9:明るい開拓
2022年最終更新でした。
翌朝ソンチョーから、住人になってくれないかとの提案を受けた。
「ちょうど、住人5人でランク2への条件が整うんです。」
なるほど、自分たちでちょうど5人だ。
「他の条件はもう済ませていて、住人だけが問題だったんですよ。ゲームだと、必要なクエスト消化すれば勝手に住人がやって来たんですけど、全て終わってから一週間待っても何も起こらなくて。諦めるところだったんです。もちろん、行動を制限したり強要するつもりはありません。ここを拠点としてくれるだけで。どうでしょうか。」
魔物渦巻く森の奥深く、安全地帯を拠点にできるのはレベルアップに好都合。しかも、なんといってもここにいればキャベツにニンジンにジャガイモが・・・じゅるり。
「賛成っス。どのみちクソ猿どうにかしなきゃなんないっスからね。ガッツリ作戦組んで勝つまでリベンジっス。」
ユーシンの中ではもう、巨猿との再戦が決定しているようだ。自分的には、とっとと諦めていなくなってほしいんだけど。
「僕も賛成。外じゃアオンたちを使うのも気を遣うし。ここなら出しっぱなしでも問題ないよね。」
アオンをワシワシしながらユーキも賛同した。
ワシワシいいな。
自分のフェンリルは無事だろうか。
いやいや、今はそれは置いといて、自分も賛同だ。
って感じで、即決で入村決定。
ソンチョーが目の前の何もない空間を指でポチポチ・・・うん、コンソールか何かが見えてるんだろうけど、見えない方からは挙動不審に見えるな。気を付けよう。
と、目の前に
『入村しますか? YES/NO』
という文字が見えた。
「YESをポチればいいんスか?」
「はい、よろしくお願いします。」
<<新たにユーシン・ユーキ・シンの3名が住人となりました。
条件を達成したため、「みどりの家」はランク2「みどりの集落」に成長しました。
補助金として、1,000,000ベルと トマトの種10 リンゴの苗木1 が送られました。
利用可能な土地が増えました。50m×50mから100m×100mへ。
以下の設置可能施設数が拡大されました
住宅:1から10へ 畑:4面から9面へ 井戸:1から2へ
新たに設置可能となる施設が解放されました
狩猟小屋:1 倉庫:1 溜池:1 作業場:1 加工場:1
新たに追加となる機能が解放されました
FAX
新たに栽培可能な農作物が増えました。
トマト ネギ 玉ねぎ 小麦 リンゴ >>
どこからともなく聞こえた声、ランクアップは無事成功したようだ。しかし、
「FAXって・・・。」
この世界には無いよな。やっぱり不思議設備か?
「注文手段なんですよ。種とかの。」
ランク1の注文手段は手紙で、自宅前のポストに投函、注文書が届くまで3日、届いた翌日発送されて3日後に届く。つまり注文から到着まで7日かかる。
ランク2のFAXだと、即日注文できて、翌日出荷で3日後に届く。注文からは4日後到着だ。
「まぁ、種とか苗木、肥料や道具だけしか買えないんですけど。」
とソンチョー。いやいや、それ、ゲームの話でしょ。そもそもの疑問があるんだけど。
「いや、届くの?」
そういえば、と顔を見合わせるソンチョーとスローク。
「ポストの時はちゃんと種が届いたんだよね。いつ届いたのかわからなかったけど、いつの間にか郵便受けに入ってたんだ。道具も玄関に置いてあったし。そんなもんなんかなぁと。」
とりあえず使えるか試してみようということになった。
FAXの横には注文用紙の束が置かれている。
なになに、野菜の種類に苗木、大工セット、家畜の解体セット、建築資材か。
野菜も果実も向こうの世界のなんだな。
食べる分にはありがたいけど。この世界で売れるのかね?
建築セット住宅(小)20万ベル。道具とかの値段からすると200万円くらいか?家だと思うと無茶苦茶安くない?
「住宅(小)だととりあえず全員分家が作れるけど、これ、ほんとに掘っ立て小屋みたいな家なんだよね。改築できないし。結果超割高。」
とソンチョー。
「おすすめは住宅(中)。改築、増築ができるし、最初から3LDKなんでとりあえず3人住めるよ。後はおいおい増やしていけば。」
「いやいや、でもこれ80万ベルとか書いてあるっスよ。20万しか残らないじゃないっスか。」
うん、そうなんだよね。小だと3件で60万、残金が倍も違ってくる。
「それにどうやって稼ぐの?この国の通貨はセイルなんだけど、価値基準も違ってそうなんだよね。換金できるなら協力できるし、協力したいけど。」
ユーキの疑問は重要、安全な場所を提供してもらえるだけでもありがたいのに、おんぶにだっこじゃ目覚めも悪い。
「本来なら行商人が回ってくるはずなんだよね。行商人が農作物とかの買取をして、FAXじゃ注文できない家具とかを買えたり、一緒に移住希望者を連れてきたりするんだけど、1回も来たこと無い。」
まぁそうだよね、知られてないし、ここに来るためのルートも無いし。
何とか道を通せば行商人がやってくるんだろうか?あ、でも通貨が違う。う~む。
建物も自分たちで作れるのだろうか。それなら多少は節約できるけど。
作るだけなら、たぶん作れるだろうけどなぁ。途端に壊れたり、全く機能しなかったらしたら無駄になるしな。
「どーなってんだよ、クソ悪魔。」
思わず声に出して愚痴ってしまった。
「「はい、クソ悪魔です。ひどいですね。」」
またしても、というか、意外とマメだな、悪魔。
自分とユーシンは2度目だけど、ほかの3人は初めてなのかその場で固まってしまっている。
「「いや、すばらしい。現在私的ランキングで13位ですよ。あなた。」」
ソンチョーを指さす悪魔。なんだよ、私的ランキングって。
「それ言うために出て来たんスか?ひまスねクソ悪魔。」
2度目でずいぶん慣れたね、ユーシン。
「「申し訳ありません、あまりにもマイナーなゲームでしたので、移植ミスがあったようでして。」」
移植ミスて…。
悪びれもせず、というか、わざとだったに違いない、としか思えない態度の悪魔。ま、クソ悪魔だしね。
「じゃぁ、行商人は来てくれるんですか?」
恐る恐る質問するソンチョー。
「「無理です。そもそもここは誰にも知られてないじゃないですか。知られたとしても、道が通ってある程度安全が保てない限り、外から商いになんて誰も来ませんて。」」
ケラケラ笑い出す悪魔。蹴りたい。
じゃあなんで森の中なんかに転送したんだよって話なんだが、そうでなかったらたぶんスロークはもういないだろう。結果良い方向に進んだわけだが。それとこれとは話が違う。
「なら、俺が軽トラで行商人代わりになればいいっスね。」
ユーシンの軽トラは壊れない。外に出なければ魔物も問題ないってことだね。それでも、やっぱり安定して走れる道は必要だけど。
それに、道があって、この村に価値があると分かれば行商人は来るってことだよね。悪魔の言い分だと。安全性の確保がどの程度可能かは分からないけど、傭兵を護衛に雇ってでも来たい、そう思わせられればいい。そして、そう思わせられる物には心当たりがある。
気が付くと、悪魔がこちらをニヤニヤと見ている。気がする。いかんせん、顔は見えてるのに覚えられないというか、なんというか、相変わらず不愉快だし不安を掻き立てられる存在だ。
「「それはなかなか良いお考えで。あなたは私的期待度ランキングで急上昇中ですよ。」」
だから何のランキングだよ、それは。ってか、考えてること分かるのかよ。
「それはどうも。でも、問題は金の問題だけど。ベルってのはこの世界に存在するの?稼げるの?」
「「それですそれ。私がわざわざ午後のまどろみを諦めてまで伺った理由は。無いんですよ、そんな通貨。困りましたねぇ。」」
「困ってないで何とかしろよ。ちゃちゃっとセイルに変換するとか。そっちがミスったんならそんぐらい当然っスよね。」
おお、強気だね。ユーシン。もう、悪魔への恐怖心とかは吹っ切れているようだ。こういうところは、素直にすごいと思える。
「「無理です。」」
「無理じゃねぇ~だろ。」
「「あなた、ずいぶんとガラが悪くなりましたねぇ。」」
しみじみ悪魔。ガラを悪くさせてるのはあなたです。
「「後から手を加えられないんですよ。まぁ、2~3日午後のまどろみを諦めればできなくもないですが。」」
「できんじゃねぇか。昼寝2~3日でできんなら気合入れりゃ1日でできんだろうが。」
「「健康に良くないじゃあ無いですか。疲れるんですよ、とても。あと、レベルとかもろもろ、最初からやり直しになるけどよろしいですよね。全員が、ですけど。」
「それって、ここにいる、って意味じゃないよね。」
聞きたくないけど確認しないわけにいかない。
「「ええ、もちろん全員。ご招待した皆様の中で生き残っていらっしゃる皆さま全員です。いきなりレベルが1に戻って、どれだけの方が対応できますでしょうねぇ。それはそれでまた興味深いですが。」」
「そんなのだめだよ。たかがこの村のためだけにみんなを危険にさらすわけにはいかない。」
だよなぁ。そうなっちゃうよね。
「いっそ、両替機でもあればいいのにね。」
ぽつりとつぶやいたユーキ。うん、良い案だ。
「「・・・なるほど、それは良いかもしれませんね。ということで、設置させていただきました。」」
なぬ?
ソンチョー宅の玄関脇に、自動販売機のような機械があった。何とも場違いな、派手なカラーリングだ。
「「さして手間もかからず、良い提案でした。ほめて差し上げましょう。」」
なんでか面白くなさそうに告げた悪魔。
たぶん、最初から用意してたな。これは。
もったいつけてたらユーキに先を越されて面白くないんだろう。器が小さいぞ。
「ほめてくれなくていいから、せめて性別を何とかしてよ。」
あ、忘れてた。ユーキにはそれも重要だよね。ってか、ユーキももう慣れた?順応速いね。
「「はい?あ、なるほど、あなた、ネカマちゃんですか。」」
「ち、が、う!絶対違う!」
このイジリはユーキには鬼門のようだね。気を付けよう。
もちろんわかってて言ったんだろうけどね。
「「その程度、そのうちお仲間が何とかしてくれるでしょう。気長にお待ちなさい。」」
そのうちお仲間に?あ、ひょっとしてアレのことか?他人にも、ってかゲーム違っても使えるのか?
悪魔を見ると、ニヤニヤしている。ような気がする。たぶんビンゴか。
「嘘じゃないだろうな。」
ジト目のユーキ。さすがにまだユーシンみたいには凄めないようだ。
「「ええ、もちろん。私は嘘が大嫌いですから。もったいぶったり、ごまかしたり、からかったりは大好きですが。」」
たちが悪いことこの上ないな。
ここ、なんでガスとか水道とか使えるの?なんて質問が喉まで出かかるけど我慢した。ミスったから戻すなんて言われた日にはせっかくの快適が失われてしまう。
「「ふふ、賢明な方は嫌いじゃないですよ。では、またお会いできることを楽しみにしております。」」
悪魔がいなくなった。消えたとかそんな感じとは何か違う。言葉にできないのがもどかしいけど、いなくなる時まで不快にさせる。
ふぅ。頭に直接響く声はかなり疲れる。何と言ったらいいか、ちゃんと聞こえてるし、なんと言っているかも正確にわかるのに、どんな声だったのかは全く思い出せない。なのに聞いた瞬間あいつだと分かるという。不快だ。
ムカつく。イラつく。ドタマにくる。
とにかく最大の問題は何とかなった。と、思う。
みんなで両替機を見てみることにした。
しかし、両替機って言うより自販機だよな。このサイズ。
ボタンがいくつもあって、いろいろと機能があるようだ。
換金:100セイル毎に10ベルに換金
換金:10ベル毎に90セイルに換金
預入:ベル専用通販用の支払いは預入金からしか支払えない。
引出:ベル専用。手数料3%。
種ガチャ:1回10ベル。何かしらの種10粒が出る。
苗ガチャ:1回50ベル。何かしらの苗木1本が出る。
調味料ガチャ:1回100ベル。何かしらの調味料1リットルが出る。
香辛料ガチャ:1回1,000ベル。何かしらの香辛料500gが出る。
酵母ガチャ:1回1,000ベル。何かしらの乾燥酵母1Kgが出る。
塩:100ベル毎に1Kg。
これ、後半は完全に料理しろってことか?
そのうち食わせろなんて言い出さないよな。食わさんけど。
そもそも、現実にはカップ麺くらいしか作ったことないんだがなぁ。調理スキルのポテンシャルに期待しよう。
それに、ベルからセイルに換金するときに1割も目減りするじゃないか。引出時も手数料って。セコいぞ、クソ悪魔め。
さらにガチャ、無駄遣いさせる気満々仕様。ソシャゲ恒例のぼったくりシステムじゃないか。どこで覚えたんだ、あいつ。
下手するとガンガン資金を食らい続ける悪魔のシステムだ。ガチャの内容が明記されていない所もあくどい。しかもガチャだけ、ボタンじゃなくダイヤルとすぐ下に取り出し口、いわゆるガチャガチャのような形状になっている。
「まるでガチャガチャですね。何が出るんだろう。」
くぅ。ユーキよ、今の君はガチャガチャが似合いすぎるからやめてくれ。
「これの利用はソンチョーに一任しよう。ベルしか使えないみたいだし。」
何か危険を感じて先手を打つことにした。
「まじッスか?ちょっとやってみたかったんスけど。」
ユーシン、おまえもか。
「ガチャはやばいよ。ホントにやばい。あっという間に金がなくなるんだ。」
スローク。まさか被害者か。
「奴らは、SSR排出率アップとか、10連ガチャで1枚SSR 確定とか、手を変え品を変えむしり取ろうとしてくるんだ。」
スロークの表情を見ればわかる。相当むしられたんだね。
そう、ソシャゲのガチャは悪魔のシステムだ。
そしてこのガチャは悪魔が用意したものだ。
「やってる時は気が付かないんだ。使いつくして、初めて気が付くんだよ。取り返しのつかないことをしてしまったって。」
自分もむしられた一人だ。ボーナスが1日で消えたとき、もう二度とソシャゲはやらんとスマホを封印してガラケーに変えた。
ソンチョー以下3人がドン引きしているけど知ったこっちゃない。
たった今、スロークと固い絆が生まれたような気がした。
「うん、まぁ、そうだね、当面これは必要なことだけに使おう。」
こうして両替機(?)はソンチョー預かりとなった。
悪魔の襲来(?)でゴタゴタしたけど、資金のめどは何とかなりそうなので住宅(中)を1セット購入。ゲームと違い自分で組み立てないといけないそうなので、入荷したら総出で組み立てることになった。
入荷までの間に溜池や畑の増設など、資材のいらない作業を始める。
同時に、購入した資材以外でも建物などを作れるかどうかの実験も提案した。まずはソンチョー宅の隣に納屋を。大工スキルが解放されたので作り方はわかるし、道具は村長宅の改築に使ったものを借りればいい。うまくいけば、ベルの節約にもなるだろう。
長く使うものを立てるなら、材木を乾燥させたりいろいろと必要なんだろうけど、実験だし簡単な納屋ならまぁ、良いだろう。
ソンチョーとユーシンはさっそく畑の増設を始めることにしたようだ。簡易貯蔵庫から鍬を取り出してユーシンに渡す。ゲームの職業に農夫は無かったけど、拠点ハウスを持てるようになるMODで畑を持てるようになっていて、鍬や鎌が装備品として追加されたのだ。
ユーキとスローク、自分の3人は木の切り出しに向かう。利用できる土地は広がったけど、森はそのままだった。利用するには切り出さないといけないわけだし、安全に材木が手に入ると思えばなんのそのだ。
スロークと自分が斧で木を倒し、ユーキとゴンが枝を落とす。アオンとクマは一応警戒という名のお散歩中。
いや、何となくはわかってたけど、ほんとに全部手動なのね。
以前補正機能付きの斧を落としてしまったことが悔やまれる。
「すごいな。」
肩で息をしながらスロークがこちらを見ていた。
「一応補正機能付きの斧なんだけど、全然かなわないよ。」
というスロークが倒したのは4本、自分は6本だ。
「採集スキルMAXだからね。補正付きの斧は最初のころに落としちゃったんだよ。悲惨な生活だったなぁ。」
この斧はゼノ村で購入した安物だ。
「枝打ちって結構面倒なんだね。腰痛くなってきた。」
ユーキが早くも音を上げる。まだ2本目じゃないか。すでに4本目のゴンの方が優秀だな。
「ソンチョーの話だと、作業場ができると枝打ち用の作業台もあるって言ってたよ。」
ああ、それって機械だったりするのかな。
一台で大木を切り倒して、そのまま枝打ちまでする重機の動画を見たことあるけど、さすがにそれほどすごいものじゃないんだろうな。
「100万ベルだから当分先になるけどな。」
金額にがっくりうなだれるユーキ。うん、無茶苦茶高かったよね。ランク2の設備なのに。
「木の乾燥も1週間くらいでできるようになるはずだって言ってたから、なんかしらの特殊機械はありそうだけど。」
夕方には切り上げて魔素抜きをしておいた食材を取り出して調理、というか、昨夜と同じメニュープラス蒸かし芋だ。昨夜はまだエグみが強くて使わなかったジャガイモを使った。マヨがあればポテサラとかもよかったけど、ガチャはまだ危険だ。デザートに完熟魔素抜きラサの実だ。
油が欲しいな。ジャンクフードと異世界飯テロの王様、フライドポテトやポテトチップスが食べたい。
畑の方は9面完成したそうなので、明日は種を植えて、溜池の作成に入るらしい。
1面辺り10m×10mの正方形の畑が9面。ソンチョー宅を正面に見ながら左手奥に作られた9面の畑は何とも壮観だった。
リンゴの苗木はソンチョー宅の右隣に。
手作業でやらなきゃならないとはいえ、作業速度は相当早い。ある程度は補正が入ってるってことか。ゲームだと一瞬だもんな。
植えた野菜が収穫できるまでは、ゲームで4週間~12週間、作物ごとに違うようだ。
現実的に、となるとかなり大変。トマトやネギは50~60日程度、キャベツ、ニンジン、ジャガイモが100~110日だけど、玉ねぎ、小麦は秋に植えて収穫は翌年の6月頃。リンゴの苗木は実をつけるまでに8年はかかる。しかも、同じ品種の花粉だと受粉しないっていう厄介な性質があるので、1本だけでは実がならない。「他家結実」って言ったかな。違う品種の木を用意して、人工授粉させるのだ。そうして初めて実ができるという厄介さ。父親の実家が農家で、若い頃ちょっとだけ手伝ったことがあるけど、とてつもなく大変だった。
ゲーム補正を利かせてほしいもんだけど、どうなんだろうね。
ソンチョーに聞いたら、最初の作物はすでに収穫できる状態だったそうで、その後植えたキャベツ、ニンジン、ジャガイモは順調に育ってるけど収穫はまだ。この世界に来てザックリ40日くらいだから、ゲームより現実に近いのか?
と、”常識”さんがこの世界、というか、今いるサンザ王国の暦について思い出した。
1年は12か月で区切られ、1か月は30日。ただし、年始めの5日間はどの月にも属さず、安息日として休日に指定されている。冬の終わりでもある安息日だけは、必要最低限の者、騎士や兵士の一部以外は休養が義務付けられている特別な日だ。今、季節は秋に当たるようなのでじきに冬が来る。
よくないな。
正直、1か月での育成状況がどの程度なのか分からないから、現状の把握ができない。少なくとも4週間でできていたキャベツ、ニンジン、ジャガイモがまだ収穫できないのだからゲーム通りでないのは確実だ。
この周辺の冬は結構雪が降るようで、常に腰くらいまで積もってるような状態になる。とは“常識”さん情報だけど、そうなったらもう収穫はできないわけで、下手をすると今植えてある作物は収穫前に冬が来てしまうかもしれない。食料不足に陥る危険が。
あ!防寒具もいるじゃないか!薪も大量に揃えて置かないと凍死する。
やばい!と思い立って、緊急会議を発案した。
「そうですよね、ゲームじゃないですもんね。全然考えてませんでした。」
頭を抱えるソンチョー。ポスドクとはいえ専門は生物学らしいから仕方ない。
「やっぱ、一度外に出て魔石とか素材売らないとっスね。その金で防寒具とか食料買い込んで来りゃいいっしょ。」
ユーシンの軽トラに頼ることになるな。
「問題は、ここがどこなのか分からないってことだよね。」
ユーキの指摘は大きな問題だよね。
「北にまっすぐ進んでみりゃいいんじゃないっスか?確か、この森って東西に長いんスよね。北なら木の年輪で分かるっしょ。」
「あ、それ迷信。年輪の偏りって、地面の傾斜とかでも変わるし、方向無関係なんだってさ。」
昔、キャンプにあこがれてちょっと調べたことがあったんだよね。結局一度も行かなかったけど。
「太陽の方角で東西を、」
「深い森の中だと太陽の位置わかんなくない?」
「じゃぁ、北極星を見つけて、」
「太陽より見つかんないし、夜しか動けなくなるよ。」
「ツんでんじゃねぇっスか。」
ユーシンとユーキの問答は即終了。さて、どうしたものか。
「とりあえず、方向はザックリこの広場で太陽見て決めるとして、まっすぐ進むことに気を付けていけば外には出られると思うけど。なにか、遠目にもハッキリとわかる目印を木に付けていければ極端に曲がってしまうことは防げると思う。」
結局スロークの案以上の解決策は出ず、とりあえずそれで進もう、という結果になった。
問題は目印だ。塗料があれば一番いいけど、そんなものは無い。遠目にも目立つ目印となると、なかなか思い浮かばない。
「いっそ、木を切り倒して道を作っていくとか。」
「いや、時間かかりすぎっしょ。」
「魔物もうじゃうじゃ寄ってきそうだよね。」
「クソ猿は間違いなく来るな。」
巨猿、まだ諦めてないだろうなぁ。木の切り出し中も、たびたび“警戒”に反応があった。
「とりあえず、その猿を倒さないか?自分も参加するんで。」
スロークの提案に、リベンジに燃えるユーシンは即賛同、どのみち食材確保に森に出なければならない以上、巨猿は早いうちに始末した方がいい。ということで、翌日の予定を変更して巨猿討伐が決定した。
討伐となれば、改めて今の自分を知っておかねばなるまい。
氏 名:シン(15)/飯田 真一(48)
性 別:男 種 族:ヒューマン 職業 :超越者 レベル:15
経験値:25481 次のレベルアップまで2519
生命力:78/78 魔 力:82/82 気 力:77
筋力:79 体力:79 敏捷性:75 器用さ:75 知識:77 知恵:75
魅力:75
魔法 :
ライト マジックミサイル マジックシールド スリープ ボディプロテクション
バインド マジックレイン ポイズン ライトヒール ヒール ホーリーライト キュア リカバリー ライオンハート ターンアンデッド キュアディジーズ エンチャントオーラ スピードアップ パワーアップ ディフェンスアップ ファイヤ コールド ウインドボイス アーストーン アイストーン エアスラッシュ ファイアウォール クリエイトアクア ストーンバレット
スキル:
強撃 頑強 斬撃 連撃 強連撃 パリィ 盾術 掌底 応急処置 警戒 強運 静動 遠見 弓術 罠感知 罠設置 採集 追跡(森) 看破 追跡(人) 聴覚上昇 視力向上 見立て 修繕:木工:石工:鍛冶:金細工 鑑定 簿記 資材加工 大工 調理
頭の中だけで処理するのが難しくなってくるな。
咄嗟の時に使えるようにシミュレーションしとかないとなぁ。
結局、夜遅くまで明日の対策に頭を悩ませることになってしまった。
大丈夫かな?
ようやく拠点が決まりました。
ソシャゲのガチャに苦しめられた思いがあふれてしまいました。
年輪で北を知る方法は、一昔前までは真実とされていました。




