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王子様と文学少女  作者: じゃすみんちゃ
2/11

決め手も何も……

文を書くのって難しいですね。久しぶり過ぎて感覚が戻ってきません。

青春の端を摘んでは、さっさと離す。


告白されて、振るまでの流れは、そんなものだ。



私は同性愛者じゃない。



……と、思う。



少なくとも人と付き合うと考えた時、私は女性と付き合うという方向には思考は向かない。



けれどこうして女の子から告白される度に、私は思うのだ。



ああ、なるほど。


女の子を可愛いと思う人の気持ちが、ちょっとだけわかるな、と。



まあ付き合いはしないけれど。



だって、私のことを一方的に知っているだけの誰かなんて、私の世界には要らないのだ。







「センパイに告白してきた子、泣いてましたね」



いつも通りの帰宅路で、川越は珍しく真剣な声音でそう言った。



見てたのか、と思うと同時に、その声音が私を非難するようなものでは無いことに安堵する。




「毎度の事だよ、今更悪いとも思わない」



「の割には、やっぱり上の空ですよね」




図星、なのだと思う。



実際今日、私は図書室で赤坂二郎を読まなかった。


ただ椅子に座っていた。



声を掛けられても最初は気付かなかったらしいし、こうして川越と歩いている今も、何かを考えるような力が出てこない。


川越は大変に嬉しそうな笑みを浮かべて、私の半歩前を歩いている。



「でも私は安心しました、センパイが私とのこの時間を捨てて誰かとくっついてしまうかもとか、ちょっと思ってしまったので」



「そこまで薄情じゃないから、あんまりそういうこと言わないで」



「過敏ですねぇ」




こういう話題を話している時、川越は心底楽しそうだ。


人の痛い所を突くのが好き……という訳ではないのだろうけれど、私の眉間にシワが浮かぶと、川越は楽しそうにからころと笑う。




「で、センパイ。今回振った決め手はなんだったんですか?」



「決め手も何も……」



なんでだろう。



ハッキリこれだ、と断言出来るような頭は持ってないけれど。



多分それこそ、決め手が無かったのだ、あの子には。




「私、あの子のこと知らないんだよね」



「私ちょっとだけわかってきたんですけど、センパイって以外とプロセスを大事にしますよね。……プロレスじゃありませんよ?」



「私のことを小学生か何かだと思ってない?」



「まさか、小学生の方が賢そうですよ」



川越にとって私は小学生未満らしい。


本当に、大変に失礼である。



けれどプロセスが大事だというのは、確かにそうかもしれない。


私にとっての恋愛の決め手はおそらくそのプロセスであり、それを満たす相手というのは、今の所どこにもいないのだろう。


思わず溜め息が漏れる。



なんかこう、恋人要りません、みたいな看板でも首から提げてみようか。



「センパイ、現実逃避はその辺にしておいて下さい。そろそろスクランブルですよ」



「ああ、もうそんな所なのね……じゃあ、また明日」



「はい、またあした」




川越と別れて、いつも通りの道を歩く。



家に着く。



扉を開ける。




「……、お姉ちゃん?」




するとそこには、妹がいた。



妹は、通っている中学校の制服を来て、靴を履く体勢のまま、座り込んで泣いている。


またか、と思った。


また行けなかったんだね、と。




「今日は頑張れそうだったの?」



「うん、ごめんなさい……」




謝らなくていいのに、とか。


そういう慰めをするターンはとっくに過ぎている。


そんなことは妹も百も承知で、けれどやっぱり涙をためてそう言ってしまうのだろう。



毎回、毎回、本当に。


仕方ないなぁ、と、思わされる。




「大丈夫だよ、おいで、お昼も食べてないでしょ?」



「うん…………」




妹の靴を脱がせて、手を引く。



向かう先はリビング。



今日はちょっとだけ、いつもより疲れそうだ。



だから、また、あした。

新キャラですね。

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