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第一話 与えられた力

はやくいろんなキャラをだしたいですね。筆が遅いので、ゆっくり投稿していこうと思います。

「・・・こっちも、いい天気、だな」


 呆然としながらも、俺は自分が正気かどうか確かめるように呟いた。

自称神様が言っていた通りなら、ここは俺がいた世界とは違う世界。異世界なのだろうか。

そんな事を考えながらも、俺はその一歩を踏み出せずにいた。


(・・・現状を把握できない。ここはどこなんだろう。どうすればいい。・・・そうだ、スマホは?)


 焦りと不安を感じながらも、どうにか一つ目の行動を起こす。

いつも左のポケットに入れているスマートフォンを取り出し、画面を確認する。


(だめだ、圏外か)


 期待はしていなかったが、事実として突きつけらると気持ちは落ち込むものだ。

少し雑になりながらも、スマホをポケットに戻そうとした時に違和感に気づいた。

いつもはスマホしか入れていないはずの左ポケットに、紙とカードが入っている。

おもむろにそれを広げて内容に目を通してみた。


『やぁやぁ、諸君!どうやら無事、私の世界へと来られたみたいだね。ここは私の愛する世界「アイ・ルーン」さ。なるべく危険の少ない地へと送り込んだと思うんだけど、運の悪い子はもしかしたらこの手紙を読む前に死んじゃったかな。残念無念。まぁ、そんなことは置いといて、一緒に渡したカードを見てごらんよ。それは「ギフトカード」。君たちが自分の異能を確認するために用意した魔法道具さ。手に取って「ギフト」と念じてごらん。カードに君たちが持つギフトの詳細がでてくるからさ。』


 内容に一抹の不安を感じながらもカードを手に「ギフト」と念じてみる。

透明なアクリルのようなカードが淡い青色に輝き、文字が浮かび上がった。


――――――――――――――――――――――――――


ギフト「妖精魔技」 ギフトレベル:Glv.1


 物質に「ルーン」を刻む事で、特殊な力を発現させる。

ギフトレベルにより刻める文字が増える。


【ルーン】

Fフェオ:強化


――――――――――――――――――――――――――


「詳細とは名ばかりだな」


 そう悪態を吐きながら、地面に「F」の文字を書いてみた。

一瞬、静電気のような青い光が、パチッとしたが見た目にはなんの変化もない。

地面に触れてみてようやく、その異様さに気付いた。


「・・・なんだこれ、ここの土だけやけに固くなってる」


 文字を刻んだ周り、直径1m程の地面がその周囲の地面と比べて明らかに硬度が違っていた。


(「F」の文字の効果は「強化」、地面を強化して固くなったってことか?)


 そう予想してみたが、どういった原理でこうなったのかはよくわからない。

原子同士の結びつきが「強化」されて物理的に固くなっているのか、それとも魔法のような非科学的な力によって「強化」されているのか、色々実験してみたい気分ではあるがどうにも場所が悪い。

 自称神様が、この世界は魑魅魍魎が跋扈する危険な世界と言っていた。ここは森の中だ。安全に万全を期すなら森からでなければならないだろう。


(とりあえず、木の枝で槍を作って文字で強化してみるか)


 森を抜けるにも、どこから来るかわからない脅威に対応するためには武器がいる。

人としてのアドバンテージを最大限に発揮するために、おもむろに木の枝を折り、先程強化した地面で枝の先端を削る。まるで鑢にでもかけてるかのようによく削れた。持ち前の器用さで、ものの1分もかからず「木の槍」を手に入れた。

 次に、槍の持ち手部分に文字を刻む。


(・・・もしかして、文字を沢山書いたら書いた分だけ強化されないかな?)


 なにげなしに感じた疑問を、思うが儘に実行してみる。「F」の文字を5つ程刻んでみた。

パチッと音がした後は、やはりなんの変哲もない「木の槍」にしかみえない。

おもむろに「木の槍」で近くの岩を突いてみた。ゴッと鈍い音がなり突いた後を見てみれば、穴の開いた岩と無傷な「木の槍」がそこにあった。


「木で岩を穿つか。ははは・・・」


 非科学的な力を前に、乾いた笑いがこぼれた。もっと文字を刻んだらどうなるんだろうかという好奇心を抑えながら、今するべき事する。


「・・・さて、どっちに行ったもんかな」


 槍を作り、いざ進もうと思ったのだが土地勘もへったくれもあったもんじゃない。

こういう時は、運命の神様におまかせしよう。木の棒を地面に立て、手を放す。


「あっちか」


 棒が倒れた方向へと進むことにした。


(こっちへ飛ばされる時、クラス全員の体が光っていた。なら夢子もこの世界に飛ばされているはずだ。無事でいてくれよ)


 いまだ不安は拭えない。しかし、俺は進むしかないという思いと夢子を探したい一心で重い足取りを一歩、また一歩と歩む。


 ――絶対、見つける。だからその時まで、生きていてくれ。


◇――――――――――――――――――


 何時間歩いただろうか、スマホは消費電力を抑えるために電源を落としてしまったので時間がわからない。3時間か、はたまた4時間か。体感ではそのくらいの時間が経っている気がする。道なき道を行くせいか、疲労がたまるのが早い。少し休憩しようかと考えた直後、道が開けた。


「きゃっ!」

「うわっ!」


 藪を抜けた先にいたのは、13歳か14歳くらいの年若い少女だった。腰まである茶髪のロングストレート、あどけなさの残る顔で優し気な目元が特徴だろう。間違いなく美少女だ。相当驚いたのだろう、腰を抜かして後ずさっている。助け起こそうとして、手を差し出したところで待ったの声がかかった。


「あんた! なにしてんだい!」


 少女をかばうように、前に出てきたのは、30歳くらいのふくよかな女性だ。茶髪の髪をアップでまとめた、気の強そうなご婦人だった。何故かはわからないが二人とも相当焦っている、というか


(なんでそんな怖がってるんだ?)


 そんな疑問が表情に出たのか、ご婦人が問いかけてきた。


「あんた、何もんだい? 盗賊にしちゃ身なりがいい、けど衛兵ってわけでもなさそうだ。こんな辺鄙なところで貴族様がうろちょろしてるとも思えない」


 矢継ぎ早に誰何を問われるが、そのどれでもないので何とも言えない。少なくとも危険人物ではないと証明するために、槍を地面に置き両手をあげたポーズをとる。降参のポーズだ。


「落ち着いて、敵ではありません。道に迷っていたのですが、藪を抜けた先でそちらの少女と鉢合わせてしまって、驚かせてごめんなさい」


 咄嗟の事だったので、上手い言い訳が思いつかない。異世界から来たということは正直に話してもいい事なのだろうか。


「道に迷っただって? 下手な言い訳はおよし! そんな立派な槍を持った人間が、道に迷うもんかね」


 この世界は武器基準で人柄を判断するのだろうか。槍を持っていても道に迷う人は迷うと思うんだが・・・

というか、その辺の枝を削って作っただけなのに、「立派な槍」っておかしいだろ。


「ま、待って、デリラおばさん。私が勝手に驚いて、ころんじゃっただけなの。この人は、私を助けようと手を差し出してくれただけなのよ」


 いいフォローだ少女。「デリラ」とよばれたご婦人の警戒を解くために、なんとなしに思いついた言い訳をする。


「旅をしていたのですが、森で魔物に襲われてしまって荷物を全部置いてきてしまったんです。なんとか武器だけは捨てずに済んだのですが、走っているうちに道がわからなくなってしまって」


 とりあえず、異世界から来たことは伏せておくことにした。何があるかわからない以上、素性は隠しておいたほうが身のためだろう。もし、この世界で異世界人はそんな珍しい事じゃないとわかったら、その時にまた話せばいいだろう。


「・・・魔物?」

(あれ!?まさか魔物はいないのか!?)


 デリラの反応に内心冷や汗を垂らしながら、言葉の続きを待つ。


「どっちだい! 魔物の種類と大きさは! 魔物によっちゃぁ町の衛兵総動員しないと町に被害がでちまうよ!」

「えっ! えっと・・・種類は――――」


 ただの言い訳だったのに、なんだか大事になってしまった。やはり魔物は脅威なのだろう。

俺がどうしようかといい淀んでいるうちに、事態は急変した。


―――ガサッ!ガサガサガサッ!


 藪を突き破るようにでてきたそれは、体長5mを超えようかという巨大なイノシシだった。

怒りを灯した赤い瞳、二本の太く巨大な牙、全身を鎧で覆うかのような漆黒の毛皮。俺の知っているイノシシとは、到底相いれない異形に足がすくむ。


「ブモオオォオオオオォォォオッッッッッ!!!!!」

「森の悪魔!?」


 イノシシの咆哮とデリラの悲鳴のような叫びが森に木霊する。


「まったく!とんでもない奴を連れてきたね、あんた!! アイリス立ちな! 全力で逃げるよ!!」

「あ、足がすくんで、うぅ、うごかないよぉ」

「しっかりしな!こんなとこで死にたくないだろ!あんたも!男ならアイリス担いで!さっさと逃げるよ!」

(そんなこと言われても、俺も足がすくんでるんだけど)


 イノシシから放たれる強烈な殺気に怯えながらも、なんとか足元の槍を手に取る。

デリラがアイリスを必死に助け起こしているが、イノシシの突進の準備は無慈悲にも完了した。


「ブモォオオォォォオォォッッッ!!」


 咆哮と共に、イノシシがデリラ達に向けて突進する。 


(動けよ!すくんでんじゃねぇ!こんなとこで躓いてたら、夢子を探すことなんて絶対できない!気合い入れろ!)


 未だ、すくんで動かない足を気合いでねじ伏せ、なかば転がるようにデリラ達の前にでて槍を突き出す。


「うぉおおおぉお!!」

「ぴぎぃいいいいぃぃぃぃい!!!」


 裂帛の気合いと共に突き出した槍の一撃は、突進してくるイノシシの額をまるで紙のよう穿った。

しかし、突進の威力は衰えず、デリラ達を横切り俺は遥か後方の木に吹き飛ばされた。


―――ズズン!!!


「あがっ!?」


 俺は、激烈な痛みに耐えきれず意識を途切れ途切れにさせながらも、イノシシを見つめた。

ゆっくりと歩みを進めるかに見えたイノシシは、崩れ落ち、瞳から命の光を消した。


(一撃で倒せるなんて、運が、いい、・・・な)


 そこで、俺の意識は暗い淵に沈んでいった。意識がなくなる間際に、デリラとアイリスが何か叫んでいた気がするが、よく聞こえなかった。


◇――――――――――――――――――


 鳥の囀りが聞こえる、窓から吹き込んでいるであろう風が頬を撫でる。なかば朦朧としながらも、俺はそのむず痒さで目を覚ました。


「・・・・・・ここは、どこだ?」

「あっ!! 目が覚めましたか!? 痛いところはありませんか!?」


 俺の問いかけに返してくれたのは、森の中で出会ったアイリスという少女だった。ずっと看病していてくれたのか、目元にうっすらと隈がみてとれる。

 起き上がろうとして、俺は背中の痛さに呻き声をあげた。


「うぐ・・・背中が、痛い」

「あぁ、まだ起きちゃだめです!骨は折れていないけれど、打ち身がひどいと神父さまが仰っていました」


 痛みに耐えながらも、アイリスの支えを借りてベッドへと寝かせてもらう。この世界は、医者の代わりに神父が医療行為を行うのか。そんな些細な疑問をよそに、俺は先程の質問を繰り返した。


「ここは?」

「ここは【ロド】という町です。質のいい鉱石が豊富に取れる事で有名なんですよ。あの魔物に襲われた薬草園から30分程にある小さいですが賑やかないい町です」


 ゆっくりと、かみ砕くようにアイリスは答えてくれた。どうやら、運命の神様は俺を町の近くまで送ってくれていたようだ。しかし、それが試練なのだといわんばかりに魔物に襲われて、手酷い仕打ちをうけたと。あの魔物は自称神様の嫌がらせだろうか。そんな気さえしてくるほど、ばっちりなタイミングだったな。


「あの魔物はどうなった?」

「あなたの槍の一撃で脳天を穿たれて、息絶えました。あなたは、私とデリラおばさんの命の恩人です。本当にありがとうございます」

「いや、あの魔物は俺が引き寄せてしまったんだと思う。だから恩に着るのはやめてくれ」

「そんな、例えそうだとしても、私たちの命を救ってくれたことに変わりはありません。恩返しをさせてください」


 実際には、引き寄せたかどうかはわからない。でも、なんとなくそんな気がしてならなかった。どれくらい寝ていたのか気になって聞いてみたのだが、どうやら一晩中気を失っていたらしく、アイリスはその間一睡もせずに看病していてくたようだ。


「あ、あの・・・お名前を、教えていただけませんか?」


 何故か少しモジモジしながら、アイリスが聞いてきた。トイレにいきたいなら、早く行ったほうがいいと思う。膀胱炎はつらいって、じぃちゃんがいってた。


「林斗だ」

「・・・リントさん」


 見つめられたので、見つめ返したのだが、アイリスは顔を真っ赤にさせてあわあわしながら自己紹介した。

照れ屋なのだろうか。美少女の照れる顔はなかなかそそるものがあると思う。


「え、えっと、その・・・そ、そうだ!私、アイリスっていいます。アイリス・ロドです」

「アイリス・・・ロド? 町と同じ名前なんだね」

「あ、はい。私の家は、代々この町の町長を務めているんです。なので家名がロドなんですよ」

「なるほど・・・でも町長の娘が、なんで薬草園に?」


 どうやらアイリスは、お偉いさんの娘のようだ。町長だからそんなに偉くないのかもしれないけど、領主とか太守とか、そんな感じのやつかもしれない。


「私、ハーブティーを作るのが趣味で、薬草園にはよくハーブを分けにもらいに行ってるんです」

「そうなんだ、そこに俺が魔物を引き連れてきた・・・と。薬草園に被害は?」

「ありません。リントさんのおかげですね」


 何故、俺のおかげなのだろうか。俺のせいで危険な目にあったかもしれないのに、どうしてそこまで恩を感じているのだろうか。疑問を口にだそうか迷っていたが、不意に部屋のドアが開いた。


「アイリス。少年の具合はどうだい?・・・おや、目が覚めたのかい」

「すいません。ご面倒をおかけしてしまったみたいで」

「何水臭い事いってんだい。あんたは町の英雄さね。面倒見ないと罰があたっちまうよ」


 そういってデリラは、温かいスープを運んできてくれた。


「あんたが、倒した大猪はね。【森の悪魔】っていって、ここ何年も町に被害を出してた魔物なんだよ。町の衛兵や都市から派遣された近衛でも歯が立たなかった化け物を、あんたはたった一撃で屠って見せた。これが英雄じゃなかったらなんだっていうのさ」


 どうやらあのイノシシ君は、相当な手練れだったようだ。「一撃で屠った」といっても偶然もいいとこなので、正直「英雄」というのは止めていただきたいものだ。


「ま、まだ手を動かすのも辛いですよね!な、なので私が、食べさせてあげますね!」

「え・・・あ、うん。ありがとう」

「いえ!はぃ、あ~ん」


 アイリスに食べさせてもらったスープは、とっても美味しかった。


 デリラさん温かい目で見るのはやめてください。 

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