70:湧く蜘蛛
次回は7/4(火)16:00頃更新予定です。
「なんだありゃぁ。」
死体の運び出しも残り半数ほど、ようやく折り返し地点だと一息ついたゴンドーフだったが、ナレハテ(通称大福)の変化を見逃さなかった。
うねるように動いたかと思うと、表面を突き破るようにして10匹の白い蜘蛛のような化け物がノソノソと這い出てきた。
気の滅入る作業を黙々と続けて来ただけに、即座に反応できる者がいなかった。
ワタリビトであるライアーやユーシン、ドワーフたちについてきたゲイルでさえも。
白い蜘蛛たちは、残った死体の山の上まで跳躍すると、何かを探すように周囲を見渡している。
そのうち一体が炎に包まれた。
「問題無い、この蜘蛛は殺れるよ。」
右手を炎で包んだライアーだ。
蜘蛛の胸をひと突き、同時に炎を発現させていた。
炎に包まれた白い蜘蛛は、死体の山から離れるように後ろに飛ぶと、そのままくずおれてピクリとも動かなくなった。
「やっぱり焼き尽くせないか、火力上がんないんだよなぁ。」
右手の炎を悔しそうに見つめながらぼやくライアーだった。
その姿を見たからか、6体の白い蜘蛛が死体の山から飛び降りてきた。
ユーシンは刀を一閃、蜘蛛を両断した。
ゲイルも事も無げにクモを貫く。
ドワーフたちも、魔者たちもさして苦戦することなく倒してしまった。
残っていた3体の蜘蛛は、運び出していない死体にとりついていた。
蜘蛛、という表現は間違っていたかもしれない。
とりついた死体を抱え上げた化け物は、次の瞬間、ガパッと空いた腹部が死体に食らいつき、瞬く間に、指一本残さず食べつくしてしまった。
「なるほど、こいつらにとっては餌だってことかよ。」
バリバリと歯ぎしりの音が聞こえる。
ファーレンの兵とはいえ、ゲイルにとっては仲間同然の遺体だ。
死体を食べた化け物達は、色が黒っぽく変わり、姿にも変化が現れた。後ろの四本足で直立する。
一番前、今は上側の左右2本足は、まるで剣のように鋭く、細く変化し、二段目の足は、先端が4本指の手のように変化した。
ユーシンが飛び掛かる。
上段から両断せんと振り下ろした刀は、頭上でクロスした前足の刃でいともたやすく受けられた。
(やべっ)
2段目の足が、左右同時に抜き身の突きをユーシンの腹に突き刺そうと迫る。
「んげっ!」
真横から腹部に衝撃を受けて吹っ飛ぶユーシン。
間一髪、ライアーが蹴り飛ばしてくれたのだと気が付いた。
白い蜘蛛は続々と湧き続け、死体に群がる。
「おいおい、冗談だろコレ。」
その光景はまさに地獄絵図だった。
「アレ知ってるー」 「いじめられっ子ー」
レンとユイが突然、コンテナの窓から見える巨大な白い大福を指さした。
「知ってるって、空の国とやらにいた時のこと?」
もし双子の勘違いとかでなければ、攻略のヒントを得られるかもしれない。
「ちがうよ。」 「もっとずっと前だよ。」
もっとずっと前・・・魔物化する前ってことか?
つい忘れてしまうが、この双子はクソ悪魔の同類、見た目と年齢は無関係だ、知っていてもおかしくない。
「いつもいじめられてた。」 「ウスノロ言われてた。」
「いつもみんなを恨んでた」 「いつもみんなを呪ってた。」
「すごくおいしかったから覚えてる。」 「一番最初に変わった子。」
「みんなから嫌われて追い出された子。」 「お空に行けなかった悲しい子。」
「今もすごくおいしいね。」 「前よりずっとおいしいよ。」
おいおい・・・それって、アレは奴らが空に逃げるより前からあそこにいたってことかよ。
「なぁ、あれって、そんなに昔からあそこにいたってこと?誰にも気づかれずに?あんなに大きいのに?」
「最初は小さかったよね。」 「ごはんいっぱい食べたからだよ。」
「少し前までこのくらいだった。」
レンが大きさを指で表現したけど、それは小石程度の大きさだった。
「すぐそばに落ちて来た子を食べて大きくなったの。」
ああ、確か、落ちた場所が悪くて死んだのがいるって言ってたな。あの再生力で死んだって、そう言うことだったのか、ってか共食いするの?あいつら。
「兵隊さんもいっぱい食べてたよ。」 「おいしそうだったね。」
「みんな怖がってた。」 「みんな恨んでた。」
「あの子とおんなじ。」 「だから殺さなかったんだね。」
え?
「元気そうだよね。」 「自分を食べたからだよ。」
まさか、あの虫どもって・・・
自分の想像に寒気がした。
勘違いだと思いたかった。
俺をじっと見る双子の表情を見るまでは。
死体はあるのにいっぱい食べてたってことは、あの大福は、兵たちの魂を食らったってことか。
あの白い虫は、兵たちのナレハテか。
人の兵でも対処できているようで大きな脅威ではない。
問題は黒い方、双子の話しぶりからすると、自分の体を食べることで何かを取り込んだ蜘蛛は、ユーシンの刀を軽く受けたうえ反撃までして見せた。
ライアーの機転が無ければ、戦線離脱してもおかしくない深手を負っていただろう。
まずい。
まだ数百は死体が残っている。
饅頭の表面は波打ち、次々と蜘蛛が湧き出している。
「ドアを開ける!シンさんと従魔たち、ワタリビト以外は、着底後ドワーフ達や残った兵の撤退を補佐しろ!これからやって来る味方にも情報共有を!」
スロークが決断をした。まだ地上へは数十メートルあるが乗降用のドアが開け放たれた。
「楽しそう―。」 「プチッとやる―。」
そう言いながら、双子は早々に飛び降りてしまった。
スロークやユーキもそれに続く。
「フレイア、デストーム、あの大福から出てくる蜘蛛を殺れ!」
叫ぶが早いか、大福へ炎と石礫のブレスが襲い掛かった。
「コクエンとハクア、カムイの配下は死体の処理と白蜘蛛の始末を。スラりんは大福対策に待機、他は黒い奴の処理だ。いくぞ!」
そう言って飛び出した。
一番の問題は・・・たぶん俺が一番弱いんだよなぁ。
刃先が赤く輝くハルバートを叩きつける。
コクエンが渾身の力を込めた一撃ですら、容易く弾かれてしまう。
今回の遠征に合わせてシンから与えられた装備は超一級品、このハルバートも、コクエンの膂力と合わさることで岩をも両断して見せた。
それが通じない。
ブレード状の前足が厄介だ、徹底して防御されると突き崩せない。
そして、腕のように変化した中脚が鋭い攻撃を仕掛けてくる。
4本の後ろ足はガッチリと踏ん張り、体勢を崩させることすらできない。
しかもこの敵の動き、とても獣の動きとは思えない。
元が兵士だからなのか、どこか訓練で戦ったカルケール正騎士団を連想してしまう。
コクエンにとって、騎士たちの戦闘力は総じて評価に値するものではなかった。スピードもパワーも頑強さも比べるべくもない、スキルを封印したとしても、束でかかられてもまるで相手にならなかった。
そんな中にも、ごく一部の者ではあったが、技術の研鑽に人生をささげ、強さというより、その熟練された技術力に対して、素直に尊敬できる者もいた。
その姿が重なる。
相対している敵の元がそのような熟練の騎士だったかは分からないが、彼らの技術に、自分と同等の身体能力が備わることでこれほどの強敵になるとは。
コクエン自身、騎士たちのひたむきな研鑽の果てともいうべき技術に、微かな憧れを感じていた。独学ではあるが技術の研鑽にも励んでいた。
だからこそ、技のみでの戦いにこだわった。
シンから与えられた装備でなければ、何度か命を失っていてもおかしくなかっただろう。
それほどに敵は強かった。
(元は名のある騎士であってほしい、というのは自分勝手だな。)
今の自分では勝てない、どこかスッキリした気持ちになれたのは、全身全霊で戦ったからこそだろう。
(わがままはここまでだ。)
構えたハルバートが黒い炎に包まれた。
シンが、オーガキングではなく格下のオーガロードを従魔にした理由の一つでもある黒炎。
本来は、黒炎をはじめとする強力で多彩なスキルがオーガロードの本領と言える。
「いくぞ。今からはシン様の従者、オーガロードのコクエンとしてお相手する。」
黒炎をハルバートにまとわせ、強撃、加速、武装破砕と、一撃を強化するスキルを全開放する。
黒い炎が尾を引き、打ち下ろされる刃を、交差させた2本のブレードが待ち受ける。
コクエン渾身の一撃は、ブレードを一本飛ばし、2本目も半ばまで、と、バキンという音と共にはじけ飛んだ、武装破砕の効果だ。
咄嗟に後ろへと飛びのこうとした敵の胸に、防ごうとした腕ごとハルバートの切っ先が深々と突き刺さった。
次の瞬間、敵の全身が黒い炎に包まれた。
ハルバートを引き抜かれると、その場でドサリと地に伏し、そのまま動くことは無かった。
「自分もまだまだ、もっと研鑽を積まなければな。」
次は技だけで勝ってみせる。
新たな目標を得たコクエンは、次の相手を求めて地を蹴った。
「ふむ、我にとっては相性の良い相手のようですな。」
馬上から見下ろすカムイ。
空洞の視線の先には、ブレードを破壊され、全身の外殻が無数にヒビ割れた黒い蜘蛛。
カムイの得意とする装備破壊系のスキルは、全身が鎧ともいえる蜘蛛の体を破壊するのに好都合だった。
それ以上に、パワー、スピード、技、スキルのどれをとってもカムイが一枚上手で、背の長剣、神裂きの剣を使うまでも無く、腰に差したブロードソード、騎士殺しの剣で圧倒して見せた。切れ味よりも装備破壊スキル補正の高い剣だ。
頭部を砕き息の根を止めると、新たに変化して飛び掛かって来た個体と剣を交える。
(この蜘蛛たち、個体差が大きいようだ。)
一打ち剣を交えただけで先ほどの敵との技量の差を感じ取ったカムイは、躊躇せず背の神裂きの剣に切り替えた。
黒い刀身から、紫色の蒸気のような光が立ち上る。
「なるほど、身体能力は蜘蛛の物、技量は素体となったヒトの物ということですね。外殻の強化は蜘蛛と鎧のミックス、と、いうことにしましょう。」
黒蜘蛛が再び飛び掛かり右のブレードを横なぎに、カムイの首を狙う。
打ち落とすために振り下ろした神裂きの剣は、ブレードどころか蜘蛛自体も両断してのけた。
「やはり、騎士殺しではブレードを破壊することも叶わぬ技のキレ、敬服いたします。ぜひ生前にお会いしたかった。」
短く哀悼の意を示すと、次の瞬間にはその存在すら忘却の彼方へ、地獄の騎士は主の命に従うべく新たな獲物に切りかかった。
雷を落とす。
それだけで黒い蜘蛛はピクリとも動かなくなる。
最初こそ外殻の硬さに動揺したハクアだったが、何のことは無い、これも一応生き物なのだ。
(不覚であった。)
だからこそ己のうかつさに怒りすら覚えた。
軽く切り裂けると思った爪の一撃を弾かれ、動揺した隙に別の個体から攻撃を、フェンリルの命ともいうべき足に深手を負ってしまったのだ。
怒りに任せてはなった雷で2体ともが動かなくなると、そのあっけなさに深く反省することになってしまった。
(治りが遅い、いや、これは戒めか。)
反省したハクアは、自らの功を諦め数を減らすことに力を注ぐことにした。
個体の強さをオーラのように見ることのできるハクアは、傷む足に鞭打って戦場を駆け、比較的オーラの小さいものを確実に仕留めて回る。
より多く数を減らすために、最小限の力で確実に。
(これは、意外に難しいな。)
オーラを見極める、力を制御して無駄のない力で仕留める、これまで経験したことの無い戦い方に、改めて自分の大雑把さに気が付いたハクアだった。
戦場にはおよそ似つかわしくない黒い大きなキューブがあった。
スゥっと消えると、中央には黒い、試験官を逆さにしたような姿のヤミがいた。
足元には、関節毎に切断された黒蜘蛛だったものが。
新たな戦い方に気が付いたヤミは、初めて感じる高揚感に戸惑っていた。
つい先ほどまでは、死の恐怖すら感じなかったというのに・・・
黒の檻によって視覚を完全に奪ったものの、ヤミの攻撃力では黒蜘蛛の硬い外殻を破壊することも切り裂くこともできなかった。
ヤミの戦い方は、黒の中に閉じ込め、凝縮した黒の一刀によって両断するというものだった。
が、硬い外殻には薄くすじが入る程度。
それでも、同じ場所に攻撃を続ければいずれは両断できる。
焦りも感じることは無い。だからこそ、淡々と攻撃を続けられる。
黒蜘蛛は、視覚に頼ることをやめ音と臭いでヤミを知覚することにした。
蜘蛛に近い姿の特性なのか、視覚を捨てるとすぐに戦い方に慣れ、ヤミの正確無比な攻撃にも順応した。正確であるほど防御も容易いとばかりに。
形勢が逆転するのにさして時間はかからなかった。
四本の攻撃がジワジワとヤミの生命を蝕んでゆく。
恐怖などの感情を持たないヤミは、現実を素直に受け入れた。
勝利は不可能であると。
実にあっさりと、死を受け入れようとしていた。
その時フと、連日のようにヤミのもとを訪れる主の顔が頭をよぎった。
誰もがヤミの”黒”を恐れるのに、主だけは心地よいと、穏やかにヤミの”黒”に身をゆだねに訪れていた。
ヤミにとっても、心地の良い時間。
もう一度でいい、主を癒したい。
その思いが、受け入れようとしていた死を拒絶した。
正確無比だった攻撃がズレる。
感じたことの無い感情が、ヤミの心を飲み込んでゆく。
恐怖、焦り、初めて生まれた感情が、ヤミの攻撃をひどく雑にしていった。
めったやたらに打ち込む刃が、偶然にも黒蜘蛛の関節を切り裂く。
そこを狙えばいいのか。
瞬間的に感情を切り替えると、切り裂いた関節に切りつける。
が、それは黒蜘蛛に容易く防がれた。
(これじゃだめだ。)
正確な攻撃ばかりが戦い方じゃないと、今さっき覚えたばかりだ。
ヤミの刃が、無数の小さな刃となって出鱈目に黒蜘蛛に襲い掛かる。
(これだけでも駄目だ。)
出鱈目に打ち込む刃の中に、関節に狙いをつけた刃を紛れ込ませる。
すべてを制御することはできなくても、ほんの数本なら容易く実行できる。
こういう戦い方もあるんだ。
目論見通りバラバラに切断された関節。
これまで気づきもしなかった自分自身の可能性を見出した。
黒を纏うことをやめ、代わりにその黒を刃と化して迫る黒蜘蛛の関節を切り裂く。
無数の黒い刃は、一瞬にして黒蜘蛛をバラバラにしてしまった。
あぁ、これでまた、主を癒すことができる。
初めて感じる喜びの感情に震え、ヤミは一刻も早くこの戦いを終わらせるために刃を振るった。
マガちゃんは不満だった。
このような乱戦では、マガちゃんの特性でもある距離感の相違がうまく機能しない。
対峙しているのとは全く別の相手の、攻撃ともいえぬ動作にぶつかってしまう。
お気に入りの服も破れてしまった。
黒蜘蛛の動きも早くて、全身を凍らせる前に逃げられてしまう。
一部でも凍らせることができれば、ランダムで状態異常を発生させられるし、凍った部位はちょっとした衝撃で砕けてしまうので戦果としては申し分ないのだが、マガちゃんにはどこか不満らしい。
マガちゃんのスキル構成は一対一の戦闘に特化している。敵味方が入り乱れるような乱戦は特に苦手だった。
防御はうまく機能せず、攻撃も思い通りにいかない。
マガちゃんの不満は不安になり、悪いところが顔を出す。
ネガティブマガちゃんが。
(できない子、ダメな子、いらない子。)
一度ネガティブマガちゃんが顔を出してしまうと、何をやっても悲観的に感じられ、その結果動きも悪くなる負の螺旋に突入する。これは、禍ツ焔攻略のための設定でもあり、マガちゃんのせいではない、のだが、それから脱却するのは容易ではない。
やがて動くことができなくなり、泣き出してしまったマガちゃん。
距離感の相違に気付かれれば一巻の終わり。
そしてその時は訪れた。
黒蜘蛛の刃が、マガちゃんを切り裂けるポイントへと寸分たがわず正確に襲う。
その時、黒蜘蛛の足元から無数の凍てつくトゲが突き出し、黒蜘蛛の体制を崩した。
(あるじ・・・)
「すごいなぁ、マガちゃんのおかげで楽に戦えるってみんな言ってたぞ。」
何気なくマガちゃんの頭を撫でてしまった。
撫でられた?
いつもなら空振りするのに。
「いらなくない?」
しゃべった!?
「マガちゃんをいらなくなるはずないでしょ。そんなこと考えちゃだめだから。」
衝撃を押し殺してなんとか答えた・・・顔、大丈夫だったかな・・・。
キュッと手を握ってきた。
さらなる衝撃に驚くと、すぐそばでバキンッという音が。
迫っていた黒蜘蛛が、地から生えた黒い炎のトゲに串刺しにされていた。
「これって・・・」
「あるじといっしょ。」
そう言って俺を見上げるマガちゃん。
思わず抱きしめようとして・・・空ぶった。
えぇ~。
「がんばる。」
それだけ言うと、マガちゃんは再び乱戦の中へ。
子供どころか嫁すらいたことないけど・・・これが孫?
変なモードに入って、危うく黒蜘蛛に首を落とされそうになったのだった。
アブナイアブナイ。
フレイアとデストームは、巨大な大福の上空を旋回しながらブレスで湧き出る白い蜘蛛を薙ぎ払っていた。
大福本体へもダメージを与えているはずなのに、すぐに回復されてしまう。
重装備の騎士たちをまとめて消し炭に変えるフレイアのブレスも、城壁をも貫通するデストームのブレスも、大福を焦がし、削り取りながらも次の瞬間には元の姿に戻ってしまうのだ。
しかも、白い蜘蛛は龍たちから狙いにくい場所から湧きだすようになっていた。
「小賢しい。ブレスでなければこれでどうだ。」
デストームが咆哮を上げると、空が一気に陰る。
瞬く間に空が、黒く分厚い雷雲に覆われる。
夜のように暗くなったかと思うと、次の瞬間、耳をつんざく轟音と共に無数の雷が大福と、その周辺に降り注ぐ。
「やめんか馬鹿者!ここで戦うのは我々だけではないのだぞ。」
デストームの雷によって、ブレスで仕留められなかった白蜘蛛のほとんどを殲滅できたとは言え、影響する範囲が大きすぎた。
「むぅ・・・分かっておるわ。味方には当てておらん。」
そうはいったものの、やりすぎたと反省したのか声のトーンは低い。
「しかし、らちが明かんのも事実か。多少なりとも削るとしよう・・・合わせろ、デストームよ。」
そう告げると、フレイアはひときわ大きいブレスを放った。
「あい分かった。まかせよ。」
デストームは風を巻き上げ炎をあおる。
炎は風に巻き上げられ、巨大な炎の竜巻になった。
数分後、炎が消えた後には、一回り小さくなった大福が。
「無念・・・この程度とはな。」
「腐るな、フレイアよ。再び力をため削ってゆけばよい。」
2頭の龍は、再び巨大な火災旋風を巻き起こすため旋回に戻った。
「「おもしろーい!」」
レンとユイは満喫していた。
この依代に入ってからというもの、あらゆるものが新鮮に感じる。
いつもなら、チョンとつついただけではじけ飛びそうな黒い蜘蛛の格好をしたヒトが、ちょっと本気を出さないと壊せない。
この依代も、かなり力を出しても壊れない。
思いっきり動ける、戦える。
楽しくて仕方がない。
双子の周りには、白と黒の蜘蛛が累々と横たわっていた。
と、奥にいる白い大福に無数の稲妻が降り注ぎ、そのあと巨大な炎の竜巻に包まれた。
「きれー。」 「かっこいいー」
大福から感じる怨嗟の念がより強くなった。
「もっと面白いことしよう。」 「すっごく面白そうだよね。」
そう示し合わせると、一蹴りで大福の元まで、反応して突き出てくるトゲも無視して、勢いに任せた全力のパンチを放った。
巨大な大福が大きく波打ち、戻る勢いで双子は吹っ飛ばされた。
「すごぉーい」 「今のすごくよかった」
無邪気な二人は、今の反撃がすこぶる楽しかったようだ。
「ああ!お洋服が・・・」 「やぶれちゃった・・・」
周囲の温度が急激に下がってゆく。
「「怒った」」




