第18話 ガントテックの心配
炎城話の後半です。
「鍵ー鍵、鍵、、見つからないなあー。はあ、普通は四天王と最後一騎打ちになるから鍵なんて探さなくていいのに。」
「ギルバーツ、ぶつぶつ言ってないで早く探しなさい。ヤーシュタ、占いの結果は!?」
「占いでは無く、神聖な宣告ですぞ。ふむふむ、塔の上にある四天王の部屋にあると出ましたな。良かったですな、地下だとこいつらの鎧の様に熱で溶けて形を成してなかった所ですな。」
彼らが探しているのは四天王の鍵である。4つ集めると魔王への最後の扉が開くのである。
幸いな事に無事に残っていた塔の頂上へギルバーツは登った。そして部屋から鍵を取って来る。それは柄に大きな白い宝石が付いた鍵であった。
「次はどこ?」
天音は鍵をホプキンスに投げてよこすと、ニコリともせずに言った。
「次に近いのは獣魔団の城だな。奴らの城は魔の森の中心にあってそこに至るまで森の魔物との戦闘も激しい物が予想される。つまり、ここから南にある開拓村ですこし物資の補充が必要だという事だ。」
このギルバーツの主張には天音も異論を唱えず、一行はすぐに南下する。
しかし、間もなく日が暮れてしまい魔の森内で1泊する事になってしまう。
「ヤーシュタ、蚊が多いからバリアー張って。
ギルバーツ、魔物がバリアー内に入って来たら殺しといて。
じゃあ私とホプキンスはこっちで寝るからあんた達1m居ないに近寄らないでね。」
ヤーシュタは器用にうたた寝をしながらもバリアーを切らさない。
可哀そうなギルバーツとガンテドックは交代で睡眠をとる約束をして、火の番をしながら魔獣を警戒する。
時々火を恐れない魔獣達が襲って来た。
殆どが魔狼、魔狐、魔猿の類である。
しかしガンテドックが順番の時にそれは現れた。
草食性のはずのそれが血の匂いにつられたという事はあり得なかった。
大人しく行き過ぎてくれることを祈ったガンテドックであったが、何故か立ち止まった巨体はハッキリと樹の幹で眠る天音を凝視していた。振り返ったガンテドックが見たのは眠る天音から立ち上る勇者の光!昼間の戦いの余韻か天音が無意識に流した光である。
「ぐるるるー」
喉をうならせると軽トラック程も有るその巨体を4本の逞しい足で加速させる。猛スピードで頭角を翳し天音へ向けて突進する。
「どんっ」
ガンテドックは盾を翳し、魔獣へと横から体当たりを食らわす。
魔獣は突進の勢いは殺さずに軌道を僅かに逸らされ、天音とホプキンスが根本で眠っている大木から一つ隣の木に激突する。
’ごおぉーーん’
物凄い衝突音が辺り一面に響き渡り、木から枝や葉っぱや木の実の様な物がバラバラと雨音を立てて降り注ぐ。
「いった!ぺっぺっ!。何このごみ!ガンテドックっ!そこで何しているの!?」
天音が起きた。とても不機嫌である。
「天音、隠れろ。ギルバーツ手を貸してくれ、ぐわっ!」
ガンテドックが魔獣の2撃目を正面から盾で受けるが軽く2m以上吹き飛ばされる。
「うーー、何なのよー。あああーー蜘蛛~~~あっち行ってーーー!」
肩に乗った子蜘蛛に動揺した天音の体から更に光が漏れ出し、それは瞬く間に巨大なギロチンの様な形となって巨大な魔物に襲い掛かかった。
’ずーん’
そして魔物は音も無くあっさりと二つに切り分けられた。
切り口から血を溢れさせながら先ほどまで生きて居たその肉塊はまだその身を痙攣させながらも死を迎える。
「なんだこりゃ?スピア・ディーアのオスか?でかいな!」
松明に火をともして駆け付けたギルバーツが感嘆する。
「おい、ガンテドック。大丈夫か?」
直ぐに仲間の事を思い出して、駆け寄るとガンテドックは座り込んだまま僅かに震えている。
「おいっ。大丈夫か?」
耳元でギルバーツに怒鳴られたガンテドックは我に帰ると、詫びながら立ち上がる。
「いったいどうしたって言うんだい。デカいとはいえ、たかが魔鹿1頭に怖気づく玉でもあるまいに。」
そういって、ガンテドックの背中をバンバン叩くギルバーツにガンテドックは小さく言った。
「ギルバーツ、俺は怖い。」
「何言ってんだ?」
「魔獣は魔物と獣の両方を引き継いでいるから皮や角は魔物に近く丈夫だ。しかしそれは聖なる属性で簡単に破壊できる。だから勇者の力で角が真っ二つってのは分かる。でも、魔獣の肉は獣に近く普通に俺たち食べたりするよな?」
ガンテトックが見つめるのは勇者の力でまるで豆腐の様に鮮やかに切り分けられた骨と肉である。
「それは魔獣の肉が人とそう変わらないからだ。。。
つまり、あれを。。。人が受けたらどうなると思う?」
ギルバーツが答える前に天音の怒鳴り声が遠くから聞こえた。
「何二人共突っ立てるのよ?血の匂いで魔物が依って来るから警戒宜しくね。じゃおやすみ!」
ギルバーツはガントテックの図太い腕をペチペチと叩きながらこう言った。
「だとさ、さあさあ、心配事は明日朝一緒に考えよう。とにかく朝まで警備だ。」
ガントテックは項垂れたまま、ギルバーツの後ろに続いた。
ガンテドックは可哀そうな役回りです。
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