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不完全な完全犯罪・goldscull  作者: 四色美美
14/23

葬儀会場

瑞穂は木暮と原田学の葬儀会場へ向かう。

 ボンドー原っぱこと原田学の葬儀は、あの日みずほを見送った斎場だった。



――岩城(いわき)みずほが学校の屋上から飛び降り自殺したらしいよ――


そのメールは、みずほの携帯を奪った町田百合子が送ってきたものだった。

俺は事件の戒めとして、それを保存していた。



俺のあまりにも未熟な霊感のためにみずほを死に追いやった。

みずほの《死ね》と朱印されたコンパクトで覚醒したけど、それじゃ遅いんだ。

今度の原っぱの件もそうだ。

俺の中途半端な霊感が招いたことかも知れない。



(でも、あの場合俺に何が出来た?)

俺は又自分の行為を正当化させようと思っていた。



(そうだよな。結局叔父さんに話して、千穂を悪者にしてしまった。一番悪いのは俺なのに……。千穂を愛に気付かなかった俺なのに)





 俺はデパートの従業員用エレベーターの前で亡くなったロック歌手・木暮敦士の弟を訪ね一緒に葬儀会場へ行くことにした。

それに、今後の対策をしっかり練るためにも彼処へ行かなければならないと思ったのだ。





 俺が電話で連絡を入れていたからだろうか?

木暮は学生服を着て玄関前で待っていてくれた。



木暮は有美から聞いた雀と燕の兄弟の話をしてくれた。

雀は母親の死後すぐに飛んで行った。でも燕は呉服を誂えてから行ったそうだ。

だから父親が激怒して、雀を優遇したそうだ。



『だから、俺達も学生服で行こう』

その時そう決めたのだ。





 「お待たせ」



「遅いんぞ!」

まるで宮本武蔵でも迎え撃つ佐々木小次郎の如く、木暮は俺に迫ってきた。

俺はたじろいたが、兄貴の死の真相を一刻も早く知りたい木暮には無理のないことだと解っていた。



「ごめん。叔父さんの所に寄ってきたんだ」

俺は又言い訳をしていた。



「あっ、叔父さんは何て?」



「しっかり調べて来いってさ」



「そうだな、瑞穂にとっては仕事だったんだな」



「だってさ、先に調査費用を頂戴しちゃったんだよ。どうしても性急に遣ってくれって言われてな。何時もならしないのに」



「原っぱの奴、本当に切羽詰まっていたんだな。兄貴の最期と自分の姿が重なったのかも知れないな」

ポツンと木暮が言った。




 報道陣が見守る中、しめやかに原田学の葬儀が執り行われようとしていた。

俺は木暮と示し合わせて最後尾に並んでいた。



「おい瑞穂。原っぱの出身地って此処なのかな?」

木暮が不思議そうな顔をして聞いた。



そうなんだ。

何故か俺の地元の斎場が葬儀会場だったのだ。



「いやー知らないな。でも此処は、地元の人しか受け入れないと思うよ。だから、もしかしたら」



「殺された現場が此処だからかな?」

木暮はそっと耳元で囁いた。





 俺は共学。

木暮は男子校。

二人は地元のそれぞれの制服に身を包んでいた。



だからなのか?

二人に興味を持ったレポーターらしい人が近付いて来た。



「亡くなられた方とのご関係は?」

不意にマイクを向けられた。



(ワイドショー!?)


俺の頭の中に、取材されて応える人達の映像が浮かんでいた。



(何て言ったら使ってもらえるかな?)

そんなこと思い浮かべながら頭を振った。



俺は何時の間にかミーハー気分になっていたのだった。





 (凄いな。やはり人気者……ってゆうか、あんな殺された方をしたからかな)

そう思いつつ……



「えっ、ああ仕事関係です」

俺は咄嗟にそう答えた。

そう、確かに探偵の仕事だったのだ。



「ああ、解りました。何と言うグループですか?」


俺達をパフォーマーとでも思ったのか、それとも爆裂お遊戯隊の話でも聞き出したいのか……


レポーターはマイクを向けたまま暫く其処にいた。



でも俺はしゃべりたくはなかった。

木暮のことが知れたらまずいと思ったからだった。



もし木暮が木暮敦士の実の弟だと解ったら、きっとパニックになるかも知れないと思っていたからだった。

格好のネタを提供する羽目になるかも知れないからだ。

痛くもない腹でも触られたら、木暮は耐えられないと思ったのだ。





 ワイドショーに取り上げられても、この前みたいに中途半端で終わると思ったからだった。



第一、俺が感じた木暮の兄貴の意識。

あのゴールドスカルの情報も解らない内にむやみやたらの発言はまずいと思ったのだ。



俺がみずほのコンパクトから知り得た事実を信じてくれるはずもないとも思っていたのだ。





 「あれっ、君は磐城君じゃないか?」

そう言いながら近付いて来たのはみずほの事件の捜査をしていた刑事だった。



「あ、あの時の刑事さん」


俺は思わず言っていた。



でもそれは失言だった。

俺の言葉に興味を持ったのかレポーターが又近付いて来たのだった。



刑事は私服だった。

勿論聞き込みのためだ。

それを俺はバラしてしまったのだった。



(ヤバい……)

俺は恐る恐る報道陣の様子を伺った。

心なしに顔つきが変わったように思えた。

今にもマイクを向けようとしているのが解った。





 そんなレポーターから逃れるために、俺達は男子トイレに入った。

レポーターは女性だった。

だから此処まで入れない。

そう判断したのだ。



もっとも、みずほに一目惚れした運動会のトイレにはオバチャン達は男子用だって平気で入ってくるけどね。





 俺は誰も中に居ないことを確かめてから、イワキ探偵事務所に被害者が来たことを話した。



その時にゴールドスカルのペンダントヘッドをしていたことも話した。



それを受けて、刑事が話してくれた。



やはり、ゴールドスカルのペンダントヘッド付きチェーンは凶器になったようだ。

電車から降ろされた時に後ろから引っ張られ、ドアの隙間に挟まれた。

男性はそのまま引き摺られた。

チェーンがやや長目だったために勢い余って外れたらしい。





 でも刑事は知らなかったのだ。

何が凶器になったのかと言うことを。



「その大きさは?」

と、聞かれた。



「握り拳位だったかな?」

と俺は答えた。

そう、あのゴールドスカルのペンダントヘッドは確かに握り拳位だったかのだ。

エレベーターや電車の扉に挟まったら簡単には取れない位の大きさだったのだ。





 「俺はそのペンダントを見てないからはっきりとは言えないけど、やはりそれが凶器だったのかな。だったら兄貴もきっとそれに……」

木暮が辛そうに言った。



俺は慰め方を知らない。

みずほの時にはあんなに気遣ってもらったのに……



「兄貴って、貴方は原田学さんの関係者ですか?」



「いいえ。デパートのエレベーターの前で変死したロッカーの弟です」

その木暮の発言に刑事は驚いたようだった。



「ありがとう磐城君と木暮君」

刑事はそう言ってトイレを出て行った。

俺達は慌てて追い掛けた。




 「ちょっと待っていただけますか? すいません。まだ話は終わっていないのです。木暮の話を聞いてやってください」



「俺は、本当は兄貴の事件の真相が解ると思って此処に来ました」

やっと追い付いた木暮は言った。

俺は現役の高校サッカーの選手だから駆け足だけは速かったのだ。



「あの事件は東京のデパートだったから内容は良く解らないんだ。でも出身地が此処だったから証拠確認の要請とかあって、調べたことがあったよ」



「どんな内容ですか?」



「いや、漏洩はマズイ。だから聞かないでくれ」



「そうですよね。でも一つだけ教えてください。原田学さんの出身も此処ですか?」


俺の質問に刑事は頷いた。



「お母さんが住んでいるそうだ」



「お母さんが……」

俺達は言葉を失った。

まさか原田学の出身地が此処だったとは……



「あっそうだ。確か電話で、俺のことを金魚の糞だとか言ったな」



「金魚の糞?」



「突然兄貴の携帯が鳴って出た時、原田さんは兄貴が出たと思ったようです。そこで『はい。俺は木暮敦士の弟の悠哉です』と言いました。原田さんは『えっ、悠哉? もしかしたら、木暮の後を金魚の糞みたいに何時もくっ着いていた悠哉か?』って言ったのです』



「木暮よー、それを早く言ってくれよ」

俺は苦笑いをした。



「ごめん。すっかり忘れていた」

木暮は頭を掻いた。





 「そうか、だったらもっと可哀想だな原田学さんのお母さん……」



「磐城君は優しいな。そうなんだよ。『帰っていたのなら何で連絡よこさないんだ』って遺体に取りすがっていたよ」



「解る気がします。俺が見たあのチェーンが……」



「ゴールドスカルって言ってたね。おそらくそれだろう。ドアに挟まって首を吊られたんだな。鎖の痕が付いていたそうだよ」



「俺の兄貴はその鎖で首を跳ねられた。でも原田さんが違っていて良かった。あんな惨たらしい物を見るのは俺達家族だけで充分だ」

怒りに震え、丸めた拳を手で包みながら木暮は言った。



「すいません刑事さん。何かあったら叔父さんの事務所に連絡ください。まだ、そのゴールドスカルは見つかっていないのでしょう? 何か悪い予感がしてならないのです」



「刑事さん、コイツ凄いんだよ。霊感で見えるんだってさ」



「シッ!!」

俺は木暮の唇に人差し指を立てた。




 「あのペンダントヘッド付きチェーンはきっと凶器なんです。あれを手にした犯人は、又人を殺すかも知れません。だから、何があっても未然に防ぎたいのです。ソイツは木暮の兄貴を冒涜してる。俺が見た限り、あれには魂が憑依しているのです!」

俺は力説した。

刑事が信じてくれないかも知れないけど、霊感で見えることも打ち開けていた。



「そう言えば君の高校の第二の事件の時、そんな話を聞いた覚えがある。君の力が事件を解決したそうだね?」



「いや、あれは違います。俺が録音したテープを聴いたから、千穂は死を選んだのだと思います」

ドキンとした。

俺はこともあろうか、自分が死に追いやった千穂の名を出していたからだ。



「すいません。今の話忘れてください」



「友達思いなんだね。君とその人ことは磐城探偵からも聞いているよ」



「えっ、叔父さんにですか?」



「君が受けたショックを気にしていたな。二つの事件を招いたのは自分だって思っているから、そっとしておいてくれってさ」


刑事の話を聞いてる内に叔父の事務所にある小さな風呂を思い出していた。

みずほの死があまりにもショック過ぎて泣けなかった俺が……

妹みたいな千穂が関与していたと知った日に、涙が止まらなくなった。



あの後俺は手持ちのアルバムを開けてみた。

そこに写る千穂の瞳は、何時も真っ直ぐに俺に注がれていた。



(俺の傍には何時も千穂がいた……何時も……)

その気持ちに気付くことなく、みずほとの愛に溺れた俺。

俺を愛したために……

俺が愛さなかったために……

傷付き、そして命を散らした千穂。

俺が差し出した手を拒んだ時の表情が、脳裏を離れない。

何時も明るかった千穂を変えたのは、紛れもなく俺だったのだ。



「千穂を死に追いやってしまった俺を、寛大な両親は許してくれのです。でも腸は煮えくり返っているはずだった。千穂は一人娘だったから目に入れても痛くないほど溺愛していたのに」

俺は又千穂の名前を出していた。



「そうだ。これは言って良いだろう。色々と調べた結果、木暮君のお兄さんと原田学は、君達のように保育園からの親友だ。そうだ」



「俺達が親友だと良く解ったね」



「何言ってるんだ。二人がお互いを思い合う様こそ親友と呼べるんじゃないのかな」

刑事は嬉しいことを言ってくれた。








瑞穂は刑事にゴールドスカルのペンダントヘッドのことを話していた。

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