会議開始
……まぁ、いいか。
「じゃあ亀光縛りでいいや。」
あ、【碧雷渡】と【美食家】試してないや。
ん? おおっ!! いいこと考えたっ!!
「ユメ!! 幻銃のデュアルブレード出して!!」
「ん? はーい!!」
よし、これに【付与術神】で【碧雷渡】を付与!!
元から付与してある【美食家】と合わせて使えばとんでもない威力のレールガンの出来上がり!!
「バチバチ光ってかっこいい!! でもビリビリするよー♪」
ユメの髪の毛が少し逆立って発光してる、これ大丈夫かな。
「へへへー!! 楽しー!! ねぇマスター!! 撃って良い?」
大丈夫そうだな。
「あぁ、先頭のデカイ骸骨狙ってみてくれる?」
【女神の瞳】で観察しましょ。
「わーい♪ じゃあ、せーのっ!」
パシュっ!
「え……」
ち、ちょっと待ってっ!! 【女神の瞳】の瞳でもほぼ見えないんだけど、骸骨の頭蓋吹き飛んでるし!! え、なんでここまで……。
あ、ユメの幻銃のデュアルブレードの弾丸は純粋に魔力だ、つまり空気抵抗も重力も摩擦にも囚われない…… 俺の【碧雷渡】の時とか恋矢―レールガン―とは違って色々な制限を受けないんだ。
ということは純粋に雷の速度で敵に当たるって事だよね? そんなの実質回避不可だ…… とんでもないな。
「すごい…… すごーーいっ!! さすがマスター!!」
「ま、まぁね! 予想通りかなっ!? はは…… 【美食家】の効果はあった?」
「うん! またためとくね♪」
さ、さて検証はこれくらいにして、取り敢えず百鬼夜行を追い返しましょうか。
被害が出ても困るしね。
夜にいつも来るって事は太陽とか苦手なんだろうな。
【万物の創造神】で超小型の太陽でもつくっ… あれって核反応なんだっけ、止めよう。
んー、あれで良いか。
【万物の創造神】―閃光手榴弾―!!
先頭にいた骸骨を消し飛ばされ動きを止めている百鬼夜行の前にピンを抜いた閃光手榴弾を【超念動力】で繊細にセットする。
「ユメ、ルケ目を閉じて!」
「はーい!!」
『ん? うむ。』
カッ!!!
目を閉じていても感じる程の強烈な閃光が辺りを照らす。
動きを止めていた百鬼夜行も光に驚いたのか蜘蛛の子を散らすように逃げ帰り、町に漂っていた緊張感が薄れる。
「目が目がぁぁ!!」
所々で討伐隊と対アンデット組織の方々が目を押さえのたうち回っているのが見てとれた。
「あ、あの人たちの事忘れてた…… 激しくごめん。【ウォーターライフ】!」
これで治るだろう。
「ユメ、ルケ、目を開けて良いよ! 百鬼夜行は追い返したから少し様子を見て一度イブの所に戻ろうか! お腹も減ったしね!」
************************
「おかえりなしゃ、なさい…… 妖はどうでしたか?」
噛みすぎでは?
「ただいま、イブ。 百鬼夜行、見てきたよ。 弱点とか色々検証して、取り敢えず今日は追い返したよ! 今後の動き方なんかは日ノ本の討伐隊と対アンデット組織の人達と合同で話して決めて行きたいと思ってる。 日時の調整お願いして良いかな?」
「おまかしぇ…下さい…」
ま、まぁ七歳だしね。
その後お泊まり交渉をして承諾を貰い、遅めの夕餉を頂いた。
先に行っておこう…… 米は無かった……。
だが、俺は気付いてしまった。
【万物の創造神】で出せるじゃん!!
何なら出来上がった料理すら出せるんじゃないっ?
食べることに困ったら試そう。
夕餉の後で軽くイブと打ち合わせをして話し合いの日時は明日の夕刻にする事が決まったのだった。
***********************
「それでは対百鬼夜行対策会議を開始させて頂きます。」
司会進行はミタが務めるようだ。
イブは長いテーブルの一番奥のサイズ感の合わない大きな椅子にちょこんと座っている。
テーブルと聞いて洋室を思い浮かべるかと思うが、ここは和室である、畳に敷物を敷きその上に木製のテーブル、椅子が置かれており、襖と障子に鹿威しのカポーンという音が時折聞こえてくる。
ユメは椅子に座り足をぷらぷらと揺らし、俺とルケは敷物の端の方で寝そべっている。
参加者は俺達を含め九名、巫女であるイブと司会と補佐のミタ、日ノ本の討伐隊の隊長と副隊長、対アンデット組織の責任者とその部下である。
昨夜の話しだと本来ここに国持大名、つまり国のトップが同席するはずだが、現在日ノ本の国難に際し非常に心を傷め、それが身体に表れたのか床に臥せっているとの事で国の巫女たるイブが全権代理者としても参加するそうだ。
「ではまず、初めて顔を合わせる事となりますので軽く自己紹介から、隊長から時計回りにお願いします。」
自己紹介かー、ユメちゃんとできるかな……
「ユメ様、並びに神獣、そら様にルケ様、お初に御目にかかります、拙者は百鬼夜行討伐隊隊長を務めますサトリと申す者、以後お見知りおきを。 そしてこれが副隊長のユズリ、拙者の双子の弟でも有ります。」
隊長と副隊長は犬の特徴を持つ獣人のようだ、イメージ敵にはシベリアンハスキーのような耳や尻尾、そして鋭い眼光が歴戦の猛者を彷彿とさせる。
赤と黒の革が多く使われた鎧と弓と剣を装備している。
このそっくりな兄弟の見分け方は非常に簡単だ、眼帯をしてる方が兄サトリ、丸眼鏡をかけているのが弟ユズリである。
「よろしくー♪」
あ、俺達って神獣扱いになってるんだ…… まぁ、なんでもいいけど。
にしてもこの二人は惜しい、というかアンバランス…… かなり体も大きいしこれで太刀でも持ってれば完璧なんだけどなぁ…… やっぱり技術的に難しいのかな……。
「初めまして、日ノ本の友好国家、ビディスの対アンデット部隊として派遣されました、私がデラカーテ、此方が私の補佐をしてくれているインテンソです。 よろしくお願い致します。 此方に派遣される前はビディスの教会が設立した魔物駆逐部隊に所属して魔法使いとして日々魔物と戦っておりました。 その教会の司祭様が日ノ本のこの状況を嘆かれ私達を派遣されて今この状況にあります。」
「よろしくねー♪」
昨日の夜は皆目深にローブを着てたし暗くて気付かなかったけど女の子なんだな。
デラカーテは紺色のショートヘアーに同じ色合いのやや垂れた瞳で優しげな印象を受け、ローブの上からでも分かるようなモデル体型の美女だ。
インテンソはデラカーテより頭一つ背が低く、赤い髪と赤い瞳がやや苛烈な印象を受けるつり目の女の子でユメからは見えないかも知れないがテーブルの下で固く拳を握っている。
デラカーテは緊張してるのかな? 次はユメの番だな。
「初めまして! ユメはユメだよ!! こっちがマスターなんだけど神獣? のそらだよ!! んでこっちがルケ!! たまたまここに来たらママがイブにユメ達を頼れって言ってたらしいからママに聞いたら助けてあげてって言ってたから助ける事にしたよ♪」
あっ、ヴィオニエに確認取ったんだ、そう言えば亀光縛りの時も話してたもんね。
それと何気にユメに名前呼ばれるの初めてかも。
「あ、あとねー! ユメはママの娘だけどマスターにお仕えしてるから一番偉いのはマスターだよぉ♪」
あれ? なんか俺を見る皆の目がキラキラしてる気が……。




