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問題児、悪者をやっつける


少女たちが監禁されているのは、古びたレンガ造りの建物の地下だった。

躊躇なく建物の中に足を踏み入れたラクリアは、早速地下へと続く階段を発見する。

見張りもいないなんて随分と無防備だなと思いながら階段を下り、そこに広がる景色を見てラクリアはなるほどと納得する。


そこには幼気な少女たちをいたぶり、慰み者にせんとする男たちの姿があった。


ラクリアはアホの子だけど知能は同年代の子どもよりも遥かに高い。故に、これがどういう状況なのかも瞬時に理解することができた。


「ターニャ、ちょっとうしろむいててね」

「え、あ、はい!」


小声でターニャに後ろを向いているよう指示し、ラクリアは前を見据える。

男たちは出入口に背を向けているせいか、未だにラクリアとターニャに気づいていない。

しかし少女達からはバッチリとその小さな侵入者達が見えていた。


縋るような瞳、落胆したような表情、そして、年長の少女からは早く逃げなさいとでも言うような厳しい視線。


それらが一斉にラクリアに飛んでくる。

それでもラクリアは動じることなく、トコトコと少女達に近寄る。

男たちがラクリアに気づいたのは、ラクリアが彼らの真後ろに立った時だった。


『あ?なんだこのガ………』


キ、までは言えなかった。


その前にラクリアがその男の身体を吹っ飛ばしたから。


誇張でもなんでもない。

ラクリアが人差し指で男の額を弾いただけでその身体が宙を飛んだのだ。


『……は?』


残った男達はみな固まって動かない。

そりゃ目の前で仲間の身体が物凄い勢いで壁にめり込むのを見て、しかもそれをやったと思われるのがまだ幼い少女ときたら戸惑わない方がおかしいだろう。


そして、戸惑っているのは男達だけではなかった。

監禁されていた少女達も呆気に取られてラクリアを見上げている。


「もうだいじょうぶだよ」


ラクリアは驚いて目を丸くしている彼女達にニッコリと微笑んで言った。

それは一聞すると幼子の無責任な一言のようにも聞こえたが、ラクリアの圧倒的な力を目の当たりにした少女達にはなによりも心強い言葉だった。


「じゃあさくっとやります。いたいけどがまんしてね」

『なっ!』


ラクリアはその言葉通り、サクサクと男達を壁にめり込ませていく。

逃げる者も腰を抜かしている者も容赦なく、だ。

時にはデコピンで、時には腹パンチで、臨機応変に。


そしてあっという間に四面の壁には不気味なオブジェが誕生した。


「ふぅ…」


やり切った顔で大きく息をついたラクリアに、もういいかなと頃合いを見計らっていたターニャが駆け寄った。


「すごいです!ラクリアさまはほんとうにつよくてかっこいいです!」


後ろを向いていた為に詳しいことは分かっていないターニャだったが、この惨状を引き起こしたのがラクリアであるということだけはよく分かっていた。

だから淀みない尊敬の眼差しをラクリアに向けるターニャ。

それにデレデレしながら応えるラクリアだったが、背中に刺さる無数の視線にすぐに意識が引き戻される。


振り返ると、囚われていた少女たちが信じられないものを見たかのように目を見開いてラクリアを見つめていた。


「あ、あなた何者?」


そのうちの1人が皆を代表してラクリアに問う。


その少女はきっと監禁されていた者達の中では最年長なのだろう。

少女と女性の狭間の危うい色気を醸し出す彼女は、他の子たちと比べ明らかに肌の露出具合が違かった。


ラクリアはその質問には答えず、無造作に空を掴む。すると、一瞬のうちにラクリアの手にはマリアから譲り受けた彼女の私服(ラクリアが執拗に服の上から弄っていた為一部ヨレヨレになった)が握られていた。


「これ、来て」


ラクリアがそれを差し出すと、少女は驚いた顔でラクリアと上品な服を見比べた。


「…今の収納魔法?」

「しってるの?」


今度はラクリアが驚く番だった。

この国では魔法を使えるものは両手両足の指の数よりも少ない。

そのため平民に至っては魔法という概念すら知らない者が多いのだ。

そんな中で魔法を、しかもその種類まで当てるなんて、どうやらこの少女は只者ではないなと推測するラクリア。


「ええ、少し勉強を…って今はそんな呑気に話してる場合じゃなかったわね。ご好意感謝するわ」


そう言って少女は服を受け取ると、身に付けている服の上にそれを羽織る。

それを見届け、ラクリアは再度右手を振って人数分の服を取り出す。


「…あなた、もしかして…いえ、もしかしなくても貴族ね」


目の前に突如現れた明らかに平民の着るものではない上品な服を見て、少女は思いっきり顔を引きつらせる。

それでも口調を変えない少女にラクリアは素直に好感を持った。


「すきなのきて。そのふくじゃそとあるけないから」


ラクリアは部屋を見回して少女たちに声をかけるが、彼女たちはなかなか動こうとしない。

まあいきなり貴族の令嬢が着るような服を渡されてテキパキ着替えられる少女がいたらその方が驚きだ。


最終的にしびれを切らしたラクリアが強引に服を脱がせようとして、少女たちは慌てて着替え始めたのだった。

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