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73:事後処理

 「てめぇも殴りに来たのかよ。」

 顔面が腫れあがり、見る影も無くなった馬鹿リーダー、もといマサトシは、薄暗い石造りの牢に入れられていた。

 結局あの後結論は出ず、本人の弁明を聞こうと牢の中で拘束した状態で凍結を解除された。

 とたんに喚き散らすマサトシに、激昂して殴り掛かる者、逆に、あまりにも愚かだと冷めてしまう者、泣き出してしまう者など反応は様々だった。

 殺すのではなく償わせる。

 そう結論付けたのは、顔面が変形するほど殴られたことで、多少でもうさが晴れたからかもしれない。

 どう償わせるかはこれからの話し合いとなったようだが、スキルを封じる装備品も付けられ、ほぼ一般人と変わらない状態で監禁されている。

 「とりあえずよかったな。殺されなくて済んで。」

 一応最後に顔だけでも拝んでおこうとやってきたけど、原形ないんだもんなぁ。

 「死んだほうがましだ・・・」

 吐き捨てるような言葉。

 「くそっ、俺は、選ばれたんじゃないのかよ・・・手のひら返しやがって・・・魅了だって、結局は俺の力なんだろう!この世界を変えるために与えられた力だ!俺こそが!」

 「あほ。」

 「あ?」

 「お前が選ばれたのは、ただ単にあの時運悪くゲームしてたからだ。

 魅了の力は、お前の力じゃなくお前が使ってたキャラの力だし、本来の力とはかけ離れて低レベルだ。それは、お前がキャラとはかけ離れた存在だったからだ。

 つまり、お前は特別じゃない、その他大勢の一人だよ。細胞のひとかけらも特別じゃない。」

 言っちゃった・・・ま、いいか。

 「俺たちがこの世界に拉致された理由はな、ただの空気清浄機変わりだ。」

 何言ってんだこいつ、みたいな顔されてしまった。

 顔面ボコボコだけど。

 「この世界に充満する魔素は、魔物を生み出し続けてる。それをどうにかしようとしたのが俺たちを拉致した元凶だ。俺たちは、スキルや魔法、特殊能力を使うとき魔素を消費するように作られたんだよ。わかる?俺たちは、この世界では魔素を消費するためだけの目的で拉致されたんだよ。それ以外は何も期待されてないの。」

 事実をさわりの部分だけ伝えた。

 こういう勘違いちゃんには相当な衝撃だろうけど。

 強すぎたかな?

 ポカンとしたかと思ったら、ポロポロと涙が。

 えぇ~、ここで泣く?

 「そんなの動物と何一つ変わらない・・・俺である必要なんかないじゃないか・・・俺が生きてる意味もないじゃないか。」

 これだから俺は特別だなんて勘違いしてるおバカさんは・・・そんなことは、最初に言われただろうが。

 「生きてることに意味なんかあるわけないだろうが。人間だって所詮は動物だぞ、オスとメスが交尾してできるのが子供だ、それ以上でも以下でもない。

 運命だの宿命だのは、自分を特別視したいか悲観したい時の都合のいい言い訳だぞ。

 どうせ拉致されてきた世界なんだし、やりたいことすりゃいいんだけどな、他人に迷惑かけるのはだめだぞ。」

 ん?お前が言うな?ブーメラン?聞こえなぁ~い。

 「お前以外の人だって、やりたいことをする権利はあるんだからな、意見がぶつかったなら、話し合って折り合いをつけるか、グループを離れるかだ。無理やり押し付けはダメ。猿にだってちゃんと群れのルールがあるんだからな。

 お前の能力はそれをゆがめる。お前と長く接すると、誰もがお前の言いなりになってしまう、だから封印されたってことだ。

 お前が生かされているのは、お前が虐げてきた仲間の判断だ。

 今まで散々やりたい放題してきたんだから、そろそろ連中のことを考えろよ。もう戻らないヤツもいるんだからな。」

 とりあえず言いたいことだけ言って牢を後にした。

 後のことはもう知らん。

 関わりたくもない。

 

 だったんだけどねぇ・・・

 いわゆる事後処理?ってやつで、スロークともども忙殺されてしまった。

 せっかく来たんだから、ちょっと足を延ばして魚介類を見て回りたかったのにぃ。

 結果の報告に関しては、まず最初にサンザ王国やみどり村の一般住民に伝えてある特殊能力保持者の成り立ちなんかの説明から始まった。ナレハテもその一環で起こった異常事態ではなかろうか、ということにした。

 ナレハテは、ヒノモトの連中の協力を得られたことで確実に処理できたことを伝え、最後の討伐では、その破片から蜘蛛型の魔獣が発生して逃走されてしまったことを謝罪した。

 対処には元ヒノモトの戦士たちが必要であることを強調することも忘れない。

 いわゆる謝礼的な話し合いについては、サンザ王家からの使者がおこなうので、俺とスロークはそれまで滞在することに。世話役って体でクロウにも残ってもらったけど、何とも居心地が悪い。

 ファーレン王家からすれば、ヒノモトなんか全滅させてやるってつもりだったんだろうから、余計なことしやがってと思っていても不思議じゃないしね。

 自分の国の兵士もだいぶ犠牲になってるんだけどな、それはあくまで指揮したヒノモト勢の責任ってことで歯牙にもかけてないっぽい。やっぱ嫌いだわこの世界・・・あ、向こうも同じようなものか、所詮政治家は人の命を数で数えるだけなんだよな。

 実際、国同士の戦争が起これば戦死者は今回の比じゃないだろうし。

 まったく、世の中とはかくも世知辛い。

 表向きは歓迎、歓待してくれてるのが余計に不快さを増している。

 ヒノモト勢は、白蜘蛛討伐専門の部隊としてとりあえずの地位を与えられた。ここら辺は思惑通りになって何よりだ。

 駆除が終わるまでは時間ができたのだから、後は自分たちで何とかしてもらおう。

 で、いろいろな交渉中に忘れていたかったことを思い出してしまった。

 思い出してしまった以上しかたないので、対ナレハテの技術協力と情報交換を理由にヒノモトの連中をグリンウェル領に招く、という提案をしたのだけど、あっさりと、というか歓迎されてしまった。

 こっちはただ、外見変更の鏡台を使わせてやるって約束を守るために村へ来る理由付けを持ち掛けただけだったんだけど、断られるだろうから「ファーレンの取り決めだからしょうがないよね」って誤魔化すつもりのお気楽な提案だったんだけど、なんで?

 ちょっと気になったんで蠅の王に探らせると、どうやらファーレン王家にとって、現在最も危険視しているのが生き残った(?)ヒノモト勢だという。

 白蜘蛛に関しては、騎士でもなんとか対処可能と考えているようで脅威の度合いは割と低めに考えているらしいんだよね。

 知らぬが仏というか、知ろうともしていないんだろうな、あの地獄を。

 だけど、我々がスピード解決した上ヒノモト勢の戦力は必要だよ、と伝えたことで、ヒノモト勢を排除することも処断することもできなくなってしまった。

 こちらから提案するまでも無く、何らかの方法でヒノモト勢をこちらに押し付けようと画策していたらしい。

 ってことは、白蜘蛛対策が終わったら全員押し付けにかかるんだろうな。

 「戦力がこちらに集中してしまうってことについては考えられていないのか?」

 スロークの疑問ももっともだ。

 というか、自国内の閉職に押しやって飼い殺しとか、陰謀に巻き込んで処断とかの方がそれっぽくない?

 「サンザ王国とファーレン王国の友好関係は長く、特に強いもののようです。ヒノモトを国家として認めないという方針も、サンザ王国が先頭になって他国に働きかけていたようですし、現サンザ王国王妃もファーレンの侯爵家出身ですので、二国間で争いが起こるという想定はされておりません。 

 むしろ、サンザ王国国王の頼子であるシン様のおられる地ならば安心できる、という考えのようです。」

 そんなんでいいのか?

 う~ん、情報網が発達していないこの世界では、そう言った結びつきは情報化時代を生きた俺たちの想像よりはるかに大きいのか?にしても、安直すぎない?

 あ、だから簒奪されたのか。

 なんかすっごく納得。

 あまり性能良くないな、ここの王家。

 とりあえず蠅の王には、ヒノモトの連中に協力しながら白蜘蛛討伐と、引き続きファーレン王家の動向調査を頼んだ。

 白蜘蛛にとりつかせた蠅は、現在蠅の王の活動限界、1Kmのみならず、知覚可能な範囲5Kmを超えているため所在地は分からないけれど、再び知覚圏内に入ってくれば位置を特定できるので、発見次第ヒノモト勢に処理してもらえばいいだろう。

 マサトシはいちおうヒノモトのリーダーという立ち位置なので、それらしくふるまうよう監視付きで監禁はとかれた。

 今のところはしおらしくしているみたいだね。

 

 俺とスロークは、誠に残念ながらファーレン王城から一歩も出ることができずにサンザ王家からの使者を迎えた。

 観光くらいさせてくれよぉ~。

 日中はいろんなお偉いさんとの打ち合わせやら会合やら報告やらやら・・・夕方からはいろんなお貴族様におよばれしてのパーチー三昧ですわ。

 マジ最悪。

 まぁ、唯一の成果と言えば、正式にファーレンと村との交易の約束が取り付けられたくらいか。

 ファーレンの通貨はバーラとハルドの2種、ドルとセントの関係って思ってもらえばいいよ。1バーラは100セイルで取引されているそうなので、ベルでも同様に、1バーラ=100ベルでの取引となる。ここら辺、いわゆる投資家とかいうギャンブラーがいないのでスッキリしていてありがたい。

 そうそう、一応お近づきってことでファーレン王家にもコインセットを献上しておいた。最初に騒がせちゃったしね。

 

  とりあえずは、我々の帰還と一緒にヒノモト勢のアキヒロ、リタ、マルチナの3名が研修生として同行することになった。

 アキヒロはカルト教団に切られた耳の修復と奴隷印の消去、リタは、何か知らんけど強く希望していたから、あとマルチナは男に戻るため、ということで、特に強く外見変更の鏡台使用を希望した者たちで固めた。

 ロン毛は最後まで認めないつもりだ。

 うん、なんとなくね。

 俺たちが動けない分、アキヒロとリタにはガッツリ海産物を仕込んでおくように言ってあるけど・・・不安だ。

 村に帰るトールちゃんに海産物用の魔素抜き装置を依頼してあるんだよね。

 鮮度が命の食材を素早く魔素抜きするための術式を大急ぎで考え出して託したから、帰る頃には出来上がってるはず・・・うん、トールちゃんなら大丈夫。

 サンザ王家の使者とファーレン王家の話し合い、その一日だけ自由になったので市場を見に行った。

 ガッカリだよ。

 王都は海からそれなりに離れているとはいえ、干物とかさぁ、乾物とかさぁ、あってほしかったよ。

 忘れてたよ、この世界の食事情を。

 エグみを多少でも和らげるために、とにかく何でもかんでも水で煮込むんだった。

 旨味も何も捨ててしまうんだからもったいない話だけど、あのエグさを和らげるためなのだから仕方ない。

 う~ん、不安になって来たゾ。

 あの二人、本当に食べられる物仕入れられるんだろうな・・・。

 マルチナにはアイテムボックス的な要素が無かったので、鏡台を使う対価としてこの国で栽培されている植物の種や苗を荷馬車いっぱいにって頼んであるけど、二人のサポートを頼んだ方が良かったかな。

 大丈夫だと思いたいけど、なんか不安なんだよな、あの二人。


 アキヒロは34歳会社員、ディープミレニアム、MMORPGだったかな、国産大手のMMORPGってことで話題にはなったけれど、結局鳴かず飛ばず、発売後2年で過疎化が進んでサービス停止間際と噂だった。

 日本がゲーム大国だったのはかつてのお話、PCに至っては、もはや国産のゲームを探す方が大変な状況になってしまった。

 かくいうエイルヴァーンも開発元はヨーロッパ、発売元はアメリカだし。

 それはおいといて、彼は人間至上主義のカルト教団によって奪われた耳の再生と奴隷印の除去を願っていた。


 リタの銃道ガンドウは、国産アニメのゲーム化作品。

 スマホ用のゲームで、確かゲームの開発は韓国だったか、ガチャメインの基本無料っていう集金システムがエグいやつね。

 近未来、日本の高校が舞台で、VR空間で実戦さながらのサバイバルゲームを行う部活のお話、だったか?

 レベルアップなどは無く、経験値の代わりにポイントを得て、それでガチャを引いて装備や弾丸を手に入れると。

 で、当然良い装備や弾丸は課金ガチャと。

 彼女の望みは、驚くことに背中にあるという鳳凰のタトゥー除去。

 拉致されたとき、たまたまゲームの水着イベント開催中で、参加者全員プレゼントのタトゥーエフェクトをつけていたという。

 死ぬほど後悔しているらしい。

 

 マルチナは個人商店の店主だったそうだ。マルチナ・ストーム・キリングをプレイ中に巻き込まれたそうだ。ボンキュッボンな美女が、アクロバティックなアクションで悪魔と戦う爽快系のアクションRPGゲーム。

 エフェクト一切無しのガチなアクションだけで魅せるゲームとして有名。

 たしか、特撮アクターさんたちの動きをモーションキャプチャーで取り込んだ作品とかって、ちょっと話題になったんだった。

 残念ながら中身はオッサンで、外見とのギャップに苦しんでいるそうだ。

 

 と、いうことで上記3名を引き連れての帰途、の前にチェックしたけど、どうやら魚介類の心配は杞憂に終わったようだ。

 よかったよかった。

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