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白き竜の魔法  作者: 鬼狐
2章 《知らない過去》
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第28話 『カレーとクレープ』

 アリスが九九が出来無いことが判明して――今度僕が教える約束をした――ついに調理実習の時間となった。

 班はくじ引きで決まっていたらしい。

 僕は休んでいたけどね!

 因みにアリスは自然的に僕と同じ班になった。

 机に置かれた市販のカレールウと人参や玉ねぎ、牛肉とじゃがいもにニンニクなどを見て、アリスは首を傾げた。


「わふ? あの、龍也さま。ルウは作らないんですか?」


 アリスの疑問に今度は生徒達が首を傾げた。


「ああ、うん。今日は、この市販のカレールウを使うから」


「あ、分かりました」


「因みに今日のはガラムマサラも作らないし、使用しないからね」


「はい」


 僕とアリスの会話に更に首を傾げる生徒達。


「カレールウって作れるんだ」

「というか、天白くんってそんな本格的に料理してるの?」

「が、ガラムなんとかって何……?」

「知らねえよ。料理なんてしねぇもん」

「ってか、あの会話からして二人で作ってるのか?」

「アリスちゃんの裸エプロンを拝めているのか」

「佐藤、天白の性格上それはさせてないと思うが」

「料理と一緒にアリスちゃんまでいただいている!?」

「村上さん、天白くんの性格上そんなことはしていないと思うけれど」


 何か酷いことを騒いでいるな。

 ルウぐらい作れるよ。ネットで探せばすぐに作り方は見つかるよ。

 それにガラムマサラというのは、ヒンズー語(だっけ?)で『熱い香辛料』という意味のインド料理に主に使われる混合スパイスである。これを使うと香りと辛みが一段とに高まるのだ。

 

「あんた、相変わらずそんな手間かかることしてるの?」


 藍が茶茶を入れてきた。

 藍はよく僕の家に親子揃って食事に来るから、僕が料理に少し凝っていることを知っている。


「いつもはしてないよ。手間がかかるし、この前だって久々にしただけだしね」


「ふぅん。まあ、別にどうでもいいや」


 おーい! 茶茶入れといてその反応はないだろ!


「ふーんだ。あんた、ちょっと注目の的になってるからって調子乗るんじゃないわよ」


「え? お、おう」


 そう言うと藍は自分の班へと戻っていった。

 ん? どうしたんだろう、藍のやつ。

 確かに竜王になったり、アリスの登場とかで少しはクラスの注目を浴びたりしてるが、別にそんなに変わってない気がするんだが。

 もしかして嫉妬してるのか? 藍ってそんな目立ちたがり屋だっけ?

 …………。


「…………うーん。わからん」


「龍也さま。もうそろそろ作り始めましょう」


「あ、そうだね」


 考えても仕方がない。

 取り敢えず、調理実習を始めることにした。



   ◆



「でも、カレーってコトコト煮込むんですよね?」

「結構時間かかるんじゃないですか?」


 と同じ班の女子たち(しかも竜族)が尋ねてきた。


「あー、種類によって変わるけど、別に長時間煮込まなくても美味しいカレーは作れるしね」


 それに、これは授業だから時間がない。

 さっさと終わらせてしまおう。

 自宅じゃあ作る時は他にも色々用意するんだが、調理実習なのでシンプルに作ろう。

 班の人たちと共に野菜の皮を剥いて、切っていく。

 しかし、それだけのことなのに違う班やらから歓声に近いどよめきが聞こえてきた。


「天白……なんだその包丁さばきは……」

「お、女の子としてのプライドが……」

「手馴れてるわね」

「俺もアリスちゃんに皮を剥かれたい!」

「佐藤! 下ネタはやめろおおおお!」

「私もアリスちゃんに調理されたい!」

「村上さん! シャラップッ!」


 じゃがいもと人参を乱切りに、玉ねぎは薄くスライスする。

 続いて鍋に油を引いて、包丁の腹で潰したニンニクを炒める。

 香りが出てきたら、弱火にする。


「じゃあ、玉ねぎを入れますね~」


 アリスが切った玉ねぎを鍋に入れる。

 そして、また炒める。

 その隣でアリスが小麦粉をまぶした牛肉を炒め始めた。

 玉ねぎがしんなりしてきた人参にじゃがいもも入れてまた炒める。

 炒めた牛肉を鍋に入れ、続いて水を入れて強火で煮込む。

 

「ふう。ここまで順調である」


 僕は額の汗を拭った。

 野菜にお箸が通るようになったら、火を止めてルウを入れる。

 とろみがつくまで煮込む。


「んー。まあ、冷やした方がいいかな」


 というわけで、急遽冷やすことにした。

 シンクに水を張り、鍋をそこに浸して中身を急速に冷ます。


「あとは温め直せば良いかな。あー、でも乱暴過ぎたかなー」


 そして再び歓声に近いどよめきがあがる。


「早い!」

「手際が良すぎる!」

「お、女として……!」

「アリスちゃん! 俺の冷え切った身体を温めてくれ!」

「アリスちゃん! カレーは私の体に盛り付けて!」

「「佐藤!(村上さん!) シャラアアアアアアアアアアアアプッ!!」」



   ◆



「お、美味しい!」

「女のプライドおおおおぉぉぉ!」

「市販のルウなのに」

「これは俺の母ちゃんのカレーより旨いな」

「もう、お店の味じゃん」

「アリスちゃん、俺のどろどろのホワイトカレーを受け取ってくれ!」

「佐藤、よしっ! 喧嘩だ!」

「アリスちゃん、私の体を福神漬け代わりに使って!」

「村上さん、あなたの体は使い物にならないわ!」


 というわけで、何故か僕たちの班のカレーが人気になっていた。

 まあ、隠し味はこれといって使ってないけど、喜んでもらえてなによりだ。


「よーう。中々美味しいじゃねえか。お前のカレー」


「ぅへ? ああ、大地」


 大地は僕の隣の席に座った。


「なんか久しぶりだね、大地」


「はあ? 今朝も会ってたじゃねえか。昨日だって」


「いや、気のせいだよ。気にしないで」


 なんだかこう大地と話すのはなんだか久しぶりである。


「うあー。学校ってだーるいわー。なんか面白いことないかねー。少し前の変な生き物とかドラゴンとかあれから全然なんにもねーもん」


「…………」


 僕だってあれから気をつけているし、あのケルベロスはあの担任教師の所為だからもうあんなことはないはずだ。

 というか、させるものか。

 大地や他の人たちを危険な目にあわせるのは、絶対にさせない。

 そう改めて決意しながら、カレーをかきこんだら喉に詰まらせた。



   ◆



 そして、放課後。

 僕はアリスと二人並んで下校していた。


「わう……申し訳ありません、龍也さま……」


「何が?」


 アリスの落ち込みは火を見るより明らかだった。

 何が彼女を謝らせたのか。


「私の所為で龍也さまにご迷惑をおかけしました……」


「別に迷惑なんてかけられてないけど」


「いえ、そうだとしても、私は結局お役に立ちませんでした」


 うーん。アリスが立ち直ってくれない。

 自己卑下の意識があるみたいだけど、アリスを慰めてあげたい。

 何かないかと視線を周りに配らす。

 そこで一つの売店を見つけた。

 売店というよりもクレープの移動販売車だった。

 お昼はケチろうとしたけど、今回は仕方がない。

 腹をくくろうじゃないか。


「アリス、ちょっと来て」


「え?」


「いいから。ほらっ」


 無理やりアリスの手を引いて、移動販売車までやってきた。


「は~い。いらっしゃい!」


 元気で活気のある店員さん。

 店員さんは、僕とアリスの顔を交互に見るなり、ニヤリと笑った。


「カップルさんたちは何にしますか~?」


「「か、カップルなんて、そんな……!」」


 と僕たちの慌てる姿を見て余計に口の端を吊り上げる店員さん。

 くそう、この人楽しんでいやがる。


「それで何にする? バナナチョコ? ガトーショコラ? いちごミルフィーユ?」


「じゃあ、僕はベリー&ベリーで」


「あいあい♪」


 因みにベリー&ベリーは、ブリーベリー&ラズベリーの略である。


「アリスも何でも選んでいいよ。僕が奢るから」


「で、でも、私は別に……」


 そんなレプリカをガン見しながら言われても……。


「いいから、いいから」


 僕に勧められ、アリスは渋々一つのレプリカを指差した。


「彼氏さんがベリー&ベリーで、彼女さんがクリームチーズストロベリー生クリームね」


「だ、だから、そういう関係じゃあ……」


「え!? じゃあ夫婦!? 既婚!?」


「違う!」


「はい、ベリー&ベリーとクリーム以下略ね。」


「手際が良い! 何時作ってんの!?」


 アリスにクレープを受け取って貰い、僕は鞄から財布を出す。


「じゃあ、二つで六百円ね」


 あれ? 確かクレープの値段は一つ四百円だったはずだ。

 ということは二つで八百円だ。

 ……え? じゃあまさか!?


「店員さん……!」


 僕は感動で震えながら店員さんを見ると、言葉の代わりにウィンクを返してくれた。

 世の中にはこんなにも優しい人がいるのか!

 世の中捨てたもんじゃないね!


「あ、その代わりにキスシーンを見せてくれたらね♪」


「はい、プラス二百円でーす」



   ◆



 出来立てのクレープを手にした僕たちはさっきの移動販売車からできるだけ離れたベンチに座った。

 あの店員は本当にもう……!


「か、彼女ってことはそれはつまり……うぅ」


「?」


 唸っているアリスに首を傾げながらクレープを一口。

 おおっ! 甘味と酸味が生クリームと融合し、サッパリとした味わいに!

 ……僕はグルメリポートの才能はイマイチみたいだ。もう少し詳しく……。

 隣を見ると何時の間にか復活していたアリスはクレープにがっついていた。

 どうやら気に入ってくれたようだ。


「だけど、女の子ががっつき過ぎたらダメだよ。ほら、頬にクリーム付いてるよ」


 アリスの頬についていたクレープを人差し指で拭う。

 指についたクリームがもったいないので舐めたら、アリスが何故か顔を真っ赤にして固まった。


「どうしたのアリス?」


「…………」


「お~い」


「…………」


 返事がない。

 固まった彼女の手を動かしてクレープを口元に運んであげると、アリスはニオイですぐに我に返った。

 あむあむ、と赤面し続けながらもクレープを齧りながら、こちらをチラチラ見てくる。

 何この子の可愛い。

 ニヤけてしまいそうな感情を抑えつつ、僕は再びクレープを口へと運ぶ。

 その時、僕はベンチの向かい側に見える携帯ショップを発見した。

 ああ、そういえば、アリスにも携帯を持たせた方が良いだろう。

 アリスは説明したらちゃんと使いこなせそうだし、違法サイトに入ったりしないだろう。


「今晩辺り、母さんに話そうかな」


「今日夏海さまは帰ってこられませんよ」


 アリスがぽつりと呟いたら、アリスがそう言った。

 帰ってこない? 何で?


「夏海さまはご友人と一緒に旅行に行かれたそうです」


「はあ?」


 旅行? そんなのこれっぽっちも聞いてないぞ?

 

「私も今日家を出る前に言われましたから。なんでも『言い忘れちゃった♪ てへぺろ♪』だそうです」


「あの母さんめ……帰ってきたらお説教だな」


「それで、ご友人というのが藍さんのお母さんだそうなので、藍さんが夕食を食べに来られるそうです」


 なるほど。

 じゃあ、藍の分も夕食を作らなきゃだめだな。

 僕とアリスはクレープを食べ終わるとベンチから立ち上がった。

 アリスはどうやらご満足のようだった。


「今度家でも作ってみようか、クレープ」


「はい♪」


 事件が起きたのは、日が暮れた時だった。

本編のカレーの作り方は保証しませんので、真似しないでください。


絶対ですよ! 振りじゃないですからね!


まあ、分量とか詳しいことを書いてないのでできないと思いますが……。


 ~おまけ~


 NGシーン。


龍也「なんか久しぶりだね、大地」


大地「おうよ。24、5話ぶりだぜ」


龍也「おい待て。話数で計算するな」


大地「ざっと2年ぶりだぜ」


龍也「おい待て。リアル換算やめろ」

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