第37話 カルシウムが不足?
タイチ達は魔王ガデムズを追う
ジェネラルオークの群れを天音が殲滅した事で、隠れていた他の勇者達もレベルが上がった。タイチは勇者lv10、尹吹・ 聖蘭はlv16である。
チーム天音のメンバーもlv-upした。崩とリリアスは経験値その物が入っていないのでは?と言っていた。
作戦を練りなおして、知能の高そうな敵で無ければ全員で倒して行こうという話になり、城から南西の方角で5km程進んだ。途中カエル魔人の集団とバッタ魔人の集団に襲われたが、あっさりと撃退した。そして今、木影からそっと前方を伺っている。居るのはローブ姿の集団。元、崩の部下たちである。
「天音、俺が行くよ。」タイチはそう切り出した。相手は魔導士、魔法は一旦撃ったら戻すことはできない。手加減には不向きだと訴える。
(それに、俺の方が防御やHPが高い。)
実際、勇者の中では天音が最高レベルだったが、彼女は勇者補正以外のステータスが殆ど延びておらず、転職したlv10のタイチに大きく水を開けられていた。
「ふんっ変わってあげるわ、その代わり魔王に止めを刺すのは譲れないわ」
合流してからタイチは「魔王を倒しても、イコール元の世界に戻れる事になる訳では無い」と何度も天音に説明したのだが、そこだけは信じて貰えなかったのだ。
「タイチ殿、できれば奴らを殺さずにやって下さい。気の良いやつらなのです。」
こうなるとタイチは人間と魔族の違いって一体何なのかと頭を捻りながら剣を抜く。
勇者より崩の方は思いやりがある気がするのである。
タイチは剣を崩へ預けると、ゆっくりと木影を離れ茂みをかき分け敵兵の前に出た。
「えーと、最近勇者になった者ですが、こっ降参しても。。いいですか?」
◇
縄で縛りあげられたタイチは北へ連れ去られる。
崩が付けた魔法のマーキングとリリアスの探知能力を使って他の仲間はその後を追う。
「お前が勇者か?もう一人の女勇者はどうした?」
ガデムズの前に連れ出されたタイチは、副官らしき魔導士風の男に尋問される。
「知らないっ!お前たちが倒したんじゃないのか?」と白を切るタイチに
「どこかで隠れて隙でも穿っているんじゃないのか?」と中々鋭い質問をしてくる。
しかし、それを天幕から出てきた魔王は片手で制すと部下に青い色をした巨大石を運んで来させるとタイチに言った。
「勇者なら勇者の力を使えるのだろう?その球を破壊できらた開放してやろう。」
玉転がしの球程の巨石である。狙いは外しようは無い。
タイチは集中すると時間稼ぎに軽くブレイブヒートを放つ。
「うそっ?」
勇者覚醒後のブレイブヒートは軽く撃っても巨石の一つや二つ粉々にする破壊力を持っているはずである。しかし、攻撃は何事も無かったかの様に石に吸い込まれてしまった。
「ちっとも光らんな?もしや手を抜いているな?真面目に遣らんと殺すぞ?」
すこし威力を上げて撃つ。当たった所がボンヤリ青色に輝く。
「いいぞ、今度は光ったな。もっとやれ、もっとだ」 ガデムズは上機嫌に笑った。
10発くらい撃っただろうか?不意に眩暈がして地面に膝を付くタイチ。
◇
「何よアイツ、魔王を弱らせる前に膝付いちゃって」
天音達は敵がタイチと一騎打ちをしてくると予想していたので、焦っていた。
「隙を作って突入しましょう。」
そうリリアスが提案すると、
「私がガデムズをブレイブヒートで攻撃するわ。尹吹と聖蘭は私のPTを護衛に付けるから後ろから魔王を狙って見て。崩とリリアスは如何する?やりづらいんじゃないの?」
と天音が返す。
「私と崩は茂みに隠れたまま、重力系の魔法で援護します。」
「では、この遠隔クリスタルで騒ぎを起こしますよ。」
そう言うとヤーシュタがペアクリスタルの片割れを割った。その瞬間魔王城の方角から火柱が立ち上り天まで届いた。
「やったでござるよっ!」興奮してまた語尾がおかしいヤーシュタを置いてメンバーは走り出す。
「このクソ魔王ーー!くらえっブレイブヒートッ!」
食らった魔王は着弾した胸部を摩りながら哄笑した。
「フハハハハハ、私にその力は効かんぞ!」
「オーロラシュート!」,「メテオシュート!」
若き勇者の力がオーロラと隕石へと形を変え魔王に襲い掛かる。形を変えた分、若干だが魔王にも効いている様だ。可哀そうなのは魔王の側近達。巻き添えを食らって、一人、また一人と倒れていく。
突如、巨大な質量が飛来する。
「貴様らー、今度は逃がさんっ!」
山羊の魔人ブルザウリスが数百羽のお化けカラス達が掴む鎖にぶら下がり空中から降りて来たのだ。
魔力が籠った双水晶も健在である。
「そりゃー」 水晶が天音に向かって猛突するが天音はひらりと躱す。
伸びっ切った鎖の先端にある巨大水晶を引き戻そうとブルザウリスが腕に力を込めた時、リリアスの魔法が発動し、周囲一帯の重力が倍増する。
’ずしん’
その場で地面にめり込んだ水晶球を膂力に物を言わせ再び空中へ舞い戻らせるが、先ほどまでとうって変わってスピードが落ちている。
その間に崩がタイチに近づき、枷を外すと聖剣を渡す。
森から大挙してやって来る魔王軍の援軍は、多くが天音達、勇者トリオが魔王を狙った攻撃に巻き込まれて倒れていく。
そんな中、攻撃を掻い潜り近づく敵も居る。経験の浅い勇者二人は後方に居てギルバーツ達が守っているが天音は一人突出して格好の目標となっていた。
「うりゃあぁぁー」
天音に近づこうとしたサイ男をタイチが袈裟切りに切り捨てる。その丈夫な皮膚は天然の鎧。鋼より丈夫で、エルフの弓をを易々と跳ね返す代物であったにも拘わらず、聖剣にかかれば豆腐を切るかの如く奇麗に切断された。
「あら、タイチ。私のボディーガードをしてくれるの?もしかして私の気を引いてエレナから乗り換えようって気かしら?」
天音の軽口にタイチも軽く返答する。
「生憎、大人っぽい人が理想なもんで。」
後方でホプキンスが’(ノ∀`)アチャー’って顔で横を向いた。
「ふんっどうせ大人っぽい体形が理想なんでしょ?」
しばし口を噤んだ天音の白く透き通った額に、見る見る内に青筋が発生し、突然ぶち切れた。
「わっ悪かったわね、つるペタストンな幼児体形でえぇぇー!」
「えっ?」
天音を中心にタイチの周りが光で満ちてゆく。
「ちょっこれ、きれる所!?これっ大丈夫?えぇぇーーー」
読んで頂いて有難うございます。
唐突に切れる天音ちゃん。理由はあるのですが、書き入れ忘れたので晴天の霹靂で申し訳ありません。




