努力
あるところに貧しい家が2軒、ぽつりと並んで建っていた。
その2軒の貧しい家には、男と女がそれぞれ一人で暮らしていた。
毎日変わり映えもしないで、ただ生活をしていた二人の人間に、天からの贈り物が届いた。
たった一つの種と、やることがないのであればこの種でも育ててみなさいというお告げ。
両者は変わり映えのしない日常に、あらたな彩を得て、歓喜した。
男も女も家の目の前の畑にその種を植えた。
両者とも毎日水を与え続けた。
種はすくすくと育ち、芽がぐんぐんと伸びてくる。
ある時、男の種は花を咲かせた。真っ赤に輝いている大きな花弁。
とても良い香りがして、男は飛び跳ねるほど喜んだ。
しかし、女の方はどんなに水を与えても、花が咲く気配がない。
隣から漂う甘い香りと、遠目からでもよくわかるほどの美しい花を見て、羨ましく思った。
毎日水を与え続けても、一向に咲かない花を見て、男は女をあざ笑った。
男は花を咲かせることに満足して水やりをやめ、ただ必死に水を与え続ける女を見て楽しんだ。
どんなに馬鹿にされようと、女は毎日水を与え続けた。悔しくて流した涙でさえも彼女は注ぎ続けた。
ある時、女の方の種が花開いた。男と同じ真っ赤でいい香りのする大きな花だった。
いままで流した涙と違って、その目の前の花のように美しく輝く涙を流した。
女はそれからも毎日花に水を与え続けた。
男はうるさく言ってきたが、もう男の声など聞こえていなかった。
花はやがて実をつける。
ここまで頑張ってきた自分へご褒美をあげるように、その実を頬張る。
すると中からざくざくと金貨があふれ出てきた。
貧しかった女にとって、その実は最高のご褒美だった。
男は幸せそうな女を見て、恨めしがった。
もう枯れてしまった自分の花をみて嘆いた。
そんな彼を見て、女は実の中から金貨と一緒に出てきた種を男に差し上げた。
男は泣いて喜んだ。いままでの無礼を詫びた。
男は幸せをつかむために種に水を与え続けた。
しかし、どんなに頑張っても花を咲かせるまではいいが、その後に水をあげるのを怠ってしまい
死ぬまで水滴を流し続けた。