035
「明日は城に行く日だから午前中は家でゆっくりしたいと思う」
「かしこまりました」
ベッドで2人をナデナデしながら話すこの時間もお気に入りである。
「ロザリナは午前中防具を買って来るといい。予算は3万ルクでどうだ?」
「もっと安価なものでも大丈夫です」
「普段は身に着けなくても自分を守る大事な装備だ。それなりの物を買うように」
「わかりました」
「防具屋の場所…は……わか……る……
あ、ああ、ああああああああ!!」
大変なことに気付いてしまったかもしれない!
「ツトムさん?」
「ツ、ツトム様、どうかなさいましたか?」
「ロザリナ」
「はい?」
「城内のギルドにカードを預けたということは、ロザリナ達はバルーカを拠点に活動していたのか?」
「はい。もちろん護衛などでバルーカを離れたことはありましたが、基本ここを拠点としておりました」
「拠点にしてどのぐらいになる?」
「10年近くになります。王都で暮らしていたのですが、冒険者になってこちらに移りました」
「バルーカのことは何でも知ってる訳だ」
「何でもとまではさすがに……」
「壁外区域に関しても?」
「はい、バルーカに来た当初は壁外区に宿を取っておりましたので」
こんな身近にバルーカに関する大先輩がいたよ。
昨日の内に気付いとけという話でもあるが。
「ではルルカに城内と壁外区のお店関係を教えておいて欲しい」
「ツトムさん、実はもう今日の買い物の時に少し教えてもらってます」
「それは良かった。引き続き頼む。
それとエッチな下着を売る店は知らないか?」
「エ、エッチ!?」
「ツトムさん?」
やや、やばい。特にルルカの目が……
「い、いや奉仕するのに衣装はすご~く大事なんだぞ」
「さすがにそのような下着を扱う店に心当たりは……」
くそう。王都にでも行って探すしかないのか?
「ただ凝った下着を売る店でしたら……」
「知ってるのか?」
頷くロザリナに紙と鉛筆を渡し、店の場所を書くよう指示する。
これがランジェリーな下着を手に入れる足掛かりになればいいのだが。
「次は狩場について聞きたい」
「……(事情説明中)……で、軍による討伐が行われた西の森と一昨日集落を壊滅させた南東の森でオークが激減したので、他にオークが狩れる場所はないか?」
「そのような状況ですと、西の森の奥に行くか南に行くしか選択肢はないのではないでしょうか?」
「南東の森で戦ったことはあるが、あそこは視界が確保し易かったからなぁ。西の森は今日少しだけ中に入ってみたが、武器も魔法もかなり制限を受けるのが痛い。
待ち伏せや奇襲などされたら呆気なくやられそうだ。特にソロだとな」
敵感知や地図(強化型)があるとはいえ、戦闘中の移動で待ち伏せされたり接近されたりしたら気付きようがない。
「パーティーに入られては? ツトム様の能力であれば索敵と護衛の2人を加えた3人のパーティーでも、十分森で安全に狩りができましょう」
「それは最後の手段だ。パーティーに入ったら朝イチャイチャできなくなるぞ」
「そういう問題でしょうか?」
「むしろそれ以外に大事な問題が他にあるのかと問いたい!」
「はあ……」
くそう。何故にこうも人と人は理解し合えないのか。
ピキーン!
閃いてしまった。
「作ればいい……」
「は?」
「狩場がなくて困っているなら、森の中に狩場を作ってしまえばいいのだ」
「あ、あの、どうやって?」
「風刃で木を切り倒す。倒れた木を収納にしまう。土魔法で森の奥に続く道を作る。どうだ? 完璧な計画だ。至福の千年王国だ」
「ロザリナ、そんなことが可能なの?」
「き、聞いたことがありません。魔術士1人でそんな大規模な工程など……」
「ふふふ。私ツトムが構築しようというのだ。ロザリナ!」
「あ、ありえません」
「完成したら2人を連れて行こう」
「危険ではありませんか?」
「大丈夫だ。我が魔力に不可能の文字はない!」
「ツトムさんは調子に乗るととんでもないことを仕出かしますから、慎重に行動しないとダメですよ」
「だ、大丈夫だぞ。たぶん(小声)」
もっと自分の主を信じてあげて!
翌朝、2人とした後にロザリナにお金を渡して防具を買いに行かせる。
2日ぶりのルルカと2人きりだ。
「ロザリナとは仲良くやれそうか?」
「はい。素直ですし私にとても気を遣ってくれるいい人です」
「それは良かった。
ロザリナを買う時に妹と会うという条件を出してきて、護衛と奉仕に支障ない範囲で許可したけど。
すぐという訳にはいかないが、ルルカも娘さんと会う機会を作らないとな」
「そのようなお気遣いは無用に願います」
「どうしてだ? 別に仲違いしてる訳でもないのだろう?」
「はい。ですが買われた以上は、ツトムさんだけの私でありたいと心に決めましたので」
「それは凄く嬉しいけど……
ルルカが娘さんや御両親に会うことを俺が望んでもダメか?」
「どうしてそのように望まれるのでしょう?」
「ルルカはとても良く尽くしてくれるので、主としてそれに報いたいという気持ちが建前にある」
「でしたら本音は?」
「そ、そりゃあ大切な人の望みは叶えてあげたいだろ」
「!?」
「それに! 俺も他の国や街を知る必要があるし、旅行に行くのもありだ」
「2人でですか?」
「そうだな。その時はロザリナはここに残って妹と過ごさせてもいいかもな」
「ありがとうございます。ツトムさん」
「う、うん」
なんか柄にもないようなことを言ってる気が激しくするぞ。
こういう時はイチャイチャするに限る。
「ふふ」
くっ。ルルカは笑みを浮かべてニッコリしてる。
大人の余裕か。
い、いや俺も精神的には大人のはずなんだが……
ロザリナが帰って来て3人で昼食にする。
買ってきた防具はリビングの隅に置くようにした。
2階の部屋に置くといざ装備するとなった時に面倒だし、その間ルルカから目を離すことになるからだ。
そう言えばロザリナの部屋を決めてなかった。当然2階の空き部屋ってことになるが。
「やあ! ツトム君」
「こんにちわ。ロイター様」
魔法指導の為に城に来た俺をロイター子爵が出迎えてくれた。
このお方は貴族の割には気さくで接しやすい。
「聞いたよ。オーク集落討伐でかなり活躍したとか」
「耳がお早いですね」
「そりゃあ軍とギルドは密に情報交換してるからね。オークジェネラルを倒したとか」
「危なかったのですが、ギリギリ倒せました」
「報告を受けた規模の集落に、ジェネラルがいたことなんて過去に例がない。魔族に何か変化が起こっているのは確かなようだ」




