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無限ループする異世界  作者: end&
3/3

2・とある異世界の一方通行

 (このタイトル、汎用性高い)

 異世界モノとして『十二国記』シリーズ(小野不由美著)を上げる人もいるかもしれない。

 名作である。私も好きだ。

 だが、「異世界」と分類しない読者もいるだろう。

 というのも、一方通行なのだ。

 十二国記シリーズと同じ舞台で、一番最初に書かれた『魔性の子』が、シリーズ第一巻となるのだろうが、ここでは『月の影 影の海』から語ろうと思う。

 同アニメ「十二国記」も、『月の影 影の海』から始まる。

 (アニメでは、小説では登場しない二人のキャラクターも一緒に異世界に送られるが、アニメではキーパーソン的な役割を担っている。また、原作の流れにもあまり干渉しないという点ですごい作品だ)

 主人公の女子高生は、現実世界、今の生活になじめずにいた。

 それは思春期独特のもののように思えたが、ある日学校に現れた謎の男と妖怪にさらわれ、別の世界へ。

 別の世界と言っても、そちらの世界でも、「日本」という国は知られているらしく、蓬莱と呼ばれていた。

 そして、その蓬莱からやってくる人間は海から来る者、「海客(かいきゃく)」と呼ばれていた。

 異世界から人間が来ることは珍しくないのだという。

 ならば、帰る方法もあるかもしれないと、主人公は人伝に情報を集め、元の世界に帰ろうとする。


 元の世界に変える方法を模索する異世界モノは現在絶滅危惧種なのではないだろうか?

 私が知る限りでは、「十二国記」しか思い浮かばない。

 数時間考えた程度なので、ただ失念しているだけかもしれない。

 ネタバレになってしまうのだが――タイトルがすでにネタバレ――主人公は元の世界には戻らない。一方通行なのだ。

 主人公が本来生まれるべきはこの世界であり、手違いで日本に生まれてしまった。だから、日本が、彼女にとって異世界だったのだ。

 他にもこのように生まれる場所を間違った登場人物が現れる。

 生まれた世界と今いる世界を比べ、己はどうあるべきなのか、国をどうしていくべきなのか考える、深い物語なのだ。


 従来の異世界モノと違う点はやはり、一方通行であること、元の世界には戻れないということであり、生まれ育った世界と別れなければならないということだ。

 前章で上げた、「天空のエスカフローネ」で、主人公の少女は最終的に異世界の少年に恋をする。だが、元の世界に戻って、それぞれの人生を歩むことになる。

 「天空のエスカフローネ」の場合は、世界ではなく、人との別れの物語なのだ。

 

 さて、人とは元々いた世界に、今ある生活と、簡単に別れることができるのだろうか?

 たとえば、社会人になる、一人暮らしを始める。

 これらもある種の異世界転移ではないだろうか? 今までとは違う生活、場所での生活。今の言葉を借りるなら「ゆる異世界」である。

 その「ゆる異世界」暮らしで実家や家族、元居た場所が恋しくならないだろうか?


 十二国記の場合、日本では居心地が悪かった、居場所がなかった、悲惨な目に合った、というキャラクタが多いので、たまに生まれた場所のことは思い出しても戻りたいとは思わない、というのが常である。

 そこが――「異世界」と分類しない読者もいるだろう――といった理由である。

 引っ越し先が終の棲家というわけだ。


 十二国記のような、一方通行な異世界譚、真っ先に思い浮かんだのが、アニメ版「キテレツ大百科」(藤子・F・不二雄/フジテレビ)の最終回である。

 未来で、主人公に造られたロボット「コロ助」。その設計図は、主人公の先祖が残したものだった。

 物語は、「ドラえもん」と若干似ている。

 小学生ながらに、設計図はあったといえど、タイムマシンを作ってみたり。けっこうぶっ飛びである。

 その最終回、先祖を守るために過去へと飛んだ主人公と友人たち。

 そこで、コロ助はその時代――江戸時代に残り、主人公の先祖と暮らすと決断する。

 タイムトラベルは異世界移動と呼べるかどうかについては、機会があったら書いてみようと思っている。

 現状、未来で生まれたコロ助が、過去に残るというのは、異世界に残るという選択に他ならないと思っている。

 最終回以前にも、何度か主人公たちは過去に飛び、ご先祖様には会っているのだ。

 なぜこの期に及んで残るという選択をしたのか? それは先祖から伝えられた、コロ助の設計秘話のせいだったかもしれない。

 過去で設計されて、未来で造られたコロ助の居場所、立ち位置とはどこだったのだろうか?

 最後に主人公はコロ助に「さよならは言わないよ」と告げる。

 それは、「また会おう」という言葉にも置き換えることができるのではないだろうか?

 一方通行の異世界。

 ふざけたタイトルで書き始めたのに、物語の人物にとってどちらが在るべき場所なのか。深く考えさせられた。


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