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54:清算

次回は6/31(水)16:00更新予定です。

 クロウに拠点の運営を頼むと村へ戻った。

 レインのことがあるし、何日か戻れないだろうからね。

 す巻き運送されるくらいなんだから、他にも用事があるんだろう。

 とりあえずソンチョーに聞けばいいかな。

 理想は案だけ出して丸投げだ。一応想定はしておいたから、ちゃっちゃと済ませよう。

 ソンチョー宅での話し合いには、ソンチョーとスロークに、住人の青年がいる。最近書記として雇ったらしい。

 で、早速話を聞いてみたけれど。

 なるほど、想定外のことも多いなぁ~。

 ベルの運用がこんなに早く始まることも含めてね。まぁ、問題の方は想定内。

 「お土産品として構想してたんだよねぇ。」

 そう言って、貯蔵庫から額縁を取り出した。

 そこには、赤いビロード張りの板に、全種類のコインと、初披露の六角形と八角形、板状の貨幣2種が、整然と、各貨幣とピッタリ同じサイズに彫り込まれたくぼみにはめ込まれていた。

 「お土産用のイミテーション。金や銀はメッキだし、デザインは表面にしか無い。魔石部分はガラス玉だよ。

 これを公的なイミテーションとして、ロットナンバー付きで1セット20万ベルで売ろうかと思います。

 ちなみに、多角形の貨幣2種は、100万ベルと200万ベル。星金貨に相当するものとして作ってみたよ。」

 こともなげに解決案を、現物付きで提示してきたシン。

 開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。

 さすがに来訪者の急増とベルの運用が早まったことは想定外だったようだが、いつかこうなることを想定して準備していたとは。

 「とりあえず10セットあるから、ノブロフに押し付けよう。貴族相手ならカブロより彼の方がさばけるでしょ。」

 「よく、そんな時間あったね。結構前から準備してたとか?」

 ソンチョーが額の中のコインを見つめながら聞いてきた。

 「うんにゃ、レベル上がったおかげで工房スキルが解放されたんよ。見本になるものと材料ぶち込んでおけば複製してくれるスキルでね、1日に1セットくらいだけど、勝手に作ってくれるんだよね。実際に集中して作るよりずっと時間がかかるから、貨幣みたいに大量生産には向かないけど。」

 あっけらかんと言い放った。

 「ああ、あったな。自分も取るか迷ったやつだ。」

 ゲームでは微妙なスキルだからねぇ。

 スローク同様取得しなかったプレイヤーは多いだろう。

 「両替商の人手不足は、職員教育が終わるまではしょうがないよね。できるか分からないけど、魔道具で何かできないか相談してみるよ。従魔の中にそういうの得意そうなのがいるから。」

 とにかく、これで一つ目は解決ッと、パンと手を叩いた。

 「次の問題は・・・マスターが解決してんじゃん。」

 さすがマスター、すでに日持ちする食材としてラサの実のドライフルーツを売り出し済みらしい。

 「まだ村の果樹園では量が取れないんだよね。食堂で提供する分も必要だし。」

 そう言うソンチョーだけど、そんなの簡単じゃないのさ。

 「買えばいいよ。外からくる商人に未加工のラサの実買い取るって言えば持ってくるでしょ。村から購入ばかりじゃ商人たちも旨味が少ないだろうし。他にもセパの種とか、現地で流通してる物をセイルで買えばいいよ。卸売市場で買取募集してもいいよね、ハンターたちが狩りの合間に小遣い稼ぎって感じになれば、収穫少なくて無茶することも少なくなるんじゃないかな。あぁ、ラサの実以外にも、ノエルさんの本にあった食べられる植物とか、苗とか採ってきてもらったらいいな、調査の手間が省ける。うん、必要なページをスクショ撮って、スクショDe絵画に表示させれば誰でも見られるるし、絵の美味い人捜して模写してもらって配るのもありか・・・」

 (やっぱりシンさんだなぁ。よくまぁ、これだけ色々出てくるもんだよ。なんか、前よりパワーアップしてない?)

 呆れつつも頼もしく思うソンチョー。

 (問題は、この村にとってどれだけ必要なのかってことを本人がまったく自覚して無いってところなんだよなぁ。)

 「ドライフルーツはいいよねぇ。ラサの実以外にも、ブドウとかリンゴとか、みどり村チートでジャンジャンフルーツ植えちゃえばいいんだよ。干し芋とか、干し柿とか、いろいろあるじゃん。

 油も量産できてるし、麺も作れるんならインスタント麺もできるよね。

 缶詰・・・は、蓋の閉じ方が難しいからパス。閉じ方は知ってるんだけど、そのための装置を作るのが大変そうだし、保留で。今まで通り瓶詰でいいよ。かさばるし重いってのは、たくさん運べないし壊れる可能性もあるから何度も来てもらえるってことでいいんじゃないかな。まねされて粗悪品が出回らないようにと、しっかり密封するために蓋を蝋で固めて、村だけの印を押すといいかもね。蓋を開けるには必ず印を壊さないといけないような位置に押せばだいぶ防げるだろう。あ、瓶と蓋を回収すると割引するとかもいいんじゃない。瓶を流用されないためにも。料理の味に関しては、これはもうウシオと農業班に頑張ってもらうしかないってことで。あ、そのうち機能で仕入れた種とか苗が・・・」

 (シンさんが止まらなくなっちゃった・・・ごめんね、アロンくん。)

 隣で必死に書き留めるのは、ソンチョーの補佐として最近働き始めた移住者のアロンだ。移住者の中でも特に読み書きが達者ということで採用されたばかりなのだが、とんだ初仕事になってしまった。

 「とりあえずこんなもんかな。」

 ようやく終わった時にはアロンが書き留めたメモは10枚にも及んでいた。

 「で、次は街道の警備か。」

 (ほんとごめんね。)

 ソンチョーは、アロンの表情がこわばるのを見逃さなかった。

 「コクエンに、あ、従魔のオーガロードね、部下を呼んでもらって、街道警備に加わってもらおう。5体まで呼べるから、かなりの戦力アップだし、粋がった荒くれにはいい脅しになるでしょ。

 後は、戦闘訓練だな、団員はスロークブートキャンプで鍛えなおしておくれ。

 あまりにひどい荒くれは期限付きで入村禁止にしてもいいんじゃないかな。」

 警備員を鍛える件はスロークからも提案されていた。問題は時間だったから、戦力の増強は願っても無いことだ。

 「ああ、確かにいたな。過剰戦力な気もするけど。」

 オーガロードは、スロークもゲームで何度も戦った強敵だ。

 「表には出さない方がいいな、誰も近づかなくなる。」

 (・・・まさかオーガロードとは・・・アロンくんの顔もひきつっている。後でフォローしないとな。)

 ソンチョーの苦労も増えてしまった。

 「あ、街道の魔物除け?いらないいらない。

 街道警備のありがたさを身に染みてもらった方が通行料を気持ちよく払ってもらえるし、護衛のお仕事も入ってくるでしょ。

 巡回を密にして、ヤバそうなのは先に駆除するか追い払っておけばいいよ。

 安全すぎると、護衛いらない、通行費もまけろって言いだす奴が出てくるよ。絶対。いつか貴族とか、貴族とか貴族とかがごねるに決まってるよ。ってことで、街道の巡回員増強と、荒くれ対策のコクエンたち、たまにカムイとかマガちゃん、あ、この二人も従魔ね、出張ってもらえば問題無いっしょ。ぶっちゃけ、適度にスリルを味わってもらった方がおとなしくなると思うし。」

 (シンさぁ~ん、アロンくんのこと完全に忘れてない?話がやばい方向にいっちゃってるんだけど。)

 アロンがいるからこそ、それを指摘できずにヤキモキするソンチョー。

 チラリとアロンを見ると・・・おや?メモを取りながらもなんだかキラキラした目でシンを見ている?

 「で、マナさんの診療所か、見た目は良いからねぇ。こっちにはコンの尾を2つ派遣してもらおう。野武士と美女タイプのやつ。野武士は護衛に、2人目の医師として美女をつければ、荒くれ対策にも過剰労働の緩和にもなると思う。」

 (コンって誰?尾?たぶん従魔だろうけど、シンさん、もうその説明も忘れてる。)

 コンの尾にはそれぞれ特性があって、野武士は純粋な戦力なので用心棒として、美女は精神操作や麻痺、治療などといった様々な作用を持つパフュームを放つことができるので、簡単な治療を引き受けるなど役に立てるだろう。

 「まぁ、基本的にはマナさんが診ることになるだろうけどね。」

 (なんだか、シンさんの従魔頼りだけど解決案がバンバン出てくれるのは助かるな。音信不通の3か月は無駄じゃなかった・・・のか?なんか騙されてない?)

 若干の不安を感じるソンチョーだった。

 「あ、あと劇場を完成させることだ。設計屋さんは見つかったの?」

 またいきなりユーコに拉致られるのは勘弁願いたい。

 「領都にいるみたいなんだけどねぇ、ご高齢で長旅には耐えられないって断られちゃったみたいなんだ。」

 なるほど、なら快適な旅にすればいいんだな。

 「グリフォンで飛んでくるのはだめだぞ、フブキもな。いくら早くても高齢者には毒だ。」

 スロークがすかさずクギを刺してきたけど、さすがにそんな無茶はしないよ。

 いや、ドラゴンに馬車を掴んで、飛んで運ばせようかとかチラッと思ったけどさ。

 「しょうがない、快適な旅ができるように馬車を魔改造しよう。」

 そう言って席を立ったシンを、なぜかキラキラした目で見ているアロン。

 「すごいですね、アオイさんから腹黒さならシンさんにかなう人はいないって聞いていたけど、本当にそうですね。あんなにポンポン出てくるなんて。凄いです。」

 (アオイさぁ~~~ん!職員に何てこと吹き込んでるんだよぉ~。)

 

 と、いうことでレインの送迎は後回し、拠点に戻ると馬車の魔改造に取り掛かった。

 車輪は鉄で、小さく太く。自動車のホイールより二回りほど大きいくらい。

 いきなり空気入れたタイヤなんて作れんからね、炭を混ぜて耐久性を増した、指位の太さのゴムロープを作って、ぐるぐると規則正しく巻き付けていく。車輪が2回りほど大きくなるまでグルグルと巻き付けた後、同じゴムを塗り付けてコーティング、成形する。ロープ同士の隙間ができるからゴムみっちりよりは弾力がでたと思う。

 うぃきネットで調べて、スクショを撮影した図解を見ながらサスペンションを再現していく。助手としてトールにも手伝ってもらいながら後輪部分が完成。

 カーブでの遠心力揺れを抑えるために、前輪部分は分離させてつくる。大型トレーラーの動力部と荷台部をイメージしてくれ。無理?ならグ〇れ。

 前輪はフブキに合わせて左右に稼働するのだ。これで、前後輪固定の一般的な馬車よりもカーブでの傾きが抑えられる。御者台も前輪部に取り付けられる。快適さは犠牲になるけど操作しやすいはずだ。

 座席は、リクライニング機能付きのソファーを4脚乗っける。

 これはみどり村通販で購入したリビング用のソファーををそのまま固定しただけ。手抜きじゃないぞ、それ以上の物を作る自信が無かっただけだ。

 どうせレインを城まで運ばなきゃならないんだから実験台になってもらおう。

 豪華すぎない程度に装飾も入れたし、7日もかかってしまったけど試乗した感じではかなり良い出来ではなかろうか。

 うん、街道乗合馬車のグリーン車構想はこの方式でいけるな。

 「待たせたな、レインよ。設計士を呼びに行くついでに送ってやろう。」

 狩りから帰って来たレインに吉報を届けたら、

 「逆でしょ、それ。」

 と返されてしまった。

 そうだったっけ?

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