白雪君の夢、紅葉君の願い、蓮の望み
癒し系の姫様、白雪君。交差する悲劇はめちゃ好みです。慕った憧れの誰かを殺す。切なくていいです。
どうじに、この暗殺劇は始皇帝暗殺場面に似ているかも……そういう意味で蓮のモデルの一人は荊軻なのかな。
12
彼女を連れて、必死に私たちはにげた。
にげて、にげて、そして、宮廷の裏路地にたどりつきた。
「もう、すぐだから!」
傷口はキツくしめて……抑えているのに!
彼女の傷口から、血が流れごぼれ落ちる、止まらない、紅い絹に血色に染まっていく。
人を殺すことを知っているのに、私は治すことをしらない、どうすれば、どうすれば!!
「……ねぇ、蓮」
連の手をにぎる。
ぬくもりが失われていく。
「ハァハァ……蓮の花を……みたこと……ある?」
蓮? 私の名前の由来……
意識が朦朧している…焦点がさだまってない。
「……いいえ……」
私は首をふる。
「いつか……見せてあげますわね……」
彼女の優しい妄想……
この国では消えてしまうもの……
もう見ることはできない。
死のきわの白雪君様は、一人だけ見ることができた甘い夢をみている。
「はい、いつか、かならず白雪君様」
夢につきあう事しか私にはできない。
青白く、息があさくなる彼女は私をみてわらう。
「私の……ことは……せ、雪と……よんで……」
そんな私に青じろい顔で白雪君様は笑ってささやく。
もしかしたら、彼女の最後の願いかもしれない。
だから、私は。
「見つけたぞ! ここだ!」
現れたのは紅別抄、紅葉君様の兵だ。
これで、白雪君様は助かる。
「首を取らぬのか、蓮」
そう声をかけたのは紅葉君様だった。
混乱する私はふるえる。
鎧を着た紅葉君様……そうか今宵、全てを決めるつもりだった。
「…………できませぬ…私には……」
火の手が上がる、それは儀式殿だ。焚いていた火が燃えうつったのだろう。
その儀式殿を紅葉君様はじっと見ている。
暑い炎は強く燃え上がり、宮城を明々と照らす。
「これで、少しは下賤な弱きものは消えたか」
紅葉君様はつめたくいいはなつ。
その言葉のなかできづいてしまう。
彼の貧しき者がいない国、強い国はそういう事なんだ。
きっと、それは白雪君様の世界と違う。
「もう一度……いう。姉上を殺せ」
私は首をふる。
それを、悲しそうに紅葉君様目をつぶり、ゆっくりと命を下す。
「そうか……では、殺せ!」
そっか……私は
彼女に死んでほしくないんだ。
私が死ぬまで、彼女を守りつづけよう。
剣をにぎり、私はここで死ぬ、そのために戦おう。
この場面は紅葉君の行動力と強さと、優しさと表裏一体の残酷さが出ているなとおもいます。
立つ位置が出ているような気もします。
同時に夢だけ見ていた白雪君の儚さと弱さ、蓮の強さが出ているような気がする。