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74:再び王都へ

 長かった・・・。

 サンザ王国国王の使者と共にする帰還ということで、キャストオフしていた自重をしっかり装着しなおさなければならなかった。

 なんせ、お貴族様との行程である。

 あ、俺もお貴族様だったか。

 とにかく、無理なんて決してできずガタゴトガタゴト、ダラダラと・・・これはなんていう地獄ですか?っていうくらいの無駄なお時間。

 デストームかフレイアに乗ってバビューンと帰りたかったよ。

 目的地は王都へ、報告のためにね。

 途中みどり村へ立ち寄って準備を整え直してから王都へ向かうことになっているけれど、魔改造済みの馬車とはいえみどり村まで20日を超える行程、ほんと嫌になるよね。

 ただでさえ遅いのに、お貴族様がいるってだけで朝昼晩にティータイムと、やたらと休憩が入るのだ。

 あ、俺もお貴族様だった。

 こんな時の最高の暇つぶし、プチメタライブの動画20本も、すでに何度も見返しまくって、曲順どころか、演出からアレンジまで覚えてしまった。

 好きだった芸人の単独ライブやバラエティ番組のDVDとかもけっこう持ってたんだけど、PCに入れておけば良かったなぁ。

 こんなことになるなんて思いもしなかったしな。

 新しい動画欲しいよなぁ、プチメタの新しいライブとかも。

 ・・・ほしいよなぁ・・・ほしい・・・けど、商品を手に入れても再生機が無ければ意味がない、再生機があってもモニターが無ければ写せない、そもそも商品手に入らない・・・。

 う~~~~~ん・・・不毛だ。

 投影機もカメラもまだできてないのにブルーレイ再生機だの液晶モニターなんて、タイムマシンでもなければ不可能だよね。

 このクソつまらない行程を何とか楽しむ方法はないものか。

 今までこういったときは何してたんだっけ・・・あ、無かった。

 考えてもみれば、こうやって何もしないで何十日も、なんてことは死んでいた時以外無かったな、数日の行程はあったけど、あの時はいろいろやること、考えることが多かった。

 何をしたらいいのか分からない。

 せめてゲームがあればなぁ。

 この際だからソシャゲでもいいぞ。

 準備段階から考えるとかなりの長期戦だったからか、終わってみるとなんかこう、気が抜けてしまったというか。

 いや、まだ終わってないんだけどね。

 だからかもしれないな。


 「「いけませんね、あなたがそれでは。

 あ、ご安心を、伯爵殿は夢の中です。」」

 

 知ってる。

 スロークはすごいよ、こんな状況でも次の行動のために最適な方法を取れる。

 本当なら、俺もガッツリ休息をとるべきなんだろうけどね。

 無理!

 何もしないなんてもったいなくて。

 嗚呼、貧乏性よ。

 「と、いうことでそろそろ双子の養育費をもらいたいんだけど。」

 

 「「いったい何がどうなって「と、いうことで」なんです?

 ま、それはいいとして、あのナレハテでしたっけ?あれを始末した件でチャラでは?」」

 

 「あれは双子がやったことだろ? 養育費ってのは押し付けた張本人が払うべきだろ。」

 

 「「いえいえ、本来は子どもを監護する親が、子どもを監護していない親に対して請求するものです。私もあなたも双子の親ではないので養育費は発生しません。」」

 

 「わかった、じゃぁ今すぐ双子の依代を機能停止にしよう。

 安心して、君のせいでこうなったんだよとちゃんと伝えるから。」

 

 「「・・・」」

 

 あ、マジでビビってるな、これ。

 こいつのこんな表情見るのは初めてだ。ってか、いつ見ても顔を覚えられないから見たことあるのかもしれないけど・・・すごく楽しい。

 

 「「楽しまないでください。

 いえ、こういうのもまた良いですね・・・本当にそんなことをするのか、と恐怖しながら待つというのもゾクゾクします。」」

 

 始まった、こいつもロン毛も、なんで俺の周りにはこんなのばっかり寄ってくるんだ?

 

 「「自業自得という言葉をご存じで?」」

 

 またかってに頭の中読んでるし。

 

 「「仕方が無いので、一つだけイレギュラーを許可しましょう。それを有効に利用できるかどうかはあなた次第です。」」

 

 そう言って消えたクソ悪魔。

 底そこには四角い板状のものが・・・。

 あのやろう、とんでもないもん投げていきやがった。

 「どうすんだよこれ・・・」 

 いちおう村まではヒマに悩むことは無くなったけどね。

 

 

 ついて早々使者団は迎賓館へ。

 一泊ですぐ出発だけど、大浴場と食事位は楽しめるだろう。

 我々はというと、まずソンチョー宅へ向かって簡単な報告を済ませると、約束だった外見変更タイム。

 アキヒロとリタはほぼ変更なしだけど、問題はマルチナ、性別代わるからねぇ。

 ボンキュッボンの美女がおっさんに変わるのか?

 ちょっとドキドキしていたら、結局変わらなかった。

 「どこをどういじったらいいのか分からなくて化け物みたいになっちゃって・・・」

 しょんぼりしている美女。

 あぁ、俺も苦手なんだよね。

 だからデフォルトに設定されていたパターンの一つを髪型と色変えただけで使ってたんだけど。

 結局、得意な人にアドバイス受けながら気にいるまで使いまくることになった。

 拠点に戻ると双子と、いつの間にかマガちゃんまでプチメタ衣装っぽい服で現れたから褒めちぎっておいた。うん、3人だとまんまになっちゃうなぁ・・・そのうちコピーバンドとかやらないよな?

 ・・・

 ・・

 ・

 それもいいな。

 スケルトンウォリアーにギターとベースとドラムを覚えさせるか?

 アホな妄想は置いといて、あっという間に出発である。 

 ヒノモト組の3人は拠点地下の訓練施設で強化に励むために離脱。

 スロークが上爵する時に王都へ向かったメンバーとクロウを連れて王都へ向かうことにした。

 

 さすがに二度目ともなると慣れたもの・・・ではなかったね。

 前回のような大騒ぎは無かったものの、通りの両端にはズラリと騎士団が並びガッチリガード。

 誰を警戒してるんだって話だけれど、そこは納得するとしよう。

 ちらほらと、好奇心に負けた子供たちが騎士の間からのぞき込んでいるのが見える。

 馬車の横についた王都の騎士さんはさぞビビっていることでしょう。

 ムハハ、良い気分じゃ。

 「シンさん、顔、気を付けて。」

 いかんいかん、一向に上達しないポーカーフェイスを駆使しなければならないんだった。

 王城に到着すると即謁見の間へ、ここら辺の手続きは滞りなく完了していたんだね。

 外務長官(外務大臣)のベリオラ公爵が使者だっただけに、一切無駄な待ち時間も無くスムーズに報告完了。

 さすができる貴族は違うね。

 今回の勅令、グリンウェル伯爵にに対する褒美は予想どおり。

 森の西側半分だった領地が、西側2/3になった。

 実質的には何も変わってないんだけどね、村の外はほぼ手付かずなんだし。

 あ、ドワーフの村に関しては、裁量権は全てスロークに一任された。一応ドワーフ村の位置は領地内ではあるけど、いきなり従えってわけにもいかないし、スロークもそんなこと望んでないしね。

 あと、参加した男爵位のユーキやライアーたちには俸禄が、ユーシンは旗爵から準男爵に上爵された。

 俺はというと、俸禄と共に5名までの旗爵任命権が与えられた。

 って、こんな面倒な貴族になんて、なりてはいないって。

 俸禄は、与えられるのは年一なのでまだ当分先だし。

 とりあえず褒章の説明と授与が済むと、最後にとんでもない爆弾が投じられた。

 来夏、避暑のためみどり村に王室御一同が来る。

 「来ないでください。」

 つい言いそうになっちゃったけど堪えた。

 マジかー。

 本来なら、領地持ちの貴族にとって王室の領地訪問はこの上ない名誉らしいんだけどね。

 王室のご来訪となれば、お付きに警備にと、規模が全く違ってくる。

 人数だけでも、カルケール、コリント両伯爵家が揃って来訪するよりはるかに多くの人員が来ることになる。

 当然今の迎賓館や宿泊施設じゃ全く足りないし、避暑となれば2週間程度の滞在、娯楽関係も全く足りなさそう。

 うん、逃げよう。

 <逃がさないからな。>

 スロークに先手を打たれてしまった、顔に出てたのか?

 <顔見なくても考えてることの想像つくからな、頼りにしてるから逃げないように。>

 こんな時ばかりは密談スキルをオフにしたい!

 そんな思いも空しく散ったのだった。

 

 恒例のパーティーはとにかく情報収集、”おうしつらいほう”って、何すりゃいいの?

 カルケール伯爵もコリント伯爵もいないので自力で情報源を見つけないといかん・・・あ、いた!

 「ご無沙汰しております、第三親王閣下。」

 酒は持ってきた、しっかり役に立ってもらおうか。

 「久しいな、グリプス卿よ。ちょうどよい、話したいこともあったのだ、どこか落ち着くとしよう。」

 そう言って、会場内に隣接されている個室へ。

 「どうせ来夏のことであろうが・・・しかし、それを私に聞くか?

 よもや私自身が王室の一員だということを忘れておるわけではあるまいな。」

 入って早々いきなり踏み込まれてしまった。

 この数年間ちょくちょくやり取りしていたので内々の話になるとかなり砕けてきている。

 「なにぶん田舎者のにわか貴族ですので・・・ここはしっかりおもてなしするためにも閣下にお聞きするのが一番かと思いまして。

 こちら、かなり強いのでお気をつけを。」

 新作、ラサの実の果実酒を蒸留して作ったブランデーをストレートでご提供だ。

 相変わらず毒見の執事さんを恨めしそうに・・・自分の前に置かれたグラスにも不満げだ。ワイングラスが小さめなうえ、半分程度で注いだ量も少ないからね。

 変わらないな、このオッサンも。

 「これは!・・・ふむ、献上品に近いが、はるかに深い味わいと香りだ。それに強いな、少量をじっくり楽しむべきか。」

 目を閉じてうっとりと香りを楽しんでいる。

 いつものようにカパカパやられたらアっという間に泥酔親王が出来上がってしまうから、今回持ってこようか悩んだんだけど、持ってきてよかった、一口で飲み方を理解するとは。

 「はい、いつも献上させていただいておりますラサの実の果実酒を加工して作ったブランデーというものです。大量の果実酒が必要になるため一般流通はできないのですが、ご来訪までにはお楽しみいただけるだけは何とか揃えたいと思っております。」

 その言葉とともに、親王の表情が曇った。

 「それは難しいな。

 これほどの酒は他では飲めまい、これだけのためにグリンウェル領を訪れたいと思う貴族は多いだろうな、領の目玉として十分に通用する酒だと言える。

 しかし、強すぎる。

 ご婦人や酒に強くない者がミードのように飲めば、悪酔いしてしまうこともあるだろう。事前にこの飲み方をちゃんと知らせておかないとケチだなんだと騒ぎだすものもおるかもしれぬ。」

 なるほど、忘れがちだけど、村の食と酒の事情はこの世界の非常識でもあるんだったな。

 実際、村では肥満指数がジワジワと上がっているとマナが頭を悩ませてたっけ。

 一応、完全魔素抜き食材はマスターのレストランとプチキャット以外では使ってないんだけど、それでも食堂や市場に並ぶ食材は、この世界の基準では王族でもそうそう食べられないレベル。

 ただ焼いただけでもエグみをクセでわりきれるレベルだからね。

 村での食事は、苦行の栄養補給ではなくなっている。

 そりゃあ、量も食べるし太るよね。

 同じようにエグくて甘いミード酒しか知らないこの世界に住人に、いきなりこのブランデーを出したらカパカパいっちゃうかもしれないし、あの量はケチだと捉えられても仕方ないかも。

 やっぱりこのオッサンに相談してみてよかった。

 来訪予定の親王一家や貴族の人数やこの身、護衛やらの人数などと対応についてなどなど、かなり細かく教えてくれた。

 主に執事さんがね。

 うん、執事さんに相談すればよかったね。

 献上した馬車の技術、面白い利用の仕方をしていて驚いたけど、それも執事さんの案らしいし、そうとう有能みたい。

 製造は契約した工房に独占させて全て第三親王家が買い取り、それを年額制で貸し出す、いわゆるサブスクってやつだ。

 料金の支払い時にメンテナンスも親王家で行っているらしく、それも契約工房に独占させているので持ち逃げされない。

 しかも、借りている方は第三親王に逆らいづらくなる。

 貴族が乗る馬車だけでなく、瓶など壊れやすいものを運ぶ荷馬車としても活躍中。

 そう、貴族だけじゃなく商人たちも取り込んでいる。

 もしこれで、人並みに権力欲があれば王太子を抜いて継承最有力に名前を連ねていたかもしれない。

 そうなっていたら今頃ドロドロ劇場が展開していたんだろうけど、当の本人はそんなそぶりも無く、自分は美食と芸術の僕であり、次期国王は王太子以外ありえない、などと公言している。

 兄弟仲も良好で、頻繁に狩りやら食事やらと行き来があるため権力闘争好きの貴族連中もちょっかいや謀略をかけにくいらしい。

 と、いうことで避暑のご来訪時には王太子や親王たちも家族を伴ってみんなやって来るそうだ。

 胃が痛い。

 「食事に関しては、ウワサでも聞いておるからな、無理に王宮料理に合わせるよりも、グリンウェル領独自のものを出すといいだろう。おそらく陛下もそれを楽しみにしているようだしな。

 それとな・・・王太子殿下の、というか、御子のたってのご希望なのだが・・・ドラゴンがいるというのは事実か?」

 王太子には男の子が二人、確か15歳と12歳だったか?

 「事実、ではありますが。」

 まさか、ドラゴンよこせとか言わんよな。

 「そう警戒するな。差し出せなどとは言わんし言わせん。ぜひ見たいと申しているようでな、そのように取り計らってもらえると助かる。」

 良かった。

 そのくらいなら問題無かろう。

 問題ないよね?

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