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白き竜の魔法  作者: 鬼狐
2章 《知らない過去》
31/38

第30話 『宣戦布告』

お久しぶりです。


記念すべき30話なのに……。

 夜九時半過ぎ。

 僕は家から最寄りのコンビニから家へ帰る途中である。

 

 そして、修道女と対峙していた。


 ……いや、どうしてこうなった。

 僕は彼女と対峙しながら、思い返していた。



  ◆



「そんなことがあったんだ」


 夕食後、僕は舞たちから何があったのか出来事を全て聞いた。


「はい。先程も言いましたが、詳しい事はわかりませんけど」


「……わかった。とりあえず、今日は泊っていきなよ。丁度アリスからパジャマを借りてるしさ」


「え!? いやでも、明日だって学校がありますし……」


「そうだけどさ。いざとなったら休めばいいし」


 命を狙われてるのに呑気に学校なんて行けるわけがない。

 まあ、なんかあったらラルク先生にどうにかしてもらおう。


「龍也」


 藍が真剣な表情で僕たちの会話に入ってきた。


「? どうしたの、藍?」


「冷蔵庫にデザートが何も入ってないじゃない……」


「なんでそんなことを真剣な顔で今言うの!?」


 今はシリアスなんだよ!

 なんで僕の周りはシリアスブレイカーが多いんだよ!


「何言ってんのよ! 乙女にとっちゃあ、デザートがないこの状況は吸血鬼が快晴の真昼間の屋外に放りだす状況と変わらないのよ!」


「そこまでか!?」


 吸血鬼にあったことはないからわからないけど。

 暴走アリスと戦った時のアリスは、半吸血鬼や吸血鬼モドキのようなものだったけどさ。


「ほら! 舞ちゃんだってデザートが食べたいって言ってんでしょ!」


「「えっ!?」」


 僕と舞は一斉に驚きの声をあげた。


「……舞も、何か食べたい?」


「いえ、食べたいか食べたくないか訊かれれば、どちらかといえば…………食べたいです」


 僕が控えめに尋ねると舞も控えめに答えた。

 そうして、僕は最寄りのコンビニにデザートを買いに行くことになったのだ。



   ◆



 回想終了。


「今は、別にあなたと戦うつもりはないわ」


 修道女は、僕と対峙して開口一番でそう言った。


「……じゃあ、何故僕の所へ?」


「ほらあれ。宣戦布告みたいな?」


 宣戦布告?

 何故そんなことを僕にするのだろうか?

 

「あなたの幼馴染の女の子から聞いたのよ。あなたがなんとかするって自慢気にね」


「…………」


 何故丸投げにするんだ。

 ……いや、待てよ。これは逆に考えると藍に信用されているということだろうか。

 そうかそうか、なら仕方ないな~。藍はツンデレなんだから~。


「宣戦布告ねえ…………。じゃあ、どうします? 何処で何時戦うつもりですか?」


「うふふ。血気盛んなのね、あなた」


 いや、別にそこまでじゃないんだけど。

 友達のために戦うだけであって、別に好んで喧嘩とかはしないよ。


「そうねえ……、それじゃあ、明日の夜八時に」


 修道女は、それから場所を指定した。

 

「夜の八時って、早くないですか? 人に見られたらまずくないですか?」


「それなら大丈夫よ。その時間帯は誰も来ないし、――あまり得意ではないけど――人避けの魔法を使っておくから安心して」


「はあ……」

 

 安心しても……いいのか?

 

「ん。伝えたいことは伝えたから――じゃあね♪」


「待ってください」


 僕に背を向け、さっさと帰ろうとする修道女を呼び止める。


「あら、まだ何か?」


「どうして、どうして舞を狙うのか……それをまだ聞いてませんよ」


 舞を狙う理由。

 舞は別に命を狙われるようなことはしていない……はずだ。

 彼女自身、身に覚えはないみたいだし。


「私が彼女を狙う理由? んー、質問に答える前に訊きたいんだけど、あなたは彼女の正体は知ってるの?」


「正体?」


 確かに思い返してみれば、舞について詳しいことはあまり知らなかった。

 あの猫耳と尻尾……あれについては獣人やツッキーのような妖怪かとそう思い込んでいたが……。


「彼女はね、獣人でも妖怪でもないわ。彼女は、何でもない(・・・・・)のよ」


「え、ちょっと待って。それってどういう意味? 何でもないって?」


「そのままの意味よ。彼女は今まで分類されてきた生き物の全てに(・・・)当てはまらない(・・・・・・・)――――『新種の人外』」


「新種……」


「詳しいことは私にもわからないし、当の本人も詳しいことは知らないでしょうね」


「でも……それでも、舞の命を狙う理由には」


「あるのよ、それが」


 修道女は僕の言葉をぴしゃりと遮るように言った。


「確かに新種の人外なんて別に珍しくないわ。異種族同士から誕生したハーフとか色々あるでしょう。だけど、彼女は違う(・・)。彼女は突然この世界に生まれたイレギュラー(・・・・・)なの」


「イレギュラーって」


「彼女の両親はね、人間(・・)なのよ。二人とも」


 僕は言葉を失った。

 僕は竜人で、竜族の母さんと人間の父さんの間に産まれた混血だ。

 しかし、舞の両親は二人とも人間だ。人間が産まれなくてはおかしい。

 じゃあ、それは一体、どういうことなんだ?


「つまり彼女は、先天的ではなく後天的に力を手に入れたの」


「そ、それが何だって言うんですか?」


「何処でどのようにしてその力を手に入れたのか、その全てが謎に包まれている生物をそのまま放置する訳にはいかないでしょう? 何時何処で何の被害が出るかわからないでしょう? もしかしたら、世界そのものに影響を与えてしまうかもしれないでしょう?」


「世界そのものって」


「そう、早い話が私はそんな者たち(・・・・・・)限定を殺す専門家なのよ。だって危険なものは、コワイでしょ?」


 確かに人間らしい判断だと思うよ。

 危険なものは被害が出ない内に処理しようとするか逃げるよね。それが正しいんだろうね、多分。逃げて関わらないことも正しいんだと思う。無理に関わりを持つのは良くないと思う。

 ……だけどさ。


「そんなことさせない。絶対に。だって、舞はあなたが言うようなことは絶対にしないから」


「あら。どうしてそう言い切れるのかしら」


「僕は舞の友だちですよ。友達だったら、それぐらいわかりますよ」


 それに。


『……じゃあ、龍也さんも約束してください。私の為に傷つかないでください』


 あんなことをいってくれる舞が、そんなことをするはずがない。

 僕は心の中でそう確信していた。


「言い切ったわね。ふふっ。あなたみたいな男の人、嫌いじゃないわ。いいわ、明日あなたが私を負かせば、手を引くことにしましょう」


 修道女は、唇に人差し指を当てながら、そう言った。

 ……残念ながら、その色っぽい仕草もツッキーで見飽きてるんだよ!


「ああ、まだ名前を名乗ってなかったわね。私はシルヴィア・ヘルミーネ。よろしくね、天白龍也くん」


 修道女もとい、シルヴィアさんは宣戦布告をし、僕の前から去った。



  ◆



 シルヴィアさんが去った後、僕はとぼとぼと帰路を歩いていた。

 少し遅くなってしまったけど、走って帰る気力がなかった。

 あまり実感が湧かないけど、結構時間が経っていたみたいだ。

 帰ったら藍に怒られるかな。


 これから待ち受ける藍の説教に対して憂鬱になりかけていた瞬間、僕の携帯の着信音が鳴った。

 多分藍からの電話だろうと思い、誰からの通話か確認せずに応答した。

 しかし、通話に出たのは藍ではなく、舞からだった。


『アリスちゃんが倒れました!』


 舞の切羽詰まる声に僕はその場から、飛び立った。



  ◆



 僕がアリスの部屋に到着するとアリスはベッドの上で気を失っていた。

 藍たちは気を失いながらも苦痛な表情をしているアリスを心配そうに介抱していた。


「アリスは大丈夫?」


「大丈夫……とは言えるかどうか。今も辛そうにしていますし……」


 舞は苦痛な表情のアリスを尻目に答えた。


「あの……ご、ごめん。私が、その………私のせいで……」


 皆の中でも一番暗い表情をしていたのは、凛だった。

 事情を訊くとどうやら凛とアリスがお風呂に入ってる時にアリスが倒れたらしい。

 凛はその時少し前にツッキーがアリスにした質問をしたらしい。


『アリスちゃんの家族は今、何処で何してるのかな〜って』


 家族、か。

 多分それが、アリスを苦しめる引き金になってるんだろう。

 アリスの家族は一体どうしているんだろうか。

 アリスは記憶がないため確認しようがないし、それがアリスを苦しめるなら、僕は訊けない。


「心配しないで凛。凛が気に病む必要はないよ」


 僕は少しでも凛を安心させるために、頭を優しく撫でながら慰めた。

 ふっ、僕の撫でテクを甘くみるなよ。


「それでも気が済まないなら、アリスが目覚めたら謝りなよ。アリスは優しいから怒ってないだろうけどね」


「りゅ、りゅーくん……」


 凛は少し赤く染めると俯いた。


「(出たわよ、龍也のたらしテク)」


「(ハーレム王でも目指してるんでしょうか)」


 あれ、藍と舞から変な目で見られてない? 何故?


「そんなわけで全員もう寝なさいな。僕はアリスを看ておくから。藍、デザートは明日ってことでいいよね」


「まあ、今回は仕方ないわね」


 後で冷蔵庫にでも入れとこう。


「あの、龍也さん」


 舞が何か言いたそうに口を開いたが、すぐに閉じてしまった。


「なに?」


「いえ、なんでもありません。おやすみなさい」


「……うん。おやすみ」


 そうして部屋には、僕と意識のないアリスだけになった。


「アリス、僕はアリスに何かしてあげたい。でも、今回だけは何もしてあげられないかもしれないな……」


 僕はアリスの髪を撫でた。

 とても綺麗な髪だった。

少し短いので修学旅行から帰ってきたら、最後を少しだけ文を付け足します。


 ~おまけ~


ツッキー「んむむ……」


龍也「どうしたんだよ、ツッキー。何か悩み事?」


ツッキー「女性は胸のサイズを測るのに、男性はアレのサイズを測らないんだろう?」


龍也「あはっ♪ 心底どうでもいい♪」


夏海「男性は女性よりも惨めになるからじゃない」


ツッキー「なるほど! じゃあ、龍ちゃんは安心だね。フルでこれ位だし」


龍也「こらツッキー! 屋上!」

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