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異世界ライフは山あり谷あり  作者: 常盤今
第6章 西方アルタナ王国救援編

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「で、では、さっきの軍議の話はいつどこに行けばいいですか?」


「3日後のお昼に城の受付に来てください。午後一から軍議となります」


「軍議では何か芸でも披露してアピールしたほうがいいのでしょうか?

 幸い自分は少々魔法が得意でして……」


 ちょっとからかってみよう。

 言うならばジャブである。


「よろしいのではないでしょうか?

 何でしたらそのままクーデターでも起こしますか?」


「!?

 ロイター様! この人危険です!!」


「ハハハハ! そんなただの冗談に大げさだなぁ……

 ……じょ、冗談だよね?」


「もちろん冗談ですわ。軍議では置物のように何もしないでいてください」


 ジャブにカウンターを合わせられた気分だ。

 なんだろう? 嫌な予感がするのだが……


「えっと……、まずは城内の飛行許可を頂けないかと思いまして」


 ナナイさんは手元の書類の中から1枚の青い大きなカードを取り出した。


「城内を飛ぶ時はこのカードをぶら下げて飛んでください。そのカードがあっても城には受付か、3階の飛行魔術士専用の出入り口を利用してください。違反したら捕縛されますからね」


「わかりました。次は王国周辺の地図を頂けないかと……」


「地図を差し上げることはできません。しかしながら後でお見せすることはできます」


「お願いします。あと、王都にある魔術研究所の立ち入り許可を申請するのに領主様の紹介状を頂けませんか?」


「魔術研究所……ですか?」


「はい。何でも紹介状がないと許可が下りるまで何年も待たされることになるらしくて」


 おっ!

 ちょっと困ってる感じか?

 いくら何でも領主様に関わることをホイホイと判断はできまい。


 ナナイさんはチラチラロイター子爵のことを伺っているが、ロイター子爵も判断に困っているようだ。


 つか普通に断られたらどうしようか。

 姫様はもうさすがに無理だ。

 あとはゲルテス男爵にお願いするしかない。


「ツトム君。君はどういった目的で魔術研究所に入りたいのかな?」


 さすがに見かねてロイター子爵が入って来た。


「死霊魔術を習得する為の手掛かりが何かないかと思いまして」


「確か死霊魔術は魔物の死体を操るのだったか。さして有益な魔法とも思えないが……」


「あまりにも情報が無さすぎて有益かどうかを判断することもできないのです」


 俺の場合は習得さえしてしまえばポイントを使用してスキルレベルを一気にMAXまで上げられる。

 本当に操るだけならポイントの大損だが、もし自我を持って動いてくれるのなら……、そこまでいかなくてもこちらの命令を聞いて行動してくれる存在として活用できるのなら……

 賭けに成功した時のリターンは限りなく大きい。


「この件に関しては一旦私に預からせてくれ。どの道作戦が終わらない事には手が空かないからね」


「よろしくお願いします」


 紹介状はすぐにはくれないかぁ。

 魔術研究所に行くのは大分先になってしまうなぁ。

 やはり姫様へのお願いを紹介状にするべきだったか……

 いやいや、姫様の肖像画を頂けるなんて機会は、一生に一度あるかないかな訳だし。しかも2枚!!

 どちらがいいかなんて比べるまでもないことだ。


「ツトムさん、他に何かありますか?」


 ナナイさんの目がキラリと光った(ような気がした)。

 先ほどの敗北は相当無念だったようで、リベンジする気満々だ。

 果たしてそう上手くいくかな?

 俺は内心ニヤリとしながら次の用件を切り出す。


「はい。南の砦で狩りをする際に、砦はどの程度まで破壊していいでしょうか?」


「砦で狩り……ですか?」


「オークがたくさんおりますので、絶好の狩場なのです」


 ナナイさんは唇を噛み締め、悔しそうな表情をしながらまたチラチラとロイター子爵に視線を送っている。

 仕方なくロイター子爵がまた入ってこようとするのを俺は目線で制した。

 (そんなにホイホイと助けたら若者は成長しませんよ)と目で語る。

 ロイター子爵はため息を吐きながら、

 (君は彼女より10以上若いはずなんだけどねぇ)と呆れた様子だ。


 オロオロしていた彼女だがロイター子爵の助けが来ないと悟り、意を決して己で決断するようだ。


「……砦は一切破壊しないでください。

 奪還後の守りを考えればなるべく無傷での奪取が望ましいです」


 ほぉ。

 ロイター子爵に優秀と言わせるだけあって中々の判断と思い切りの良さだ。

 中途半端に俺に気を遣う回答をしなかったのは、却って指揮官として好感が持てる。

 ならば……


「強力な個体が出てきた場合はどうしますか?

 こちらも強力な魔法で対抗しなければいけませんし、位置取りによっては砦への被害は免(まぬが)れないでしょう」


「その場合は逃げてください。飛行魔法を使えるのでしたら簡単のはずです」


「しかし、仲間がいた場合は見捨てて自分1人逃げるなんてできませんよ?」


「お仲間……、ツトムさんにいらっしゃるのですか?」


 くそう! 言ってはならないこと言いやがってぇぇぇぇ。

 しかもちょっと半笑い気味に言うだと!

 ぐぬぬぬぬぬぬ。


 俺とナナイさんは近距離で睨み合っている。

 互いに一歩たりとも引かない構えだ。


「君達初対面だよね? なんでそんなに剣呑な雰囲気なのかよくわからないのだけど……」


 男の一生には己のプライドを賭けた戦いというものが幾度かある。

 これはそのひとつなのだ。


 ただ……砦を破壊しない方針というのは正しいだろうな。

 もっとも常識的に考えれば、俺の狩りの為に砦の破壊を認める軍隊なんか存在するわけがない。


「わかりました。砦は破壊しない方向で狩りをしたいと思います。

 もし砦奪還後に内部の清掃が必要でしたら、このツトムにご依頼ください。

 頑固なヨゴレ・匂い・シミも強力な浄化魔法で瞬時に解決! 安心安全確実がモットーのツトムをよろしくお願いします」


「はぁ……」


 もし現地で依頼されるようなら報酬はたんまりと貰おう。


「では次が最後の質問です」


 俺の質問に対応できたとホッとしていたナナイさんに再び緊張が走る!

 先ほどの問いはどちらの勝ちでも負けでもない。言うなればドローだ。

 勝負の行方はまさにこのファイナルバトルに託されたのである。


 再び睨み合って互いの間合いを計る2人。

 この微妙な間合いの攻防から既に勝負は始まっている。

 そんな2人の様子をはてなマーク満載で不思議そうに見つめるロイター子爵。

 2人以外の時が止まったかのような静寂の中で、俺は最後の1手を仕掛けるのだ!!

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