリシャリしてて涼やかでいいなこれ、確か北海道にルイベって食べ物あったよね、食材を半凍りで食べるやつ、あれに近いな。


「……物足りない。 あっ! そうだ! 【万物の創造神】―醤油―!!」


 これを垂らしてっと…… あーむ。


「……美味い、美味いぞぉ!!」


 一心不乱に食べ進め、気が付くと完食していた。


「ごめん二人とも、待たせちゃったよね。」


「マスターが食べてる間にユメ達次の敵探してたの!」


『ここから少し先に強そうなのがいるらしいのじゃ!! まだこの辺りの敵は妾達の敵じゃなかろ? 飛んでそこまで行くのが良いと思うんじゃがどうかの?』


「そうだね、弱い敵倒しても大した経験値にならないし時間も無駄にかかる、大物狙いで行こうっ!!」


「はーい!! あっちの方だよー!!」


『早く行くのじゃ!! 次は妾にやらせておくれ!!』


「あぁわかったよ、じゃあ早速…… 競争だっ!!」


「マスターずるーい!!」

『今度は負けぬのじゃっ!!』


 **************************


「よ、よしっ!! 勝った!! また俺の勝ちだな!!」


『ほぼ同着なのじゃ!』

「おーい! 二人とも速いよぉ。」


 本当にギリギリだった、なんならさっきのサメ食べてなければ負けてたんじゃないか?


『まぁ、いいのじゃ。 負けは負けじゃからの。 それで敵は…… あれかの……?』


「そうだよー♪」


「えっ!? あれなの……?」


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