49:レイン
次回は5月20日土曜日16:00更新予定です。
次回から、水・土・日の週3更新に挑戦します。
「広いな。」
城について早々、自分とユーコはレインとやらが看護を受けている病室?に通された。
たぶん、元々は病室ではないんだろうな。
あまりにも豪華すぎるし広すぎる。来客用の貴賓室か何かだろう。
中央には、やはり豪華なデカいベッドが一つ。
周囲にはいかつい顔をしたおっさん達がズラリと。
あぁ、たぶんこの連中が彼を診ていた医者とかか。
どこの馬の骨とも知れない小僧が自分たちの立場を脅かそうとしているんだから、にこやかに歓迎なんてできないよね。
ご令嬢はというと、いきなり怒鳴りつけたおっさん、たぶん親。ってことは伯爵?らしき人が連れて行った。今頃はお説教の真っ最中だろう。
さて、とりあえず見てみますか。
まだレベルは低いけれど、それでも"医師"のスキルはいくつか解放済みだ。
簡易診察を発動してベッドに寝るレインに近づく。
ん?
<HP:4/284・偽装(284)
状態:昏睡・偽装(正常)
んん?
簡易診察では、異常のあるステータスを見ることができる。
残念なことに、異常の無いステータスは見ることができないし、静止している相手にしか使えない、簡単に抵抗されてしまう、ということで相手の実力を知る基準にはできないが。
偽装って表記は、ようするに、何らかの魔法かスキルで状態を偽っている、状態異常をきたしているってことだ。
自分のレベルと簡易診察程度でもそれが分かるってことは、レインの偽装スキルレベルは高くないのだろう。
まぁ、魔法すら一般的でないこの世界ではそれで十分なのだろうな。
こいつ・・・間違いなくワタリビトか。
しかも、プンプンとクズ臭がするぞ。
胸ポケットから、見た目がサイバーパンクなデコレーション用アイテムの眼鏡を取り出すと装着。
なんか、それっぽく見えると思う。
瞼を開いて瞳孔を確認するようなしぐさをしながら日本語で、
「オイコラ、狸寝入りしてんじゃねーぞカスが。」
ささやくように言うと、レインの瞼がピクリと。
さらにこじ開けている方の目線がこちらに動いた。
「何をしておる!今すぐ離れよ!」
怪しげな小僧が聞きなれない言葉をつぶやいている。さぞ異様な光景に見えたのだろう、真っ白なひげを蓄えた老人が手に持った杖を振り上げて憤慨、周囲の白衣たちになだめられている。
仕方ない。
目薬(暗闇回復効果)をこじ開けた眼球に一滴。さらに日本語で、今度はみんなに聞こえるような音量で。
「重症のフリでもいいから今すぐ起きろや、一応芝居には付き合ってやる。このまましらばっくれるなら何もかもバラすぞ。」
ドスを利かせたこの一言で、レインはパッと目を開けた。
「あぁ、私はいったい・・・。」
おい、大根役者、付き合ってやるって言ってるのにクソ芝居が過ぎるだろ。
ちょっと焦ったけど、そんなことはどうでもいいくらいに室内騒然。
「奇跡だ。奇跡が起こった。」
「どのような祈祷も受け付けなかったというのに。」
「祈祷などどうでも良い!それより万能薬ですら回復できなかったのだぞ!」
万能薬?
なんか引っかかる単語があったけど、ここで聞くわけにもいかんな。
「回復したわけではありません。わが村の医師が調合した気付けを使用しただけですので、一時的に意識が戻られただけです。」
と、いうことにしておこう。一応こいつの言い分も聞かないとな。
「いったい何なのだ!それは!万能薬すら超えるほどの秘薬など!レシピを公開せよ!」
髭の爺さん、ヒートアップしすぎです。
レシピも何も、ただの目薬だしなぁ。ってか、普通そう言うのは秘匿されるようなものでは?
「原料は森の奥深くにある広大な洞窟の最深部から採取した水ですので、ご自由に。」
絶対無理な方法を伝えておけばあきらめるだろう。
「な・・・。」
「ばかな、森の奥に大洞窟だと?」
「そんなことでは無い、この間抜けが!洞窟の最深部からだぞ!そんなこと、できるはずがない。」
「英雄の村・・・やはり事実か・・・。」
なんか、こちらの思惑とはちょっと違った方向に盛り上がってきてしまった。
「いくらだ。」
「は?」
相変わらず横柄な態度の髭爺。
「いくらで売るのかと聞いている。」
いいかげんムカついてきたぞ。
「これは、ここにある分だけしかありません。採取に成功した探窟師は、これとわずかな希少鉱石を村にもたらすと程なく息を引き取りましたから。本来なら、村から持ち出すこと自体、ありえない物ですので、あなたの全財産を提示されたとしても、一滴たりとも売れるようなものではありません。」
ピシャリと言ってやった。うん、小気味よい。
「無礼な!」
というと、顔を真っ赤にした髭爺は杖を振り上げるとそのまま目薬の瓶を持つ手を打ち据えてきた。
瓶を落とすとでも思ったか?
髭爺は杖を落とすと、その腕を抑えてうずくまってしまった。
ざまぁ。
蘇りでレベルがリセットされたとはいえ、装備のおかげでジジイの細腕じゃあ、石を叩くようなもの。逆に手首を痛めたことだろう。
「ご令嬢の熱意に心を打たれた代表からの指示で門外不出の薬まで持ってここまで来ましたが、どうやら、心の底からこの青年を救おうという方はご令嬢だけだったようですね。」
うずくまって手首を抑えながらもこちらを睨みつける髭爺を見下ろしながら告げると、そのまま真っすぐドアへと歩き出した。悠然とね。
「お、お待ちください。ご無礼は謝罪いたします。」
この中では若手のオッサンたちが止めに入ったけど、ムカついてるのは髭爺に対してなんで君たちの謝罪はいらん。
あと数歩でドア、というところで、勝手に開いた。
(おお、自動ドア?)
なわけがない。
残念ながら我慢しすぎたようだ。ドアから現れたのは、一見人のよさそうなオジサマ。おそらく伯爵だろう。ミレーユ嬢をいきなり怒鳴りつけてどこかに連れて行った人だ。
来ちゃったら仕方ないので、片膝ついて頭を下げた。めんどくさいけどこうしなきゃいけないそうだ。
「何事だ?エバンス。」
推定伯爵の声に、髭爺が無礼者だの偽物だのとまくし立てる。
このジジイ、エバンスっていうのか。
反論したいところだけど、許可なく話し出してはいけないらしい。と、久々に”常識”さんが警告してくれた。
「相違ないか?クレンス。」
今度は、別のオッサンの声。
「いいえ、私の見解とはかなりの齟齬がございます。」
と、今度のオッサンはここで起きたことを語った。
こっちは良いおっさんか?と思ったけど、聞いてるとだいぶ違うな、やたらと薬を賛美して、逆にエバンスを貶めるような発言がチラホラと。
なるほど、最初に発言を許したことからエバンスが医療チームのトップで、クレンスとかいうオッサンは二番手か三番手、エバンスを蹴落としたい位置にいるってことか。
「エバンスは若き頃より当家の筆頭医を勤め上げた我が忠臣。もとよりその言葉に嘘偽りがあるとは思わん。」
え~、ダメ領主のパターンかよ。
こんな出来レースで犯罪者扱い?こりゃこの家、先は無いな。
しかも、こんな場でクレンスとかいうオッサンは信用できないって公言しちゃったようなもんじゃないか。ま、できないのも分かる気はするけど。
「が、レイン殿が目を覚ましている事実がある以上、この者の手腕がお前たちより優れているのは間違いないようだな。」
エバンスを始め、数人からうめくような声が聞こえた。
「その功をもってエバンスへの無礼は不問とせよ。良いな。」
「ハっ。」
ん?エバンスへの無礼?
こいつは医師団全体への無礼だなんだと言ってたはずだけど・・・これは、ちょっと早とちりしたか?
「クレンス。わが信を得たくば、事実のみを語るすべを覚えよ。」
「ハっ。」
あぁ、これ、全部知ってるな。
ジジイを全面肯定するように見せかけて、こちらの功績は事実として認定、でもジジイへの無礼を相殺したとして褒美を無くした。しかも、クレンスへも余計な足の引っ張り合いをやめればエバンスより信用する、といったニュアンスを潜ませてフォローしていた。
これが貴族の腹芸か。
自分にゃ無理だな。
この場では、自分、というか、村だけが大損こいたって認識なんだろうけど、元々こんなんで褒美を取る気は無いので負けではない。
腹立つけどね!
「発言を許す。レイン殿は回復できるのか?」
無理ですって言ってとっとと帰りたい。
ふくらはぎにチクンと痛みが走った。
あぁ、分かってますよ!と、頭を上げろと言われてないから下げたまましゃべるのかよ。
「村の医療機器なら完治可能でしょう。問題は村までレイン殿の体がもつかどうかです。明日の朝までお時間をいただけるのであれば、応急で一時的な処置もできますが、処置には村の秘伝も多く門外不出。われら二人とレイン殿以外は御退出願います。」
ギリッ
エバンスのあたりから歯ぎしりの音が聞こえた。
(なるほど、髭爺でも許可されないと反論もできないのか、こりゃいいな。)
「良かろう。では明日の朝馬車を用意させる。レイン殿の世話係として数名の侍女をつけるが良いか。」
質問じゃないね、それ。
「承知しました。」
「では、患者とその二名以外は全員退去せよ。」
そう告げると、広い室内には自分とユーコ、レインの3人が残された。
「よく我慢したな、ユーキにキレやすいから注意しろって言われてたけど。」
不愉快の原因がいなくなった開放感からか、ついうっかり口を滑らせてしまった。
「なるほどぉ。ユーキったら、あたしのことそんな風に言ってるんだぁ。」
恐る恐るユーコを見たら、両手の爪をピンっと立ててそれを眺めていた。
(スマン!ユーキ。生きてたらなんか奢る。)
「あのぉ・・・。」
ベッドからかろうじて聞き取れるか細い声が。
忘れてた。
「とりあえず、全部説明してもらおうか。」
にっこりと笑顔で告げたよ。もちろん手にはナイフ持ってだけどね。
レインがやっていたのは、テーブルトークRPGを元にしたMMORPGだった。
テーブルトークってのは、パソコンやゲーム機ではなく紙と鉛筆とサイコロを使って、一人のゲームマスターが用意したシナリオを数人のプレイヤーが挑戦する、といったRPGの元祖だ。
派手なスキル、属性や相性による戦闘の組み立てなど、高いプレイヤースキルを必要とする昨今のゲームとは異なり、戦闘は単純明快。
その代わり、テーブルトークRPGが元になっているだけあって戦闘とは無関係の魔法やスキルが多いのも特徴らしい。
重体を装っている偽装の魔法もそのうちの一つだ。
彼が最初にこの世界に現れた場所は街道そばの草原で、周囲には弱い魔物しかおらず、順調にレベルアップと素材の売却での資金稼ぎをこなしていたそうだ。
そんな折、たまたま街道を移動中に魔物に襲われる馬車を見かけて助けに入ったことがきっかけで、城に滞在することになったそうだけど、助けたミレーユ嬢から猛烈なアピールを受けていたという。
「受けりゃぁいいじゃん。逆玉だぞ。」
自慢か?自慢だな?殴っていいよね?
「無理無理。」
ムスッとした顔で否定するレイン。
「あぁ、まぁ、それも分かるか。あの暴走お嬢じゃなぁ。」
俺は無理ですな。フブキの良さがわかる点だけは認められるけど、あのテンションにはまったくついていけない。
「いや、確かに行き過ぎちゃうところはあるけど、ミレーユちゃんはただ暴走してるわけじゃない。」
ミレーユちゃんだあ?
って、なんだよ、こいつも乗り気なのか?
「魔物に襲われた湖の件も、体調を崩していた弟さんが魚を食べたいって言ったのを聞いてだったんで、ただの我がまま娘ってわけじゃないんだ。」
ゴニョゴニョと令嬢を弁護するレイン。暴走は否定しないんだね。
「なんだよ、お前もまんざらでもなさそうじゃん。なんで諦めちゃってるんだよ。」
まぁ、リア充は爆ぜていいんだけどな。
「だって、あの伯爵、かなりの曲者なんだよ。」
うん、それはわかる。ついさっき実感したけどね、でもなんで伯爵が出てくんの?
「要するに、伯爵にとって俺はミレーユちゃんをおとなしくさせるための餌替わりなんだよ。とにかく思い込んだら一直線な性格でさ、これまでにもちょくちょく問題起こしてたそうなんだけど、俺がいると、その、俺にメロメロってゆーか、あんまり暴走しないらしくて。」
「惚気はいらん」
「いや、違うんよ。そりゃぁ、最初は悪い気はしなかったよ、結構かわいいし。」
「リア充氏ね。」
あ、ユーコさん、今爪とぎしなくても・・・あぁ、高そうなテーブルの足が・・・ま、いいか。こいつに責任取ってもらおう。
「だから違うって。ちゃんと聞いてよ。ちょっとでも良い雰囲気になろうものならさ、すぐに邪魔が入るんだよ。誰もいないはずだったのに、急にメイドさんが現れたりさ。本人以外は全くその気は無いんだよ、ってか、絶対邪魔してくるんだよ。マジただの防波堤扱いだもん。だったらさ、ここで無駄な時間使いたくないじゃん。手も握れないんだよ!だったらさぁ、こんなところとっとと出て、自由にさ、その、せっかくの異世界転生だよ。やっぱ夢見るでしょ、ハーレムとか。」
これまでの不満をぶちまけるようにまくしたてたレイン。
しかし最後の一言は見逃せないぞ。
「「カス。」」
愛情のかけらも無いディスリがハモった。
「ひど!夢見るくらいはいいだろ!実際この力があれば夢のままってわけでもないだろ。」
全く、この勘違い男は。
「いいか。ここはラノベやゲームの中じゃないんだぞ。そういった世界に転生したなら確かに何らかの補正が働く可能性が無いわけじゃないけどな。ここは別世界ってだけで現実なんだぞ。複数の女性が君に好意を持ったとしても、その女性同士が仲良くなんて夢物語が存在すると思うか?」
「むぅ・・・。」
「好きな相手はぁ、独占したくなるに決まってるしぃ。ハーレムなんてぇ、殺しても許さないぃ。」
今日のユーコさんはいつも以上にキツコワイなぁ。
「泥沼の三角関係で最後に刺されて終わるぞ。」
ガクリとうなだれるレイン。こんなアホが存在してるとは、新発見だ。
「で、なんで重体のフリなんかしてんのさ。」
「・・・正直、キツいんだよね。四六時中彼女に追い掛け回されて、なのに手は出せないんだよ。生殺しだもん。いくらカワイくて良い娘でも無理だよ無理。しかも、24時間100%確実に監視されてるしさぁ。だから、さすがに昏睡状態?絶対安静みたいな状態なら、あのお嬢も押しかけてこないかなって。その間に逃げ出す方法を考えようと思ったわけよ。なのに、あの医者どもが、24時間誰かしらピッタリついてわけわかんないことし出すんだもん。」
そう言えば、祈祷とか何とか言ってたな。
少し時間を稼ぐつもりが、身動き取れなくなっちゃったのか。やっぱりアホだ。
「こんなことしなくてもぉ、討伐に出たならその時逃げちゃえばよかったのにぃ。」
「監視されてるんだって。実際、逃げようとしたことあるんだけどさ、涼しい顔した執事のオッサンが「道に迷われたようで。」、なんて言って急に目の前に現れるんだよ、真夜中にさ。」
あれはもうホラーだとか何とかわめいてたけど知らん。
これは予想以上に問題ありだな。
たぶん、こいつの仮病も伯爵にはバレてるかもしれんぞ。
この会話も聞かれてる可能性大だな。
あぁ、こんなアホ放り出して帰りたい。
「もぉ、ここで治しちゃおうかぁ。」
お?ユーコは任務放棄か?
「こんなの村に入れたくないぃ。」
あ、なるほどね。
「ひど!見捨てないでくださいよぉ。」
すがりつくな!
男にされてもキモいだけだ。
なんて口に出してはいけないんだったな、今の時代は。
「そもそもだなぁ、こっちは、瀕死の君を助けるために来たんであって、仮病だって時点でお役御免なんだよ。だいたい、助けるったって何すりゃいいのさ。村に着いて来るお世話係の侍女だって、要は監視だぞ。」
全く面倒事を持ってきてくれたものだ。
こいつを開放させるには、ミレーユ嬢が落ち着くか、こいつが嫌われてお役御免になるしかないわけか。
もしくはこいつがミレーユ嬢の結婚相手として価値があると証明できればいいのか?まんざらいやそうでもないし。ってか、ハーレムだのと言ってても、どうも令嬢との仲を邪魔されてふてくされてるだけなようにも見えるし。
「おい、ミレーユ嬢を落ち着かせる、ミレーユ嬢に嫌われる、伯爵に認められてミレーユ嬢と結婚する、どれがいい?」
メンドクサイけど本人に決めさせよう。
いた、3番目意外選ばせないけどね。
「おすすめは三番だ。とにかく功績をあげて、伯爵から名誉爵位の旗爵に任じてもらう。まぁ魔物の討伐でいいだろ、村の周辺ならゴロゴロいるし、レベルアップにもなる。そのあとは大物中心に討伐して魔石とかを王家に献上していけば、騎士爵とか、準男爵くらいは手に入るんじゃないの?そこまでいけば伯爵家次女の婿としては及第点ってところじゃないかな。
一番はかなり困難だと思う、ってか、どうすればいいのかわからんから自分で考えろ。
二番は、これが一番困難だな。伯爵としては一番避けたいだろうし、間違いなく妨害してくるだろう。」
ひょっとすると、伯爵はこいつを貴族にすることを狙っていたのかもしれないな。
討伐に出していたのも功績を積ませるためだったとか?あぁ、何となくそれっぽいな。
なら、二人の仲をそれとなく邪魔してるってのは、結婚前に間違い起こさせないためか。もしこいつが爵位を取れなかった時は別の相手を探さないといけないわけだしな。ただの親バカか?
したたかそうだから、爵位を取らせて娘の相手として問題なしとなれば受け入れて、氾濫への大きな戦力としても囲い込むつもりかもしれない。
「結婚て・・・そんなの、可能なの?」
お、渋るかと思ったけど、やはりそこに食いつくか。
「可能っていうか、たぶん伯爵も目的はそれだぞ。」
「へ?」
朝、村へ向けて出発である。
正直な話、村に着くまでにコイツを何とか説得しようと覚悟を決めていたのだけれど、あっけないほどあっさりと結婚を取りやがった。
要するにこいつもそうなることを望んでいたようだ。
ただ、好意をもってそばにいる相手に好意を返せないという状態に自棄になっていて、それなら逃げだそう、という結論に至っていたという。ヘタレめ。
玄関を出ると、豪華ではあるが伯爵家の紋章の無い馬車が一台と、5人の男がいた。
「伯爵様からの伝言ですが、つけるはずだった侍女が緊急の用事とかで来れなくなったそうです。で、俺たちはサンサテまでの護衛を仰せつかってます。」
そう言った男たちは、明らかに騎士ではない。おそらく傭兵か。
「ど、どうしよう。これって、怒らせたってことかな?」
なさけなくも耳打ちしてきたレイン。
「逆だよ。監視は不要だと判断されたんだろ。要するに認められたんだよ。ちょっとだけね。」
これくらい察してほしいもんだよ。
それより、やっぱり筒抜けだったか。
先が思いやられるなぁ。




