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14.問題児、美女になる

とある少女視点です

スラム街の外れの細路地に少女はいた。

年の頃は18ほど。細身の身体に質素な服を纏い、優しげな垂れ目とぽってりとした唇が特徴的な美しい少女だった。


しかし少女は今、その美しい顔を恐怖と怒りで強ばらせている。

その原因は目の前にいる気持ち悪い笑みを浮かべる小太りな男にあった。男は王都に店を構えるそこそこ有名な商会の1人息子で、商売のためファンダーソン領を訪れていた。

そこで男はこの美しい少女を見つけ、関係を迫っているところだった。


「何で私があなたの愛人になんなきゃいけないのよ!」

「ふん、僕はあのエジタ商会を一人息子だぞ。そんな僕がわざわざお前を愛人にしてやると言ってるんだ、光栄に思え!」

「あなたの愛人になるなんて死んでもごめんだわ!」

「なにをっ」


少女の言葉に激高した男が思いっきり右手を振りかぶる。

思わず目を瞑った少女だったが、予想していた衝撃はいつまで経っても訪れることはなかった。


「…?」


恐る恐る目を開けた少女の視界に映ったのは、腕を振りかぶったまま固まっている男の姿だった。


「な、なんだ!身体が動かないぞ!?」


男は必死に藻掻くが、まるで金縛りにあったかのようにその身体は動かない。


「無駄だよ」


そんな男に不意に声が掛けられた。その声はこの場に似つかわない可憐な女性の声だった。

少女が声のした方に視線をやると、そこに立っていたのは……


(きれい…)


少女は自分のおかれた状況も忘れてぼうっと見惚れてしまう。

男の背後に立っていたのは、この世のものとは思えないほどの魅惑的な女性だった。

年の頃は20ほどで、緩やかなウェーブのかかった金髪と宝石のように美しい金色の瞳が彼女の美しさを引き立てている。そして、背が低いわけではない少女も見上げてしまうほど高身長な、その美女は出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるという、世の女性が嫉妬さえ忘れてしまうほどの完璧なプロポーションを誇っていた。


その女性はツカツカと男と少女の元へ歩み寄ると、徐にパチンと指を鳴らした。

その瞬間、変な格好で固まっていた男がつんのめって地面に倒れる。


「お、おい何し…」


顔を真っ赤にして抗議の声を上げかけた男は自分の真後ろに立つ美女を目にした途端、呆けた顔をして言葉を切る。


「ねえ、嫌がる女の子を無理矢理愛人にしようとしてるのは、おじさん?」


そんな男に美女は問いかける。

どこか子どもっぽい喋り方が彼女の洗練された容姿と合致せず、少女は微かに首を傾げた。


「え、あ、ぼ、僕は…」


先ほどまでの威勢はどこに行ったのか、男はどもりながら挙動不審げに美女の顔をちらちら見つめる。

なにやら熱っぽい視線に美女は嫌そうに顔を顰めて言った。


「あのさ、その子私のだから。手出したら怒るよ」

「は…?何を言って…」


美女の言葉に男は困惑の表情を浮かべる。それは少女も一緒だった。

いきなり現れて自分を救ってくれた見ず知らずの人が何故か自分を私のものと言い切ったのだ、混乱しない訳がない。


「ちょっとラクリア、その発言はどうかと思うわ…」


困惑する少女と男に新たな人物の声が掛けられる。

声のした方を見ると、そこには息を切らしつつこちらに歩いてくる、これまた美しい少女がいた。

年の頃は15ほど、緑がかった猫目にポニーテールにした栗色の髪が特徴的な美少女だ。


「もう、遅いよリンディー、私待ちくたびれちゃった」

「貴女がいきなり走り出すからでしょ!!馬も吃驚の走りっぷりについて行ける人がいたら教えて欲しいわよ」

「あははごめーん」

「ここまで反省の見えない謝罪は初めてだわ」


ケラケラ笑う美女にうんざりとした表情を向ける美少女。


「その格好で子どもっぽい笑い方しないで、気色悪いわ」

「え、ひどい…」


美少女の言葉にショックを受けたような顔をし、地面に両手を付く美女。

二人はどういう関係なんだろうと本気で悩む少女の耳に不意に聞き覚えのある声がした。


「ふたりとも、じゃま」

「ラルがこまってる」

「え…この声…」


それは2,3週間前に姿を消し、死んだか攫われたかと思っていた少女、ラルの可愛い妹のような存在の幼子たちの声だった。


「チナ!ラナ!」


男と美女美少女の間を走り抜け、特徴的な赤と白の髪を探す。

それはすぐに見つかった。


2人はあの日と変わらず元気な姿でラルの前に立っていた。

自分の知っている2人よりも顔色がよく見えるのは気のせいだろうか、とラルは思う。


「心配したんだから!」


そしてラルはチナとラナに駆け寄ると、腰をかがめて2人を抱きしめた。

柔らかくてどこか乳臭い匂いは変わらない。


「ごめん」

「ごめん」


2人は相変わらずの無表情で呟くと、どこか躊躇いがちにラルの背中に腕を回す。

そして堰が切れたかのように突然わんわんと泣き出して赤子のようにラルに縋った。

ラルはいつも無表情で感情の起伏の乏しい2人が見せた子どもらしい泣き顔に最初は戸惑ったような顔をしていたが、すぐに優しく2人を抱きしめて涙を拭ってあげる。

その顔はおよそ18の少女らしからぬ、どこか母親のような慈愛と強さに満ちあふれていた。


ラクリア、大人になっちゃいました笑



読んでくださってありがとうございます。

まだ15部分目で更新も遅いですが、面白いと感じたら評価していただけると励みになります╰(*´︶`*)╯♡

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