第1話 『入学』
春。
それは、出会いと別れの季節。……なんてよく聞く気がする。
そんな春のとある日。
「龍也、ハンカチ持った?」
僕、天白龍也は、高校の入学の日に自分の家の玄関で、持ち物検査を行われていた。
「持ったよ」
「ティッシュは?」
「持ってるよ。大丈夫だって」
と、僕の目の前にいて、持ち物検査を行っている小学4、5年生ぐらいの大きさの女性に言う。
「何が、だいじょーぶよ! ほら、寝癖! ネクタイも歪んでる!」
「だから、これでいいんだって! 誰も気にしないよ! 母さん!」
「はっ! 龍也もついに反抗期にっ!? ……でも、お母さん負けない!」
「何の話?」
そう、この目の前にいる小学4、5年生ぐらいの背丈の人は、僕の母さん。
天白夏海(41)だ。
ポニーテールで、身長は大体小4、5学年生ほどで、どこからどう見ても子供に見える。
41歳には見えない。
そんなことなど本人は、まったく気にしていないらしいが。
「絶対に知らない女の人について行っちゃダメよ!」
「行かないよ! ってか、過保護過ぎだよ!」
「だって、龍也はよくトラブルに巻き込まれるんだもん」
「そんなことないって。高校生になってついて行かないよ。それじゃあ! 行ってきます」
「いってらー」
僕は、学校へ向けて歩きだした。
◆
数分後、僕の通うことになる高校、『蒼春学園』に到着した。
蒼春学園は、創立およそ70年の高校で広大な敷地面積を誇っている。大きさはおよそ東京ドームの二倍。室内プールや剣道場なども、完備されている。勿論、体育館もある。
式典前の時間は教室で待機することになっていた為、掲示板に貼り出されていたクラス割りを確認し教室に入って、出席番号順に指定された自分の席の机に荷物を下ろして、自分の席に座った。
そして、そのまま窓から見える景色を見ていた時に、声を掛けられた。
「あの~!」
「へ?」
振り向くと一人の少女が立っていた。
「あの、私、同じクラスになった五十嵐舞といいます」
五十嵐舞という女の子は、腰ぐらいまである長い黒髪とパッチリとした大きな瞳が特徴な女の子だった。
……でも、なんでこんな展開に?
「僕は天白龍也だよ。えっと、よろしくね」
「はい。よろしくおねがいします!」
と軽くお辞儀をし、他のの男子や女子に挨拶しに向かった。
……なるほど。このクラス全員に挨拶しているのか。
そう思った時。
パコォン! と、そりゃあいい音が鳴ったと同時に頭に痛みが走った。
「いっったぁ!」
痛む頭をおさえて、あまりの痛さで涙目になった目で振り返る。
そこには、僕が見慣れた少女が立っていた。
「何すんだよ、藍! 暴力反対だ!」
藍と呼ばれた少女は、今の僕を見て鼻で笑った。
魚住藍。
僕の幼馴染みだ。いわゆる腐れ縁。
彼女は肩までしかない茶髪に胸はぺッタンコ。
藍の右手には、スリッパが握られている。
彼女は大阪出身だった為か、スリッパを常備している。なお、関西弁はあまり喋らない。この地域での暮らしが長かったのが主の理由だろう。
因みにそのスリッパと藍の足技(つまり蹴り)は、計り知れない威力を持つ(僕が体験者である)。
「あんた、なに舞ちゃんを見て鼻の下伸ばしてんのよ」
「へ?」
舞ちゃん? ……あ、五十嵐さんのことか。
いや、鼻の下伸ばしてないって。……少し見惚れてたけど。
「変態」
「何で!?」
「じゃあ、スケベ」
……こいつ、相変わらず僕に対する扱いが酷い。
どうして僕が、そんなこと言われなくちゃならないんだよ。
「ま、どうでもいいや」
「どうでもいいのかよ!」
僕はどうでもよくないよ!
「それじゃあ、あたし新入生代表の挨拶とかあるから。じゃあね~」
そう言って、藍は教室を出ていった。
「あの、龍也さん」
「ぅへ?」
突然話しかけられたことで、変な声が出た。
やだ、恥ずかしい。
振り返ると、五十嵐さんがいた。
「藍ちゃんと知り合いだったんですか?」
「あ、うん。でも、五十嵐さんと藍って知り合いだったんだね」
「はい。中学生の時に」
知らなかった。
「あれ? それじゃあ、同じ中学校?」
「いえ、違う中学校でした」
まあ、確かに違う中学でも交流はあるだろう。
それから、数分後に先生と思われる人物が教室に入ってきた。
「どうも~! このクラスの担任になった雨宮ラルクでぇす☆ みんな仲よくね☆」
「「「……………うわぁ」」」
なんだこの人は、あまり関わらたくない。担任だけど。
「そ、そんな! 一発目で、自分の属性を生徒に印象付ける作戦が通じない!? ……でも、先生負けない!」
「「「……………何だこの先生」」」
全部否定するつもりはないけど、今は必要ないと思います。
「それじゃあ、これから入学式が始まるから、体育館に並んでしゅっぱぁ~つ!」
駄目だ。この人のテンションについていくのは一苦労だぞ。
……大丈夫か? 僕の高校生活。
僕は席を立った。




