問題児の姉、誤解される
今回は三姉妹の真ん中、ノーリア視点です
ラクリアがターニャという天使と戯れていた頃、ファンダーソン伯爵家の次女、ノーリアは姉の後を追うように学園へと急いでいた。
(あの馬鹿のせいでいつか寝不足で倒れそうだ)
手のかかる妹を思い浮かべ、大きな溜息をつくノーリア。
飄々としているようで、ファンダーソン伯爵家のただ1人の常識人は常に気苦労が絶えないのだった。
マリアとノーリアの通う学園は領邸から馬車で1時間ほどの場所にある。
王国内にある5つの学園の内の1つ、王立ウェスト学園。それがノーリアたちの通う学園だった。
ちなみに王都にあるのがセントラル学園、北部にあるのがノース学園、東部にあるのがイースト学園、南部にあるのがサウス学園である。実に適当で分かりやすい学園名だった。
比較的まともな人間の多い東西南北とは違い、セントラルはかなり選民思想が強く、癖のある貴族のご子息ご令嬢が多い。
来月に控えた五学園合同パーティーがもう憂鬱なノーリアだった。
授業開始時刻ギリギリに教室に滑り込み、1限目の歴史の授業を受け終えたノーリアの元に王都にいる父、ファンダーソン伯爵から手紙が届いた。
領邸に届けるならまだしも、学園に届けるということは相当急ぎの用事なのだろうか。
不安に思いながら手紙を読むノーリア。
そして、その顔は段々と険しいものになっていく。
手紙の内容は、イーリア王国の周辺国がどうも怪しい動きをしているということ。そして、ファンダーソン伯爵領に見慣れない者たちの姿があることの2つであった。
(黒目で平坦な顔立ちか…と言ったらあの国しか思いつかないけど)
見慣れない者の特徴として手紙に書かれていた内容を反芻しながら、ノーリアはとある周辺国を思い浮かべる。
それはイーリア王国の東に位置する、今なお“鎖国中”の帝国だった。
そこの帝国民は皆一様に目と髪が黒く、男女問わずメリハリのない顔立ちをしている。
そして、実態のよく分かっていない“オンミョウドウ”という魔術紛いのものを操る者がいるらしい。
(でも何で帝国の奴らがファンダーソン伯爵領にいるんだ?)
ファンダーソン伯爵領はイーリア王国の“西”に位置する領土だ。
それに対し、帝国はイーリア王国の“東”に隣接する国である。
何故、帝国から最も遠い我が領土に帝国の者がいるのか。
(姉様にも報告しなきゃ)
いくら考えても答えが出なかったので、ラクリアは同じ学園に通うマリアの元へ向かったのだが……
「……何をしていらっしゃるんですか?」
途中通りすがった保健室で怪しい声が聞こえるもんだから扉を開けてみると、
『あ、の、ノーリアっ…これは違うの…!』
何故か姉のマリアが親友のシーナをベッドに押し倒していた。
シーナの顔がマリアのけしからん乳にめり込んでいるところを見るに、押し倒すというより押しつぶすと言ったほうが正しいのかもしれない。
「…お、お邪魔しました」
ノーリアは顔を赤くしながら退出した。
そして来た道を全力で引き返した。
その後ろからマリアの悲痛な叫び声がしているなど露知らず。
『誤解なのよ〜…!』
真相は、腰が立たなくなってしまったマリアが事故でシーナの身体を押しつぶしたまま元に戻れなくなってしまった…というもの。
大好きな人のおっぱいに埋もれて救出までの時間を過ごしたシーナにとっては天国だったかもしれない。