第21話 魔導師 崩
前回のお話 ~魔王リリアスの窮地に飛び込んだ崩
「貴様!」
崩が語気も激しくミュルメークスに極大魔法を放つ。
「龍の神、魔の神、風の神よ、この杖に宿りて暴風の咢と切り裂く力を!えぇーい、サウザンズバイト!ーー」
崩が振るった杖の先から千匹もの風で出来た狼がミュルメークスに襲い掛かる。
「我新たなる魔王として命ずる、魔人招来!」
ミュルメークスが唱えた呪文の先には風の聖霊が実体化し盾になる。
’ごががががが’
派手な音と共に鵬が放った必殺魔法が精霊魔人の胸板でかき潰されていく。
「くっいかん!せめて魔王様を。地獄の炎火よ、我が肉体を食らい顕在せよ!パール・バ・ティーバ!
誰かは知らんがこの左足をくれてやる!食らえ!」
崩は自らの左足を魔法の炎で切り捨てると、それを媒体に地獄から決して消えない炎を呼び出す。崩の秘儀中の秘儀、地獄の炎は媒体を燃やし、食らいつくすと満足したかのように一瞬その勢いを止め、次の瞬間爆発するが如くミュルメークスへ向かって燃え広がった。
「リリアス様!今の内に此方へ!」
「崩、私を置いて逃げなさい。今に我らはあれに支配される。」
崩は左足の痛みに脂汗を滲ませながらリリアスを見つめ、はっきりと言う。
「私の使える君はあなた一人です!」
「崩。。。」
その時煉獄の炎をかき分け、魔王ミュルメークスが姿を現す。
「てめー!魔界の炎でこの魔王様を焼き尽くせるとでも思ったのかっ!」
(つよい!)
崩はガデムズを倒す事を完全に諦めた。そして一心に呪文を唱える。
「ジュージュナス・ベレトナル・ミラネール・・・・出でよ転送門!」
呼び出したるは多数の転送円。その内の一つにリリアスを放り込むと直ぐに閉じて魔王ミュルメークスを睨め付ける崩。
「貴様なぞ認めん!ここで首を洗って待っておれ!」
魔王ガデムズの放った炎弾が崩を打ち抜く。しかしそこには上着しか残っておらず、本体は転送円に逃げ込んだ後であった。
◇ ◇ ◇
「リリアス様、リリアス様?おおーお気きになられましたか、我が君よ。」
リリアスは茶色い大きな毛皮に包まれたていた。もぞもぞとすこし湿った右手を出してみてそれを眺める。
「転送先が不運にも湖上であったのは痛恨の失敗でありまました。如何なる罰をも受ける所存であります。」
粗末な小屋中には猟師道具と思しき物が並び、中央では小さいが庵に火がともっている。リリアスは毛皮一枚で着衣はなく、見れば崩は先ほどから下を向いたままである。濡れた服は体が冷える事を恐れ崩が脱がしたのあろう。
「よい。命を救ってくれた礼は言う。だが我は既に魔王ではない。力で魔王を追われた只の魔族だ。気を遣わずとも良い」
そう言って目を瞑るリリアスが瞼に浮かぶのは魔王ガデムズ。愛しき前代の魔王と相打ちに成った憎き元勇者ミュルメークスを名乗る者。
「だが、」沈黙を破りリリアスは言葉を続けた。
「魔王ガデムズ。奴だけは許すことは出来ん。崩、力を貸してくれるか?」
崩は満面の笑みを浮かべたままその場で平伏した。
◇
「よう、お前らか、この辺りを荒らしている若い魔族の夫婦って?」
湖の畔に立つこの小屋は、崩が人間の猟師を追い出して手に入れた物である。
「夫婦だと!いや、まだ、じゃなくて、リリアス様!ここは私にお任せを!お主らにはリリアス様に指一本触れさせる訳にはいかん!」
「待って、話し合えるなら危害を加える積りはないんです!」
ハーフエルフが間に割って入る。
「貴様、我が眷属の?いやハーフか?穢わらしい!」
エレナを愚弄されたタイチは怒りにより、自然と全身に溢れんばかりの光が漏れ出してくる。
「くっこの光!貴様勇者かっ!」
崩が臨戦態勢で魔法の予備動作に入る。
其れを制したのは誰であろうリリアナであった。
「まっ待て、崩。勇者。。もしかしてお前も地球人なのか!?」
(地球人?地球人ってどういう事だ?)
タイチは元魔王の言葉に呆然と立ち尽くす。
◇ ◇
時間があったので短話を追加投稿しました。
(改)魔道→魔導




