82:新たな住人?
拠点に新たな住人が増えました。
いや増えるなよ!
8階層の連中は、訓練施設攻略を完了したあとも当然のようについてきやがった。
いくつか約束しちゃったこともあるから仕方ないと言えば仕方ないけど。
仕方ないのか?
約束果たすにしてもついて来ることないし。
なんか、8階行ってから変な方向に流されてない?
そもそも、何なんだよライダーに戦隊に魔法少女って・・・もう一つ忘れちゃいけない要素が欠けてるでしょうが!
むしろ魔法少女よりそっちでしょうが!
って違う!
そういう問題じゃないんだよ。
とにかくレンとユイだ。
やりたい放題やってくれてるけど、ここらで一つとっちめなければならない。
無理か。
逆にしめられそう。
うん、とりあえず穏便にお話をうかがいましょう。
「あ~、あの二人はどこにいる?」
「お二人はプチキャットよりこちらへ向かっているご様子です。」
監視させる、なんて危険行為はさせられないけど、村や周辺で警備に当たっているクロウの配下達から双子の動向は簡単に知ることができる。
双子は、村人や来訪者に紛れて不審者を監視してくれている悪魔たちにもちゃんと気が付いているようで、よく挨拶されると嬉しそうに困っていた。
困ってるのに喜ぶなよ、隠密行動中だろ。
いや、分からないでもないけどね。
普段誰からも分からないように活動しているわけだし、絶対的強者である双子に認識されているって感じるのはうれしいんだろう。
でもダメでしょ、それじゃ。
今日も大量のテイクアウトを抱えた双子が帰って来た。
これ、結局こいつらのご飯だったわけか。
手下?達がここにいることに驚いた双子だけど、いきさつを話すとすんなり納得、早速テイクアウトしたお菓子をパクつきながら鑑賞会をするんだと言い出した。
いやマテその前にだ。
「そもそもなんで俺が持ってない戦隊ものとか魔法少女なんて知ってるんだよ。」
・・・
・・
・
俺のノートPC使いこなしてやがった。
いや、俺が部屋に放置してたのが悪いっちゃぁ悪いんだが、使えるなんて思わないじゃん。
しかも、いつの間にか日本語までしっかりマスターしてるし。
体も精神年齢も子供なのに頭脳だけは熟練の天才学者も真っ青なんだから始末に負えない。
勝手にネットを駆使して、戦隊に魔法少女、ライダー動画投稿サイトに違法アップロードされたものを探し出して見ていたらしい。
ちなみにウルトラヒーローは、巨大すぎるから断念したということだ。
やめよう違法アップロード。
おかげでめんどくさいことになったじゃないか!
あげく、ご当地マイナーヒーローに地下アイドルまでもチェックしてるみたいだし。
末恐ろしい子たち。
なんて考えてる間にも、勝手にPCをいじりだしたのでストップをかけた。
一応、この世界では向こうの世界の法律やモラルなんて関係ないけど、気分的に良くないので向こうの俺が登録している動画配信サイトでだけ見るように指導した。
お、いつの間にか特撮専門サイトやらアニメ専門サイトなんてものまで契約してるじゃないか。
ヒマ人め・・・俺か。
とりあえずは正規品だから画質もきれいだし。
あ、そういえば、いくつかのサイトには悪質?なことに、無料動画の中にレンタル動画も混ざってるんだよな。これ、再生されたら向こうの俺が払わなきゃならなくなるなんてこと無いよな?
ちょっとドキドキしながら、試しにポチっと・・・あ、ここは一応こっち向きに翻訳されてるんだ。
画面に自販機のコイン投入口のようなイラストが表示されて、金額もベルで表示されている。
高けぇな、オイ。
向こうの10倍相当じゃねぇか。
せっかく資金問題が解決したばかりなのに。
・・・そうか、どうせこいつらが見るんだし、自分で稼がせよう。
村人との交流にもなるだろうし。
といっても、警備か街道巡回くらいしか仕事無さそうだけど。
あと問題は日本語か、そっちはソンチョーチートで覚えてもらおう。
ソンチョーは、現在は村の学園の校長先生を兼任している。
と、いうのも、校長という役職をもってもらうだけでも学園全体の学習効果が高くなることが判明したからだ。もちろんソンチョー自らが教えた方がより効果が高いけど、それでも普通に教えるよりはるかに効率がいい。
以前、カルケール伯爵を始めて招く際に、劇場で公演するための楽器を提供させられたことがある。この世界には無い楽器で、教えられる者もいない中担当になった二人は、レッスン動画だけで貴族にお披露目できるレベルまで上達しなければならなかった。
その時、ソンチョーに付き添ってもらっただけで驚異的な学習効果を発揮したのだ。
それ以来、どこまでソンチョーの学習チートが有効かを調べてきた結果が、校長という役職だ。
役職だけではなく、学園に滞在しているという条件も加わるようだけど。
ソンチョーに直接指導してもらえれば、あっという間に日本語はマスターするだろう。
ちょっと迷惑かけるかもだけど。
俺はその間、装備作成のために籠らなければならない。
雪もチラついてきたし、アオイたちからショーケースだの冷蔵庫だの催促が来てるからちょうど良い。
とりあえず明日にでもソンチョーに頼みがてら、みんなに紹介しなきゃならないな。
最近村にコスプレが増えている。
ヒーローにヒロインに・・・何だこりゃ。
どうもシンさん絡みらしいけど、一緒に街道警備に回ってみても、完全に丸パクリだろって感じ。
本人?達がノリノリだからいいけど、なりきろうとし過ぎて動きが無駄なんだよなぁ。
危なっかしくも、なんか見ていて悪い気がしないのは、嫌いじゃないからだ。
そんなことを知られると、きっとユーシン辺りがからかってくるだろうから絶対言わないけど。
しかし、衣装のクオリティ高すぎないか?
「ふふ、うらやましいだろう。我らのスーツはシンのダンナお手製なのだ。」
得意げにポーズを決める子供たち・・・に見えるけど立派な魔者だ。
全身タイツっぽいのは伝統だけど、シンさん製ならたぶんとんでもない性能なんだろうな。
ヘルメットに武器まで、戦隊ものらしさをいかんなく発揮されている・・・ひょっとして、シンさんも好きなのか?
すこしうらやましく思いつつ、それを悟られないように苦労するユーキであった。
ノッシノッシと歩くナナホシ。
愛嬌のある顔と体形、面倒見の良い性格は、あっという間に子供たちの人気者になっていた。
村を歩くと、すぐに子供たちが集まってくる。
ナナホシも子供たちの相手をすることが好きらしい。
街中の警備で一緒に回っていると、よくこんな状態になるのだ。
警備なんかより学園の幼年部で先生でもした方がいいのに。
(今度、ソンチョーとシンさんに話してみるとするっスかね。)
「そろそろいくっスよぉ~。」
子供たちのブーイングを背に浴びながら巡回に戻るユーシンだった。
ヌコはピッタリの仕事を見つけた。
劇場でのイリュージョンショーだ。
能力を使えば、空中を歩いたり離れたものを動かしたりもできる。曲に合わせて、歌いながら縦横無尽に踊るヌコに、会場は沸き立つ、まさに魔法少女らしいお仕事。
まだ歌も踊りもつたないけれど、早くもファンが付くほどの人気コンテンツになりつつあった。
第二劇場の目玉になる日も近いだろう。
毎日朝早くからミサたちの特訓を受けて、充実した毎日を過ごしている。
フィフスとクロキリは、街道警備の傍ら第二劇場でヒーローショーのようなことを始めた。
休日の朝早く、子供たちを対象にした寸劇だ。
クロキリが悪役になって、いわゆる道徳的なことを教えるショーだ。
時折チルンジャ―やザイスもゲスト出演しているようだが、すでに子供たち、とくに男の子に絶大な人気を誇るほどになっている。
「くそっ!なんだこいつは・・・。」
深夜、黒装束に身を包んだ人影がもがいていた。
もがけばもがくほど動きは小さくなり、やがてほとんど動かなくなる。
ザイスとコザイスがはった巣に触れた者は、みなこうなるのだ。
ここはスレッドスパイダー達の飼育場。
ザイスたちは、スレッドスパイダーを狙ってやって来る不届き者から飼育場を守る任務を与えられた。
昼夜問わずやって来る不届き者は村でも悩みの種だったので、常時監視できるザイスたちは大歓迎で迎えられたのだった。
新たな住人たちは、雪深くなる頃にはすっかり村に溶け込んでいった。




