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67:勅令

次回は7月1日(土)16:00更新予定です

 最初のアタックから一か月、とりあえず安全に戦えるであろう6階まで、という制限付きで地下訓練施設を開放している。

 レベルアップはしておいた方がいいからね。

 主に使っているのはレベルアップできる従魔と、エイルヴァーンのシステムで登録可能な配下たち。従魔たちが実力?(暴力)で従えたドラゴンや悪魔たちとか、勝手に配下に加えてくれとやって来た狼たちやオーガにオーク、ゴブリンには適用されない。システム外ってことなんだよね。

 似た理由で騎乗用モンスターのフブキたちも、システム上レベルアップしないので使うメリットが無い。

 マスターとマナは、仕事に忙殺されて訓練どころではない状態、というか、村にとってはソンチョー級になくてはならない重要なポジションなので、まかり間違っても訓練施設で怪我なんてさせられないし。戦場に立たせるわけにもいかんし。

 ユーシンやライアーはレベルアップがないのでここでの訓練はあまり効果がない。

 ・・・え?結局俺とスロークしか恩恵を受けない?

 間接的だけどユーキもレベルアップするから恩恵は受けるよね?入ってないみたいだけど・・・一階で心折れたみたいだけど・・・虫克服できてなかったみたいだけど!

 まずい、勢い余ってこんなデカい施設作らせちゃったけど、規模の割に恩恵受けるワタリビトが少ない。

 気づかれたらアオイにシバかれる。

 なんか誤魔化さなきゃ。

 慌てた俺は、かねてからの計画を実行にうつすことにした。

 この世界の魔獣を従魔にできるのか実験。

 利用するメンツが増えれば。

 ヤバそうだったら逃げよう。

 せっかくやるならじっくり時間をかけて吟味しよう、と思ったんだけど、探索中にいきなり襲いかかってきたティガルド、虎獣人の集団を返り討ちにしたとき、偶然にも一体がエイルヴァーンのテイム条件を満たした。

 盗賊まがいの連中だったけど、意思疎通のできる相手、村で魔者と呼んでいる存在を従魔にしてしまうことに躊躇いもあった。

 まぁ、襲ってきたんだから生殺与奪は俺の権利だよなってことで無理やり納得した。

 従魔化の条件は、まず生命力を5%以下にすること、その状態で精神系の状態異常、睡眠、鎮静、昏倒もしくは身体系の状態異常の麻痺、拘束のいずれかの状態にすること、その状態のモンスターに、テイム用アイテムの「従属の輪」を使う。

 と、モンスターごとに設定された確率で従魔化の成否判定が行われて成功すると晴れて従魔になると。

 ちなみに確率は公表されていない。

 今回はあっさり従魔化成功したよ。

 想定通りレベルやステータスが生えた。

 人の言葉で会話もちゃんとできる。

 よしよし、虎獣人はエイルヴァーンには存在しなかったから、鍛え上げて進化するかも確かめるとしよう。

 なんて感じで、虎獣人ティガルドのガルドの他、デモンエイプのエンオウ、グレートベアのクマドンを従魔にした。

 名前はね・・・センスを求めないでおくれ。

 ガルドは種族名の一部だし、エンオウは猿の王的な感じでだし、クマドンは・・・個体は違うけど、生まれて初めて壁ドンされた相手だしね・・・壁ドンじゃなく拠点ドーンだったっけ?

 こうして、3体の新従魔を引き連れて浅い階層でレベル上げ&進化実験の日々となりました。

 対ナレハテ用魔道具の改良をしようか、とも考えたけれど、いつ救援の要請が来るか分からん以上は不用意にいじらない方がいいかもしれないと触れなかった。

 同じ理由で訓練施設8,9,10階層の攻略も手を付けられないでいる。

 もし簡単に治らないような怪我や状態異常、死亡なんてことになったら最悪だ。


 そんな日々を過ごしていたけど、情報も揃ったということで偵察部隊からの報告を受けることになった。

 自室にクロウと二人、クロウには順次、各地のシャドウデーモンやヒノモトに潜入している蠅の王から念話で状況が伝えられ、それを自分に報告する手順になっている。

 密談と違って念話は距離の概念が無いから便利だ。

 問題は俺たちは使えないッてところ、不便だ。

 「ヒノモトですが、ファーラン王家が復活しておりました。」

 ?

 この世界の騎士を見るかぎり、とてもワタリビトに対抗できる戦力なんてあるとは思えないんだが?

 ナレハテ戦で疲弊し尽くせばワンチャン無いとは言い切れないか?とはいえだよなぁ・・・。

 「どうやら、一連の簒奪劇には王家遠縁にあたる伯爵家の謀略があったようです。

 ナレハテとの先の見えない戦いによって謀略にほころびができ、結果それが明るみに出ることとなり伯爵家は断罪、王家とヒノモトが和解したとのことです。」

 そういうことか・・・でもなぁ、う~ん、すんなり和解?

 違和感しかない。何か裏がありそうだけれど、報告は最後まで聞かないと。

 「先ほど正式に王家の復帰が宣告され、ヒノモトは簒奪者でありながら最終的には伯爵家の謀略を暴き王家を救った、という上辺の名目で騎士団の一角を担うことになったようです。

 王家に死亡者がいなかったことが幸いだったようですが、それよりもナレハテとの戦闘に対する戦力を当てにされたのでしょう。

 当てにはしつつも信用はしていないようです。

 彼らを5か所に分断して、連絡が取りづらいよう誘導していましたので使いつぶして減らすつもりではないかと。」

 「そんな状況でよく文句言わないな。」

 会ったことないけど、彼らのリーダーだかは相当痛いイメージがある。

 命令大好き、命令されるのは大嫌い、無駄にプライドが高くて、お願いも頼るのも謝るのも絶対イヤ、って印象しか無いんだけど。

 「リーダーとされている男は無能です。」

 ハッキリ言っちゃったよ。

 俺もそうだと思ってるけど。

 「王家の家臣と称する者たちにおだてられてその気になっているようです。自分たちが捨て駒にされているとは思ってもいないでしょう。

 ただ、彼奴の能力には警戒する必要があります。

 微弱ですが、おそらく精神支配系の能力が常時発動されていると思われます。

 近くに長くいるほど影響が強くなっていく類のものです。」

 なるほど、米男のリュータが馬鹿リーダーについて話していた内容にちょっと違和感があったんだけど、それなら納得できる。

 ((その、本当はいい人なんですよ!でも、その・・・たまに理不尽というか、イケイケな人というか、とにかく頭を下げることが嫌いな人だったりしてですね))

 一般市民や兵士に被害すら出しておきながら本当はいい人?

 人の上に立っていいような人間には思えない、なのに周りが肯定的なのに違和感を感じていた。

 なるほど、パッシブスキルで魅了か何か持ってる?

 う~ん、ゲームでそんなスキルあったかなぁ。

 実社会ならともかく、ゲームでは有効性皆無だろ?

 何かあるんだろうなぁ。

 とりあえず直接奴と会う可能性のあるメンツには精神耐性上昇アイテムを渡しておいた方がいいだろうな、たしか、貯蔵庫にいっぱいあったはずだ。

 「近く、ファーレン国王よりサンザ国王へ正式に救援要請があるようです。」

 それが当然だよな、トップが馬鹿だと下は大変だ。

 まぁ、こっちは十分対策をしてから挑むとしよう。

 近く要請があるらしいし、時間の問題ってことだな。

 「続いて各地のナレハテですが、現状調査活動のできる範囲で12体が活動中です。」

 「増えてんのかよ!」

 思わずつっこんじゃったよ。

 世界中で活動していたのが14体じゃなかったの?それがこの大陸だけで12?

 「正確には8体の増加です。1体は、石壁に閉じ込めていた1体が脱出して活動を再開しました。 

 どの個体も知性的活動はしておりません。気まぐれに移動し、気まぐれに破壊活動を続けております。

 ナレハテの脅威は伝わりつつあるようで無理に交戦せず状況を見守る地域が増えています。

 ワタリビトと思わしき存在も確認できておりますが、どこも疲弊しているようです。

 ナレハテの特徴として、一度でも戦闘に入ってしまうとその場にいた生物を殲滅するまで執拗に追いかけ攻撃しています。」

 引くこともできない無限地獄か。

 スラりんがいてくれて良かった。

 「交戦中の連中に、それとなく伝えてくれる?方法云々は別として、とにかく焼き尽くすのが有効だって。」

 クロウにそれだけ伝えると、俺はみんなと情報を共有するために村へ向かうことにした。

 

 一週間もたたずにサンザ国王からの勅命が来た。

 領主であるスロークだけでなく、王の頼子になってしまった俺にまで。

 スロークの補佐官って肩書でここにいるんだから、本来は俺に勅命なんて必要ないんだけどね、ようは、王の頼子である俺にも勅令を出すことで功績の集中を防ぎ、王の頼子が出るんだから王の実績にもつながるってことらしい。

 勅令の使者はコリント伯爵。

 ややこしいけど、同格とはいえ元々スロークはカルケール伯爵の頼子だから、カルケール伯爵の株を上げることにもなる、なので使者はコリント伯爵にすることで分散させるって意味なんだと。

 メンドクセ!

 とにかく勅令が来た。

 今回の遠征、参加人員は

  

  指 揮 官:スローク・グリンウェル伯爵

  副   官:シン・サンザド・グリプス子爵

  護   衛:レン ユイ

  第一部隊長:ライアー・ライル男爵

  第二部隊長:ユーキ・カトリ男爵

  第三部隊長:ユーシン・タナベ旗爵

  第四部隊長:ドワーフ戦士団団長ゴンドーフ

  従魔兵団 :フレイア、デストーム、スラりん、ハクア、カムイ、ヤミ、マガちゃん、コクエン

  後方支援 :クロウ

  技術支援 :トール

  輸送隊  :デストーム配下のスカイドラゴン5頭

  通信担当 :闇影の王

  

 第一から第三までの部隊には、腕の立つ警備兵から志願者(人、ゴブリン、オーク、オーガ混成)とコクエン、ハクアの配下達が混合で20名ずつ編成されている。

 驚いたのが、第四部隊に編成したドワーフ戦士団の協力だ。

 以前のナレハテ戦から彼ら独自に対策を考えていたらしく、今回はぜひその成果を試したいと志願して来た40名のドワーフ戦士たち。

 どのような方法なのか非常に興味があるけど、今回は魔道具に専念して前線に出るなと命令されてしまった。

 総勢110名ほど、軍というにはあまりにも少ない人数だけど、戦力的には申し分ない。

 今回は移動の手段もあって多くはできなかったのだ。

 ヒノモトへは、北の街道からカルケール伯爵領、ノイトン伯爵領、王家直轄領を抜けて国境へ。

 国境付近に直轄領があるのは、辺境貴族たちを守るため、という建前が公言されているけれど事実は逆で、他国と内通しての謀略を防ぐためである。

 通常15日ほどの距離、大軍での行軍となれば20日はかかってしまう。

 が、今回は最速で度肝を抜く。

 理由は一つ、普通に行軍したらワタリビトの多くは助からないからだ。

 ファーレン側はそれを見越したうえで救援要請のタイミングを計っていたふしがある。

 表向きは協力関係でも裏では、簒奪された恨みをキッチリはらそうって思惑がプンプンだ。

 ということで、スローク、ソンチョーの許可を受けて自重をキャストオフします。


 早朝、拠点の運動場に揃った戦士たち。

 「ほ、ほほ本当にだいじょうぶなんだろうな・・・ガブリとやられたり、落とされたりはしないんだな?」

 ゴンドーフが完全に引けた腰で、輸送機役のスカイドラゴンを前に耳打ちしてきた。酒臭いよオッサン。

 「大丈夫です。急ごしらえなので乗り心地はご容赦を。」

 とりあえずなだめておく。

 デストームと配下のスカイドラゴンたちは、俺たちや参戦する兵たちが搭乗したコンテナを吊り下げて飛行、空を一気に駆け抜けて戦地へ向かうのだ。

 俺は、デストームのたっての希望で直接騎乗、首元に付けた鞍にまたがることになっている。

 で、そのデストームが吊るすコンテナにはスロークと飛行能力の無い従魔たち、技術支援のトールが乗り込む。

 スカイドラゴンには第一から第四までの部隊が分かれて乗り込み、最後に食料などの補給物資。貯蔵庫に入れれば済むんだけど、ドワーフ達やスキルの詳細を知らない兵もいるので別編成した。

 直線距離ですむからわずか400Km、昼前には着くな。

 簡易な台に乗ったスロークが、兵たちを前に声を上げる。

 「陛下の勅命により、我々は遠くファーレンへと発つことになる。

 通常の行軍であれば、この地からファーレンまでは20日、さらに各地へ別れるために最長30日はかかることになる。

 しかし、すでにファーレンでは長期間の戦闘により疲弊し、一刻を争う事態となっている。」

 ここで少し貯めると、声を落とした。

 「だから今回は空を駆け戦地へと移動することにした。世界初の偉業だ、誇れよ。」

 そう言うとニッと笑う。

 様になってるな。

 笑い声も聞こえた。

 オーッと、鬨の声をあげる者たちもいた。

 確実に緊張が和らいだ気がする。

 緊張の原因はドラゴンたちだろうけど。

 「目標は4体、俗称ナレハテの殲滅だ。未知の化け物であるが、副官のグリプス子爵はすでに1頭仕留めている。参戦してくれたドワーフ戦士団も対抗策を持参してくれている。厳しい戦いではあるが、確実に勝てる戦いでもある。

 諸君の実力ならば、間違いなくやり遂げられる戦いだ!

 第一目標は生き残ること!誰一人死ぬことは許さん。自らの命は、大切なものを守るときのために無駄にするな!」

 「大切なものがいなかったらどうするんだろう。」

 思わずつぶやいてしまって、ハッと気が付くと全員の視線が俺に集中していた。

 「そんなのはグリプス卿だけだろう。」

 呆れたように言うスロークのこの一言で、ドッと笑いが起こる。

 はいはい、どうせ彼女いない歴=生まれた時からなオッサンですよ。

 そんな中、グリンウェル伯爵の号令が響く。

 「出立する!総員直ちに搭乗せよ!」

次回からすごく苦手らしい話に入ります。

しっかり取っていおた貯金も使い果たしてまだ何話で解決できるかも決まってません。

困った。

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