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白き竜の魔法  作者: 鬼狐
序章 《覚醒のプロローグ》
3/38

第2話 『覚醒』

 あれから入学式も終わり、ただいま下校中。

 五十嵐さん付きで。

……別に誘ったわけではなく、誘われたわけでもない。

 普通に下校中に、バッタリ(・・・・)五十嵐さんと合ってしまっただけだ。


「そ、そういえば、五十嵐さんって、学校で皆に挨拶してたよね?」


 知り合って間もない年頃の男女が二人きりで下校という状況に少し気まずくなり、話題を振ってみた。

 流石にフレンドリーで気さくな奴でも、普通はそんなことしないだろう。


「はい! 挨拶は大切ってお母さんから聞かされましたから」


 疑問はあっさりと解明された。

 そんな会話を続けていたら、道が二手に分かれる所についた。


「私の家はこちらです」


 五十嵐さんは、右の道を指差しながら言う。


「僕はこっちだから」


 僕の家への道は、左だ。

 つまり、ここでお別れだ。


「それでは」


「うん。それじゃあ」


 五十嵐さんは、右の道を走っていってしまった。

 僕も帰ろうと足をすすめるが、すぐに立ち止まってしまった。


「? なんだあれ…?」


 僕は、空を見上げながら言った。

 雲一つない青色の空に黒い魔法陣(?)が描かれていた。


「魔法……陣?」


 僕だって、漫画を読んだり小説を読んだりする。

 だから、あんまり本物とは思いたくはないけど想像はつく。


「うおっ、眩しっ!」


 すると突然魔法陣(?)から無数の黒い光が地面に落ちてきた。

 黒い光は眩しくて、僕は目を瞑ってしまった。


「グルルルル……」


 何か、獣のような唸り声が聞こえてくる。

 犬……?

 そう思って、目を開けてみるとそこにいたのは、普通の狼より大きな体で、三つの頭があり、長い尻尾のある漆黒の毛並みの狼がいた。


「ケルベロス……!?」


 『ケルベロス』ギリシア神話における冥界の番犬。

 ローマ神話ではケルベルスという。その名は「底無し穴の霊」を意味する……らしい。

 そんなケルベロスがなんでこんな所に……?

 てゆーか、この世界にいるのか!?


「グルルルルルル」


 今更ながら、気づいた。

 僕、囲まれちゃってる。

 いつの間にか、自分の周りをケルベロス達に囲まれていた。


 ケルベロスって、一匹じゃないんだ。

 って! そんなことを考えて入る隙はない! と、とりあえず、逃げなきゃ……!

 ……でも、どうやって?

 今、僕は囲まれていて絶体絶命で、袋のネズミ状態だ。


「ガアァ!」


 その時、二匹のケルベロスが襲いかかってきた。

 や、やられる……!

 そう思った矢先、ドラマやアニメで聞いたような銃声が突然聞こえた。

 そして、襲いかかってきたケルベロスが突然倒れた。ケルベロスの体には、風穴があり、呼吸はしていなかった。即死のようだ。


「龍也さん! 大丈夫ですか!?」


 その声は、先程まで聞いていた女の子の声だった。


「い、五十嵐さん!?」


「はい! 舞です!!」


 そこに現れたのは、五十嵐舞だった。

 二丁拳銃を持って……ってなんでそんなモノ持ってるの!?


「ど、どうしてこんな所に…!?」


「そんなことどうでもいいのです!!」


 ハッキリ言われた。ちょっとぐらい説明してほしい。


「ガアアァ!」


 五十嵐さんの後ろからケルベロスが襲いかかってきた。


「あ、あぶな――」


「大丈夫です!」


五十嵐さんは、後ろを振り向かずに、後ろのケルベロスを撃った。


「え、ええぇ!」


 撃たれたケルベロスはバタッと倒れて生き絶えた。

 ってか、なんかすごく戦い慣れてないですか五十嵐さん!?


「グァァ!」


 またまたケルベロス達が襲いかかってくる。


「しつこいですね!」


 対抗するように次々に銃弾を撃つ五十嵐さん。

 もはや、次元が違う気がする……。


「キャ…!」


 五十嵐さんは、隙をつかれ鋭い爪で右肩を引掻かれた。

 五十嵐さんの右肩から紅い血が流れる。そのまま傷口をおさえて、膝ついてしまった。

 そのまま、ゆっくりと近づくケルベロス。


 ど、どうすれば! このままじゃ、五十嵐さんが……!

 でも、僕が助けなきゃ! 対策も力もないけど、五十嵐さんは僕を助けに来てくれたんだ。

 だから今度は、僕が助けないといけないんだ!

 その瞬間、身体が熱くなってきた。


「ッ……!!」


 なんなんだよ、こんな時!


「ぐあっ!」


 身体が焼かれる様な激しい痛みが全身を襲った。


「ぐっ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 あまりの痛さに立ってはいられず倒れこんだ。


「龍也さん……?」


 その時、僕の身体に変化が起こった。

 身体中の皮膚は純白な鱗になり、尻尾は生え背中からは、翼が生えてきた。

 そんな変化が終わった頃には、そこにいたのは、一匹の純白なドラゴンだった。


「グルルルルル……」


 ドラゴン――になった僕は、喉を鳴らしていた。

 な、何がどうなってるんだ…!?

 僕は、どうなってるんだ!!?

 いきなりの急展開に混乱する。


「龍也さん、『竜人』だったんですか!?」


「グァ?(はい?)」


 竜人? なんだそりゃ?


「龍也さん、早く魔物をやっちゃってください!」


 五十嵐さんが、なんか強気になってる。

 まあ、なんだかわからないけど、今はこいつらを……!

 ケルベロスの一体が、僕の首筋を狙って飛びかかる。それを大きな尻尾を鞭のようにしならせ、バットでボールを打つようにケルベロスを叩きつけた。

 その尻尾の力積でケルベロスは目にも留まらぬ速さで瓦礫に激突し、甲高い断末魔と同時に汚れた血を散らして動かなくなった。ぐ、グロイ……。


「また来ます!」


 五十嵐さんの声とほぼ同時に、僕の腕に一匹のケルベロスがくらいついたが、僕の鱗には傷がつかず、それどころかケルベロスの牙が折れてしまった。

 うわーお。ぼくつよーい……。


「瞬殺ですね!」


 そんな輝いた顔で言う台詞じゃないよ。

 って、早くケリをつけなきゃまずいでしょ。



   ◆



 これは流石にグロ過ぎだ。

 数体のケルベロスは、すぐに全滅した。

 胴体が真っ二つなってるものもいれば、もう原形をとどめていない奴もいる。

 さすがにやりすぎたかな……もう一度言おう。グロ過ぎだ。


「……終わりましたね」


 五十嵐さん、こういうの見てて吐き気とかないんですか?


「助けに来たのに、助けられましたね。ありがとうございます」


「グルル……(どういたしまして……)」


「あ、もしかして、龍也さんって念話のやり方を知らないのですか?」


「グルァ?(念話?)」


「……その様子じゃ、知らないみたいですね」


 知らなくて悪かったですねー。


「とりあえず、場所を変えましょう。ここに居てたら色々大変ですし」


 そうですねー。


「とりあえず、あの山あたりまで……」


 五十嵐さんが示した山というのは、人の視力からすれば、結構遠い距離だった。ドラゴンからみれば、結構はっきり見えますが。

 ……あの、五十嵐さん? あの山までどうやっていくんですか?


「乗せてってください!」


 うん、やっぱりか!

 仕方ないので、乗りやすいように体を低くする。

 ……なんか『伏せ』してるみたいだなぁ。


「なんか『伏せ』してるみたいで、かわいいですね!」


 かわいい、は余計です。早く乗ってください。

 五十嵐さんが僕の背に乗ると僕は、地面を蹴り、飛びたった。

 いやー、ほんとに飛んじゃいました。ぶっつけ本番で飛べました。

 すごいですねー、人間って。今はドラゴンですけど!



   ◆



『Аー、アー、あー』


 目的地の山に到着した僕は、ただいま念話を絶賛練習中なのだ。


「だいぶ良くなってきましたね」


『人間は進化するんです』


「今はドラゴンですけどね」


 ドスッ、とその言葉が胸に突き刺さる。

 いいもん。中身は人間だもん。


「えっと、それじゃあ、『竜人』のことを説明しますね。竜人とは、竜と人間の両方の血を引き継いでいる者の事をいうんです」


 な、何だと?

 それじゃあ……、


『僕の血縁関係の誰かがドラゴンなの…?』


「そういう事ですね。でも、竜人は別に珍しくありませんよ」


 あ、そうなんだ。


「それと、龍也さん。もうそろそろ人間に戻ったらどうですか?」


『戻り方がわかりません』


 だって、初めてなったんだよ?


「こう、人間に戻れー、とか思えばいいんじゃないですか? 多分」


 なんか小説とかありきたりだなぁ。しかも多分ってなんだよ。


「だって私、竜人じゃあありませんし。念話のやり方だって実はあまり理解してませんし」


 まあ、やってみることにしよう。

 目を閉じ、心を研ぎ澄ます。


「お、おー!」


 歓声の声が聞こえると僕は、目を開く。

 自分の姿をみると、あら不思議。人間の姿に戻ってるではありませんか。

 なぜか服まで完全に元通り。

 というかさっき、服破れてたっけ?


「戻れた、みたいだね……」


 声も、人間の言葉を出せる。よかったよかった。


「これで、一件落着ですね」


「……うん、多分」


 何かを忘れてるような気がするんだが。


「……改めて、助けてくれてありがとうございます」


「どういたしまして。とは言っても、僕だって助けてもらったし。ありがとう」


「どういたしまして、ですっ」


 なんか語尾が変だったけど……まぁ、いっか。


「それから、龍也さん」


 五十嵐さん何か思い出したように口を開いた。


「はい?」


「私のことをこれから“舞”と呼んでください」


「えっ……」


「だって、龍也さんが竜人だっていう秘密も知っちゃいましたし。そのほうが、親しみやすいじゃないですか」


「そうだけど……いいの?」


「はい、構いません」


「そう……じゃあ、舞。帰ろうか」


「はいっ!」


 こうして、僕たちは帰ることになった。


「……あの、龍也さん」


「ん?」


「帰り……乗せてってくれませんか? ちょっとここからじゃあ家が遠くて……」


 ですよねー。

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