表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

自殺で気持ちを確かめよ

5月17日水曜日、今日もまた学校へ向かう途中で大雨が降る。暗くどんよりとした空。ジメジメした空気。5月に入ってから雨ばかりだ。憂鬱。それが斎藤ゆいの心をまた沈ませる。朝から両親の言い合い。なんで両親は結婚したんだろう。子供が生まれる前の最高の幸せな過去には、病気の高校生を育てる最悪な辛い現実が付き物だと実感させられているのだろう。癇癪、場違いな空気を読めない発言、話が聞けない。親はこれらを治すのに色んな幼稚園を回ったがそこで起こす問題により退園。共働きだが、園に入れないので子供の世話をしないといけない。苦労したのだろう。そんな毎日が続けばやがて家庭も崩壊する。高校生になり、やっと自分がどれだけ周りを不幸にして来たかが分かる。


「あぁ死んで楽になりたい」


おはよーおはよっ今日もかわいいね!なにそのお団子笑自分で結んだの?うけるー笑笑。私?今日はポニーテールの気分だから、結んできたの!どう似合ってる?


教室に入ると他の人たちの会話が聞こえる。伸ばしっぱなし、ボサボサではない程度にしか整えられない根暗な私には関係のない話だ。

「おはよ〜ゆいちゃん今日も雨ひどいね」

吉田あすかは挨拶がわりに、いつものようにお尻を叩いて来た。痛いからやめて欲しいが話してくれるのが嬉しいから言えない。

「おはよ。あすかちゃん今日の授業の体育、雨だから中止だって、代わりに道徳やるらしい」

教室に入る前にすれ違った教師たちの会話で聞いたから間違いない。

「道徳って、適当に先生が好きそうな答えを言えば点数もらえるから楽だよね」

「でもあすか、道徳ってもう十分学んだよね?今更なにやるんだよ〜めんどくさい」

小学校から中学校、色んな授業をやって来たが道徳ほど、暇な授業はないだろう。だってあすかが言うように、先生が好きな答えを言えばいいのだから。



「おいそれじゃあ授業を始めるぞ」

3時限目、道徳の授業担当の古川が入ってきて教壇に登る。

「最近、中高生の自殺が多い。最近ニュースになってたろ。配信しながら飛び降り自殺した人達のことが。今日はなぜ自殺がいけないのか、その授業をしていくぞ〜」、、、、、、


私はあの自殺した人達の配信を見ていた。2人で空を飛んで、最後はグチャっとなって飛び散って2人が混ざる。どれだけ好きでも、体まで一緒になる事は生きている間はできないが、死ねば2人は一緒になれる。本当に好きならこれと言って幸せな事はないんだろうなとゆいは思った。「好きな人と一緒に死にたい」


放課後あすかを誘って、買い物に行く。あれだけ降っていた雨がぴたりと止んで燦々と晴れている。眩しい。

「ゆい!夜ご飯きょーも一緒に食べよっか!」

あすかは私の家庭の事情を知っているから暇な日はこうして一緒に夜ご飯を食べについて来てくれる。

「あすかちゃんごめんねバイト代私との夜ご飯代でほとんどなくなっちゃって」

「ゆいちゃんもでしょ!もーゆいちゃん可愛いんだから!今日も美味しいご飯探そうね!」


高校で唯一できた友達。私の事を見てくれている。学校ではずっと一緒にいてくれて放課後こうして一緒に帰ってくれる。それだけでゆいはあすかのことが好きだった。一緒に笑っていられる存在を誰にも渡したくない。一緒に自殺したい。


「あすかちゃん今日はスカイタワーに行かない?ほらあそこ!綺麗なとこだよ!」

「えぇーでもゆい、あそこの近くの横浜ビルって確か今日話してた2人が亡くなったとこだよね。ちょっと高いところその話思い出して気持ち悪いから行きたくないなぁ」

「あすかちゃん、スカイタワーに新しいハンバーガー屋さんオープンしたんだよっ美味しいみたいだから行ってみたい!」


結局美味しいものに釣られて、ついて来てくれた。夕食後屋上で2人で屋上の夜景を見に行く。また雨が降って来たからか傘を刺してまで外を見てるのは私とあすかを除いて他にはいない。

「ゆい!こんな綺麗な景色見れるのここだけだよ!」

「あすかがついて来てくれたからだよ、ねぇあすか、私あすかの事が好き。今日の話を聞いて一緒に死にたいと思った。私って変かな?」

「変だよ、流石に死ぬのは嫌かな。今日の話聞いてそんな事言うのはおかしいよ」

あすかは突然私の好意を無下にした。そして露骨に嫌な顔をする。私にはその理由がわからない。一緒に楽しい思い、日常、辛い経験を共にしたいって言う気持ちをなんでそんなに簡単に履き捨てれるのか。


「じゃああすかも私と一つになって、混ざってから想いを共有しよ」

私はあすかを抱きしめて、一緒に飛び降りようとした。だが病弱で体が弱いゆいの力ではそのまま一緒に柵を超えてる事は出来なくて、あっけなく離されてしまう。

「やだやめて!なんなの急に!ほんと無理!」

あすかは私を否定し続けて、逃げようとする。今までの高校生活で一緒に過ごした思い出も何もかも捨てて私の前から消えようとする。それだけは嫌だ。ここまで来たからには一緒に死ぬんだ。思いっきり体当たりしよう。そのまま一緒になるんだ。だが失敗した。体当たりしたのはいいものの、あすかは体勢を崩して柵から転げ落ちそのまま1人で飛び散った。

これだけ高いと下にいる人たちの悲鳴も聞こえない。幸いここにはカメラはない。人もいない。そんなに争ってないから、傷も怪我もない。私は大丈夫。

次私の事を本気で好きになってくれる人と自殺しよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ