表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き竜の魔法  作者: 鬼狐
2章 《知らない過去》
27/38

第26話 『翌日の学校では』

 翌日。

 王位が無事(?)継承された翌日。

 僕は学校へ登校していた。

 今日も休むのかな、と僕は身構えていたが、別にそんなことはなかった。

 

『何言ってるのよ! 昨日休んだのに、今日も休むわけにはいかないでしょ!』


 と、母さん。

 こういう時だけ母親らしい事を言う母さん。調子いいなあ。

 と言うわけで、人間界に戻ってきた僕は登校したのだが……。


「……すっごく疲れた……」


 教室に到着した僕はもうすでに疲労困憊になっていた。

 もちろん身体的にではなく、精神的にだ。

 何故こうなったのか――――。


「どうした、龍也? 何か疲れているようだが……」


 机の上に鞄を置いてため息を吐いた僕の後ろから声を掛けられた。

 回想しかけていた僕は振り返る。

 そこにいたのは、ニコ・アラカルトだった。

 ……お? おかしくない?


「え? なんでニコ? 雷土……じゃないのか?」


「ん? ああ。お前に隠す必要がなくなったからな。だから、このままでいいかな、と」


「いやまあ、別にいいと思うけど。大丈夫なのか?」


「? 何がだ?」


 本人はわかっていなかったらしい。

 だって、考えてみたまえ。

 いきなり男の雷土が姿を消して、女のニコがいきなりクラスに現れたら、混乱するだろうが。

 

「それなら心配いらないぞ」


 パニクる僕に対して、ニコはあっけらかんと言う。

 一体全体どこが大丈夫と言うんだ。

 もしかして、転校生とかいう設定なのか?


「この学園――――正確にはこの町での『神田雷土』の存在を『ニコ・アラカルト』に上書きした、と言えばわかるか?」


「それってつまり、え? どういうことだ?」


「つまり、この町に住んでいる人たちは『神田雷土』と言う奴は元からいなくて『ニコ・アラカルト』と言う奴が元からいた、と認識しているんだ」


「……わかったような、わからないような」


「……お前って馬鹿だな」


「何おう!?」


 馬鹿って言われる筋合いないぞ!

 前言撤回を要求するぞ!


「あー、つまり別に問題ないってことだ!」


「うわ、こいつ説明するのが面倒くさいからまとめやがった! しかも雑っ!」


「それで、何でそんなに疲れているんだ?」


「……実は、最初に(・・・)校門前で不良みたいな格好の人たちがいてさ」


「最初に? まさかカツアゲでもされたのか?」


「いや、違う。むしろ逆なんだ。不良たちが僕に対して頭を下げて挨拶してきたんだ!」


「は?」


「それだけじゃない。廊下ですれ違った見ず知らずの先輩方にも挨拶されたよ。おはようございますって。おはようございますって! 敬語!」


「はあ」


「しかも、教師の人にも龍也様って呼ばれた。龍也様って! 様付け! 僕が休んでいる間にこの学園で一体何が起こったというのか!?」


「はあ……いや、それってお前が竜王になったのが原因だろう?」


 ニコの言葉で僕は固まった。

 それってつまり、え? どういうことだ?


「おそらくは、その不良や先輩や教師陣も全員竜族だろうな。竜族だったらお前が竜王になったことも知ってるしな」


「そうなの? この学園ってそんなに竜族いるの?」


「お前は気づかなかっただけだ」


 ぐうっ。反論できん。

 しかし、ニコの言うことが正しければ、彼らの行動に得心がいく。

 竜族は一枚岩らしいし。

 ……ん? 待てよ? もしかして僕の演説も聞いたんじゃないか!?

 ぐああああっ。黒歴史が呼び覚まされる!


「ねえ、あんたたち何話してるのよ。て言うか、そっちの女の子って誰なのよ?」


「ぅへ?」


 唐突に掛けられた声に久し振りに変な間抜けな声が出た。

 振り向くとそこにいたのは、怪訝そうな顔をする藍と舞だった。


「ちょっと聞いてるの?」


 呆けている僕たちは、藍の声でやっと硬直が解けた。

 そして、気がついた。


「「しまった! ここ教室のど真ん中だ――――ッ!!」」


 僕とニコは、絶叫して頽れた。

 あまりの恥ずかしさに死にたくなった。



  ◆



 と言うわけで場所移動。

 流石にあのまま教室のど真ん中で藍たちに説明するのは、色々ヤバイからね。特に僕が社会的にやばい。

 僕はイタくない! 僕は至って健全なんだぞ!

 屋上のフェンスにもたれ掛かりながら、藍と舞に昨日の事やニコの事を話した。


「ふぅん。じゃあ、あんた雷土なんだ」


「女の子だったんですね~」


「あ、ああ」


 藍や舞にじぃと凝視されて、ニコは恥ずかしそうに二人から視線を逸らした。


「ふううぅぅぅん(こいつ、ついこの間まで男だったのに結構胸があるわね。ちっ)」


「これからもお願いしますね(も、もしかしたら、着痩せするタイプで本当はもっと大きいのかも……!? う、羨ましい)」


「あ、ああ。こちらこそ(な、なんだ。二人からもの凄い殺気を飛ばされてる気がするんだが……)」


 ……聞こえる。皆の心の声が聞こえる!


「あれ? でも、さっきニコの話だと雷土の存在をニコとして上書きするとかなんとかかんとか言ってなかった? なんで藍たちは雷土のことを覚えてるの?」


「いやまあ、それをしたのはセルザ様と夏海様だし……」


「ああ、なるほど……」


 因みにセルザ姉は少なからず僕の周りの人間関係は把握している。

 その為、藍や舞のことも知っている。

 あの面白いことを積極的にする二名のしそうなことだ。

 とため息を吐いた瞬間、突然屋上の扉が思いっきり開かれた。

 振り向いた時には遅かった。


「龍ちゃあああああああああああああああああああああんっ!!」


「ふぐうっ!」


 叫び声と共に僕は(強いけれども)柔らかい衝撃を受けた。

 

「つ、ツッキー!?」


 衝撃の正体はツッキーのタックルだった。

 ということは柔らかい衝撃はツッキーの……ようだ。

 ……僕の後ろの幼馴染が怖いから伏せておく。


「龍ちゃああん! 会いたかったよぉ! ペロペロくんかくんかあむあむ!」


「ちょ、やめっ、やめんかっ!」


「きゃうんっ♪」


 米神にチョップを当てられたツッキーの悲鳴は嬉しそうだ。

 やっぱりツッキーは平常運転のようだ。

 しかも、未だに僕に抱きついていた。


「もうっ! 龍ちゃん、心配してたんだよ!?」


「え」


「だって、龍ちゃん昨日休んでたもん」


「…………」


 ツッキーの僕に抱きつく腕の力が強くなる。

 痛くはない。だけど、苦しかった。

 やっぱりツッキーはなんだかんだで僕の事を第一に考えてくれてるんだ。

 僕はツッキーの気持ちを再確認させられた。


「ずっと心配だったもん。電話もメールもしても音信不通だし。家に行っても誰もいなかったもん。夜逃げしたんじゃないかと思って心配してたんだもん」


「……ごめん。心配かけた。でも、夜逃げはないけど」


 そう言ってツッキーの頭を撫でた。

 ツッキーは嬉しそうに目を細める。


「うへへ。龍ちゃんの撫で撫でだ♪」


 嬉しそうに僕の体に顔を押し付けてくるツッキー。


「なんでしょう、この気持ち……」


「見ててイライラするんだけど」


「何故か右に同じ」


 あれー? なんだか後ろの女子たちの様子がおかしいぞ?

 なんか殺気たってる感じなんだが……。


「んー? あれれ? その女の子誰かなー? 龍ちゃんの愛人?」


「違うよっ。あいつは……」


「おっぱい結構大きいね。サイズは〈ピー〉でしょ?」

 

「な、なんで知ってる!?」


 どうやらツッキーの指摘が見事に的中してたらしく、ニコが顔を赤くして腕で胸を隠す。

 そして、それを聞いた藍のカッと見開かれた目が光った。


 その後、屋上でドッグファイトが行われた。

 因みに内容は言わぬが花だろう。

 藍のためにも……。



   ◆



「で、確か武器が欲しいだったか?」


 放課後、僕はニコと一緒に再び竜界を訪れていた。

 理由は僕の武器探しである。


「うん。前まで拳で戦ってたけどさ。やっぱり限度があるしさ」


「ふむ。一理あるな。……ああ、そういえばお前に渡し忘れていたんだが……」


 とニコはポケットから小さな丸い物体を僕に投げ渡した。

 僕はそれをキャッチして見ると、それは手のひらサイズの麻袋だった。

 しかも中々の重量感。それにジャラジャラと言う硬貨のような音……硬貨?


「これって……お金? いやいや! こんなの受け取れないよ!」


「黙って受け取っておけ。もし受け取らなかったら外務の者たちがうるさいんだ。……最悪泣くぞ、あいつら」


「…………」


 受け取っておいた方がいいのか。

 僕は渋々それを受け取った。

 そして、ニコは一つの店の前で足を止めた。


「と、ここだ。ここが私の馴染みの店なんだ。お前に合った武具も見つかるだろうさ」


 と扉を開けて中に入るニコの後を追う。

 武具屋の中はやはり多種多様の武具がある為か中は広い。

 棚や壁には刀や槍などの武器が掛けられている。

 藍とか呼んだら、剣を振り回したくなる謎の欲求に駆られて喜びそうだな。


「いらっしゃい~~~~。ようこそ~~~~」


 やけに語尾を伸ばす眠たそうな声が奥から聞こえてきた。

 奥に視線を向けると一人のパジャマ姿の女性が抱き枕を抱えてカウンターの上で横になっていた。

 ……うん? 武具屋のカウンターの上でパジャマ姿の女性? 

 なんだこの絵図。


「おいプラン。今すぐそこから降りろ。そこはお前の寝床じゃないぞ」


「んん~? あ~ニコちゃん~、いらっしゃい~。何かよう~?」


 パジャマ姿の女性もといプランさんは、眠たそうな目を擦りながらニコに微笑んだ。


「野暮用だよ、野暮用」


「人の頼みを野暮用とか言うなよ」


 いくら親友だからといって言って良いことと悪いことがあるんだぞ。


「あれ~? あれれ~? あれれのれ~? そっちは龍也さま~? やっほ~~元気~~?」


 手を振るプランさん。

 そのプランさんにニコは頭を叩いた。


「お前って奴は……っ!」


「え~? だってだって~、ニコちゃんも敬語じゃないよ~?」


「うっ……そ、それは……」


「いいよ。僕も竜王になったけど、まだまだ未熟者だし」


「ほら~龍也さまも~言ってるよ~?」


「もう好きにしてくれ……」


 ニコが頭を抱えだしたので、そろそろ本題に移ることにした。

 プランさんに事情を説明して店の中を見せてもらうことにした。

 

 僕がその中で日本刀を振るっていた時のことである。


「なあ龍也」


「セイッ! ……ぅへ? 何?」


「いや、お前って剣道でも齧ったことでもあるのか?」


「ん? ん~……どうだろ? ……ああ! そういえば、中学校の頃に剣道の授業って少しだけあったよね。あれぐらいじゃないかな」


「ああ、あったな。世間じゃあるかどうかもわからないけど、そういえばあったな。あの学校は」


「それで? それが?」


「いや、中々どうして様になってるな、と思ってな」


 マジ?

 自分ではあまり実感ないんだけどな。


「ああ。今までで一番良い」


「そうかな。じゃあ、刀で頑張ってみようかな!」


「それでー……その……なんだ」


 急にニコが顔を赤くしてモジモジしだした。

 熱でもあるのか?


「お、お前がどうしてもと言うなら……その……稽古をつけてやらんこともないぞ? ど、どうしても言うなら……」


「マジで!? ありがとう、ニコ! お前が親友で良かった!」


「そ、そうかそうか! 最初に言っておくが、私の稽古はかなり厳しいからな! うん!(ま、まあ……今はまだ親友でもいいかな……友だちよりマシだしな)」


「龍也さま~決まった~~?(ムフフ♪ 聞こえるよ~♪ ニコちゃんの心の声が聞こえるよ~♪)」


 プランさんが眠たそうな声で僕たちの会話に入ってきた。


「うん。決まったよ!」


 なんでプランさんあんなにニヤニヤしてるんだろう。

 面白いことでもあったかな?


「あ~そういえばね~~、実はこの前良い素材を見つけたの~。もし良かったら~龍也さまにとっておきの造っちゃうよ~」


「え!? とっておき!?」


「うん~とっておきの刀を造っちゃうよ~。私的に~龍也さまってすごく好きだもん~。ちょっと時間かかるけどいいかな~~?」


「いいとも! ありがとう、プランさん!」


 因みにその後のニコの様子が少しご機嫌斜めだったけど、どうしたんだろう?

今章のヒロイン二名がまったく出てこない!


 ~おまけ~


メール「竜界にも電話やメールが届くように我々研究者は日々奮闘しているのだ!」


セルザ姉「ほほう! じゃあいずれ、龍くんのボイスを聞きながらオ○ニーが出来る日も来ると!?」


ニコ「(……龍也、ツッコミの時間だぞ)」


龍也「(今日はお前に譲ろう)」


ユリィ「え、エッチなことは駄目だと思いましゅっ!」


一同「「!!?」」


ティアラ「はあはあ……赤面するユリーシャ様かわゆい! あぁんもうダメ! 主従関係なんてしったことかっ! 今日こそはユリーシャ様をペロペロしますよきゃっほおおおおい!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ