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11.問題児、神様に会う


その夜、ラクリアは不思議な夢を見た。


それはすごくスケベな表情をした女の人が背中から真っ白な羽の生えた綺麗な女の人の胸に顔を埋めてハアハアしている…というものだった。


あ、すごい親近感…とラクリアはスケベな方の女の人を見て思う。


『ふむ、とても揉み心地のある胸じゃな、素晴らしいぞ』

『はあ…』


未だ胸に顔を埋めながら偉そうに発言するスケベに、埋められている方の女の人は額に手を当てて大きなため息をつきながら言う。


『良い加減にしないと殴りますよ、コンコルディア様』

『良いではないか、減るものではあるまいし』


コンコルディアと呼ばれた女性は至福の表情でおっぱいを揉みしだく。


『そういう問題ではなっ…ぁんっ!ちょっ、そこはダメです!!』

『淫らな声を出しおって。誘っておるのか』

『貴女様が変なところ触るからでしょう!』


パァンと頬を叩く良い音がしておっぱいを揉みしだいていた方の女性の身体が宙を浮く。

ビンタだけで体が吹っ飛ぶとは恐ろしい馬鹿力だ。

それでも彼女は何事もなかったかのように着地すると、非難の目で頬を叩いた女性を振り返った。


『ちと我の扱いがぞんざい過ぎんか、お主』

『コンコルディア様の行動が原因でしょう』

『全く、天使のくせに生意気なやつじゃの』

『神様のくせにどうしようもない駄目女神ですね貴女様は』


ぐぬぬぬ…と睨めっこをする良い齢をした大人たち。

何をやっているんだろうと素直に疑問に思うラクリア。


『まあ良い。お主に我の崇高さは伝わらぬようじゃ、天使だからの』

『ええ残念ながら伝わりませんね、駄女神様の崇高さ(笑)は』

『(笑)とはなんじゃ(笑)とは』


一向に終わらぬ口上バトルにラクリアは早速飽き始める。

何で自分の夢でこんなくだらないものを見なきゃいけないのか。

ターニャとイチャイチャしてる夢が見たかったのに…。

プワプワと宙に浮きながらラクリアは2人を見下ろす。

すると、


「まあ良い。今は幼子が見ておるから見苦しい争いは止めじゃ」

「っ!」


コンコルディアと呼ばれた女性が不意にラクリアの方を見上げた。

バッチリ目が合う。


「あの時の赤子か。ふむ、あれから5年が経ったのだな」

「…?」

「覚えていないのも致し方ない。あの時はまだお主は生まれたての赤子じゃったからの」

「…わたしのこと、しってるの?」


訊いてからラクリアは不思議に思った。

何故なら自分がその問いの答えを知っているような気がしたから。


私はこの人を知っている。


「コンコルディアさま…」


するりと、ラクリアの口からその人の御名が漏れた。


「っ!」


その名を口にした途端、膨大な量の情報が脳に流れ込んできて思わず頭を抱える。

目の前にいるのがコンコルディアという女神であること、そして自分が共鳴者という特殊な存在であることをラクリアは瞬時に悟った。


「ふむ、自分が何者であるか理解したのだな」


その様子を見て、コンコルディアは満足げに頷く。


「お主もようやっと我と意思の疎通を取れる程度の力を手に入れたのじゃな。まあ齢5つでこれだけはっきりと通信ができるのも驚きじゃが」


共鳴者とは神の一部のようなものである。

神の異能や恩恵を一身に受ける共鳴者だが、その力は個々によって差がある。

例えば、ラクリアの一代前の共鳴者は歴代の中でもかなり力の強い者だった。

しかし、ラクリアはそれを軽く凌駕するほどの力をその小さな体に宿しているのだ。


「身体は小さくとも能力は我が子らの中で随一か。頼もしい限りじゃ。お主もそう思うじゃろ?」

「ええ、ラクリア様は歴代の共鳴者様の中でも抜きんでたものをお持ちのようですね」


コンコルディアに同意を求められた真っ白な羽を背中に生やした女性も大きく頷く。


ちなみにこの女性はコンコルディアに仕える天使の1人である。本来天使とは神という絶対的な存在に仕える忠実な僕であるのだが、このコンコルディア付きの天使は平気で主に手を上げるツワモノである。



「ラクリアよ、地上での生活はどうじゃ?辛いことはないか?よもや我が子に害を与えるような大馬鹿者はおらぬじゃろうが」

「いえコンコルディア様。先代の共鳴者様が亡くなられてから人間の世界では約500年が経過してます。既に共鳴者という存在を知っている者は皆無でしょう」


コンコルディアの問いかけに答えたのはラクリアではなく天使の方だった。

その言葉にコンコルディアはやや顔を顰める。


「確かにそうじゃったの。我が子の存在を忘れるとはなんとも罰当たりな人間どもじゃ。ラクリアよ、万が一にもお主を害するものがおって自分1人では対処できぬ時は我を頼るが良い。我はいつでもお主の味方じゃ」


コンコルディアの力強い言葉と優しい眼差しにラクリアは純粋に嬉しく思う。

ラクリアにとって目の前の女神は自分のもう1人の親にも等しい存在だ。

自分が如何に人間離れした強大な力を持っていようと、関係なしに庇護してくれる存在はラクリアにとって心地よいものだった。


「さて、そろそろ時間じゃ。戻りなさい」


お礼を言うと、コンコルディアは穏やかに微笑んで口を開いた。


「…もっと、おはなししたいです」

「お主は人間の幼子の身体ゆえ我と夢の中で会話するだけで相当の気力を消耗するのじゃよ」


だから今回はこれで終いじゃと、不満げなラクリアに諭すように伝えるコンコルディア。


「またあえますか?」

「お主が望むなら必ず」


眉を下げて問うラクリアにコンコルディアは満面の笑みで答えた。

それと同時に彼女の姿が段々とボヤけはじめる。

ふっと意識を失うようにラクリアの視界が黒く染まった。





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