蟲毒の大壺
「なっ!! それはアイツの…… グリージョの野郎の!! 」
グリージョ? 誰だっけそれ…… 思い出せないな。
あっ、いや、あれか【碧雷渡】持ってた奴か。
どうでもいいや、取り敢えずとっとと倒そ。
「ちっ、魔物じゃ言葉も通じねぇか。 取り敢えずまとめて死ねやぁ!! 【溶岩雨】!!」
上空に夥しい数の小さな溶岩が生み出され重力に従い広範囲に振り始める。
なんでそんな周りを巻き込むような攻撃するかなぁ、今戦ってるのは俺でしょ!
「無力に焼け死ね雑魚共がぁ!! ガキが減るが仕方ねぇよなぁ!!」
「させないってば。」
さっき気付いたけど今まで【女神の瞳】と【碧雷渡】一緒に使った時は全てがスローモーションに感じてたけど、今は併用してても意識的に感覚の切り替えが出来るようになったな。
今は周りが全てゆっくりと動き始めた、この状態ならやれるはずだ。
視界を埋め尽くすような溶岩の雨を今までの【碧雷渡】よりも更に速い速度で一つ一つ雷撃で消し飛ばしていく。
速度が格段に上がったな。
ならあの時の予想が当たったって事だよね、飛竜帝から奪ったスキル【減重力】。
これが俺の目的だった、超高速で動くに当たり邪魔になる要因はいくつかあるが、その一つが重力、それが【減重力】で軽減された、そして思わぬ副産物であるが、今俺が纏っている白い輝き【百鬼の希望】、これが移動時の空気抵抗すら受け流し、二つ目の要因として【碧雷渡】を強化してくれた。
それらが加わった結果がこれだ。
「な、なんだ!? 何が起きたぁ!? ……俺の魔法がかき消えやがったぁ。」
はい、かき消しました。
そろそろ死んでね。
【蟲毒】
驚愕の表情を浮かべる魔族の背後に音もなく浮かび上がる不気味な大壺、僅かばかりの沈黙の後蓋がカタカタと音を立て始めた。
「な、なんだ!? 壺……か?」
うぉっ、初めて使ったけどなんか気持ち悪いなあの壺。
あっ、音、止んだ。
直後蓋が吹き飛ばされ、中から青黒い手のような触手がいくつも伸び魔族を絡め取り壺の中へと引きずり込む。
「がぁっ!! な、なんだよぉぉぉ!! は、放しやがれぇ!!」
必死にもがくが為す術無く引きずり込まれていく、触手が一本地面に落ちた蓋を拾い上げ行儀よく蓋をカタンっと閉めた後、くぐもった声が壺から漏れ聞こえてくる。
「おっ、おいっ!! なんかいるっ!! がぁっ、いてぇ!! あがっ!! や、止めろぉぉぉっ!! あづいぃ、喰うなぁ! さずなぁぁ…… あ゛……」
「い、いやいやいやいや! こわっ!! 何これ! 何入ってるのあれっ!! こっわっ!! ……ん?」
蓋がまたあいた……?
「げぇーーぷっ。」
「はっ!? ゲップしたよね? ねっ? あっ!?」
触手が出て来て……
「バイバーイ…… じゃねーよっ!! 何住んでるの!?」
「うわぁ…… なんや、悪趣味やなぁ……」
へ?
「あれなんなん?」
は?
「あ? 亀さん? おーい、えと…… そらさーん? なに固まってんの? どうしたん、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔して?」
「す、すすす、す」
「す? …あっ!! はいはい好き? なんや亀さん、うちの美貌に見惚れてたんか!」
「ぶ…… じだったの?」
「あ? あぁ、なんか体ぐじゅぐじゅにされたけどな、表面が固まった後なんかゆっくり治ったわっ!! 死ぬか思った!!」
そうか…… そうかっ!! 良かった……。
「おーい!! マスター!!」
『主よー!!』
ユメ、ルケ。
「スミレさっきかっこよかったんだよ!! なんかサナギみたいにかぱって開いて蝶々みたいにどぅるんって出てきた♪」
『ユメよ、あれはどちらかと言えば気持ち悪かったのじゃ。』
「えー! かっこよかったよぉ!!」
『そ、そうかの? まぁ、無事で良かったのじゃ。』
「よかったよ…… てっきり殺されたかと思って俺……」
「なんや、うちヴァンパイアクイーンやで? そうそう死なんわ! それになんかあったかくてガンガン治ったしな!!」
そうか、【ウォーターライフ】効いてくれてたか……。
「なんや、亀さん泣いてへん?」
「な、泣いてないやい!! 体が光ってるだけだい!!」
「まぁ、そういうことにしてあげるな!!」
取り敢えず無事ならいいかなんでも。
「ねぇねぇマスター!! どうだった!! 【瞬身】と【百鬼の希望】!!」
「あ、ああ! 凄く良かったよ!! 【瞬身】はもうそのまんま瞬間移動だよね!! ワープゲート潜らなくてもいいから物凄く使えそうだよ!! 移動距離とか試してみないとだけど慣れたら即実戦で役にたつと思う!! あと【百鬼の希望】も凄くかっこよかったよっ!! なんかこう変身するヒーローみたいで男心をくすぐるっていうか!! 発動条件とか持続時間とかもし分かれば後で教えて!! 創ってくれてありがとうユメ!!」
「えへへー♪ どういたしまして!! わかったー!!」
『どれ、今は盗賊の残党を狩り尽くすのが先じゃの。』
「あぁ、そうだね! 最後まで油断しないでいこう!!」
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