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不完全な完全犯罪・goldscull  作者: 四色美美
22/23

ゴールドスカルの秘密

やはり原田学の恋人はマネージャーだった。

 マネージャーは音楽系の専門学校で業界に必要な知識を習得し、卒業後小規模のプロダクションに入った。

大手でも就職活動はしていた。でも内定をもらえなかったのだ。


最初の仕事は売れない歌手の施設巡りの同行だった。

スーパー銭湯内にある小さなステージでのカラオケ大会や、老人ホームなどでのコンサート。それは憧れていた華やかな世界とはまるっきり違っていた。

夢は破れたと思っていた。そんな時、訪れた施設で木暮敦士と出会ったのだ。


一目惚れだった。木暮敦士にマネージャーは恋をしてしまったのだ。

恋心を隠して木暮敦士に接近し、所属していたプロダクションへ誘ったのだ。

原田学を一緒に勧誘したのは下心を見抜かれなくするためだった。

でもマネージャーは原田学のギタリストとしての才能に着目して、ロックバンドとして売り出すことを社長に進言したのだった。

早速ライブ活動をすることにした。

練習場所は専門学校時代の仲間が働いているスタジオだった。

マネージャーの力で安くしてもらった訳でもないのに、低料金だったからプロダクションとしては両手を上げて喜んだようだ。

だからマネージャーは少しずつ自分の意見も言えるようになったのだ。



CDが売れない時代にヒットした楽曲は着うたやカラオケにもなった。

木暮敦士が亡くなった時にはカラオケランキングトップにも輝いた。

マネージャーは悲しみの中に栄光を掴んだのだった。

傍に原田学が居てくれたことも一因だったに違いなかった。





 ボンドー原っぱの恋人はやはりマネージャーだった。



木暮敦士亡き後、マネージャーは原田学の誠実な態度に救われたのだ。

意気消沈しているマネージャーを原田学は癒したのだ。



親友だった木暮敦士の死は原田学自身でも辛いはずなのに、彼は優しかった。

その人柄に惚れ込んでしまったのだった。



木暮敦士を殺した犯人がマネージャーだと夢にも思わない原田学。

だから付いていく決意をしたのだった。



マネージャーは、原田学のギターテクニックを売り出そうとしていた。

木暮敦士のいたロックグループが売れたのは、バックに確かな技術のギタリストがいたからなのだ。

マネージャーはその事実を知っていた。

それでも、木暮敦士に賭けてしまったのだった。

その事実を反省し、気持ちを新たに他のメンバーのために立ち上がったのだ。

それが自分の不注意から死に追いやってしまった木暮敦士への追悼でもあったのだ。




 でも社長の方針でコミカルなバンドを目指すことになってしまったのだった。

ボンドー原っぱと言う名前にマネージャーは抵抗があった。

だから必死に止めようとしたのだ。



でも覆らなかった。

物の試しにと出場した視聴者参加型テレビ番組で大ウケしてしまったからだった。

社長はそれで気を良くして、本格的に売り出したのだ。





 そんな時MAIさんに彼氏が出来たことを知ったのだ。

未だに自分が殺した木暮敦士のことが忘れられないマネージャー。

又ストーカーのようにMAIさんを付け回すようになったのだった。マネージャーは自分に見せ付けるためにスキンヘッドにしたことを知っていた。

それ故殺してしまったのだと恨んでいたのだ。だから尚更付け回していたのだった。




 MAIさんと隣り合わせたカラオケルームで、マネージャーは新恋人の歌声を聴いたのだ。



『欲しい』と思った。

心血を注げる相手に又出逢えた奇跡に震えた。

その途端、マネージャーの心の中にはもう原田学は居なくなっていた。

その代わりに、邪魔な存在としてその大半を占めるようになっていったのだ。

ボンドー原っぱなんて奇妙な名前の原田学は恋人でも何でもなくなっていたのだった。





 MAIさんの実家が美容院だと知っていたマネージャーは、其処が居抜きで売りに出されている情報を得て利用することにした。

だから原田学を其処に移動させようとしたのだ。


方法は車椅子だった。

マネージャーと原田学が出会ったのは介護施設だ。たまには車椅子移動も頼まれるから扱いには馴れていたのだ。





 スタジオで原田学は眠らされていた。

マネージャーは用意したドリンクの中に睡眠薬を混入した。

社長から叱責された原田学はそれを一気飲みしてしまったのだった。

それは何時もドリンクではなく、アルコールだった。

だから原田学は全く気付かない内に故郷まで連れて来られたのだ。




 マネージャーは見よう見まねで原田学の頭をスキンヘッドにしたのだ。

そして行動を監視した。



イワキ探偵事務所を訪ねた時には驚いた。

でもその前に携帯に保存してあった画像は全て消したから安心していたのだ。



まさか、木暮敦士が恋人だったMAIさんの画像を名刺に入れていたとも思わずに……




 『すいません遅くなりまして。木暮を殺したの犯人が逮捕されたと聞きまして……』

あの時、犯人しか知り得ない事柄を言った。刑事が少し首を傾げたので気になって聞いてみたら、警察は連続殺人だとは言っていなかったのだ。



原田学殺害の罪を被せることさえ出来れば……

殺人が発覚した時、マネージャーはMAIさんを逮捕させようと目論んだ。

だからボンドー原っぱの恋人だと噂を流したのだ。

それはアマチュアロックバンドのボーカルを獲得する手段でもあったのだ。



木暮敦士が死んだのは、MAIさんがあれを買ったからだと思っていた。

愛する人を殺してしまったのは、MAIさんが悪巧みをしたせいだと逆恨みしたのだ。





 原田学の葬儀の日、ゴールドスカルのペンダントヘッドを彼に渡したのはマネージャーだった。

マネージャーはMAIさんの反響を見たかったのだ。



ゴールドスカルのペンダントヘッドは、きっと木暮敦士との思い出に繋がる。

そうなれば、彼はMAIさんから離れるに違いないと踏んだのだ。

きっと二人は別れる。

マネージャーはそう思い込んでいた。





 でもマネージャーはもう一つミスをおかした。

俺に霊感があると知らないマネージャーは原田学の首にあのゴールドスカルのペンダントヘッドを掛けたのだ。



もっとも、いきなりのスキンヘッドに驚いた原田学が木暮の兄貴の携帯に電話するとは思ってもいなかったのだ。



折りさえあれば何時でも殺害しようと、マネージャーは原田学の後を付けた。

でも原田学が向かった先はバス停でも駅でもなかった。

原田学が着いた先はイワキ探偵事務所だったのだ。





 木暮の兄貴の携帯電話に残った映像。

パソコンに保存されていたボンドー原っぱが隠し撮りした映像。

それらを見比べている内に俺は何か違和感を覚えた。


俺はどうして彼女に会いたいと懇願した。





 「あのペンダントヘッドは私が買ってしまっておいた物に間違いありません」

MAIさんは俺の前でそう言った。

そんなことを聞きたくて刑事に伝言した訳ではない。

俺はただ、彼女を助けてやりたかったのだ。

俺の霊感全てを使って、木暮敦士がMAIさんに伝えたかったことを代弁したかったのだ。





 MAIさんは道端で男性の売っていたゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけた。

いや、魅入られたと言うのが正解かも知れない。

それは握り拳位い。

流れた胎児の大きさだったのだ。

全身が震える。

ゴールドスカルから目が離せない。

MAIさんはゴールドスカルが流れた胎児の生まれ変りのように感じていたのだ。





 MAIさんは遂にそれを愛しそうに掌に乗せたのだ。

我が子が戻ってきた。

MAIさんはそう思ったのだ。


「でも木暮には内緒にしておきたかったの。彼は私が妊娠した事実も知らなかったから……」


「それを木暮の兄貴が見つけて、プレゼントだと思ってしまったのか?」


「だと思います」

辛そうにMAIさんは言った。






ゴールドスカルのペンダントヘッドは流された胎児と同じ大きさだったのだ。

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