第13話 『いざ異世界へ』
ついに異世界に行きます。
行きますが、今回は主人公が三人の女とイチャイチャするだけです←
藍の母親――葵さんから電話を貰ったのは昼食を食べようとし始めた時だった。
その日は、珍しく藍は学校に登校していなかった。
僕と舞は風邪か何かだと思いこみ、放課後にお見舞いに行こうと話をしていた。
思えば、ここで先生から聞き出しておいた方が良かった。
そのまま昼食タイムになり、電話がかかってきた。
『龍也くん、藍は……来てないのよね?』
「はい? 風邪とかで休んでるんじゃないですか?」
『それが、今日は普通に登校して行ったのよ』
「ええっ!? だって、来てませんよ!?」
『そうなのよ……。学校側から電話がきて驚いたわ。とにかく学校が終わったら藍を探すのを手伝って欲しいのよ』
「わ、わかりました。手伝います」
『ありがとう、龍也くん。娘が世話かけてごめんなさいね』
僕は電話を切ると、舞に事情を話し早退することにした。
全てを舞に丸投げにしてしまった。ごめんね。
弁当だって手をつけてないのに、何処行ってるんだあの幼馴染は……!
◆
全速力で町中を駆けずり回る。
しかし、藍の姿は何処にも見つけられないが、キョロキョロと何かを探している素振りをしている女性を見つけることが出来た。
「葵さん!」
僕の声に葵さんは振り返る。
やっぱり藍のお母さんの葵さんである。どことなく面影が似ている。
「えっ、あら!? 龍也くん?」
僕の姿を見て、驚いている。
まあ、学生なら現在絶賛(?)授業中だ。仕方ないね。
「ど、どうしてここに? 学校は? 今、授業中じゃないの?」
「早退してきました」
「龍也くん、よく悪びれることなく言えるね。というか、サボって来ちゃダメよ! 今すぐ戻りなさい!」
僕は首を振った。
残念ながら、それは出来無い相談だ。
「藍は僕の大切な幼馴染です。そんなのんびり授業なんか受けてられません!」
「龍也くん……」
「それに、今戻ったらクラスの笑いものですよ!」
「本音出てるよ」
とにかく。
「僕は藍が誰にも言わずにどっか行方不明になるような奴だとは思えません」
「…………」
「僕はあいつとは腐れ縁ですし、藍のことはよくわかってるつもりです。だから、もしかしたら変なことに巻き込まれたかもしれません。僕にも藍を探させて欲しいんです」
「……はあ。もう、出てきちゃったものはしょうがないか。でも今回だけよ」
「了解です。それで藍探しなんですけど、葵さんは一度家に戻ってください」
「えっ!? できるだけ多い人数で探したほうがいいと思うんだけど」
「そうかもしれませんが、もしかしたら家の方に何か連絡があるかもしれませんし、藍がひょっこり戻ってくるかもしれません」
「でも、龍也くん一人でなんて……」
「大丈夫ですよ。今は一人でも、放課後になればその他愉快な仲間たちが来てくれますから」
「……ふふっ」
いきなり葵さんに笑われた。
僕、なんか変なこと言ったかな?
「ねえ、こんな時に変なこと聞くけど、龍也くんって藍のことを好きだったりするの?」
「なっ、ななななな―――」
い、いきなり何を言い出すんだ、この人は!?
「そ、そんなわけはないというか幼馴染としては好きだけど異性とはしてはどういったらいいかあんまりそういう風じゃないというかあばばばばばばばばばば」
な、何を言ってるかゼンゼンワカンナイナ!
まさか、この人も母さんみたいな人を狂わす巧みな話術を!?
「うふふ。藍は龍也くんのこと――おっと、ここで私がいったら駄目よね。あぶないあぶない」
葵さんが何か言ってるけどまったく頭に入ってこない。
「私的には、龍也くんなら大歓迎なんだけどなあ。藍のお婿さんに」
「い、いやっ、いやいやいや」
「え? 嫌なの?」
「いや! そうじゃなくて! ほら、藍にだって考えがあるだろうし、勝手に決めちゃうのはどうでしょうか!?」
「……これを素で言っちゃうんだ。藍から聞いたとおり……なのかしら」
「はい?」
素? 藍から? 何の話?
「それじゃあ、私は家に戻ることにするけど、見つけたらすぐに連絡してね」
僕は頷いて、葵さんと別れた。
◆
それから約二時間。
藍は未だに見つからない。
「もしかしたら、もうこの近くにはいないんじゃ……」
ああ、駄目だ。思考がダメな方へと行ってしまう。
ちなみに藍のニオイは家から学校への間の道でぷっつり途絶えていた。
……こんなことを藍にいえば『変態!』て言われるだろうし、舞にいえば『わんちゃんみたいですね』と言われるだろう。言わないようにしなくちゃ!
「というか本当に突然途絶えてるんだよなあ。周りに横道なかったのに」
まるで魔法のように突然消えた。……魔法?
「いや~、それはないだろ~。…………ないよね?」
そういえば、あの時僕を襲ってきた魔物もラルク先生の転移魔法かなんかで現れたんだよなあ。
「……あれ? もうこれ確定じゃね?」
僕はブレザーのポケットから携帯を取り出した。
◆
「やあやあやあ! 学校をサボタージュしてる龍也くん。こんなところで合うなんて奇遇だね!」
「僕が呼び出したんだから奇遇もへったくれもないでしょう」
現在僕らがいるのは学校の体育館倉庫だった。
電話でラルク先生と連絡をとり、ここに呼び出したのだ。
幸い、この先生は現在授業がなかったらしい。
「いやー、まさか藍ちゃんが行方不明なこの状況下で、私を体育館倉庫に呼び出すなんて。……エロいね!」
「ちげえよ! というか、その藍のことで尋ねたいことがあるんです!」
「ちなみに今回私は無縁だよ。もうあれから龍也くんから手を引いたから」
話題を出す前に答えられてしまった。
まるで全てをしているかもように。
「いや、今回は件は貴方が犯人だとは思ってませんでしたから、気にしないでください」
「本当? 実はね、この前龍也くん家から帰る途中でさ、月道ちゃんに脅されてちゃって。『龍ちゃんに今度手ェ出したら許さないぞ』って」
「え!? ツッキーが!?」
普通ならそんなことする奴じゃないのに。
あいつ、そんなに僕のことを……?
「『今度手ェ出したら、《ピー》して《ピー 》して《ピー》して二度と下半身に力を入れられないくらいに調教するぞ!』って」
「わー、ツッキーらしー」
一瞬、きゅんと来てしまった自分が恥ずかしい。
「でも月道ちゃん、あんな風に見えて強いんだよね。おそらく龍也くんが出会った人物の中でもトップクラス!」
「マジで?」
「うん。龍也くんをボッコボコにしたアリスちゃんでも敵わないだろうね。まあ、龍也くんのマザーとタメを張れるぐらいかな」
「か、母さんと?」
でも、母さんって強いのか?
あ、そういえば、アリスを一撃で沈めてたぐらいだし。
「月道ちゃんのことは置いといて。何故私を呼んだのかな?」
「あなたなら犯人じゃなくても藍の場所を知ってると思ったからです」
「勘?」
「はい。それも、竜の勘です」
先生は目を細めて、愉快そうに微笑んだ。
「うん。知ってるけど――――で、それで? どうするつもり?」
「もちろん助けに行くつもりです。あいつは大事な幼馴染ですから」
「大事な幼馴染、ねえ」
「もし教える気がないのなら、力尽くでも聞き出しますよ」
「いや、教えるつもりだけどさ。藍ちゃんは私の生徒だし。でも、こんなところでそんな台詞を聞くと…………ぽっ」
違う違う! 顔を赤らめるな!
そんなエロいことしないぞ!
「まあ、冗談はこれぐらいにして」
いや、本気で冗談抜きにしてね。
わからないかもしれないけど、今とんでもなく緊急事態だったりするから!
「今藍ちゃんがいるのは魔法界だよ。飛ばされたのは今日の朝」
「魔法界……」
メールさんから少しだけ聞いたけど、そこに藍が……。
「ま、前回やりすぎちゃったし、お詫びとして魔法界に転移させてあげる」
「いいんですか?」
「いいよ~。ああでも、今回だけね? あんまり龍也くんを贔屓してるように思われたくないから。それに龍也くん、魔法下手だし~」
グサリと言葉の刃物が心に刺さる。
まあね。まったく使ってないもんね。
ラルク先生は、指をパチンと鳴らした。
一瞬にして僕の足元に魔法陣が描かれていく。
「それじゃあ、行ってらっしゃ~い」
まるで、遊園地のアトラクションの作業員のような送り出しを聞いた途端、景色が一変した。
◆
この世界には、魔法界、魔界、神界、竜界、そして僕たちが住む人間界が存在する。
まあ、ぶっちゃけ人間界だけネーミングがアレですけどね。
魔法界は、科学文明が発展している人間界とは逆の魔法文明が発展している世界だ。
ファンタジー好きの人はウハウハ状態だろう。
この世界観についてもっと詳しく説明しておきたいが、今はそれどころじゃない。
転送されたのは、町のど真ん中だった。
目の前に天使のような人の像がついている噴水がある。広場的なところだろうか。
ていうか、こんな人の多いところの転送していいのだろうか。
辺りを見渡したが、周りの人は気にしてる風には見えない。
逆にキョロキョロしてる僕が見られてる。
「ん? あれ? 僕これからどうすればいいんだ?」
首を傾げた。
◆
とりあえず、町を一回りしてみた。
結論から言わしてもらえば、ここは紛れもく異世界だ。
町の造りは異世界では王道の中世ヨーロッパ風だった。
携帯は町中なのに圏外。まあ、異世界なので仕方ないかもしれない。
そして何より……、
「あのでっかい“大樹”だよな」
町から少し遠くにあるのに、この町からでもよく見ることができる程の大きさ。
その大きさは、雲さえ越えている。
大樹の先が雲に覆われていて肉眼で見ることが出来無い。
「ああいうのゲームの中だけだと思ってた」
いや、今はあの大樹のことなんて考えてる場合じゃない。
うんまあ、どうしたもんか……。
「おやおや、どうかなされましか? 童顔のお兄さん」
背後から声を掛けられた。
母さんのような小学生ボイスだった。
もちろんここは魔法界だし、高校生の僕からしたら、その年齢層の知り合いはいない。
つーか、
「童顔じゃねーし!」
振り返ると、一人の少女がいた。
見た目からしたら、中学1生ぐらいの身長の少女で、クリーム色に近い色の髪をうなじ辺りで一つに束ねてある。耳は長く、ピンと尖っている。人間と思える長さじゃない。
この女の子って、もしかしてエルフって奴なのだろうか?
「じゃあ訂正します。童貞のお兄さん」
「さっきよりも心にくるな!」
「よく『お前童貞だろ。ダッセー』とか言う人もいますけど、童貞って処女に比べれば価値なんて皆無ですから気にすることはないと思いますよ」
「はあ」
「具体的にはドラ○もんの正式職業が『特定意志薄弱児童監視指導員』だというぐらいに気にすることありません」
「いや、それは少しは気にしようか!?」
ド○えもんの正式職業を知ってしまった。
悪意に満ち溢れた職業である。
がんばれの○太くん! ファイッ!
もうあのネコ型ロボットをいつも通りに見ることができないではないか。
「と言いますか。童貞って確か元は人間界のカトリック教とかいうのの修道女のことを示す言葉ではありませんでしたっけ?」
「わからないよ」
「坂口安吾の『おみな』にもこう書かれていますよ。『ひとたび童貞を失った女と、売春婦と、その魂に私は全く差別をつける理由を持たない』とか」
「ねえ、君なんでそんなに童貞について熱弁してるの?」
この少女には、少女が童貞について熱弁させるようなエピソードを持っているのだろうか。
つーか、わからないかもしれないけど、初対面だからね?
名前すら知らないのにこんな親しげに話したことねえよ。
「この間、とあるサイトから初対面の異性にはこーゆー話からだと馴染み易いと聞きまして」
「ネットの情報を鵜呑みにしないで」
色々危険だから。
「ところで、聞いてなかったんだけど、君名前は?」
「はあ?」
自然に尋ねたつもりなのだが、『何言ってんだ、この馬鹿野郎』という顔をされた。
解せぬ。
「名前は自分のから名乗るのがマナーだとマミーに聞かされませんでしたか?」
マミーって……。
しかし、確かに彼女の言う通りかもしれない。
まずは自分が怪しいものとは思われないようにしなくては。
「僕の名前は天白龍也だよ。竜族なんだけど、実は人間界から来て」
「何私を自己紹介する前に話を進めようとしてるんですか。私の名前は、エレア・ルキーニといいます。種族はエロフです」
……噛んじゃったよ。けっこう重要なところで。
「ああ、間違えました。種族はエロフです」
「何も変わっちゃいないー!」
「しかし、一体誰が考えたんでしょうね、このけしからん単語。ちょっと尊敬します」
尊敬しちゃダメだろ。侮辱してるようにも聞こえるぞ。
「あと私の中では、エルフ=萌え系でダークエルフ=エロ系だと思うのですが」
「全世界のダークエルフさんに謝れよ。いや、そもそもそんな話してないし」
「じゃあ、肌の白いエルフと褐色の肌のダークエルフが露出度の高いビキニを着てポージングをしたらどちらがエロいと思いますか?」
「ぬ」
想像してしまった。
確かに白色と褐色だと褐色の方が妖艶さというか……。
「って、こんな会話してる場合じゃなああああああああい!!」
「うわ、びっくりさせないでくださいよ。寿命が5秒ぐらい縮みましたよ」
いや、エルフって長命じゃないのかよ。
5秒ぐらいいいだろ。
「実は友だちを探してて」
僕はエレアにここまで来た経緯や藍の容姿の特徴や服装などを話した。
もしかしたら知ってるかもしれないし見掛けたかもしれない。
異世界だから言葉が伝わらないだろうと思い込んでいた為、人に訊いてこなかったからちょっと期待してしまう。
「あー、その人のような人なら精霊たちが見掛けたとかなんとか」
「本当!?」
「ちょっと変わってる服装だったから印象的だったと」
変わってるって。
確かに学校のブレザーだし。ちょっと変に思われても仕方ないか。
「案内してほしいんだけど。いいかな?」
「……なんといいますか。断っても諦めなさそうな剣幕ですね」
もちろん。意地でも教えてもらうつもりだ。
「まあ、暇ですし。構いませんけど」
エレアはめんどくさそうに僕に背を向けて歩き出した。
「さあ、行きましょう。天白さんのお友だちがいるという“十六夜の森”へ!」
……はあ。ここまで来るのに長かったなホント。
僕のツッコミも多かったし。
やけに会話シーンが多かった気がすんぜ。
どちらのエルフがエロいのか。
まあ、作者の勝手な偏見ですので気にしないでくださいね。
~おまけ~
前回の続き。
ツッキー「アリスちゃんの下着選びと聞いてすぐ参上しました!」
夏海「あら、アドバイスして欲しいってメールしただけだったんだけど」
ツッキー「なに言ってるんですか! 下着選びという隠れビッグイベントに参加しないわけにいきませんよ。さあ、アリスちゃん。そのスポーツブラは置いておこう。勝負下着というからには、よーし、バッチコーイ! とか カモーン! イートミーナウ! というような感じの下着にしなくちゃ!」
アリス「はいぃ……」