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第29話 砂漠村の紛争

リリアスが言うには魔王は勇者を鍛えている?

エレナが自分の村に伝わる女神と会えるという不思議な石の話を持ち出した。


女神に会って解決策を聞いてみると主張するエレナ。


リリアスは驚いた顔をしたが直ぐ冷静な表情になり、


「もし女神が居たとして人類や勇者に協力的だとは限らないわよ?」と言った。


「でも一応当たってみます。あっ少し戻ってクエストを受けないと路銀が心もとなかったですねぇ」


リリアスは説得を諦めた表情で、


「なら気を付けて行って来きなさい。でも女神に会えたとしても寝首を掻かれぬよう用心しなさいね。それから、路銀はその箱にある財宝の一部を持って行っていいわよ。崩の部下が持って来てくれたの。猟師小屋を買い取って貰ったお礼だと思っていいわ。」


「そんなー、悪いですよー、わっ何ですかこの金貨、それに宝石!」


 エレナが驚くのも無理は無い。小さなラジカセ程の粗末な木箱の中にはギッシリと金貨と宝石が入っていたのだ。


 まだ沢山あるから半分は持って行っていいと言われたエレナだったが、多すぎますからと何度も断りそれでも両手一杯分もの金貨を小袋に受け取った。


「どうしましょう?タイチさん。お金持ちになってしまいました!」


 大喜びするエレナだったがタイチはもう次の作戦を考え始めていた。。


 冒険者の街に戻ったタイチは街で4人乗りのソリを買って羽豚を6頭繋げた。


「これで砂漠までは快適ですね。」


 ニコニコしていうエレナに微笑み返すと、タイチは水・羽豚の食料、薪等を買い、更に少量だが何もない所で水を出してくれる高価な水魔石に風魔石も各々1個づつだが金貨10枚を払って購入した。


「まるで、このまま砂漠を行くみたいな準備じゃねーか。」


クリュスタロスに助っ人をお願いしたらスカロプスが来た。


クリュスタロス本人かせめてエレーミアに来てほしかった。


 エレナはニコニコしている。基本的にエレナはタイチと居る事が嬉しいのか一緒に居る時は始終笑顔である。


「そうだ。エレナ、砂漠に付いたら俺と羽豚にも風魔法を掛けてくれないか?特に羽豚はそれなしだと1時間も立ってられない筈だから。」


エレナは突然の指名にオタオタしながら言った。


「わっ私、自信ないです。術が直ぐ飛んじゃうかも。。」


タイチはエレナを優しく説得する。


「大丈夫、基本的に相対位置は変わらない筈だし、念のため先頭の1頭に魔石を括っておくよ。これが思いつく一番早い手段なんだ。頼む。」


 確かにフィールドに展開する魔王軍によって勇者天音のPTが危機に陥っているかもしれない。急いだ方が良いのは分かる。


「そんなに天音様の事が心配ですか?」


小さな声で呟くエレナであったが、タイチは羽豚のチェックで耳に届いて居ない。


「よし、出発ー!」


6頭の羽豚に引かれたソリはぐんぐん加速し、まるで水上の高速艇が如くである。


「道が真っすぐで良かったなあ、左端に居れば向こうから来るソリとぶつかる心配も無いし。」


「タイチ、馬鹿、前っ前!前のソリにぶつかる!」

スカロプスが大声で注意する。


「おっと、右側に障害物なし、それっと」

それを受けてタイチが中々の手綱捌きで前を行くソリを追い越して行く。



その日の夕方、森の砦に到着したタイチ達は砦を守る守備隊員から砂漠渡航禁止令を知らされる。


「ほらー、随分前にゴーレムが暴走したっしょ?あれまだこの先をウロウロしてるんだわ。だから危険なのね。」


「どうしても、村に行かなきゃいけないんです!」


必死に訴えるエレナに隊員はこう言った。


「もしかしてあれ?村に残した家族が危篤とかそういう系?」


「そっ そーなんです。だからお目こぼししてください。夜の内に距離を稼ぎます。夜ならゴーレムも寝ていると思いませんか?」


エレナの訴えに隊員は目を瞑って考えている。


「そうだなあ、確かに奴は夜に成ると帰って行く見たいだし、じゃあ本当に気を付けていくんだぞ?」


そういってタイチ達を送り出してくれた。


「上手く説得出来て良かったな。」


「でも家族を病気にでっち上げちゃいましたね。」


「罰があたるなら俺に当たるさ、それより砂漠の夜は寒い。さっそく風魔法で羽豚を保護できるかい?」


「やってみます。」


◇ ◇


 明け方、夜通しタイチが手綱を取り走り続けた甲斐あって三人のソリはエレナの村入口にたどり着いた。


「ただいま!」 タイチをソリに待たせ、エレナが生まれ村の門をくぐる。


「エレナじゃ無いか?その小っちゃい子は?迷い人は無事届けれたのかい?」


 村NO.2である壮年女性は名をエルティナと言った。


 スカロプスがペコリとお辞儀をする。


 エルティナは長老宅前にあるベンチに座っていたがエレナ達を見ると立って出迎えてくれた。


「あっエルティナさん。それはまだ終わって居ないんですけど、今日は村長様にお願いがあって。」


エルティナは近寄るとエレナを抱きしめながらゆっくりと言葉を吐いた。


「いいかい、びっくりするんじゃないよ?村長は暗殺村の男どもに襲われ殺された。今この村は黒ずくめ共と戦争状態なんだ。」


大きく見開かれたエレナの瞳から涙が溢れだす。


「もしかしてっ!私のせいですかっ?!」


エルティナはエレナの髪を優しく撫でながらゆっくりと説明した。


「隠してもどうせ知られちまう。オピスの野郎はアンタを手に入れて村に伝わる言い伝えをってやつを実現しようとしている。イカレた野郎だよまったく。アンタはさっさとお逃げ、そして暫く帰って来るんじゃないよ?」


「でも私、村長様が持っていたという女神様に会える石を借りに。。。」


「はあー、あの婆さんそんな事も説明せずに逝っちまったのかい?いいかい、お前は婆さんの跡取り、次期村長なんだ。そのアンタが首からぶら下げている紐の先にあるその青い石。それがその大事な石だよ。分かったかい?無くすんじゃないよ?」


「エルティナさん、また来ました!」


若いエルフの叫び声がした。


「よしっ迎え撃つよ!皆、弓矢を準備しな!」


エルティナが勇ましく駆け出す。


エレナが必死に後を追って話しかける。


「わっ私も!」


「聞き分けな!敵の狙いはアンタだ。アンタを見つけたら敵がなだれ込んで来る。接近戦は不利なんだ!」


「わかりました。」


そう言ってエレナは全速力でタイチが待機するソリまで走って行く。


「どうした?大丈夫か!?」驚くタイチを手で制し、羽豚の縄を振る。直ぐにスカロプスが追いついて動きだしたソリに飛び込んで来た。


タイチが腰に結わえた剣の鞘にスカロプスのお腹が乗っかった。


「おい、タイチ!変なとこ触ってんじゃねー!」



「俺は何もしてないーー!」


 ◇

スカロプスはエレナに会えるのでエレーミアに代わって貰ったそうです。


読んで頂いて有難うございます。


次回 「第30話 時間石」は本日夕方頃に投降予定です。 

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