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異世界ライフは山あり谷あり  作者: 常盤今
第6章 西方アルタナ王国救援編

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「あと、これは妹さんに」


 王都で購入したもう1つの包みを渡した。


「い、妹にまで!? もはや何と御礼を申し上げていいのか」


「同じ物ではないが、似た感じのを選んだ。ルルカの御家族にも買ってあるから気にするな」


「……本当にありがとうございます」


「俺がいない間に何かあったか?」


「家には特に。ツトム様のプリンとアイスクリームが今日から売りに出されて、街では早くも話題になっていますよ」


「そうか」




 翌朝、まずはギルドに行く。

 職員のミリスさんに調査依頼のことを聞いたが、指名したパーティーが前の依頼を終えてないらしく俺の依頼はまだ正式には受けてないとのこと。

 仕方ないのでそのまま依頼の打診を継続する。


 次は城に行く。

 姫様への献上品とロイター子爵に面会する為だ。

 面会が済んだらどうしようか?

 南の砦で狩りをするか、ギルドで剣の指導でも受けるかな。


 そんなことを考えながら歩いていると何やら人だかりが……

 その店はノーグル商会の系列らしく、プリンとアイスクリームを販売していた。

 物珍しさもあってか大した人気である。

 しかし見事に女性客だけだった。

 男が割り込む余地はナッシングだ。



 内城の受付で面会を申し込む。

 もちろん王族たる姫様への面会が最優先で、ロイター子爵は予約を入れておく感じだ。


 待合室には10人を超える人数が順番待ちをしていた。

 朝1番の時間だからだろう、待ってる人は商人風か貴族風のどちらかでそれ以外は俺だけだ。


「お若い人はどなたへの面会ですかな?」


 隣に座っている商人風の初老の人に話し掛けられた。


「イリス姫様です」


「ほぉほぉ。王家の方へ表敬訪問なさるとは、お若いのに御立派な事です」


「そのような大層なことでは…… お爺さんはどなたに?」


「ワシは領主様、エルスト・グレドール伯爵閣下にお目通りを願っております。お若い方は西にあるアルタナ王国は御存知ですかな?」


「え、ええ。名前だけで行ったことはありませんが……」


 今日はロイター子爵にアルタナ王国の情勢も聞くつもりだったのでドキッとした。


「ワシは商人をしておりましてな、昨晩アルタナ王国に出してる店から至急便が届きまして、魔物の軍勢が南部の守りを突破して王都に迫っているとか」


「それは確かなのでしょうか? もし本当なら人族に危機が訪れていることになりますが……」


 南部の守りとはおそらくランテスの言っていたルミナス大要塞のことだろう。

 魔物如きではビクともしないと豪語していたが……


「もちろんアルタナの店の者も直接見た訳ではありませんが、信頼の置けるアルタナ軍関係者からの確かな情報です」


「ではその情報を領主様にお伝えする為に?」


「フォッフォッフォ、国同士や軍では魔術士を使って素早く情報のやり取りをしていますからな。ワシらの持つ情報など価値はありません」


 飛行魔法による高速伝令網といったところか。


「でしたら領主様には何を? あっ、失礼しました。自分如きが聞けるような話ではありませんね」


「ワシから話し掛けたのですから構いませんよ。

 もし伯爵閣下がアルタナに援軍を出されるようならその援助を申し出ようと思いまして。

 しかしながらここバルーカは言わずと知れた南部防衛の要衝(ようしょう)。援軍は中央(王都)からということになりましょう。

 ですので我らとしては別の形での支援という話に落ち着くはずです」


「別の形と言いますと食料でしょうか?」


「それもあります。他には資金ですかな。こういうことは商人が各自勝手に行うのではなく、伯爵閣下の名の下にまとめて行うほうが都合が良いのです」


 アルタナ王国はもちろんのこと伯爵にも貸しを作れるという訳か。

 お、老人が立ち上がった。

 今呼ばれた名前はこの老人だったのか、聞き逃したな。


「その若さでここにいるということは何某かの力をお持ちのはず。それをどう使うかは君次第ですぞ。ツトム君」


「恐縮です」


 俺ができることなんて魔物を倒すぐらいしかないけど……

 大要塞を突破し、1国を危機に追い込むほどの魔物の軍勢に対して、俺の倒す数程度がどれほどの効果があるのか。

 面会の後でちょっと様子見に行ってみるかなぁ。


「あっ!!」


 周りの人たちが一斉にこちらを見た。


「申し訳ありません、失礼しました」


 平謝りして顔を伏せる。

 あの老人、俺の名前を知っていた?!

 どういうことだ?

 なぜ商人が一介の冒険者の名前を知っている?

 俺の名前を知る機会なんて……城内ギルドで行われた昇格試験か。

 しかし言うてもたかだか5等級への昇格試験だぞ。商人が気にするような事柄でもないはずなのだが……

 頭の中に疑問符ばかりが浮かぶ状況で名前が呼ばれてしまった。




「本日はイリス様の麗しき御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じ奉り……」


「ツトム、それでは前回と変わりないではありませんか」


 姫様の前で片膝を付いて挨拶しているのだが、直前の老人ショックが尾を引いてるようだ。


「申し訳ありません。改めまして……コホン。

 今日という良き日に姫様への拝謁を賜りましたる此度の栄誉。我が一族は未来永劫語り継いでいきたい所存であります」


「拝謁を許した程度で大げさに語り継がないで欲しいです」


 くっ、老人ショックが……


「姫様のあまりのお美しさを前に緊張してしまい、失敗してしまう私めをお許しください」


「あら。今度はお世辞を言って誤魔化すつもりなのかしら?」


「本心でございます。姫様に一目お会いした時からその天上の女神が如き美しいお姿が忘れられません。

 此度は先日のノーグル商会との縁を仲介して頂いた御礼の品をお持ちしました。姫様に釣り合う品でないのは重々承知しているのですが、どうか若さ故の至らなさとして御寛恕して頂きますよう、伏してお願い申し上げ奉りまする」


 もう何言ってるのかわからねーよ。

 とっととこれあげて帰りたい……


 ため息を吐きながら俺の前にやって来たマイナさんに、豪華に装飾された包みと貴金属店の店主に渡された品質証明書を渡した。

 マイナさんが中身の超豪華な首飾りが見えるようにして姫様の前に差し出す。


「ほぉ……」


 姫様は首飾りを手に取りその豪華さと品質を確かめてるようだ。

 金さえ払ってしまえば俺からすればあんな物はやたらキラキラするだけの玩具にしか過ぎんが、女性にとっては一大事なのだろう。

 男のロマンを女性が理解できないことの逆バージョンだな。

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