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異世界ライフは山あり谷あり  作者: 常盤今
第6章 西方アルタナ王国救援編

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 距離を取った俺に対してランテスは追撃して来ない。

 余裕のつもりか?


 しかしいくら回復できると言っても、これだけの重い打撃だと無視して攻撃を続けることはできず、こちらの連続攻撃は寸断されてしまう。

 ある程度は想定していたとはいえ、やはり回復魔法だけでは勝ち目はないか……


「ふん。多少マシになったとはいえ、剣の腕そのものは上がってないな。回転を上げて回復が追い付かないほどの斬撃を浴びせれば、俺の勝ちだ!!」


 剣術スキルも1から2に上がったんだが、ランテスぐらいの使い手からすれば大した違いはないのだろう。

 だがな……


「あまり魔術士を舐めるなよ?」


「まだそんな口が聞けるとはな。すぐに終わらせてやる。でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ランテスが突っ込んで来た!!

 先ほどまでより1段早いぞ、ギアを上げてきたか!!


 しかし……


 ガキン!!


「なっ!?」


 魔盾で必殺の斬撃を防がれ体勢を崩したランテスに、風槌を放った!


「ぐっ」


 辛うじて腕で防御したか。

 悪いがこの機を逃すつもりはない!!

 風槌を大量射出する。

 当たろうが外れようが関係ない。

 風槌の弾幕でランテスを押し包んでいくのだ。

 回避しようが回避した先も風槌の弾幕圏内だし、防御してもその上から幾十も叩き込んでダメージを与えていく。


「フフハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 訓練場の壁とか床がボコボコになっていくが、気にしたら負けだ。


 もうこれぐらいで勘弁してやろうと勝利宣言をしかけたその時!!


 ガキン!!


 斜め後方からの奇襲を魔盾で防御する。


「チッ。かてぇな」


 コイツどうやって風槌の弾幕から抜け出たんだ?

 ランテスを見ると、体の所々にアザが出来ておりダメージがない訳ではない。


「降参するか? 実剣ならともかく木剣では魔盾……俺のマジックシールドは破れないだろ?」


「ふざけるな。そんな盾はすぐぶち破ってやる!」


 俺に攻撃が届かない以上ランテスに勝機はないはずだが……


 風槌の弾幕は壁とか床の破片や埃が舞って、弾幕の向こうが見えなくなるのが欠点だな。

 とりあえず数を抑えて、床とかに当たらないように撃ち出していく。

 ランテスは細かく動いて剣を振っている?

 剣圧で風槌を相殺しているのか。

 風槌アッパーも混ぜてみるが、簡単に回避される。


 あっ。えっ?

 一瞬で回り込まれた!?

 なんだ?? 瞬間移動か??


 斬りかかって来るランテスに対して、再度魔盾で防御してから今度は魔盾バッシュで確実に体勢を崩させようと考えていると、


 ギィィィィン!!


 !?

 嘘だろ!!

 強化型の魔盾をぶち抜きやがった!!!!


 魔盾を破って迫る剣に対して、剣と左腕を並べるようにしてガードした。

 くそっ。左腕折られたし!!


 そのまま木刀同士で押し合いしてると……


「ごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! お前ら派手にやり合うなら草原にでも行ってやれぇぇぇぇ!!」


 以前に参加した剣の指導の時の教官に怒られてしまった。



 辺りを見るといつの間にやら訓練場には俺達以外いなくなっており、入り口の向こうから遠巻きに見物している人がそこそこいたようだ。

 ランテスと自分に回復魔法を掛け、ボコボコの訓練場を土魔法で修復してついでに浄化魔法でピカピカにして、


「失礼しました~」


 とランテスと2人で立ち去ろうとしたのだが……


「待て!」


 と教官に個室に連れてかれて、こっぴどく叱られてしまった。

 その後罰としてトイレ掃除を言い渡されたが浄化魔法で瞬時に片付け、


「これじゃあ罰にならんな」


 とため息を吐かれ2人とも解放された。




「なんか疲れたから何か食いに行こうぜ。奢るから美味い店に連れていってくれ」


「こっちだ」


 ランテスに連れられたのは、隠れ家みたいな雰囲気のある店だった。



「あーあ、魔法を使えるなら勝てると思ったんだがなぁ」


「引き分けだろ?」


「その通りだと言いたいところだが、あのまま続けていたらこちらの負けだ。魔力が尽きてしまうからな。

 大体あの動きなんだよ? 一瞬消えたかと思ったぞ」


「あれは獣人特有の獣化移動だ。ほんの少しの間だけ高速移動ができる」


「ただでさえ獣人は身体能力が高いのに、さらにその上があるのかよ。獣人半端ないなっ!!」



…


……


…………



「ランテスはどうして王都で剣の指導なんてしてるんだ? 別に冒険者を引退した訳ではないのだろ?」


「ああ。俺は半年前までメルクを拠点に活動してたんだよ。2等級パーティーの烈火と言えばかなり有名だったんだぞ」


 メルクというのは、バルーカの東にあるベルガーナ王国の南部防衛をバルーカと共に担う街だ。

 しかし、ランテスは2等級冒険者だったのか。

 まだ20代の前半に見えるのだが……

 もしかしてオーク村討伐の時にオークジェネラルによって壊滅させられた瞬烈って、コイツの烈火に憧れて名付けたのかね。


「半年前にメルクの南の森で奴と遭遇したんだ。正式名称はオーガの特殊個体、俺はオーガキングと呼んでいるが」


「オーガキング……」


「奴の黒肌は硬く、俺の斬撃はことごとく跳ね返され傷ひとつ付けられなかった」


 強化した魔盾を木剣で破るコイツの攻撃で傷すら付かないのかよ……


「結局3人が奴に殺され、生き残ったのは俺ともう1人だけだったよ。

 その後引退しようか悩んでいる時に王都で指導員をやらないかと誘われてな、今に至るって訳だ」


「そのもう1人の人は?」


「故郷のアルタナ王国に帰ったよ。面倒見のいい奴だったから、腰掛けの俺と違って本気で指導員になってるのかもな」


「そう言えばアルタナ王国が魔物の軍勢に押されているって噂を聞いたな」


「ああ。それは俺も聞いた。おそらく前進拠点のいくつかから撤退したんだろう。よくある話だ」


「そうなのか?」


 その程度のことで昨日のノーグル商会の男が物流に影響出るとまで言わないと思うけど。


「アルタナ王国は南部の防衛をルミナス大要塞が担っている。魔物程度が束になってもビクともしないさ。

 それよりもいいか。奴に出会ったら即逃げろ。通常のオーガの倍近い体躯をしていて、額に角が一本で肌が異様に黒いから見た目ですぐわかるはずだ」


「あ、ああ」


 これってフラグだよな?

 勝負の肝は強化した魔法が通じるかどうかになるだろうな。

 恐らくランテスは実剣で魔盾を2枚~3枚は破れるはず。

 土甲弾は魔盾を5枚は貫くし、強化後の風槍(回転)はそれ以上の威力だ。

 オーガキングにも十分勝てそうな気もするが……

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