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50:スパルタと全否定

次回は5月21日(日曜日)16時更新予定です。

 「やりました、師匠!グレートベア、ソロ討伐成功です。」

 と、報告を受けているのはスロークだ。

 仮病だったことと、それに至る原因を説明した時は全員が(特に女子が)ドン引きだった。

 まぁそうだよね、自棄になってたとはいえ、ハーレムとか言っちゃってたし。あ、もちろん空気の読める自分はバラしてないですよ。えぇ、どうせ猫が言うと思ってたし。

 「出禁。」

 アオイの容赦ない一言がレインの送還を決定・・・マテマテ。

 「確かに情けない奴だけどねぇ、伯爵の方にも問題ありありなんだよ。彼を試すつもりだったのかもしれないけどさ、伯爵も伯爵の部下も無神経で過保護で優秀過ぎたんだよ。外野だから気が付けたけどさ、当事者だったら腐ると思うよ。」

 って、なんで自分がフォローしなきゃなんないんだよ。

 「なにそれ?」

 不満そうなアオイの一言も分からないでもない。

 「無神経で過保護なのに優秀?」

 若いアカネにはピンとこないらしい。

 「なんてのかな、ある意味彼のことは認めてるようなんだよ。だけど、平民と伯爵家に連なるものが結婚ってわけにはいかないのがこの国のルールみたいでね。魔物の討伐で功績を積ませて、名誉爵位の旗爵を与えようって腹だったと思うんだよ。でも、そのことを彼に全く説明して無いっていうか、匂わせもしなかったみたいでね。ひょっとしたら、貴族にとっては説明しなくても分かるようなことなのかもしれないけど。」

 実際、医師団と自分への対応を見ても、キッチリと差をつけているように感じた。

 長の髭爺、エバンスは全面信任。対抗馬のクレンスへは、エバンスへの対抗心をいさめながらも期待しているニュアンスを含めるなど、キッチリとフォローしていた。

 それに対してこちらへは、事実だけは認めるけど否定、反論はさせず。しかも、褒美なんかも無しと。

 何か裏がありそうな気もするけど、ここまでの現状としては、確実に線引きしているように感じる。

 不愉快ではあるけど、家臣と部外者に線引きをするのは理解できる。

 レインに対しても、理由があってキッチリと線引きしているのか、それとも天然で線引きしているのか。とにかく説明などのフォローは全くしていない。

 その程度自力で理解しろってことか?さすがに無理だろ。

 「さらに問題だったのが、過保護が過ぎるってところかな。結婚どころか婚約前の娘に手を出さないようにと、相手になるレインが問題を起こさないように、陰からガッチリガードしてんだよ。そのメンバーが優秀過ぎて、彼のレベルだと全く検知できないんだ。娘の暴走を止めるために相手をさせてはいるけど結婚させるつもりも良い仲にさせるつもりもない、さらに戦力だけを使いつぶそうとしてる、なんて勘違いしちゃっても仕方ないかな、とは思うよ。」

 「シンさん・・・。」

 見たくも無いけど目に入ってしまった。レインよ、目を潤ませて拝むんじゃない。

 そしてそれを見たアオイの顔が完全に怪しんでる。

 くそっ、なんで自分がこんな苦労を・・・。

 「まぁ、貴族とコネクションができるのは良いことだと思うよ。相手としては、功績にするつもりだったデモンエイプ討伐が先を越され、住民も取られてるわけだし、彼を手助けすることで村への心象も和らぐんじゃないかな。」

 ソンチョーのフォローが入ってくれたよ。いつも感謝。

 途端になるほどと納得する女性陣。

 待て、なんだその反応の差は。

 まぁいい、この先起こるであろうあれやこれや(勝手に村を作ってる問題とか)で、王族が出て来た時の防波堤に・・・は無理でも、情報源くらいにはなってくれるだろうと、協力する運びとなった。

 まずはレベルアップと功績稼ぎのために、スロークが付き添っての狩り三昧。いつの間にか面倒見の良い鬼教官スロークは、レインから師匠と呼ばれていた。

 しかし、わずか一か月で市販品装備だけでグレートベアをソロ討伐とはねぇ。

 ここに来たばかりの時はリルベアにも苦戦してたのに、毎度のことながら、自分以外の成長速度には嫉妬すら覚えるよ。

 いちおう彼の様子については、こまめに報告している。

 令嬢に対してはまだ療養中と伝え、伯爵に対しては、治療は早々に完了し、己を鍛えなおすために現在は武者修行に明け暮れていると、毎回2通用意しなきゃならない。書かされるこっちは良い迷惑である。

 もうそろそろ送り返してもいいよね?

 いや、報告書書くのが面倒なんじゃない・・・わけじゃないけどね。

 グレートベアを含めて、これまで彼が手に入れた魔石と素材を伯爵に献上すれば旗爵の授与を止める者はいないだろう。

 そこから先は、どうせ村から献上されたものを自分の手柄にしたに違いないなどと横やりを入れられないためにも、彼が伯爵側から見られる形で功績を上げる必要があるだろう。

 だから、ここにいるより戻った方が絶対に良い。

 決して、報告書もう書きたくないとか、なんでこんな奴のために時間盗られるんだとか、リア充予備軍爆ぜろとか思ってないぞ。

 思ってなかったらこんな言い訳しないだろうとか言っちゃだめだぞ。

 ノブロフからマナーとかの勉強もさせているし、返品はされないだろう。

 

 で、この間報告書書く以外に自分は何をしていたかというと、今後のためにも、簡易拠点から出ることを決めたのだ。

 要するに、ちゃんと拠点というか、家というか、作業場というか・・・を、作っていたのだ。

 資材はそのままあるし、エイルヴァーンで作り上げた拠点そのままでもよかったけどね、なんていうのか、ゲーム中は無駄に凝って装飾とかいじりまくってたけど、実際済むなら邪魔だし汚れるし、飽きると思うんだよね。

 だから使いやすさと快適性だけを追い求めたよ。

 騎乗モンスターだけじゃなく、テイムしていたモンスターもいずれ開放されるわけだから、村からは少し距離を取って用水路の取水口付近に構えることにした。用水路に沿わせて道もできているから移動も楽だろう。

 と、計画を話したら、なぜか全員から否定された。

 「シンさん餓死しちゃうぅ~。」

 「寝不足で衰弱死。」

 「実験失敗で爆死。あ、遠いほうが都合良い。」

 「普通に魔物に食われる。」

 むぅ・・・

 どれも反論できん。

 ってか、爆死のマナさん、ある意味肯定だけど辛辣です。

 まぁ、レベルが上がって従魔が解放されれば何とかなるし。

 「ドラゴンが街中でうろつくのも問題でしょ?」

 って説得したら、全員からドン引きされた。カッコいいとか、すごいって反応が無いのはどういいうことだ?

 「ドラゴン従魔にしてんの?あれ、可能なの?」

 エイルヴァーンの同士、スロークからしてこの反応だ。おかしいだろ?

 確かにとんでもなく大変だったけどね。3頭のドラゴンを従魔にするのに、マジで1年かかったけどね。でも、そんなドン引きしなくてもさ・・・。

 ゲームで自分が従魔にしていたのは12頭。システム的には、MODの限定枠を含めて最大25までテイムできたんだけどね。さすがに3頭のドラゴンでお腹いっぱいだった。空きの枠の分、この世界の魔獣とかテイムできたりするのかな。解放されたら挑戦してみよう。

 思えば、死ぬ前はMODの限定枠以外にも、正式なテイムが解放されていたはずなんだよな。村づくりだ襲撃だなんだで完全に忘れていた。もったいないことしたな。

 拠点が完成したらしばらくレベルアップに励むとしよう。

 それと、拠点が完成する頃にはノエルさんの魔素も安定するはずだから、お迎えに行かなきゃ。

 長年にわたって魔素を取り込んでしまったノエルさんは、魔物化寸前のところまで魔素に浸食されてしまっている。

 動物を魔素から守るのとはワケが違う。

 村への道中には魔素の高いポイントが点在しているので、念には念を入れてだけどね。

 今は動物たちに付けた魔道具のアップグレード版、より体内の魔素を吸収する魔道具をつけたまま生活してもらっている。少しずつだけど、体内の魔素を吸い出しているのだ。

 拠点が完成するころには、村への道中程度なら問題ないレベルになってくれているだろう。

 ということで、まずは拠点の作成に集中だ。

 と言っても、ゲーム当時のように凝りに凝った上にネットで資料集めまくってデコり続けたようなものを作るわけじゃないので、スキル頼みでパパっとやっつける。

 シンプルイズベストだ。

 用意した土地は幅140m、奥行き100mのただっぴろい場所。

 作業場中心の設計で、周囲に従魔用の家やドラゴンを住まわせる塔を配置、いろいろ作るために必要な植物を育てる畑とかも配置して・・・あ、自分の住む場所が無い、工場の裏でいいや。

 風呂とトイレと・・・使わないだろうけど客室も造るか。

 すべて平屋。

 階段って意外と面倒なんだよね。

 室内の高さも、作業に必要な最低限の高さで、居住部分は圧迫感が無い程度。高い天井ってのは冷暖房効率悪いんだよね、吹き抜けなんてもう最悪。

 窓も極力小さく少なく。

 冷暖房は魔道具として作るつもりだけど、やっぱり無駄は省きたい。

 魔素は限りある資源だと判明したからな。

 あ、そうか、ソンチョーが取り寄せる物は別世界の魔素を使うことにできたんだから、今度クソ悪魔と再契約して魔道具に使う魔素も同じようにすればいいんだ。良し、覚えておこう。

 工房は、誰かさんの言じゃないけど、何か(爆発ばかりじゃないけどな)あったらいかんので壁を厚く。居室はどうでもいいから薄く・・・仕切りいらんかな?それはそれで落ち着かないか。

 オヤカタ達はすでに村の中に家があるのでそのままそこで暮らしてもらおう。仕事も向こうが中心だしね。

 ということで、完成したのがこちら。

  

挿絵(By みてみん)

 

 従魔の部屋は、オヤカタ達を除く最大数確保した。中には簡易シャワーとトイレも完備。 

 一応、大型種でも十分住めるサイズにしたぞ。

 騎乗用のモンスターたち用の厩舎も、少し多めに建設。

 一応いらないかもしれないけど運動場完備だよ。俺は使わないだろうけど。

 外壁は少し厚めにした。

 一応魔物除けに、エイルヴァーンの拠点用アイテムとして貯蔵庫に入っていたバリア発生装置を設置してあるので魔物からの影響は無いだろう。

 あ、そう言えば街道に設置する魔物除けも相談されてたんだっけ・・・うん、とりあえずレベルアップしてから考えようか。

 

今話中書く機会が無かったので

レイン 坂巻 竜彦(19) ダンジョンズオンライン クラス(職業)アサシン

 

 

 

サンザ王国 爵位と身分階級

国王  (こくおう)     王様。

国妃  (こくひ)      国王の正妻。

王太子 (おうたいし)    継承権一位の国王の子。国妃の長男もしくは国王に指名された親王。

側妃  (そくひ)      国妃以外で王の子を産んだ女性。

親王  (しんのう)     継承権を持つ国王の子、いわゆる王子。通常継承権四位までが親王。

側王  (そくおう)     継承権の低い国王の子。成人後は大公に。

王女  (おうじょ)     継承権は無く、嫁いだ後は公子夫人(公子位相当)を名乗れる。

大公  (たいこう)     継承権の無い王族。一代限りで、子は公子になる。

公子  (こうし)      大公の継承者。一代限りで、継承者は男爵になる。


公爵  (こうしゃく)    伯爵位以上ので、国政の役職を持った者が任命される。在任中のみ。


侯爵  (こうしゃく)    永代貴族の最高位。

伯爵  (はくしゃく)    領地を持つことを許される。永代。

子爵  (ししゃく)     男爵位を三代勤め上げ、国への貢献が高いと上爵される。永代。

男爵  (だんしゃく)     功績を上げた準男爵が王から任命される。三代限り。

準男爵 (じゅんだんしゃく) 功績を上げた騎士爵が王から任命される。二代限り。

騎士爵 (きししゃく)    功績を上げた騎士が王から任命される。一代限り。


騎士  (きし)       貴族ではない。後を継ぐことのできない貴族男子の就職先。

旗爵  (きしゃく)      名誉爵位。実質的な貴族ではなく、領主が任命できる。一代限り。 

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