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46:来る

次回は5/10水曜日16時ごろ更新予定です。

よろしくお願いします。

 「聞いてないよ~。」

 レジェンドトリオ芸人の真似をしてるわけじゃないぞ。

 研究に明け暮れて籠っている間に、村でも多くの変化があったようだ。

 ま、当然なんだけどね。

 問題なのは、そのうちの一つだよ。

 「村の運営について話し合う会」通称「村会」のメンバーに、いつの間にやら自分が入っていたことなんだけどね。

 「聞いてないし承諾してない。」と抗議すると、皆こういうのだ。

 「ちゃんと話したし、承諾してたし、署名もした。」と・・・見せられた書面には確かに自分の名前が。

 おかしい。

 これはきっと、誰かの陰謀・・・もしくは

 「ひょっとして、この村にドッペルゲンガーが・・・」

 言い終わらないうちにソンチョーからのチョップが入った。

 「食事中に何度も話したけど、任せる、いいよ、しか言わなかったでしょ。仕方ないから書面にしたのに、ろくに読まずに署名したのはシンさんでしょ。」

 ソンチョーのジト目が責めてくる。

 軽いボケなのにぃ。

 しかし、そんなことあったかなぁ。あったような、無かったような・・・食事中ってことは、強制連行されたあの時か?

 気を付けよう。熱中しすぎると周りが見えなくなるんだな。

 いつか痛い目を見そうだ。

 あ、今見てるのか。

 で、ちゃんと確認。


  代表  :スローク

  副代表 :ソンチョー

  村会メンバー

   ワタリビト(シン クリフト マナ ウシオ)

   商人   (カブロ ノブロフ) 

   ハンター (マルク カストール) 

   職人   (ギリョウ ケンズ)

   ゴブリン (ンダバ ハゾル)

   オーク  (パラミド オーグル)


 16人体制で発足されたそうだ。

 ワタリビト多くない?自分消してくれてもいいよ。

 みどり村のプレイヤーで、この村の根幹でもあるソンチョーは、能力の制限で村を離れることができない。そのため代表はスロークに決まったんだそうだ。

 将来的に外交?じゃないけど、外に出る必要が出てくるかもしれないし、見た目的にもイケオジのスロークの方が代表っぽい。戦闘能力も高くて、イザというときに単独でも切り抜けられる。文句ない人選です。

 副代表がソンチョーなのは当然のこと。

 ワタリビトから、

 自分の選出理由は、魔道具関連の技術担当。これは仕方ないけどね、悪だくみが得意そうだからって、なにそれ?非常に不愉快です。

 クリフトは整備計画担当。

 マナは医療担当。

 ウシオは畜産担当。

 商人から、

 カブロは移住の取りまとめなどもやっていたし、商隊を組んで地方などを巡回していたので、カルケール領の地方事情に詳しいため。

 ノブロフは移住してきた新しい住民。サンサテを拠点に商隊を組んで地方の村落を渡り歩くカブロと違って、ノブロフは領都に本店を持ち、大きな町等に複数の支店を持つノイラード商会のみどり村支店の責任者。元は本店の番頭まで務めた人物で、都市部や貴族関係の情報にも詳しい。

 ハンターから

 マルクは、自分が初めてこの世界で出会ったハンター。堅実で面倒見も良く、新人ハンターたちの指導的なこともやってくれている。

 カストールは、大物を得意とするハンター。この村に来てからは大人数で組んでの狩りにも挑戦しているようで、少人数で堅実なマルクとは狩りのスタイルが逆。ということで選出。

 狩りは村の安全と収入、食を担う重要な産業になるので、真逆のスタイルで狩りをする二人に参加してもらうことになったんだそうだ。

 職人から

 ギリョウは、大工として。ケンズは、鍛冶師として村には欠かせない存在だ。ただ、職人は種類も、それぞれの専門性も高いため仮の代表として参加してもらうことになったようだ。

 ゴブリン、オークからも一族の取りまとめ役が2名ずつ参加。

 ということで、とりあえずこれから村の運営に関してはこの16人で話し合うことに決まったようだ。

 断固辞退したいのですが。

 で、自分がまだひきこもってる間に先行して決まっていたのが、村の運営に関すること。

 この世界、というか、サンザ王国での法と税のシステムは、共通の国法、国税と、各領によって異なる領法、領税に別れている。

 国法、国税は、主に貴族や名誉爵といった、爵位持ちに課せられる法律と税なので一般市民にはあまり縁が無い。

 各領ごとに、領主によって決められる領法、領税が市民にとっての法律と税にあたる。

 法律に関しては、この世界の常識や習慣などもあるので、とりあえずはカルケール伯爵領の領法を利用、時間をかけて精査、修正していくそうだ。

 領税に関しては、どこの領でも制定されているテンプレが

 

 ●住人税(領内に住むすべてにかかる税)

   人頭税(成人一人一人にかかる税)

   嗜好税(一部の嗜好品を購入する際にかかる税)

 ●就業税(商人や職人といった、商いをするものにかかる税)

   通行税(町に出入りするたびにかかる)

   店舗税(店舗があれば面積で決まる)

   市場税(店舗の無い商人が商いを行う市場や露店にかかる)

 ●農税(農業従事者にかかる税)

   地代(所有する農地の面積にかかる。農産物で支払うことが多い)

   

 それ以外にも、領によっていろいろな税が制定されていたりする。税率とか、細かい内容も領によってバラバラ。

 で、この村での収入減をどうすることにしたかというと、


 ●地代(土地そのものは村の物で購入はできないことになっているので面積に合わせた賃貸料)

 ●施設利用料(卸売市場・解体施設・浴場・診療所などの村営施設を利用した時の料金)

 ●通行料(街道の利用にかかる料金。村の出入りにはかからない)

 ●販売益(村特産の販売利益・村営宿泊所の利益)


 少なすぎるのではないかと心配する声を上げたのがカブロとロブロフ、経済にも明るい商人たちからだった。

 確かに、安定財源として考えると、地代くらいしか無いので村の運営費として少ないように感じるだろう。でもそれは、すぐではないけれど、通行料や施設使用料、産物の販売で稼げるようになるから問題ない。

 商人は、外から仕入れるなら通行税がかかるし、産物(畜産・農産物や魔道具など)は村から仕入れることになるし、卸売市場を使えば使用料がかかる。

 ハンターはアップグレードした解体施設を使えば使用料がかかるし、肉は魔素を抜くなら卸売市場に売却することになる。そして、魔素を抜いた肉類は再び卸売市場で販売されることになる。

 護衛などを生業とする傭兵は、この村では商人専属になるか村の警備隊として雇っている。フリーでの活動はほとんどいないが、宿や食堂、酒場に商店を利用するなら、村に十分お金を落としてくれるだろう。そのうち村の産物として装備品を販売してもいい。

 農民は、将来的には新しく整備する農地を所有できるようにして地代をいただく。肉同様に魔素抜きをするなら卸売市場に販売することになる。

 レース場なんて話もあるようだし。未整備の施設が出来上がってくれば採算は問題あるまい。

 といった内容をソンチョー、スロークから説明されたところで思い出した。

 「研究中に悪魔と契約したんだけど。」

 没頭しすぎてすっかり忘れてたよ。

 「はぁ!?」

 ソンチョー、スロークが見事にハモった。

 ・・・

 「なるほど・・・。確かにサンザ王国の貨幣を食わせ続けるのは不味いよね。」

 「あぁ、ウイキネットが使いやすくなるのもいいし、ガチャが無くなるのもいいな。ただ、独自の通貨か・・・うまくいくかな。」

 一応、新しい通貨ベルの試作品を見せたよ。

 1ベル、5ベル、10ベル、50ベル、100ベル、500ベル、1000ベル、5000ベル、10000ベル、50000ベル、100000ベル11種類の硬貨だ。

 紙幣はやめた。

 印刷機でガチャコンなんて、ロマンが無いじゃないか。

 絶対に偽造できないように、デザインとして組み込むように、加工した魔石を入れてあるし、金属部分はこの世界では認識されていない合金だ。

 「これ、美術品レベルじゃない?量産できるの?」

 と、心配されるレベルなので偽造はできまいよ。

 「金型はできてるんだよね。魔石部分の加工には使用済みのクズ魔石を使えばいいし、通貨として発行するときは魔素を入れて出すよ。細工もしてあってね、将来自販機的なものを作った時に、硬貨の魔素を使って動作するようにしたりとか・・・」

 と、妄想に近い構想を延々としゃべりだしてしまった。

 あぁ、のどが痛い。

 とにかく、ベルの通貨利用は次回の村会で議題にするということで決着した。


 資源調査は、オートマップ系のスキルを所有しているスロークやユーキを中心に引き継いでいたようだ。

 砂糖の木の移植も無事に済んでいた。

 幹の太さが3mほどのサイズを20本。他にも、前回確保していた木々を含めて新しく見つかったものなど、畑のさらに南側、今はまだ村の範囲外になっている場所にまとめて植えてあった。

 黒砂糖やゴムの生産は順調に進んでいるそうだ。

 街道も一般開放が済んで、ポツポツと往来があるらしい。

 今はまだほぼ魔石や毛皮を買いに来る商隊が中心。やはり、森の奥深くという立地に二の足を踏むようであまり多くはない。

 いきなり大賑わいで対応しきれなくなるよりよほどいい。

 宿泊施設もまだキャンプ地状態、警備と料金所などへの配置は済んだものの、まだ研修直後のペーペースタッフなので混乱しなくてよかった。

 2回目の村会では、シン発案の独自通貨に関しての議題が可決した。

 貨幣の見事さにみんなのテンションが上がった隙に守護神像の力が増すとか何とか言いくるめて強引に、というかんじだった。

 貨幣の運用は、両替商の運用が始まってから。秋ごろになるだろう。

 

 困ったことになった。

 はぁ~っとため息を吐くスローク。

 シンがいない。

 簡易拠点のドアに「ちょっと届けてくる」というメモが張り付けられていた。

 どこに行ったのかは想像つくけど、なんで今行くかね。

 つい先ほど、街道の入り口にカルケール伯爵の使者を名乗る一行が来た。と連絡が入ったのだ。

 興行団とのいざこざから連れて来た4頭のグレイウルフを入り口や広場に配置して、駅伝方式でメッセージの伝達ができるようにしてある。

 入り口から村まで半日ほど。つまり後3日程でやってくる。

 急遽対策会議を、と呼びに来たのにこれだ。

 まぁ、今回ばかりは仕方ない。と思ってしまうのは甘すぎだろうか。

 仕方ないのでシン抜きで会議を始めることになった。

 一応代表なので、開会の宣言をするスローク。

 「何しに来るんだと思う?」

 神妙な面持ちのソンチョーが、誰にともなく問いかけた。

 「場所的に王家からの接触と見るのが一般的です。王家の名代として、村からの街道が接続しているカルケール伯爵に白羽の矢が立つことは理解できますが、それにしても早すぎます。」

 カブロが腕を組み、天井を見上げて考え出した。ただでさえ大きな彼が余計大きく見える。

 「一気に移住者が出てるからなぁ。サンサテ側から何かクレームがついたのかもしれん。」

 そういうギリョウも移住者なのだが、自分のことはすっかり棚に上げている。ひょっとすると忘れているのかもしれない。

 「あ~、デモンエイプの件とか、お礼に、何てことは・・・ないよね?」

 ソンチョーとしては、少しでも良い方に考えたいのだろうが、食い気味にマルクから否定が。

 「無いな。本来なら自分たちで討伐して栄誉としたかっただろうからな。魔石も毛皮も王に献上すればそれなりに喜ばれる類のものだ。むしろ、手柄を横取りされただのと逆恨みを買っていてもおかしくない。」

 「警告の可能性もありますね。ここまでは見逃すけど、調子に乗るなよと。」

 「ですねぇ。この時期にというと、その程度かもしれませんね。」

 ロブノフの発言にカブロが同意したことで、不安に包まれていた雰囲気が若干和らいだ。

 さすがに、あまり無理難題は突き付けてこないだろうという感じにまとまったのだ。

 「出迎えのことですけど、作法とか何にも知らないんですけど。」

 ソンチョーが次の議題に切り替えようと発言した。

 「使者ってことですからね。こちらは爵位があるわけではないので、おそらくは来ても執事の中の誰か、といったところでしょう。」

 「でしょうね。大げさにもてなす必要はないでしょう。先ぶれも無く訪問してきたのですから、相手側もそこら辺は寛容なはずです。無礼な態度を取りさえしなければよいでしょう。こちらが貴族でないのは知っているはずなので。もし、爵位をお持ちの方が来訪されるなら、先ぶれとして出迎えの作法などを伝えに来るはずですよ。」

 なるほど。いちおう歓迎の意を示す程度でいいのか。

 「出迎えは自分とソンチョーと、くらいでいいのか?できればこの手に明るそうなカブロかノブロフにもいてもらいたいんだが。」

 「私がお手伝いしましょう。カルケール伯爵とも面識がありますので。」

 そういってノブロフが名乗りを上げた。

 「できることなら、ンダバ殿とパラミド様にも立ち会っていただければと思います。」

 「いいのか?我々は出ない方がいいと思っていたが。」

 ンダバが意外そうにノブロフを見た。隣のパラミドやハゾル達も同様の反応だ。

 「この村の特色を、最初にハッキリと伝える意味で、ゴブリンとオークの代表でもあるお二人には是非いていただきたいです。お二人の立場や人柄、知性を知ってもらうことで、対等の存在と認識してもらった方が良いでしょう。貴族が来た時にいきなり対面するよりは、使者の段階で会っておいてもらった方がいいです。」

 「ふむ、責任重大だな。」

 「我々が人と共存できるということを認めていただかないといけませんね。」

 二人とも会話もマナーも人と何ら変わりない。というか、村に住むゴブリンもオークも、ほとんどが会話も読み書きも支障が無いレベルだ。

 「後、できれば早急にシン様をお呼びいただければと。もし、技術的な質問をされたときにこたえられる方がいた方が良いでしょう。」

 「なるほど。なら、ユーキに頼もう。シンさんの行先はおそらくノエルさんのところだろうから。」

 「そうですね。できれば、大げさに伝えていただいた方がいいでしょうな。あの方なら。」

 さすがにカブロはシンとの付き合いが長いだけある。面倒事を察知した時のシンの逃げ癖を理解しているようだ。ただ、シンのスルースキルは決して高くないので、ちょっと注意すれば簡単に確保できる。


 こうして突然ユーキに呼び戻された。

 当然俺の機嫌はすこぶる悪い。

 「使者に無作法を働いたということを理由に難癖付けに来るのかもしれないから、最低限のマナー練習くらいはしといたほうがいいだろうね。」

 しかたないので一応提案しておく。

 「さすがシンさん。即座に悪知恵対策が思いつくなんて。」

 ん?これって褒められてるの?

 段取りをして、翌朝にでもノブロフを講師に座学程度は、と思っていたけど。

 朝起きると、予定よりかなり早く到着しそうだとの報を受けた。

 慌ただしく出迎え予定の6人が村の入り口に集合する。

 おお、皆正装っぽい。

 作業着のまま出ようとして、呼びに来たユーコに"膝カックンチョップ"なるものを食らったのだった。

 一応感謝しておこう。

 ん?

 いや、ちょっと・・・。

 なんだあれは?

 馬車がやってくる。

 確かに豪華な感じに見える。

 けど、優雅さとかとは無縁。何かから逃げてるのかよってくらい馬も必死そうなんですけど。

 あの勢いで来たの?

 馬、よくつぶれなかったね。

 「どういうことでしょう・・・。」

 ソンチョーがオタオタしている。

 「あの馬車は、確かにカルケール家の形式ですが。いくら道が良いとはいえあの速度でなんて。」

 ノブロフも唖然としている。

 村の直前で急停止した馬車。

 勢い良くドアが開かれた。

 「ミレーユ様!?」

 飛び降りた人物を見たノブロフが悲鳴に似た声を上げた。

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