バレンタインデーにチョコをあげるTS娘の話
「ねえ、チョコもらった?」
コウは苦笑いを浮かべた。
「知ってて聞いてる?」
まあ予想はついてた。だってこいつは今まで一度たりともチョコを貰ったことがないから。
「オタクみたいな事いつも言ってるツケだね」
「正論やめてくれる? ていうかお前も貰ってないだろどうせ」
俺はニヤリと笑い小さな紙袋を掲げた。
「残念、オレはたくさん貰ったぞ」
男のときはコイツの言う通りチョコを貰えてなかったが、今年は違う。友チョコ万歳。
「今ほどお前を羨ましいと思ったことはない」
「羨ましかろう?」
机に顔を突っ伏すコウにニヒヒと笑う。気分が良い。
「可哀想なお前に恵みをやろう」
紙袋から一つのチョコを取り出す。
「まじ!? くれんの?」
「感謝したまえ」
「ありがたや、ありがたや。
お、ハート型じゃん。友チョコでもハート型でつくったりするんだな
ん、オマケに俺好みの甘さ控えめときた。
なあこれ誰から貰ったやつなんだ?」
「オレ」
「へ?」
「だからオレが作ったんだってそれ」
固まるコウの口元についてるチョコを指で拭い、舐める。
「ホワイトデー期待してるから」