66:レン•ユイ
次回は6/28(水)16:00更新予定です。
押し付けられた双子のボディー制作にかかる。
といっても、ゲーム時代にチマチマと作っておいたゴーレムのパーツを使うことにしたからそんなに苦労はしない。
ゴーレム軍団を作るんだと大量にストックしておきながら、強すぎる従魔を手に入れてお腹いっぱいになっちゃって放置していたのだ。
その素材の中から、エイルヴァーン最強金属アダマンタイト製の人型ゴーレムの素材を双子と同じくらいの体形に調整しなおす、と言っても、ゴーレム製造システムでちょちょいといじるだけなんだけど。
顔の造形はトウリョウを呼んで頼んだ。
自分でやってもいいんだけど、いろんな人の手を借りた、という実績作りだ。
服は、アカネとオリヒメにご足労願って採寸からやったよ。
こちらも同じく実績作り、いろんな人の手によってつくったんだと実感してもらうことで、村の住人と友好的に接してくれるようになればと・・・タノムヨホント。
服はすぐ破けないように、俺の作業着と同じ素材、スレッドスパイダーの糸とミスリルの極細ワイヤーで織った生地で作ってもらうことにした。
双子の意見を聞きながら、今着ているデザインを基本に何パターンか作ってもらうことになったんだけど、驚くことに、双子には性別が無かった。
服装から勝手に男子と女子って思ってたんだけどね。
着ていた服も何かこだわりがあったわけではなく、クソ悪魔が置いて行ったものを何となく着ていただけだったとか。
ただ、双子の服装がアカネの琴線に触れたみたいでやたらと褒めちぎっていたな。
そのうち双子もまんざらでもなくなったみたいで、その結果今着ている服を基準に、デザインはアカネに全てお任せみたいな感じになっていた。最初はマガちゃんと同じが良いって言ってたけど、同じ服が三人だとややこしいから助かったよ。
アカネはマガちゃんの和風ゴスロリ服にも興味示してたけど、そう言うのが好きなのかな。
口八丁ではなく、実際に依代の完成へ向けて動いてゆく様子を見た双子は上機嫌である。
非常に喜ばしいことだ。
問題は、なぜかマガちゃんになついてしまって、ことあるごとに付いていくこと。
無表情のマガちゃんだけど、案外・・・いや、明らかに迷惑がってるな。
ただ、絶対勝てない相手だってことも理解してしまっているだけに抵抗をあきらめてしまっている感じだ。
すまん、マガちゃん、あと少しの辛抱だ。
この村に住むことになるのだからと双子の名前を聞いたけど、どうせ人では発音できないからと言われてしまった。試しに聞いてみたけど雑音にしか聞こえなかった。
たしかに、クソ悪魔も丸悪魔も名前知らないな。
知る気も無いけど。
村に住むのに不便だから呼び方あった方がいいんだけど、の回答に「適当に呼べ」って言われたから、「レン」と「ユイ」好きな方を選んでもらった。
エイルヴァーンでシン・イェンと共に使っていたサブキャラの名前「レン・ユイ」をバラしただけだ。イェンは無断でロン毛に取られてしまったからね、だから絶対イェンとは呼んでやらないのだ。
ゴスロリ衣装の方がレン、男の子の格好をした方がユイを選んだ。
なんか、逆じゃね?
いや、良いんだけどね、性別無いんだし。
こうして数日後には、村の仲間として迎えられた双子のレンとユイ。
一応住人達には、守護神像から保護を頼まれた云々と伝えてある。
なんせ、弱体化してても現状村での最大戦力だし。
本性を知るのは従魔たちとワタリビトだけ。
クソ悪魔の施した戦闘力大幅減効果が双子の怒りを買うのでは、と内心戦々恐々だったけど、双子はまったく気にしていなかった。
むしろ、大幅に減衰した能力によって今まで通りに動けなくなった双子は、マガちゃんとの追いかけっこがよけい楽しくなってしまったようだ。スマン、マガちゃん、双子がいないとき埋め合わせするから突然消えないでね。
こうして、見るもの感じるものすべてに興味津々と言った様子のレンとユイはあちこちに出没している。
約束を守ってむやみに暴れない成果とでもいうべきか、本性を知らないみんなからかわいがられているみたいだし、アカネやオリヒメ、ユーコになついたみたいでマガちゃんのストレスも大幅減。
一安心ではある。
けれど、双子が勝手に食べた代金が俺に請求されるのはどういうわけだ?
保護者になったつもりはないんだけどな。
まさか懐具合を気にする日がこようとは。
面倒事の一つが一段落ついたから今後のためにも動き出さなければならない。
まずは情報収集だ。
クロウを呼ぶと、貯蔵庫に眠っていたとっておきのアイテム・・・ごめん嘘だ、すっかり存在を忘れていたアイテム3つを取り出して渡した。
3つとも特定の悪魔にまつわるシナリオで登場したアイテムなんだけどね。
体を10万の蠅に変化させることのできる蝿の王を召喚する「蝕蠅の王杯」。
100体の影に潜む悪魔、シャドウデーモンを配下に持つ闇影の王を召喚する「闇の宝玉」。
触れた者に呪いをかける悪魔の変化、「囁く肖像画」。
どれもシナリオ上のキーアイテムではあったけれど、ゲームでの実用性は無くシナリオ進行上のみの扱いでアイテムとして使うことはできなかった。
本来はシナリオが終われば無くなる類のアイテムだ。
ただ、終了後にある手順を踏むと再度入手ができるようになっていた。
入手しなおしてもアイテムとして使うことはできないんだけどね。
ただの収集欲ってやつで、メーカーもそう言うことに情熱を注ぐユーザーがいることを理解していたんだろうね、これ以外にもシナリオ終わった後にあれやこれやの手段で入手する方法を用意していたんだよ、だからこっちもムキになって方法を模索して入手する。
なんの効果も無いアイテムをね。
分かっていても手に入れたくなる、そして手放せなくて貯蔵庫に放置される。
それがコレクターで貧乏性という厄介な性格を持ってしまった俺の性。
まだまだいっぱいあるんだよね。
もう、メーカーのなすがままって感じで手探りしながら集めまくったものさ。これ言うとまたみんなから呆れられそうだからナイショだけど。
ともかく、ゲームでは効果の無かったアイテムでも、アイテムの説明書きに近い形で再現されることは実験済みだ。
「これを使って、空から落ちて来たっていう特殊な魔物・・・まものか、ややこしくなるから呼び方区別した方がいいよな・・・」
おそらくあれらは、元アホ王の民だろう。
魔素によって魔物になり果てた姿・・・うん、その魔素も、異世界のなれの果てってことだしな。
「ナレハテと呼ぶことにしよう。」
センスが無いのは重々承知、区別できればいいのさ。
「地上に残るナレハテの状況と、ヒノモトの状況を探ってほしいんだ。」
お願いすればクロウは喜んで対応してくれる。だからつい頼っちゃうんだけど・・・
クロウにもクロウの配下にもお世話になりっぱなしなんだよね、後で埋め合わせしなきゃ。
この拠点と各防衛施設の取りまとめに雑務、村では住人や来訪者に紛れて不審者の警戒、学校で講師までお願いしている。
最新では、医療従事者を育てるための講師にと準備中。
面倒な客はほぼいなくなったけれど、来訪者も住人も増えたことで診療所は常にキャパオーバー。
医師や看護師、薬剤師など増やそうにも、教えられる専門家がいない。ということで相談したら、3人の悪魔を呼び出して山積みの書籍(みどり村通販で購入した医学書や教科書)を指さすと「3日で覚えろ」ときた。
どんなブラック企業?
「いやいや、次の春まででいいから。教えるのに実践も必要だろうし、ある程度理解してもらったら診療所で手伝ってもらったりしながら、来春の受講者を募集するようになるから。」
まぁ、それでも1年無いんだし、教えてくれる人もいないんだからから鬼畜なスケジュールだけどね。
なんて、最近トンデモなお願いしたばっかり。
ここでさらにお願い事はなぁ、と思って諦めかけていたんだ。
あるもんだね、ちょうどいいアイテムが。
ごめん、自分が集めたのに忘れ過ぎだね、集めた後は興味無くしちゃうんだよなぁ。
蠅の王は10万匹の蠅が集合した悪魔で、普段は痩せた老人の姿をしている。全身、または体の一部の集合を解いて、分かれて活動ができる。活動範囲は半径1kmと狭いながらも、集合した状態であればどこへでも行けるし、小さい蠅は不快に思われることはあっても警戒されにくく、情報収集にはもってこいの存在だ。まぁ、冬は使えないだろうけどさ。
商人にでもまぎれてヒノモトに潜入してもらおう。
闇影の王も影に潜む悪魔、シャドウデーモンを使って諜報活動ができる。シャドウデーモンは、半径100m内にある影から影へと転移できる能力があり、それを使って遠方まで諜報活動に出られるので各地のナレハテを調査してもらう。
囁く肖像画は、人が触れると絶え間なく続く囁き声に正気を失ってしまうという怖いいわれのあるアイテム。ただし、悪魔が触れた時だけは念話能力が身につくという便利アイテムに早変わりする。シナリオ攻略のための設定だけど、再現できるなら利用させてもらう。
情報収集はこれでいいとして、同時に従魔たちの戦力アップも進めていかなければ。ユーシン達には負けてられない。
とはいえ、森の魔獣を狩りつくすわけにもいかない。
10階層の地下訓練施設を、拠点の真下に作るのだ。
従魔たちが十分動けるように、一層当たりの広さは100m四方、高さは20mで、崩落防止のため各階層の床は厚み10mの岩盤にした。地下300mにも及ぶ巨大施設だ。
対価にとっておきのスイーツを大量に持っていかれたけど。
あ、はい、建造したのはサンドボックス三姉弟のアオイとカイトです。
デキる末っ子のアカネは各所で引っ張りダコなので。
俺はというと、床、壁、天井に強化の呪印を彫り込んだり、魔道具造ったりしていた。
魔素は下へと流れるので、下へ行くほど濃くなってゆく。各階層には魔素が流れる小さい穴をあけてあるから何もしなくても森の濃い魔素が流れていくというわけだ。
各階層には数か所ずつ、くぼみを作って魔素だまりができやすいようにもしてある。
ただ、このまま自然に任せていると魔物発生までに時間がかかりすぎるし、あっという間に狩りつくしてしまう。
そこで開発中の魔道具の出番だ。
一階層の天井に取り付けて異世界から魔素を取り込み訓練場に流し込む。
魔素は下へと流れるので、10階層が最も濃くなる。
一応魔素が外に出ないようにしてあるけど、世界の魔素を増やす結果になりかねないだけにドキドキだ。アウトならクソ悪魔がクレームつけに来るだろうけど・・・セーフか?
「「ギリですね。」」
来やがったか。
「「とりあえず外に漏れないようになっているようですのでギリセーフです。」」
あ、もういない。
よほど双子に会いたくないらしい。
これは思いもかけなかった御利益だな。
クソ悪魔との接触を極限まで減らせるなんて、精神衛生上とてもよろしい。
魔道具を稼働して一か月ほどしてから様子を見に行ったけど、なかなか良い感じにウジャっている。
ここで訓練するのはレベルアップできるワタリビトと、俺の従魔、エイルヴァーンのシステムで従魔の配下として認められている配下たちと、ユーキが封印しているモンスターだ。
それ以外で、自らの意思で配下になったこの世界の魔物や人にはあまり意味が無い。スキルもレベルアップも無いのだから。
ある程度訓練にはなるのかもしれないけれど。
何もないただっぴろい空間での戦闘は実際の戦闘とはかけ離れていて、あまり効果的とは言えないからね、森で今まで通りの訓練をする方が良いだろう。
さっそく手の空いている従魔のハクア、カムイ、ヤミ、マガちゃんと突入。
一層は森の洞窟にいたようなデカ昆虫天国になっていた。
うん、まぁ、この程度の相手だと敵じゃないよね。
でもいきなりこれだと利用しないだろうなぁ・・・ユーキは。
2階層へ、デカ爬虫類系か。
あ、オオトカゲもいるな、カエルにヘビに恐竜っぽいのまで・・・まぁ、まだまだ敵じゃないけどね。
3階層はクマとかオオカミ、猛禽類っぽい鳥に・・・デカ動物天国か。
オオカミ系のは連携までしてるな、明らかに2階層とは雰囲気が変わってきた。
とはいえ、ゲームで使っていた時より弱体化していても、連れてきた従魔はエイルヴァーンでも最高難度の猛者たち、ことも無しに殲滅してしまう。
4階層はついにというか、人型が登場。
戦闘能力というより知能が強化されているように感じた。けれど、あっけなく殲滅。
うん、同格ていどの戦力だったら大苦戦しただろうけどね。
5階層になると、これまでのごった煮と言った感じになってきた。
ただし、知的レベルは人間並みでは?と感じるほどの進化をしている。会話らしきことまで普通にこなし、戦術的な行動が非常に多い。他者を利用したり、協調したり、まだ圧倒的に強者である従魔たちにも動揺が見えた。
うん、これはいい経験になりそうだな。
6階層、魔物の数がぐっと減った。うって変わって、生物とはかけ離れた姿が目立つ。正方形の半透明なキューブの中心に光る球体が浮かぶ魔物とか、鋭利な刃物を組み合わせたような歯車っぽい魔物とか。
個体の戦闘力も数段上がって、従魔たちも苦戦し始めた。
数が減った分個体の能力が上がったのか、個体の生成により多くの魔素が必要になって生まれる数が減ったのか、どちらにせよ一か月でこのレベルの魔物が生まれてきているのはちょっと驚きだ。
7階層、魔物はわずか3体。炎に包まれた鎧。
驚くべきことに、個体での戦闘力が完全に逆転した。
一対一では歯が立たず、情報収集だけのつもりだった俺も急遽参戦して、5対3の乱戦で何とか勝利した。
この段階で、今回の視察は終了。
正直、10階層まで問題無く殲滅できると思っていた。手の空いているものを連れて来たので、チームとしてバランスが良くなかったのは否めないけど、魔道具を稼働させてまだ一か月だ、個の戦力では圧倒できると思いあがっていた。
反省だ、次回は全戦力でかかるとしよう。
これで、かつてリアルでエニクスのMMORPG、ディプスファンタジアで実際に使っていたキャラの名前が出揃ってしまいました。
あれからもう何年になるんだろうか。
何十年?
ジジィになるわけだね。




