思春期はつらい
鋳月は本当に父親が嫌いなようです
俺は家に帰ると同時に自分のベッドに寝転んだ。オヤジはまだ鍛刀地(刀工が作業する場所)で作業している。なんでも文化庁から作成の依頼が来ているとか。普段はバカオヤジと呼んでいるが、技術面から言わせればかなりの腕があるらしい。実際、オヤジが造った日本刀はかなりの高額で取引されており、年に5,6本造れば1年間は食っていける。まぁその領域まで行くのに30年以上はかかるらしいが。そして俺はそんなことしなくてももっと普通に生活したいと思っている。やっぱり考え方が違うのだ。
とはいえ、鋳月も鋳月でバカである。基本の教科は全滅で、定期テストでは学年順位でワースト50の常連というレベルである。だが、内申のほうではあまり苦労していない。なぜかというと、技術、家庭科、美術だけ毎回のようにオール5をとってくるのだ。ちゃんと職人の血筋は受け継いでいるのだ。だから最悪刀工としても生きていってもいいのだが...
「おーい、帰ってきたぞー」と陽気な声が玄関の方からきこえてきた。オヤジが帰ってきた。
「どうだーおれといっしょに刀工になる覚悟はできたか?」
「そんなもんなるわけないだろ」
「またまた~内申は刀工になる気満々だゾ☆」
「ぐっ...」
いやなところを突いてくる。「そういえば、おれからのクリスマスプレゼントはどうした?」
「ああ、あれね。傘立てに置いてあるよ」
「雑!!」オヤジがオーバーなリアクションをしてきた。なんだろう、とてもうざい。反抗期以前にこいつのこの態度がいちいち癇に障るのだ。こういうときは、素通りが一番である。
「とにかくもう寝るから」とさっさと自分の部屋に戻ろうとしたとき、不意にオヤジの顔が妙に険しくなった。
「おい鋳月、ナニをするかわからんが、ティッシュだけはわすれるなよ。イクって時にないと非さ....」
「変態オヤジが」そう言い残して自分の部屋へと戻るのだった。
『コッケコッコー』『コッケコッコー』
聞きなれない音とともにかれは重いまぶたを開こうとした
「まぶしっっ」反射的にまぶたを閉じてしまった。おかしい...確か俺の家の日照条件は最悪で、特に俺のの部屋は朝の日差しなどはいってくるような構造ではないはずだ。俺はゆっくりと自分のまぶたを開いた。
そこには...いつもと変わらぬ自分の部屋があった。俺は少しだけほっとしてあたりを見回してみた。
見回している間にこの部屋が妙に暑いことが分かった。「冬なのになんで暑いんだ?」疑問を解決するために俺は窓を開けてみた。
そこには...
広大に広がる草原、奥にそびえる様にある山脈、少し先には森もあった。
鋳月は目の前の光景を見てただただつぶやいた。
「ここ、どこ?」
初動は遅れてしまいましたが、これからはちゃんとした異世界生活ができると思います。
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