ユキダマシ
「まけたー!! もう!! ずるい!! マスターもルケも速すぎ!!」
『妾も負けたのじゃ……』
まぁ、最後の一日は【碧雷渡】使ったしね。
むしろ使わなきゃ勝てないことの方がびっくりだよ。
「二人とも凄く速かったよ! 次は負けちゃうかもね。」
「次はまけないもん!!」
『次は魔法は抜きでやるのじゃ!!』
ですよねー。
「ま、まぁ、取り敢えずここが魔境の一番外側なんだよね?」
「そうだよー! 今はこっちの様子みてるよー♪」
『なんじゃ、臆病な奴らじゃの。』
臆病か、何も考えずに襲ってくる魔物より厄介だと思うけどな。
「どうしよっか、まだ日も高いしこのまま行く?」
『行くのじゃ!! 妾は待ちきれぬ!!』
「ユメもぶっ殺すー♪」
「よし、じゃあ行こう!!」
少し進むとある場所を境にいきなり景色が変わり始めた。
「雪…… だな。 いきなり冬景色ってどういうこと?」
「んとねー真ん中の悪魔の鏡池が暖かくてその外が涼しいの! でね、ここが寒くてその内側が熱いの!」
あー、成る程ね、内から外に向かうほど住みにくくなっていくわけか。
「他の場所に行けば過ごしやすいのになんでこの魔境に住んでるのかな?」
『妾は何となくわかるのじゃ。 向こうの方、恐らく悪魔の鏡池が有るんじゃろうが何か引き寄せられる感覚が有るのじゃ。』
「へー、俺は何も感じないけどなんか有るのかもね、ユメわかる?」
「んとねー、ママが行けば分かるっていってるよ!」
「行けばわかる…か。 まぁ、そりゃそうだね。 取り敢えず進めばいいか。 一応まだ一番外側だしそこまで強い敵は出ないと思うけど気をつけて進もうか。」
「はーい♪」
『うむ。』
一面の銀世界を進んで行くと、ふと視界の隅で何かが動いた。
「二人ともストップ! 何かいる!!」
『あれは何じゃろの、白い獣かの?』
そこにいたのは白い毛玉のような生き物だった。
バスケットボールくらいの大きさの真っ白なもふもふにつぶらな赤い瞳が可愛らしい生き物だ。
『もしやユキダマシかの。』
「ルケあれ知ってるの?」
「実際に見るのは初めてじゃがの、聞いたことが有るのじゃ。 別名雪山の深海魚とかいっての、あの見た目で近づいて来た獲物を噛み殺すのじゃ。」
深海魚? 全く魚には見えないけど。
『主よ、肉か何かいつもので出せるかの?』
「いつものって【万物の創造神】かな? 出せると思うけどどうするの?」
『あれの近くに放ってみるのじゃ。』
「えーと、うん。 わかった。」
よくわかんないけどやってみるか。
【万物の創造神】―塊肉―!【超念動力】!
ユキダマシの近くに肉を放ってやる。
「………。 何も起きな…… いっ!?」
次の瞬間雪の中から牙がびっちりと生えた大きな口が飛び出してきて塊肉を雪ごと丸飲みにしてしまった。
「わぁ…… そういうことか。」
雪から飛び出したのはまんまちょうちんアンコウのような魔物だった。
『あれが奴の狩の仕方じゃの。 妾も初めて見たが気色悪いのぉ……』
「あはははー!! なにあれー! おもしろーい♪」
ユメには大ウケである。
『あれは妾が狩ってもいいかの?』
「あ? あぁ、いいよ。」
「あれー? もふもふ隠れちゃったよー?」
「これじゃあどこにいるかわからないな。」
『問題ないのじゃ。【索凪】! ……見つけたのじゃ。【絶界】!! 捕らえたのじゃ!!』
【絶界】かなんだろう、特に何か起こったようには見えないけど。
『これで雪の中を泳いで逃げる事は出来ないのじゃ! そして【鬣炎】!!』
【炎纏い】で燃え盛る鬣を揺らめかせルケがゆっくりと歩いていき、ある場所でピタリと止まる。
『ここじゃの…… 紫炎!!』
ルケの鬣が青から紫に変わり一気に周りの雪を溶かしていく、瞬く間に雪は水へと姿を変えるがルケはその中で四角い雪に立っているように見えた。
あれが【絶界】の正体かな、俺の【エアキューブ】に似てるかな。
ルケの顔の前に魔力が集中し始め瞬く間に高熱化していき周りの雪を更に溶かしていく。
『【焔獄咆哮】!!』
ルケが魔法名を唱えた瞬間に爆発的に高熱化した火の塊が咆哮と共に放たれ、目にも止まらぬ速さで【絶界】へと直撃するかに思えたが、【焔獄咆哮】はそれをすり抜けた。
いや、すり抜けたかに思えた。
『終わりなのじゃ。』
そこに残るのは高熱により瞬間的に熱湯になった雪だった物と腹部に丸く大穴を空け、茹で上がって絶命したユキダマシの姿だった。
「おぉっ!! 凄いよルケ!! なに今の!?」
『【絶界】は精霊達から奪った魔法の一つなのじゃ! 術者のみが好きに干渉できる結界みたいな魔法じゃの。』
成る程、だからすり抜けたように見えたのか!【焔獄咆哮】だけを通過させて中のユキダマシを撃ち抜いたわけね!
「ルケかっこいいっ♪」
「うん! すごかったよ!!」
『そ、そうかの? まぁの……』
「進化したらどうなるか更に楽しみだね!!」
『うむ、楽しみにしていておくれ…… …』
「ん? ごめん、最後聞き取れなかった。」
『な、なんでもないのじゃ!! ほれどんどん行くぞ!!』
「おー!! 次はユメにも殺らせてね♪」




