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94:大使館

 ダンジョンゲートを据え付けた岩山の改造が必要になったため、サンドボックス系ゲームのカイトを招集した。

 ただの岩山だからね、流石に大使館と言うには無理がある。

 見た目だけでも大使館っぽく偽装しなきゃならなくなったわけだ。

 ダンジョン内はシステムで自由にできても、外側は手を付けられないんだって。

 オヤカタにトウリョーもサポートにつけて、大使館として胸を張れるレベルに偽装する。

 とはいえ、外から中をうかがえる窓などはつけられないという制限もあるのでなかなか難航しているようだ。デザイン的にね。

 ウォーオブザダンジョンの支ダンジョンシステムは、地下5階層までのダンジョンを最大5箇所まで作ることができる。

 内部にはゲートを設置できて、ダンジョン間での瞬間移動ができるのでいざというときは部隊を送り込んだり、鉱石などの素材を転送したりもできる。

 もちろんガチでダンジョン運営することもできるけれど、5階層までだし大きなイベントは起こらないということで、ほとんどのユーザーが1〜2階層を超高難度にして防衛、3〜5階層に鉱石窟や畜産場などの施設を敷き詰め、最低限の人材配置だけで放置しているそうだ。

 今回のダンジョンは、大使館としての利用が中心となるので第一階層を客室や会議室、広間などで敷き詰めて、2階層以下を生産系の施設で、ということになっているようだ。

 魂ゲージは貯められないけれど、食料品の取引をする上で鉱石などは重要だから全振りすると言っていた。

 魔国で生産できる食材はほぼ肉で、エンバーロックにはかなり重たかったみたい。

 野菜や穀物、魚介類など是が非でもほしいんだろうね。

 ダンジョンシステムには、城をイメージした階層の構築セットがあるので、それを使って大使館部分に使う1階層を構築したって言ってたけど・・・。

 「これ、マズくね?」

 うん、ダンジョンだもんね、城オブジェクトって言ってもやっぱり廃墟だよね。

 いちおう補修して使えるようにはしたみたいだけど・・・。

 急遽俺の貯蔵庫に眠っていた家具類と差し替えることとなった。

 豪華すぎて、ゲームの中ならまだしも実生活で使うつもりないしね。

 売ろうかとも思ったけど、拠点の装飾用に作られた家具類には、不壊という厄介な機能がつけられていた。こりゃ不味いだろってことで貯蔵庫の肥やしになっていた。

 職員として配備された悪魔たちは不服そう(なんでだよ!)だったけど、視察に転移して来たエンバーロックにはたいそう喜ばれた。

 完成後には、一応お披露目の式典と晩さん会が開催されることになって再び第二親王をみどり村に迎えることになったりと慌ただしく時間が過ぎていったけど・・・うん、これは問い詰めないといかんな。

 

 「オイコラ、なんでよりによって大使がヘルミナさんなんだよ。」

 大使館、という名のダンジョンが完成して、式典と晩さん会も滞りなく終了した後の客室。

 式典のためにやって来た魔王エンバーロックに詰め寄る俺。

 「いや、仕方なくだよ。ダンジョン管理に交渉事なんて、今のうちで対応できるのはヘルミナだけなんだよ。いちおう育成は始めてるけど、幹部は戦力重視で揃えちゃったし、すぐには無理なんでそれまでの臨時大使だから。」

 ヘルミナの容姿は交渉事には凶器だ。しかも魔国にとっての重鎮、そんなヘルミナが大使として赴任するなんて、何か良からぬことを、とか考えちゃうじゃないか。

 「うちにとってもヘルミナが抜けるのはキツいんだけどさ、サンザ王国との交易は今後のことを考えても最重要案件だから失敗できないってなったら、ヘルミナ以外いなかったんだよね。あ、もちろん顔は隠させるよ。」

 魔国と俺の取引は実に簡単、支店での食材魔素抜きと鉱石の取引だ。

 しかし、サンザ王国と魔国との取引は全く別物、国対国ともなれば簡単にはいかないようだ。

 サンザ側が期待しているのは、金や銀、ミスリルと言った貴金属、と、表向きはそう言っているようだけど、軍事同盟の話も出ているらしい。

 「う~ん、ナレハテって常識がまるで通用しない脅威があるからこそだろうけど、こんなにすんなりと魔物を受け入れた王国側にはちょっと不安を感じてるんだよね。魔物の国との国交なんて、かなり苦労すると思ってたのに。」

 「そんなの、シンさん達が前例を作ってくれてるからでしょ。」 

 何言ってるんだって顔で言われちゃったよ。

 「ここで何年も前から人と魔物が普通に暮らしてるんだから、受け入れる土壌はちゃんとでき上ってるじゃないの。」

 あぁ、そう言われればそうか。

 オークの姫だったパラミドや、ゴブリンの族長だったンダバは村の代表の一人として王都へも行って叙勲されたり、会議に出席したりしているんだったっけ。

 エグみの無い食材の元になった技術は彼らから教えられたってことになっているので、その功績で勲章を与えられているんだよ。

 実際は、魔者たちを受け入れるための方便だったんだけど、その結果王都でも反感や反発が薄れるのも早かった。まぁ、普通に暮らしているのはまだ、このみどり村だけだけどね。

 後で第三親王に聞いてみたけど、保守的な貴族の中には反対の声もあるにはあったみたいだけれど、ナレハテの件もあって王家のゴリ押しで国交の樹立が決まったらしい。

 グリンウェル伯爵の元に戦力が集中することにも懸念を示す貴族は少なくなかったらしいけど、ならばお前の領に大使館を置くか?と聞かれると誰も声を上げなかったという。

 当然、大貴族が館を構える王都に置くのはもっての他だと大反対、じゃあ、ここに置くしか無いだろうと・・・なんとも締まらない話だ。

 最後に、「しかし、それを直接俺に聞くか?カルケールの元で多少は腹芸を身に着けたと聞いたが。」とあきれられてしまった。

 軍事的な協力とは、もし部隊がナレハテ対策で遠征しているときに国内に落ちて来た時は戦力貸してねって言うことで、軍事力強化とか、そういった意味ではないと聞いて一安心。

 

そうそう、サンザ王国からの大使は、紆余曲折があったものの外務交渉省って組織の中間管理職だった中年男性、マルセルがつくことになった。

 魔物だけの国に行くというのは、やっぱり怖いようでね、醜い擦り付け合いのあと、子爵家四男、仕事はそつなくできるけど、将来性の無い男ナンバーワンと揶揄される彼は、大使としての箔付けのためサンザド・レウルスと言う名字と共に男爵位を与えられた。

 サンザドが付くってことは、俺と同じ王の頼子ってことだ。

 いやいや、異例の大出世、でもモテなかったのは、魔国行きが決まってるからだよね?

 一度あいさつしたけど顔面蒼白、気丈そうな振る舞いがなんともいたたまれなかった。

 うん、大使館は俺の支店と併設だ、せいぜいうまいもんを食わせてやるように伝えるとしよう。

 マルセル君に幸あれ。 

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