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61:前哨戦

次回は6/17(土)16:00更新予定です。

よろしくお願いします。

 「またとんでもないものを作ったな。」

 なぜか、俺とスロークが乗る魔改造した馬車に伯爵が乗っている。

 設計士のガディオンをこき使った対価として一台譲渡したわけだけど、それ以降あちこちで自慢しまくっているらしい。宣伝してくれることはいいことなんだけどね。

 当然伯爵の耳にも入っていたのでこうなったわけだ。

 「で、これを王に献上する気か。」

 ムスッとしている。

 ほしいならそう言えばいいのに。

 「いえ、これは村でしか再現できない技術を詰め込んでいるので、王家には荷馬車の方を献上します。」

 と、すかさずフォローに入ってくれたスロークだったが、眉をしかめる伯爵。

 「荷馬車をか?あまり喜ばれるとは思えんが。」

 もっともな話である。ただの荷馬車なら、売るほどあるだろう。

 「あれの足回りはこの世界の職人でも再現可能な技術で作ってあります。それでも、一般的に普及している馬車よりはずっと乗り心地は良いはずですよ。」

 と、これだけでこちらの意図を理解してくれたようで、しばし考えこんだ伯爵。

 「技術そのものを献上するなど、そう思いつくものでもないが、それをどのように伝えるのかは一考の余地はあるぞ。そのまま技術を献上するなどと言ったら、それこそ図面をよこせだの、職人をよこせだの言いかねん。貴族は荷馬車など乗らんからな、気づかれない可能性もあるし、上司には黙っておいてほとぼりが冷めたところで自分の発明だなどと言い出す輩が出ないとも限らん。」

 あぁ~、そうか、乗ってもらえればすぐ気が付くと思ったけど、それを報告するとは限らないのか。

 理想としては俺らが帰った後、

   この荷馬車、なんだか乗り心地がいいぞ。

   ちょっと調べてみろ。

   おお、こんな技術が!

   よし研究して既存の馬車もグレードアップするのだ。 

   そう言えば、この荷馬車はグリンウェル伯爵の献上品だったな。

 って感じで、時間差で印象アップ作戦だったのに。

 車軸にもサスペンションにも、グリンウェル献上品って焼き印まで入れまくったのにぃ~。

 って目論見を説明すると、

 「それでは、もしうまくいっても功績は王家にとられることになるぞ。」 

 と伯爵。

 「はい、そこは問題無いと考えています。我々としては、今後のためにも王家からの心象をよくしたいための一押しのつもりでしたので。」

 「ふむ、最初は不安であったが、一応教育係をつけた意味はあったな。グリンウェルよ、まだ合格点はやれんが及第点だ。腹芸はできる限り早く身に付けよ。王宮では相手の発言にも自分の発言にも細心の注意を払え。こやつはハラグロでもたくらみ事には向かん。顔に出過ぎる。」

 ぬぅ・・・誠実の塊みたいな俺をハラグロだなんて・・・思い当たる節はあるな。

 「それとな、首尾よく伯爵位と領主としての任命を受けたなら、こやつを含め数名に旗爵位を与えよ。」

 はえ?

 「旗爵位を、ですか?」

 「そうだ、伯爵とはいえ頼子がいないでは話にならん。それがたとえ旗爵位とはいえだ、いるといないとでは雲泥の差よ。グリンウェル領を守るつもりなら、できるだけ頼子は増やす努力をしろ。

 旗爵に叙したら、王家に適当に献上させ続けよ。準男爵程度ならそう待たずに叙されよう。」

 「そんな簡単に、いくでしょうか。」

 「普段ならならん。今は貴様らにとっては好機だ。」 

 伯爵はニヤリと笑うと、好機の理由を説明してくれた。

 

 要するに、原因は旧ファーレン、現ヒノモト(仮)の存在だ。

 隣国で革命が起きて国がひっくり返った。しかも、圧倒的軍事力によって、と王家には伝わっていた。

 これまで友好関係であったため、ヒノモトに隣接する領地は王家直轄が多く、その近隣の領も豊かだが軍備は脆弱な所ばかりだ。

 軍事によって簒奪するような連中なら、豊かな領地を求めて侵攻してくる可能性は少なくない。

 一番近く精強な軍を持つカルケール伯爵領もコリント伯爵領も、森への対策を想定した軍だ、氾濫対策を理由に動かない可能性もある。

 両伯爵家の負担を減らし、心証をよくすれば、もしもの時援軍を拒否する理由を無くすことができる。特にグリンウェルはカルケール伯爵の頼子だ、いわくつきの無法地帯が正常な領地になり税収も見込める。さらに精強な軍事力までサンザ王国の配下になるなら、一気に伯爵へ上げるだけの価値は十分にある。

 グリンウェルの心象をよくすることも重要だ。一代限りの準男爵程度なら、基準を下げてでも大盤振る舞いした方が良い。

 と、考えるだろうっていうことなのだ。

とはいえ、やりすぎれば敵を増やしかねないし、謀略に巻き込まれて謀反を疑われかねない。だから年数人ずつ、旗爵を任命して、上爵させるためと敵意が無いことを公にするために献上を続けろと。


 「頼子が多ければ、それだけ他の貴族どもも口出ししにくくなる。重要なことだぞ。」

 うえぇ~、よりによって俺が貴族ぅ~。

 「そう嫌がるな。それに顔に出すな。貴様らがグリンウェルの盾となり剣となるのだ、覚悟を決めよ。」

 そう言われてもさぁ~。

 はぁ~。

 「それとな、先ほどの馬車だが、王家からの心象をよくするため程度で献上するつもりなら、いっそ第三親王閣下に献上してはどうか。」

 第三親王?

 あ、うちに来るって話になってたんだっけ?

 「第三親王閣下が村へ赴任するのでは、というウワサが出てから調べてみたが、どうも本人はやる気らしくてな。このままでいくと、第三親王閣下からは不興を買うことになるだろう。まぁ、それでも問題は無いと考えていたが、王家の心象を買うためだけに技術を売るなら、技術の発明実績を、一番割を食う第三親王閣下の功績として献上した方がより効果的だろう。おそらく王家も第三親王閣下の体面を保つために同じ対応を取る。ならば王家に献上して、王家から第三親王閣下へよりは、直接グリンウェルから説明して献上した方が効果的だろう。」

 う~ん、さすが伯爵というかなんというか、初見の時の印象とこれほど変わるとはなぁ。

 マジ頼れる上司って感じだね。

 あの時はホント、憎たらしいオッサンだったのに。

 「おい、今考えていることは不問にしてやるから、技術に関しては誠心誠意ご説明差し上げろ。」

 エスパーかよ!って、表情にでてるんですね、はい、気を付けます。

 

 で、この後もいろいろと打ち合わせ、王城には、伯爵たちより一日遅れて入るように言われた。

 理由は、先にレインの献上を済ませて、上爵を得ておかないとうちの献上品でかすんでしまうから。

 うん、うちの献上品はド級だからね。

 それと、入城前に第三親王閣下との謁見、献上を済ませておくためだ。

 すでに伯爵の指示の元、伝令が先行して立っている。

 王との謁見中に横やりを入れられると厄介だから、先に代わりの功績を差し出して心象を良くしておけってことだ。

 しかしそうなると、それ以外にも何かないといかんよね。

 仕方ない、貯蔵庫の中に放り込んであった拠点装飾用アイテムからいくつか小物を見繕うとしよう。

 確か、グラスとかの食器類があっただろうから、伯爵いなくなったらスロークと相談しながら選ぼう。

 ・

 ・

 ・

 いなくなんねぇ。

 すっかり居座ってくつろいでやがる。

 しかも、いつの間にか奥方までいるし・・・。

 <とりあえず、食器選びは任せる。>

 ときたよ。

 <スロークよ、俺のセンスはかなり怪しいぞ。>

 どうなっても知らんぞ。

 <とりあえずいくつか見繕っておいてよ、宿ででも打ち合わせよう。>

 はぁ・・・夜はせめてもの癒しにプチメタのドームライブを見ようと思ってたのに。

 「それにしても良い馬車だ。これなら長旅も苦にならんな。」

 「そうですわねぇ。これから王都への行き来も増えるでしょうし、こんな馬車なら道中も楽しめるでしょうねぇ。」

 ・・・・・

 ・・・

 ・

 はいはい、わかりましたよ!

 ってわけにもいかんのだよ。

 「実のところを申しますと、この馬車は調整が非常に困難でして、何台も同じものを、というのが不可能でして、警備上一台だけというわけにもいかないでしょうし・・・」

 思いっきり下手に出たよ。本当は作れないこともないだろうけど、タイヤ作るの大変なんだよ。本物のエアチューブ仕込んだタイヤが作れるなら問題ないけどね、今はまだ強度的に無理。

 「同じものは作れんか。」

 ん?同じじゃなくていいのか?

 ん~~~

 「申し訳ありません、何か思いついたようなのですが、まとまるまで少々お時間をください。」

 フリーズしてしまったシンのフォローをしつつも、何とかするだろうと楽観的なスロークだったが、少しでも時間稼ぎができればいいと持参してきたとっておきの果実酒を伯爵夫妻にふるまった。

 (はぁ、これ、全部終わったら飲もうと楽しみにしてたんだけどな。)

 「ほう、これはうまい。試作品とやらは完成したという事か?」

 (あ、そうか、シンさんが試作品っていう体で一度ふるまったって言ってたんだった。)

 「同じ樽の物だと思います。あの時より時間が経過したことで熟成されたのです。ものによっては、数年、数十年もの間、温度や湿度を管理した貯蔵庫で熟成させたものもあります。」

 「ものもある?」

 (あ、いかん、この世界にはなかったんだった。)

 「いえ、守護神像様からの知識でして、村ではまだそこまでの生産量に至っておりません。」

 冷汗が流れる。

 思わずボロが出てしまった。

 「ふむ。数十年かけての酒造りなど、これまでの常識ではとても想像できん。が、先だっての酒とこの酒、それが同じものだったというのであれば、その価値も理解できる。」

 「そうですわね。お酒と言えばミードばかり、かつて王宮でいただいた果実酒は雑味がひどくて好きではなかったけれど、このお酒はとても美味だわ。」

 あっという間に減っていく果実酒の瓶。

 (あぁ、ご褒美はお預けだな。)

 数本持ってくるべきだったと後悔するスロークだった。

 

 「はっ、すいません、完成しました、と言ってもまだ頭の中だけなんですが、たぶん、足回りだけなら量産できそうです。」

 思考の沼からようやく脱出できた。

 いかん、集中するとまわりが見えなくなる癖も直せと言われてたんだったな。

 ん?

 スロークが心なしか元気ない・・・何かあったのか?

 「それは行幸、5台は都合をつけてもらいたいものだな。」

 いきなり5台ですか、伯爵欲張りすぎ。

 「ただ、上物に関しましては格というものもありますので、足回りのみ、ということでご容赦ください。私自身、装飾などのセンスには全く自信がないものでして。」

 実際、貴族の馬車ってやつは家ごとにテーマというか、ここは変えちゃいかん!的なこだわりがあるのでめんどくさいらしいのよ。だから上物や装飾はお抱えの職人さんにやってもらってつかぁさい。

 「よかろう、あやつもグリンウェルの村で作られた馬車の仕上げともなれば張り切るであろうよ。」

 ほう、伯爵家お抱えの職人にまで好意的に知ってくれてるんだね。

 「なんだ、気が付かんのか?少し前まで入り浸っておったであろう。」

 え?

 まさかのガディオン?

 いや、あのじい様しかいないか。

 ってことは、伯爵家お抱え設計士こき使ってたのかよ。

 セーフだよね?本人喜んでたんだし。

 

 王都での大騒ぎはそりゃあもう・・・見たことも無い魔獣が入ってくるんだから。

 伯爵たちは、止めに来た騎士たちに事前に告知したはずだと告げ、王都に住む複数の貴族や通過してきた領主の許可状などを突きつけると、上司に確認すると慌てる騎士を無視して進んでゆく。

 あ~、知らないよ、何にも聞いてなかったからね、伯爵と敵対してる貴族が警備担当で、報告したけど歯牙にもかけずに放置するって知った上で、言い逃れできないように根回し済みなんて知らないからね、この後警備担当の貴族がどうなるかなんかも知らないからね!

 

 前もって伯爵が段取りしてくれていたおかげで、第三親王への謁見はスムーズに、秘密裏に行われた。

 神経質そうな男だったし、完全にこちらを警戒&敵視していたけれど、まずはと献上した切子細工のグラスセットにくぎ付けになっていた。

 で、自分が統治さえすればもっと発展するはずだとか言い始めたところで、村の戦績を発表。

 10匹近くのデモンエイプに襲撃された話とか、グレートベアとの戦闘とかを迫力満点に熱弁するスローク。

 すると、親王も一気にトーンダウン。絶対安全だとでも吹き込まれていたんだろうね。

 それでも、強力な軍がいるのだろうとか、都合の良い方に話を進めようとしたのでダメ押し、守護神像とアホ王ガイゼルヘルグを巻き込んだ作り話、区画整理の時住民に話したあれを披露した。

 「ふむ、強力な戦力も、あの地が安全なのも、守護神像とやらのおかげであるという事なのだな、聞いていた話とは若干違うようだが。」

 ということで確認してみたら、なんとも都合の良い尾ひれはひれが。

 誤解を解くまでもなく、すでに第三親王の中ではすっかり行く気は失せている。が、プライドやら立場やらが、行かないとは言わせないようだ。

 うん、良きタイミングです。

 「実は、この度閣下にお目通りを願ったのは、馬車にまつわる新技術を献上するためなのです。」

 「新技術とな?まさか、聞いたことがあるぞ。信じられんほど乗り心地が良いと。」

 食い気味に食いついてきました。

 「今回、陛下への献上品を積んできた荷馬車の足回りがそれなのですが、その馬車を第三親王閣下に献上奉りたく。」

 親王の表情が曇る。

 「荷馬車をか?」

 あ、察してないな、これ。

 説明しちゃったほうがいいか。

 「はい、閣下が懇意にされている技術者に見ていただければ、荷馬車ではなく人の乗る馬車への流用は容易だと思います。」

 無反応?

 わかんないかぁ。

 全部説明かぁ。

 「我々が献上したものはあくまでも荷馬車です。それを人の乗る馬車として完成させるのは閣下の功績です。さらに、技術者に専売権を与えて恩を売るもよし、売上の何割かを対価に開放するも良しです。」

 ここまで言えば流石に理解してくれたようだ。目がランランと輝き出した。

 「なるほどな、功績だけでなく後には莫大な富にもなりうる。本当に良いのか? 後でケチを付けるようなことはするまいな。」

 金勘定は優秀みたいだね。どれだけの利益になるか、即理解したみたいだ。

 「もちろんです。村にとっては、守護神像様の声を聞ける私が領主となる事が、気まぐれな守護神像様の機嫌を取るには最も有効だと考えております。しかし、そのせいで閣下には大変ご迷惑をおかけしてしまいますので、我々も最大限の礼をもって尽くさせていただこうと考えております。」

 打ち合わせ通りの締めの言葉、伯爵の予測だとまだ一山あるだろうって言ってたけど。

 「うむ、我にとっても、あの地を治めることで得られるであろう功績は図りしれぬ。が、貴君の誠意もしかと受け取った。ことは一度持ち帰って良く思案するとしよう。」

 あ、流石伯爵、予測的中。

 この場で言質を取れないと有耶無耶にされる。

 「ありがとうございます。最後にこちらもお収めください。」

 そう言って、俺が仕込んだとっておきの果実酒を差し出した。

 伯爵から、第三親王は大の酒好きと聞いて慌ててラべリングしたんだ。裸の瓶を献上するわけには行かないからね。

 「まだ生産数が少なくこれだけしかお持できなかったのですが、お気に召しましたら今後も定期的に献上させていただきます。」

 流石酒好き、この情報はしっかりキャッチしていたみたいだ、即グラスを用意させると、果実酒を注ぎ、掲げて色を楽しんでいる。

 「閣下。」

 今まで微動だにせず控えていた執事が初めて声を上げた。

 「わかっておるわ。」

 ムスッとした顔でもう一つのグラスにほんの少しだけ酒を入れた。

 「このような場で毒を入れるような馬鹿者はいないと思うがな。」

 うらめしそうに執事を睨む呑兵衛、もとい第三親王。

 ほんのちょっとでそんな睨むなよ、執事さんも仕事なんだし。

 一息に口に含むと数瞬、ゴクリと飲み込んだ。

 「まだか。」

 動かぬ執事に一分ほどで我慢できなくなった親王が急かす。

 「問題ございません。」

 の声が終わらぬうちにグラスに口をつける親王。

 「これは! 今日は、一本だけなのか?」

 物欲しそうな顔しないの!

 よほど気に入ってくれたようだけど、流石にそう何本も余剰分はない。

 「申し訳ありません、この酒は、仕込んだ後に長い熟成期間が必要でして。残りはまだ熟成が完了しておりませんが、秋には第一陣が仕上がる予定でございます。」

 そう言って深々と頭を下げた。

 なんせ、今日の謁見は完全に想定外だったしねぇ、無い袖は振れない。

 「良かろう。サンザ王国第三親王である、」

 「お待ちを!閣下。」

 親王の言葉を遮るように止めに入る執事。

 くそっ!もう一息だったのに。

 「我が言葉を遮るか、クレイン!」

 激おこな親王、いいぞ、やれやれ~。

 「肝心な確認ができておりません。定期的と言っても、期間はどの程度か、量はいかほどか、これを確認する前に回答してはなりませぬ。」

 へ?

 「おお、そうであったか、流石だクレインよ。して、グリンウェル卿、返答やいかに。」

 こいつら・・・。

 <どのくらい行ける?>

 スロークからの密談に、ちょっとだけ考えて、ギリギリ無理のない数を提示した。

 「秋にできた以降は3か月に一度、瓶にして12本は献上できる予定でございます。」

 「少ないな。それだけでは一週間も持たん。」

 それは飲みすぎ・・・とは言えない。

 「実は、まだ原料を自然の恵みに頼らざるを得ないため量が作れません。さらに、この酒は仕込んでから3年以上、温度と湿度を徹底的に管理した貯蔵庫に寝かせることで熟成され旨味を増すのです。さらに10年、50年と熟成させ深みを持たせることも可能でして。ただ、管理が非常に難しく失敗してしまうことも少なくありません。そのため、仕込んだ分の半分は長期熟成用に確保せねばなりません。」

 ごくりと喉を鳴らす親王。

 「さらに、うまくなるというのか。」

 「はい。もちろん、献上させていただく分はより徹底した管理をしております。」

 執事をチラリとみる親王。

 小さくうなずく執事。

 「サンザ王国第三親王である、グリュートワ・ド・サンザド親王の名において約束しよう。グリンウェル旗爵、貴様を伯爵位、さらにはノスランザ大森林の領主として推挙しよう。」

 こうして、上機嫌になった第三親王の確約を受けて何とか前哨戦は勝利できた。

 王族が名前を出して約束したことは反故にされることは無い。それだけ王族の名前は特別視されている。

 何といっても、王族の名前は本人からしか聞いてはならないというしきたりがある。

 なんだか、王族の名前を呼び捨てにしたり悪口を言わさないためだとかって、実にくだらない理由らしいけど。

 第三親王が名乗った、ということは、第三親王からの信頼を得た、ということと同じ意味を持つってことなんだってさ。

 信頼っていうより酒目当てっぽいけど。

 ま、とりあえず明日は本番、もう一息だ。

 今話とは無関係ですが、ガッツリ書き貯めをしたうえでものすごく苦手なお話を書いてます。

 前回も一気に貯金を無くしてしまって、一時更新が週一回になっちゃったりしたんで、十分すぎるくらい助走をつけましたけど、やっぱり苦手。

 詰まった時は気晴らしに1話目から読み直して誤字修正や、分かりづらい表現なんかを書き直したりしています。

 

 今話の話をちょっとすると、第三親王と執事さんは大のお酒好きで、カルケール伯爵がかつて王宮で飲んだという果実酒は、この二人が外国の果実酒の話を聞いて見よう見まねで作ったものでした。

 最上級の果実を使って作ってもエグみは残り、正しい製法を知らなかったため雑味も多くて断念してしまったのでした。

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