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12.問題児、おっぱいを揉む


「んん…」


耳元で小さなうめき声がした。と同時にギュッと柔らかいものが顔に押し付けられ、ラクリアは息苦しさで目を覚ます。


確か昨日は約束通りリンディが抱き枕になってくれたはず…と考えたところでラクリアは顔面に当たる柔らかいものの正体に気づいた。

それは彼女の大好物、おつぱいだった。


幸せそうに笑みを浮かべながら喜び勇んで顔面をリンディの胸に押し付けるラクリア。

程よい弾力と甘い匂いにラクリアはあっという間に虜になった。

服の上からはあまり分からないが、どうやらリンディは着痩せするタイプらしい。


「ん…」


ラクリアの小さな手がむにゅむにゅとリンディの2つの膨らみを遠慮なく揉みしだく。


「っぁ…」


ラクリアの指がその丘の頂きに触れた時、リンディが切なげに顔をしかめ、甘い声を上げた。


(えっちなこえ…)


まるで夜な夜な(隣領の伯爵夫人が滞在している間限定で)母の部屋から聞こえてくるソレみたいだとラクリアは思う。


そこそこ際どい行為をしているにもかかわらず一向に起きる気配のないリンディを前に、ラクリアの奇行は次第にエスカレートしていく。


服の上からでも分かる小さな盛り上がりをツンツンと突いてみたり。

まるで赤ん坊のようにチューチューと吸ってみたり。

その度にリンディの口からは艶かしい吐息と喘ぎ声が漏れる。


永遠に続くかのように思われた至福の時間は突如耳元で響いた戸惑ったような声によって終わりを迎えた。


「へっ、な、な、っ」


その変な声につられてラクリアが顔を上げると、目を大きく見開いて口をわなわなさせているリンディと目が合った。


「な、なにしてんのよー!!ばかあぁぁ!」

「ぶふぉッ」


リンディの右手から放たれた一筋の暴風がラクリアのお腹にクリーンヒットした。




***




「…あの、流石にやりすぎたわね…ごめんなさい」


気まずげに目をそらすリンディ。その正面には床に突っ伏してぴくりともしないラクリアがいた。

端から見れば殺人現場にも見えなくもない物騒な場面だが、辛うじてラクリアの指先が弱々しく動いていることから生存は確認される。


「…ふつうにやりすぎ…わたしじゃなかったらしんでた」

「そうよね…むしろ塵一つ残らないぐらいの威力でぶっ放したんだけど…」

「おに!!」


もうリンディに粗相をするのはやめようとラクリアは心に誓った。




そんなこんなでなかなか物騒な一日の始まりだったわけだが、そこからはいつもと代わり映えのしない穏やかな(ラクリアの主観による)時間が流れた。ただ一つ変化があったとしたら生活の中にリンディがいるということだった。


「ねえリンディ」


一通り使用人にちょっかいをかけ終え、ラクリアは彼女のベッドで寝そべって本を呼んでいるリンディの元へ駆け寄る。


「なんのほんよんでるの?」


ラクリアはよいしょとベッドによじ登ると、リンディの手元をのぞき込む。


「これ?これは貴女のお母様に借りた魔法学の本よ。大昔の本だけどなかなか面白くて」

「へー、どんなことがかかれてるの?」

「あら、興味あるの?」


リンディは意外そうに目を丸くしてラクリアに視線をやる。

その視線に並々ならぬ悪意を感じたラクリアはジト目で見返した。


「…わたしがほんよまないとおもってばかにしてる?」

「読みそうにないと思ってるから言ってるんでしょ。第一こんな難しい本スラスラ読んでる5歳児のほうが怖いわよ」


なるほど、確かに…とラクリアは思わず納得してしまった。

自分が規格外な存在であることは理解しているつもりでいたが、まだ自己理解が十分ではなかったのかもしれない。



「まあ貴女をそこら辺にいる普通の可愛らしい5歳児だと思う人のほうが少ないだろうけど」

「それ、こんなにかわいいようじょをまえにいうことばじゃない」

「自分で可愛いとか言ってるし…ほら、読んであげるからもっと近くにいらっしゃい」



うわぁ…みたいな顔をした後、リンディは腕を伸ばしてラクリアの身体を抱き寄せる。

つんつんした見た目からは想像できないが案外面倒見の良いリンディは、すでにラクリアの中で実の姉よりも姉らしいことをしてくれる存在になっていた。

そのことでリンディがマリアからライバル視されるのは近い将来の話しだった。



「ここに書かれているのは主にイーリア王国と魔力持ち達についてね。魔法学についてと言うより魔法学の歴史についてといった感じかしら」

「ふーん、じゃあおじいさまのこともかいてある?」

「貴女のお爺様?ああ、あの“炎使いの魔法士ね”。あるわよ、ほらここ」



リンディが指さした箇所には、イーリア王国で知らない人はいないとまで言われた故エドマン・ヴァン・ファンダーソン、ラクリアの祖父の偉業について書かれていた。


エドマンは当時のイーリア王国随一と名高い魔法士で、その名の通り、火の元素を使った攻撃魔法を得意としていた。

そんな彼の人間離れした逸話は現代に数多く存在する。

その中でも特に有名なのは、イーリア王国に隣国のバープト王国が攻め込んできたときのものである。エドマンは侵攻してきたバープト王国の兵士100人を自身は傷一つ負わずに一度に退けたのだ。


「兵士100人を相手取って無傷とか…どこのおとぎ話よ」


貴女のお爺様ほんとうに人間?とリンディは呆れた表情で言う。


いくら魔法士と言っても魔力に限界はあるし、魔法は身かけ以上の攻撃性はないと言われている。持っている魔力を全て使った渾身の攻撃でも一度に倒せる相手はせいぜい10人前後である。まあ10人でもすごいから魔法士は重宝されている訳なのだが。

そう考えると、エドマンが王国随一の魔法士と呼ばれた訳も分かる。分かるのだが…




(1,2万は余裕だと思うけどな…)


ラクリアはそう思わずにはいられなかった。

別に彼女はうぬぼれている訳ではない。

ただ純粋に自分の能力を客観的に見つめ、推測して言っているのだ。



実際、自分のちょっとした力が下手をしたら人1人ぐらい跡形もなく消し去ることができるのをラクリアは知っている。

神という圧倒的存在から能力を分け与えられているのだ、人智を超えた異能を持っていることはある意味当たり前のことだった。


「貴女のお爺様の時代に伯爵位を与えられたって書いてあるけど、ファンダーソン伯爵家って意外と最近できたのね」


もっと前からあったのかと思ったというリンディの声でラクリアは意識を現実に戻す。


「うん、それまではししゃくだったんだって」

「ああ…それでも貴族は貴族だったのね…」


なにやらげっそりしているリンディを不思議そうに見つめながら、ラクリアはもぞもぞと身体を起こしてぴょんとベッドから飛び降りた。


「ねえねえ、ターニャのところいこう!」

「あら、もう飽きたの?お子さまね」


口では馬鹿にしながらもリンディは柔らかな眼差しでラクリアを見つめ、よいしょとベッドから身体を起こした。

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