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83:王家来訪

 準備に慌ただしかった春はあっという間に通り過ぎ、とうとうやってきてしまった王家のご来訪。

 事が決まったことで、村(というか、すでに立派な町の規模だが)はこれまで以上に活気立ち、住民たちの方から再度の区画整理を持ちかけられたり、遊興施設の新築など大工事が続いていた。

 腰まで積もる雪にも負けず、冬の間中そこかしこで工事が続き、王家の馬車列を受け入れるために大通りが拡張され、高級ホテルが建設されと、大きく姿を変えることになった。

 こんなことができるのも建設チート持ちが複数いるからで、住人たちの多くが前回の区画整理を経験していて、建物をそっくりそのまま移動できることを理解していたからこそだ。

 カルケール伯爵、コリント伯爵の協力も得て、なんとか体裁は整えられたようだ。

 ん?他人事?

 だって俺、引き籠りだから。

 いやいや、ちゃんと仕事はしてたよ。

 ただ、魔道具作成が山のようだったから引き籠りになっちゃっただけだからね。

 

 とにもかくにも、貴族位を持っている面子は、みどり村範囲内から出られないソンチョーを除いて総出で森の入り口までお出迎えに出向いている。

 お世話係の執事、メイドさんたちに、護衛のため戦力の3割ほどの人員も集結しているので結構な大人数だ。

 不本意ながら俺も参加させられている。

 って尻に痛みが。

 お猫様め・・・どうやら気分がまた顔に出ていたらしい。

 「まもなく到着です。」

 影に潜んだ伝令役のシャドウデーモンが、王家御一行が近くまで来ていると報告してきた。

 あぁ、めんど・・・イカンイカン。

 これから15日間、俺は結構忙しいのだ。

 不意に不敬な態度が出てしまわないよう気を引き締めなければ。

 最大の不安要素は俺自身だけど、同レベルでヤバイ双子、レンとユイは、チルンジャ―達と大枚はたいて購入したヒーロー&ヒロインコンプリートチケット(配信用)の一気視聴と大量の菓子類で拠点に釘づけにしている。なんせ、戦隊ものは50シリーズ、ライダー30シリーズ、魔法少女20シリーズを超える上、1シリーズ50話の超大ボリュームだ。一睡もせず見続けたとしても100日以上はかかる。十分釘付けにできる・・・よね?

 浅はか?

 知らん。

 子供には動画だろ?

 違うのか?

 なんか、急に不安になってきた。

 

 あぁ、見えてきちゃったよ。

 王家の旗を掲げた騎士を先頭に、とうとう来てしまった。

 散々叩き込まれた作法を思い返しながら迎えると、街道を村へ。

 俺はフブキにまたがって、王家の乗る馬車のすぐ脇についた。いちおう王の頼子なのだよ。

 ひときわ大きく豪華な馬車には、王と王妃、側妃2名が乗り込んでいる。その後ろに王太子家、第二親王家、第三親王家が続き、移動中最後の滞在地だったカルケール伯爵領からの案内と言う体でカルケール伯爵家の馬車が、さらには側王家と続いてゆく。

 王家の避暑は一大イベントなのだ。

 途中の滞在地も名誉なこととされていて、選定やら何やらも大事みたいだよ。

 王家への忠誠心を高めるという意味でも重要で、今回の避暑も、北のカルケール伯爵領から入って南のコリント伯爵領から帰るという行程を踏むことで、より多くの領地を巡るんだそうだ。

 王と言っても、ただふんぞり返って命令してるだけってわけじゃないんだね。って、当然か。

 村までの道中は特に問題も起こらず。

 事前に念入りな魔獣討伐を行っていたし、魔物除けの魔道具を大盤振る舞いで設置したからね。

 村に入ったら取り外して、メンテ後南側の街道周辺に設置してもらうことになっている。普段はある程度は魔獣に入ってもらいたいからね。

 それを警備員がさっそうと退治、それを見た渡航者が感謝、通行料を気持ちよく払ってくれたり、街道専属護衛隊を雇ってくれたりでお金を落としてもらうのだ。

 村でのセレモニーも一通り済んで、守護神像を目の当たりにして感極まる光景も毎度のこと、ゲームで三大残念なんて言われている代物だなんて夢にも思うまい。

 晩さん会も滞りなく。

 マスター渾身のコース料理と酒類は大好評、最後のシャーベットにアイスクリームも、特に若年層やご婦人方から高評価を得た。

 その後懇親会という名目の会議。

 いちおう避暑、休息という名目上仕事っぽい呼び方はしないことになっている。

 主な話題は4つ。

  食材の輸送問題

  代行業出店問題

  ナレハテ対策

  ヒノモト問題


◆食材の輸送問題◆

 いよいよ、宮廷魔術師とファーレン魔術師団が協力開発していたという保冷輸送車が実用段階に入ったということで、安定的な食材輸送のための取り決めを行った。

 まずはサンザ王国王都、ファーレン王国王都、クリトニア王国王都、あと南側に隣接するキルテス帝国帝都の4か所へ、3か月に一度出荷することになった。

 保冷輸送者の性能はというと、大体0度から5度くらいの低温度を保持する、要は冷蔵庫並みの性能。

 したがって、移動に長期間かかる以上、生肉や、一部の生野菜などの生鮮食品は不可能。

 日持ちする果実や根菜類、加工食材を提供することとなった。

 ついでに、マイナス18度(っていう概念を教えるのに苦労したけど)以下を安定的に実現できるならもっと多くの食材を提供できると、はっぱをかけてみた。

 向上心をあおっておくにこしたことは無いだろう。なんせ、今回のプロジェクトにもかなりの研究費が投じられたらしいし、魔術師たちの収入アップにもなるし頑張ってもらいましょう。

 

◆代行業出店問題◆

 冬の間止まっていた出店調整、キルテス帝国を含めた3か国への出店依頼が入った。

 食材のエグみ取りは、現在では世界規模で注目の的になっているようでサンザ王国へ取り入ろうという国が日を追うごとに増えているようだ。

 国と言っても、キルテス帝国以南の地域には都市国家程度の小国がいっぱいあって、それほど豊かでも無いとあってサンザ王国としてはあまりメリットが無いそうなんだけど、距離も遠く仕入れに来るのも難しい、ということで、数か国で協力してアピールしてきたりと、いわゆるロビー活動が活発らしい。

 シャドウデーモンの報告によると、どうやら大国の中にはエグみの正体が魔素ではないか、という推測にたどりついている国はあるみたいなんだよね。

 ただ、食材から魔素を抜く技術の開発には至っていないらしい。

 当然だ。魔素を抜くには、魔素の無い空間を作らなければならない。魔素の無い空間を作るには、ノエルさんが作ったような魔道具が必要で、それには非常に特殊な鉱石が必要。

 俺がマネて作ったものは、エイルヴァーンの素材が必要だし、現在加工場に使用している魔素の無い空間を作るための魔導印は、クソ悪魔の協力があってこそ実現したもの。

 簡単に作られてしまっては俺がさんざん苦労した意味が無いってものよ。

 クソ悪魔がリークしなければの話だけど。

 そんなわけで、出店準備を進めるようにとのお達しがあった。

 

◆ナレハテ対策◆

 現在もポツリポツリと落ちてきているらしいナレハテ。

 サンザ王国でも手をこまねいているわけにはいかないと、対策チームを組むことになった。

 王太子を長とする組織で、王都に本部を設置、なぜか部隊長として俺を指名され、部隊の人事権と命令権もおれに・・・って、丸投げかよ!

 俺が言うな?

 ・・・ごもっともです。

 要するに、功績稼ぎの意味も含めて王太子を長に据えたけど対処できるのはこの村だけ、で、性格的に問題ありありだけど、俺は王の頼子だしってことで部隊長に据えられたわけだ。

 悔しいです!

 こうして俺には、サンザ王国内ではナレハテに対してのみ、活動の自由と公爵級の権限が与えられることになった。

 いらんです!

 国外に対しては、王太子を通じて王からの命令があれば出動要請が入ることになるんだそうで。

 はいはい、せいぜい有効活用して恩を売ってくださいなッと。

 

◆ヒノモト問題◆

 ナレハテ対策の件も相まって、ファーレン王国から協力の打診、というか厄介払いの提案があったそうだ。

 ヒノモトの戦力組み込みである。

 こっちの意思関係なくすでに締結済みで、秋の対策チーム正式発足時、同時にヒノモト勢もこの村の配属になるらしい。代わりに、ファーレンにナレハテが落ちた時は優先してねって取り決めらしいけど。

 白蜘蛛退治早すぎない?

 十年くらいかけてのんびりやってほしかったんだけど。

 一刻も早く厄介払いしたかったんだろう、ファーレン王家が懸賞金までかけて白蜘蛛情報の提供を国民に呼びかけた結果、いやんなるくらい早く解決してしまった。

 ロン毛とマサトシだけでも残してもらえませんかね?

 ダメですか。

 はぁ・・・。

 

 細かい議題を含めるとかなり濃い話し合いは深夜遅くまで続いた。

 俺の負担多すぎない?

 なんて文句が言えるはずもなく、枕を涙で濡らすのだった(心の中で)。

 

 2日目以降数日は、一同揃っての観光的な行動だったので比較的楽だった。

 劇場やレース場のほか、新設されたモフモフ系魔獣のふれあい牧場とか水族館、浴場施設なんかを見て回った。

 もちろん夕食後はお仕事。

 個別での打ち合わせや会議で忙殺されました。

 俺、多すぎない?

 ソンチョーやスロークですら一日一件くらいなのに、俺、3~4件掛け持ちなんですが。

 終わったと思ったら次の人たちが待ち構えてるんだもん。

 オラ、過労死すっぞ。

 

 一通りの施設を楽しんでもらった後。

 ここからが本当に大変なのだった。

 自由行動になるので思い思いにばらける。

 ほったらかしになんてできるはずも無いので、爵位持ち全員で分かれて付き添うことになる。

 魔者や魔獣に警戒心を捨てきれない人も少なくないから気を遣うこと使うこと・・・

 ソンチョーは学園の校長という立場なので免除、なんともうらやましい。

 スロークは当然王家の付き添い。

 俺は親王たちに付き添うことに・・・なんで俺だけ三家族?

 む~り~。

 え?

 あ、そうか、忘れてた。

 ドラゴンに会いたいって子がいたんだったんだね。

 でも、王太子殿下のお子様がって話じゃ?

 「実は、その話が他のお子様方にも広がってしまいまして。」

 そう耳打ちしてくれたのは、第三親王のデキる執事さん。

 マジスカ~。

 仕方ない、拠点へ向かうとしよう。

 シャドウデーモンを通じて、運動場にフレイヤと、モフモフ系を代表して従魔からフェンリルのハクア、騎乗魔獣からブリザードウルフのフブキ、グリフォンのエースを集めてもらった。

 九尾のコンは性格に不安があるので今回はパス。

 ・・・こうしてみると、モフモフ系少ないな。

 性能と難易度重視で集めた弊害が・・・。

 まぁいい、主役は龍だ。

 子供が10人もいるからちょっと不安だけど。

 無事に済みますように・・・。


 

 無事、と言えるのだろうか、これ。

 運動場はカオスに包まれていた。

 俺はもう、ダメかもしれない。

 

 馬車の列を引き連れて拠点へ。

 とりあえず、びっくりして混乱しないようにおとなしく待機してもらってるけど・・・まさかご婦人方も同席とはなぁ。ちょっと不安だよ。

 王太子殿下の子供がって話だったのにさ、親王家揃ってだもんなぁ。

 小さな女の子までいるし、泣き出したりしないだろうな。

 ドラゴンって言えば火竜だろうとフレイアに待機してもらってるけど、この暑さだからブリザイアの方が良かったかな?

 比較的性格も穏やかだし。

 比較的だけど。

 ま、何とかなるか。

 拠点の前に馬車をつけると、歩いて運動場へ。

 すでにフレイアの巨体に気が付いた子供たちが沸き立っている。

 そのあとはもう・・・大混乱だった。

 駆け出す子供たちと、慌てて追いかける従者たち。

 何も考えずにドラゴンに触ろうとして、必死な従者に抑えられる子、周りの雰囲気にのまれて駆け寄ったけど、巨大なフレイアを目の当たりにして我に返り呆然とする子、泣き出す子・・・。

 子供が心配でも、恐怖に身をすくませて動けないでいる母親。

 地獄絵図だ・・・。

 ハクアやクロウたちの協力で何とか事態を落ち着けたけど、危うく首ちょんぱされるところだった。

 落ち着いた後は、ご婦人方には冷たく冷やしたソフトドリンクと売り込み目的で魔道具式扇風機で涼んでもらい、男連中には、ようやく納得いく出来になって来たビールを、キンキンに冷やして。

 どれもめちゃ好評でした。

 扇風機もビールもソフトドリンクもしっかり発注いただきました。

 子供たちはフレイアやハクアたちにもすっかり慣れて大はしゃぎ。

 昼食は、そのままBBQ。

 ワイルドな食事も初体験でしょう。

 大騒ぎの一日、俺は・・・おっさん達に捕まっていた。

 「だいたい、なんでお前は王都へ来んのだ。」

 ずいぶんメートルの上がった第三親王が絡んでうざいんですけど。

 「俸禄を受け取らない貴族は歴史上初めてかもしれないね。」

 第二親王は、第三親王に比べて随分と物腰が柔らかい。

 学者肌で歴史の研究に傾倒しているらしい。

 年始に王城へと出向いて俸禄を受け取るという行為は、王に忠誠を誓うという意思表示でもある儀式みたいなもので、参加しない者へ俸禄が支払われないことは、罰則の意味もある。

 行き過ぎれば、反抗の意思有として罰される可能性もあるけれど、俺の場合は定期的に献上したりと貢献が高いので許されている。

 「卿は祝賀会など公の場を嫌っているようだが、あれらの場は自分自身の立場をハッキリさせる意味もある。あまりにおろそかにすると、利用しようと暗躍する愚か者も出てくることになろう。」

 あ、なるほど、今日王太子家、親王家がご婦人方も揃って来たのは、祝賀会に出ない俺のためか。

 俺と三家の間は良好、余計なちょっかいかけても無駄だと。

 「ご配慮いただき感謝いたします。研究にかまけてご心労をかけてしまっていたようで。」

 深々と頭を下げて謝意を示した。

 仕方ない、来年からは出るとしよう。

 

 10日目にもなるとだいぶ落ち着いて、こちらの負担もグッと減った。

 ご婦人がたの一番人気はエステや劇場、男性陣はレース場にバー、子供たちはモフモフ牧場に水族館と、気に入った施設をのんびりジックリ堪能して過ごすようになったからだ。

 と、言いながらも王や王太子、親王は連日学園や病院、市役所などの視察をこなしている。

 学園と病院、交番的な役割の警備詰め所に関してはかなり関心を持ったみたいで、複数回にわたって視察に入って事細かく質問されていたな。

 

 最終日、コリント伯爵家が迎えに来た。

 来訪時と同じく、森の入り口まで同行するといよいよお役御免。

 やっと長く面倒なおもてなしから解放された。

 うん、もう二度とご遠慮したいです。

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