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71:レア

次話は7/5(水)16:00更新予定です。

 「レアキャラ?」

 ある程度コツをつかんできたライアーの目の前に現れた個体は、明らかに今までとは違っていた。

 「それ、なんか迷彩柄ってヤツに似てる気がするんだけっど!」

 言い終わらないうちに、迷彩蜘蛛の前足がライアーに向けられ、パパパパッという乾いた破裂音と共に無数の礫、弾丸が襲い掛かってきた。

 「マシンガンかっての!」

 4本の足先から放たれる弾丸のせいで近づけない。

 (弾切れ・・・・は、無いよな、やっぱり。)

 徒手空拳のライアーが硬い外殻を持つ黒蜘蛛たちと戦う手段として選んだのは関節技だった。

 しかし、近づけない以上はそれすらもできない。

 いやな予感、というより、もうそれしかないだろう。

 (ここは、誰か相性の良い仲間を見つけて交代してもらいたいところだけど。)

 あたりを見回すが、4丁のマシンガンと相性の良い仲間などいるはずもない。

 何とか取りつこうと隙をうかがうが、リロードの無い無限マシンガン相手に隙があるはずもない。

 岩陰に身を潜め、これはいよいよ誰でもいいから助けを呼ぼうか、と思った時、銃撃が不意に止まった。

 何事かと岩陰から慎重に顔を出すと、迷彩蜘蛛は背後から羽交い絞めにされていた。

 「正気に戻れ、ツキタケ!お前なんだろうが!!」

 迷彩蜘蛛を羽交い絞めにしていたのは、ヒノモトの赤髪、ゲイルだった。

 「ふざけんな!てめぇ、いつも偉そうに説教たれるくせに・・・バケモンなんぞの手下になんかなってんじゃねぇ!」

 渾身の力で押さえつけようとするゲイルだが、パワー勝負は迷彩蜘蛛に分があるようだ。じわじわと拘束が緩んでゆく。

 (やれやれ、あの柄は元になったツキタケとかいうやつの影響として、マシンガンっぽい攻撃方法からするとFPS系?前にゲイルと村に来た連中の中にそれっぽいのがいたって言ってたな。)

 岩陰から飛び出すと、まっすぐ迷彩蜘蛛へと地を蹴る。

 気が付いた迷彩蜘蛛が前蹴りのように突き出した足を、体を回転させてよける。そのまま前足、銃に変化したうちの一本に絡みついて関節を砕いた。

 追撃をかけようと、地にしゃがみこんで蹴りだそうとした時、ゲイルが迷彩蜘蛛を離した。

 「待ってくれ!俺が何とかする!だから・・・」

 言い終わる前に、ゲイルは腹から血を噴き出して顔面から地面に倒れた。

 解放された迷彩蜘蛛は、一瞬の躊躇もなくゲイルの背後から発砲したのだ。

 「よくわかったよ、こいつらはもうどうにもならない。」

 二人がどのような間柄だったかは想像もできない。

 それでも、自分を危険にさらしてでも元仲間を救おうとしたゲイルと、その相手を躊躇なく殺害しようとした迷彩蜘蛛。

 すでにツキタケは死んでいる。

 目の前のこいつはツキタケの力を奪ったナレハテの手下だ。

 3本になったとはいえ、絶え間ない弾丸の雨の前に隙を伺い関節を狙うのは至難の業、多少の被弾は覚悟のうえで積極的に攻撃に転じた。

 炎に身を包んでも燃え尽きないように、特製の強化服にシンやスロークから借り受けた防御力上昇のマジックアイテム、これらの効果で、装備の上なら貫通はしない。

 すさまじい衝撃で骨が、内臓が悲鳴を上げるし、むき出しの顔面や頭部に被弾すれば即死は免れない。

 それでもライアーの攻撃は止まらない。

 打撃を浴びせ、多少無理でも関節を狙う。

 3本目の銃を使用不能にしたとき、ついにライアーは力尽きた。

 片膝をつき、手で支えなければ今にも地に伏してしまいそうだ。

 それでも不安はなかった。

 目的は達成した。

 最後の銃でライアーの頭を吹き飛ばそうとした迷彩蜘蛛の胸から、派手な槍の穂先が突き出した。

 ライアーの無謀ともいえる特攻は、瀕死のゲイルから迷彩蜘蛛の気を逸らすためだった。

 「悪ぃな、俺のせいで迷惑かけた。」

 腹を撃ち抜かれたゲイルは、ライアーが落としたエクスポーションで回復、元仲間の命を絶ったのだった。

 「あれ、ものすごい高い薬だからちゃんと返してね。」

 そう言うライアーは、シンから渡されたエリクサーをグビリと飲み込んだ。

 「ケチくせぇ・・・しかもなんだよそれ、俺のより高級そうじゃねぇかよ!そっちをよこせ。」

 「雑魚にエリクサーはもったいなさすぎるだろ。

 エクスポーションだってもったいないくらいだけど、それ以下は持ってなかったから仕方なく貸しただけだから。」

 「雑魚だと!雑魚が言うに事欠いて俺様を雑魚だと!てめぇこそ最下級ポーションがお似合いじゃねぇか。」

 ポーションによって傷は回復した。しかし、失った体力などまで戻るはずもなく、満身創痍の二人は起き上がるのも辛い状態。それを言い合い、ののしりあうことで無理やり気力を奮い立たせた。

 「ふん、ここにはお前の仲間とやらがどれだけいたんだよ。」

 ライアーのトーンが変わった。

 「確か10人・・・ここは一番やばいって話だったからな。」

 「3体は火葬済みだ。ってことは、最大で残り6かよ。」

 「食った遺体によって変わるってことか?」

 「いや、白い蜘蛛の状態で誰だったかは特定されてるみたいだよ。奴らが食うのは、自分の死体だけだってさ。だから、体の無い奴は白いまま突っかかってくる。龍たちが張り切ってるから逆のパターンもありそうだけど。」

 「なんでそんなに詳しいんだよ。」

 「企業秘密。」

 情報は逐一、シャドウデーモンを通じて共有されている。

 「ケチくせぇ。」

 周囲が急に暗くなると、次の瞬間、耳をつんざく轟音と共に視界が白一色に染まった。

 「なんだよ一体!って、なんで横でしゃがんでんだよ。」

 ゲイルのすぐ横には、ちょこんとしゃがんだライアーがいた。

 「避雷針。」

 「ザッケンナ!だいたい、俺の槍は金属製じゃねぇ!」

 「なんだ、プラモだったんだ。」

 「プラじゃねぇ!」

 ゲイルの槍は、エーテルの結晶とされている。金属では無いけれどプラスチックでもない。それを承知でからかうライアー。はたから見れば、まるで漫才だ。

 ゴウッという轟音とともに、今度は巨大な火柱が上がった。

 「龍たちにいいところ盗られちゃうなぁ、もうちょっと頑張るか。」

 「はっ、ズタボロのくせに粋がんなよ。」

 これ以上仲間のナレハテがいないことを祈りつつ、槍を構え直すゲイルと、わずかに焦げた服を払いながら、新たな敵を求めて歩き出したライアーだった。

 

 

 「なんでよ、サーヤ・・・。」

 かつての親友の名を呼ぶリタ。

 両ひざをつき座り込むその体には、無数の傷が血を噴き出していた。

 共にみどり村へ偵察に行ったときに持ち帰った硬貨を加工して、アクセサリーとしていつも身に着けていた。そのアクセサリーが、水色の蜘蛛の体の一部として浮き上がっている。

 似ても似つかぬその姿だが、その一瞬の動き、立ち振る舞いが、サーヤ本人にしか感じられない。

 水色もサーヤが好んでいた色だ。

 鋭いブレード状の前足を高く掲げる水色蜘蛛。

 それをボーっと見上げるリタ。

 世界が色を失う。

 ブレードが振り降ろされたとき、飛んできたバールに弾かれた。

 リタの命を奪うはずだったブレードは、リタの二の腕を浅く切り裂くにとどまった。

 「しっかりしろよ!そいつはもう、あんたの仲間なんかじゃないっスよ!」

 2体の黒蜘蛛と切り結びながら、とっさに投げたバールでリタの命を救ったユーシンは、精一杯の檄を飛ばす。

 「そうです!そいつはサーヤさんじゃない、サーヤさんを冒涜する偽物です!」

 背負った矢筒から次々と矢を放つアキヒロも、リタを何とか奮い立たせようと声をかける。

 この矢筒はシンから借り受けた、エイルヴァーン製の矢筒と矢だ。

 ディープミレニアムのシステムで作った矢でない以上アキヒロのスキルは出せないが、数百本を収めるMOD製の矢筒で牽制と援護を行っていた。

 リタも、スロークが封印していた襲撃者たちの置き土産である弾丸などを託されていた。

 順調に援護を行っていた二人だった。

 ユーシンと戦う水色の蜘蛛に出会うまでは。

 

 (くそ、2匹とも強ぇじゃねぇっスか)

 すぐにでもリタの援護に向かいたいが、眼前の2匹が異様に強い。

 一匹ならわけなく倒せるレベルだが、2匹の連携が非常に厄介だ。

 互いが互いをかばい会い、役割を決めることなく攻撃と防御が目まぐるしく入れ代わる。

 よほどの熟練者でも、二人で戦うことを専門に訓練してこなければここまで見事な連携はできまい。

 「運悪くタッグパートナーが二人とも黒蜘蛛化したってやつっスかね。」

 (あるいは蜘蛛になったことで特別な意思疎通法でも身に着けたか?)

 複数を相手にした戦いは何度も経験してきたユーシンだったが、相手が何人いようと付け入る隙はあった。この二匹にはそれが無いのだ。

 数手の打ち合い、腕の役割をする蜘蛛の前脚、中脚はユーシンの4倍、しかも二匹は全く別の方角から、ほぼ同じタイミングで仕掛けてくる。

 一撃をかわしても、かわした先には二撃目が、と、計算されつくしたかのような連続攻撃が続く。

 限界まで神経を研ぎ澄ませ、二の手三の手を見極めてかわさなければならない。

 ユーシンは心身ともに、急激に消耗していく自分を感じていた。

 (マジイっスね、こっちに集中しないと、この装備でもすぐバラバラにされる。)

 その時、突然周囲が暗くなった。

 次の瞬間、昼間のように明るくなる。

 一瞬蜘蛛の動きが止まる。

 待ちに待った、おそらく最初で最後の隙。

 体を回転させ、その遠心力を利用してバットを振るような大振りの一撃。

 前方の広範囲に対して、大きなノックバック&行動遅延効果のある技で二匹の距離を開けさせた。

 耳をつんざく轟音が鳴り響き、空気が震える。

 そのまま、正面に近い方へ上段から振り下ろす。

 一瞬早くブレードに逸らされたが、止まることなく突きを3連、体ごと回転して薙ぎ払い、飛び上がると前方宙返り、その勢いを利用して剣を叩きつけた。

 6連コンボ技の一つで、現在ユーシンが100%決められる最高連続攻撃。

 最後の一手は、蜘蛛のブレードごと頭の先から全身を両断した。

 基本技の組み立てでコンボをつないでゆくパターンは失敗が少なく、コンボをつなぐ毎に威力が増してゆく。最後の一撃はドラゴンの鱗さえ切り裂いた。

 轟音は小さくなりながらもいまだ続いている。

 (雷か?助かったけど、耳が聞こえねぇ。)

 まだもう一匹いる、気を切り替えて、いまだ動かぬ黒蜘蛛に切りかかった。

 轟音の影響か、片割れを失ったことで黒蜘蛛は動きに精彩を欠き、ユーシンの猛攻を防ぐ力は無かった。

 

 シンから受け取った矢はかなり上質のものだったが、技を使うことはできなかった。

 やはりゲーム同様、自分で作るか同じアーチャー職の作った矢でなければ発動しないようだ。

 関節をピンポイントで狙うも、技による様々な効果が追加されていないと簡単に撃ち落とされてしまう。

 (少しはリタから離れさせられたけど、まだ奴の射程内・・・くそ、あんな奴のための素材集めなんかしてないで、もっと矢を作っておけば。)

 「リタ!頼むからポーションを使え!シンさんから貰っただろう!君まで死んだら、サーヤが悲しむだけだぞ!」

 リタの体がピクリと反応した。

 「サーヤを救うんだ!そんなものの中に閉じ込めさせるな!」

 無理は承知で、一度に三本の矢をつがえた。

 アキヒロのプレイしていたゲーム、ディープミレニアムのアーチャーは、特殊な矢を作ることができる。

 その矢を使うことで、アーチャーは矢に付与された特殊効果を技として使うことができる。

 シンから与えられた矢は、貫通強化と命中率上昇の付与がされていた。

 エイルヴァーンのシステムでだが。

 アキヒロは矢に付与された特殊効果を技として使うことができる。

 ゲームも、付与の内容も違うがこれにかけることにした。

 放つ。

 いつも技を発動するときの要領で。

 普通であればまともに射ることはできなかっただろう。

 三本の矢は、狙いたがわず水色蜘蛛へ。

 水色蜘蛛がブレードで矢を叩き落す。

 一本、二本・・・三本目が、後ろ足、膝の関節と思われる部位に突き刺さった。

 (あぁ、すばらしい。ゲームにとらわれることなんかなかったんだ、もっと早く気が付いていれば。) 

 「アッキーのくせに生意気。」

 いつの間にかすぐ隣にリタがいた。

 出血は止まっている。

 ポーションは間に合ったようだ。

 「ありがと。」

 注意しないと聞き取れないような小さな声だった。

 パパパパパパパパッ

 水色の蜘蛛を無数の弾丸が襲った。

 「やっぱりこれじゃスキル使えない。アッキーずるい。」

 弾を撃ち尽くしたサブマシンガンを放ると、背に担いだライフルに切り替える。

 「それにインベントリーに入らないし弾数も少なすぎて不便、重い、めんどくさい。」

 そう言ってライフルを構えたリタは、もういつもどおりの彼女だ。

 水色蜘蛛の外殻には無数の亀裂が入っているが、貫通してはいない。

 サブマシンガンでは威力が足りなかった。

 アキヒロの矢が足の一本を貫いていなければ、ほとんど当たってもいなかっただろう。

 再び放った三本の矢は、ブレードによって三本とも打ち落とされた。

 「やっぱり警戒されると同じ手は通用しないですね。」

 一度につがえるのはギリギリ三本まで、それ以上増やすには連射か増幅の付与をした矢でなければ不可能だ。

 「四本でいく。」

 周囲が急に暗くなる中、タイミングを合わせた、三本の矢とライフル弾が水色蜘蛛を襲う。

 目も眩むほどの光が世界を白く染めた。

 光が消えると、そこには仰向けに倒れた水色蜘蛛の姿。

 直後、空気を震わす轟音が鳴り響いた。

 「ひっ!なんですかあれ?」

 「雷。たぶん魔法。」

 リタの目には、白に染まる瞬間に水色蜘蛛が一瞬動きを止め、矢と銃弾がすべて狙い通り命中した姿が映っていた。

 「感謝。」

 借り物の武器でスキルの使えないリタと、同じく借り物の矢でいつも通り戦えないアキヒロでは二人がかりでも水色蜘蛛には及ばなかっただろう。だからこその言葉だった。

 遠くで巨大な火柱が上がった。

 「はぁ、あれも魔法なんですかね、あれって、ユーシンさんやシンさんの関係でしょ?そんなところと喧嘩寸前までいってたなんてねぇ。」

 「それは円に感謝。」

 「イェンね。」

 「言いづらい。」

 「スゲェもんスね、あれ、たぶんフレイアっスよ。」

 黒蜘蛛を倒したユーシンもリタの様子を見て安心したようだ。

 「こりゃ負けてらんねぇス。」

 そう言うとユーシンは再び走り出した。

 「「元気だなぁ。」」

 どちらともなくつぶやいていた。

 

 

 ユーキと10体のモンスターが、15体の黒蜘蛛と対峙していた。

 「アオン、ソウテイルでアシナガを攻撃、クマは鉄壁でブチを牽制しろ!」

 個体ごとのかすかな特徴から呼び名を決め、状況を見ながらの指示を出す。

 この世界の魔獣や魔者を封印してモンスター化しているためスキルなどは無いが、戦闘で有効な動き等を地道に技として覚えさせ、簡単なキーワードで動けるように訓練してきたのだ。

 10体を呼び出しての戦闘は最近できるようになったばかりだが、それでもそつなくこなせるのは日々警備のため多くの兵を指揮してきたからこそだった。

 こそだったのだが・・・

 突然の暗転、そして白く染まった世界。

 ユーキの判断が一瞬遅れた。

 取り戻そうとしたユーキの指示は、大気を揺るがす轟音がかき消した。

 (よかった、焦ってとんでもない指示を出すところだった。)

 モンスターたちにとってユーキの指示は絶対、特に数で劣る現状では、一つのミスで崩壊しかねない。

 今も鳴り続ける轟音は、ユーキにそれを思い出させてくれた。

 (相手も混乱している。むしろ、みんなの方が冷静に戦ってくれている。なぜ蜘蛛が混乱しているのか、というと、やはりさっきの光と轟音か、親玉に何かあったのかもしれない。)

 手早く状況を分析するユーキ、と、巨大な火柱が上がった。

 「隙ができるぞ!みんな一斉攻撃だ!」

 ユーキの推測通り、蜘蛛たちの動きがまた鈍った。

 そこにモンスターたちの一斉攻撃。

 瞬く間に半数ほどを解体し、形勢は逆転した。

  

 

 戦況はかなり混乱している。

 大福状のナレハテ周辺では、無数の稲光が走ったり、巨大な火柱が立ち上がったりしている。

 各部隊は解体され、ハクアやカムイ、コクエンの配下達が死体の運び出しと同時に白蜘蛛の対処を行っている。死体がある限り黒蜘蛛が増える可能性が残る。死体を運び出して焼くという作業が最優先で行わなければならない。

 病気の蔓延を防ぐためにライアーたちが半数程度を処理してくれていたことに感謝するしかないが、乱戦となっているためなかなか進まない。

 人や魔者、ドワーフなど、黒蜘蛛との戦闘に耐えられない兵たちは早々に離脱し、運び出された死体の火葬を進めている。

 本来ならスロークも戦場で戦いたいところだが、指揮官という立場上全体像を把握できない前線に出ることができない。

 (ここは副官のシンさんに任せたかったけど・・・)

 突然試したいことがあると場を離れたまま戻らない。

 問題の黒蜘蛛も、個体差がかなり大きいうえ色の違う特殊個体まで散見される。

 苦し紛れに分体を作って送り出したが、特殊個体には通用しないだろう。

 人同士の戦闘であれば、数が大きな意味を持つ。しかし、この戦場では数が意味をなさない。

 ゲイルの技は大多数との戦闘を想定したものだし、逆にライアーは一対一の上、素手での戦闘だけを想定している。

 相性によってもガラリと変わってしまう以上、指揮は困難を極めた。

 「ほんとに、指揮官なんかなるもんじゃないな。」

 

 

 「こんなもんでいいのか?」

 「はいっ!流石です、バッチリですよ。」

 途中、マガちゃんの危機を感じて中断したけれど、何とか間に合った。のか?

 「高くつくからな、キッチリ支払ってもらうぞ。」

 「も、もちろんです!私の生涯をかけてお支払いします。」

 「いや、お前じゃ無理だろ。」

 米粒程度しかない米男ではそれだけ頑張っても素材代も稼げそうにない。

 「私も、生涯かけてお仕えしますよ!シン様の手となり足となり。」

 「お前はなんかキモいからいい。」

 「そんな!」

 なんて言いつつ、どこかうれしそうなのがトリハダものだ。こんな奴だったっけ?あ、あの時は洗脳&キャラ作ってたのか。

 本来なら蜘蛛退治に精を出していたはずなのに、突然ひらめいたことを検証するために簡易拠点で工作三昧である。

 しかも、確率を上げるために戦力にならないリュータを拉致したら、いつの間にかロン毛までついてきた。

 なんでこうなった?


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